Drive-Connect!

 エピソードT ソード・マスターの軌跡

  CONNECT02.『天性のバトルセンス』



 学校近くのショップで、近藤信彦が口を開く。
「ルールはシングル。分かるな、蓮杖?」
「もちろん。1対1のバトルだよね?」
 訊き返す。
「そうだ。ハンデはどうする? Aランクだからハンデをつけても良いぜ?」
 挑発される。飛鳥は少し黙っていた。
 一緒について来た月野一美が飛鳥に言う。
「蓮杖君、初心者でしょ? だったら、ハンデは……」
「必要ないよ。ハンデなんていらない」
 なぜか強気だった。

 ――――そのバトル、両者の合意と確認しましたっ!

 突然、バトル・フィールドから声が聞こえ、中心からタキシードを纏った中年男性が現れる。
「ただ今より、このバトルは公式バトルと認められました。審判は私、リュウマチ小暮さんがやりますっ!」
「……し、審判?」
「んだよ、まともな奴じゃねぇのかよ」
 近藤信彦が文句を言う。構わず、リュウマチ小暮がルールを説明する。
「ルールはシングルバトル! ハンデは希望によりなし!
 先に相手ドライヴを行動不能にするか、降参させれば勝利となります!」
「すぐにぶっ倒してやるぜ、蓮杖」
「……負けない。僕は、あの場所に立つから……!」
「それでは、両者はコネクトを!」
 二人がコクピットランサーに乗り込む。飛鳥はこよみの説明を思い出していた。
 ドライヴのバトルは、コクピットランサーにドライヴを接続する事で可能となる。
「確か、輝凰さんは『ドライヴ・コネクト!』って言うって、こよみさんは言ってたっけ……」
 特に意味はないが、気合が入るらしい。
「……ドライヴ・コネクト!」
 ドライヴをコネクトする。



『ソード・マスター』である洸月輝凰は、自宅で嬉しそうな顔をしていた。
 そんな表情を見て、こよみが後ろから抱きつく。
「何がそんなに嬉しいの、輝凰さん?」
「何だと思う?」
「どうせ、昨日会った飛鳥君の事でしょ? 昨日からずっとだもん。私の話も聞いてくれなかったし」
 こよみが少しだけムッとする。輝凰は軽く苦笑した。
「悪い悪い。けど、凄く嬉しいんだ」
「やっぱり、飛鳥君が輝凰さんの探してた相手?」
「ああ。昨日見ただろ、あいつの瞳」
 磨けば輝く、まさにダイヤの原石とも言える輝きを秘めた瞳。
 そして、とても澄んでいる。今まで見た事もないほどの瞳をしていた。
「必ず、飛鳥は俺と同じ場所に立つ。あいつは、俺にそう思わせる奴だ」
「飛鳥君の事、凄く評価してるの? まだバトルも見てないのに?」
「あの瞳を見ただけで十分だ。それだけで、大体の事は分かる」
「瞳、ですか?」
 こよみの言葉に、輝凰が「ああ」と反応する。
「飛鳥の瞳は、とても澄んでいた。輝いているように見えた。だから、俺には分かるんだ」
 飛鳥は強くなる。そう遠くない未来に。輝凰はそう確信していた。
 そんな輝凰の表情に、こよみが苦笑する。
「飛鳥君にヤキモチ妬いちゃいそうです。今の輝凰さん、やっぱり飛鳥君の事しか頭にないみたいですし」
「それだけ、楽しみなんだよ。そう言えば、ドライヴは名前は何にしたんだ?」
「あ、言うのを忘れてました。ドライヴの名前は、グロウファルコン。強くなる鷹です」
 嬉しそうに言う。



 なんの変哲もない、草原の広がるバトル・フィールド。そこに両者のドライヴが構築される。
 迷彩塗装されているドライヴから、近藤信彦が飛鳥のドライヴを見て笑う。
『初期状態のままじゃないか、おい』
「…………」
 流石に何も言えない。まだ、自分なりに作る事なんてできないのだから。
 自分にできるのは装備の事だけ。それ以外は初心者である。
 やっぱりバトルなんて言わなかった方が、と今更ながら後悔する。
「両者、準備はよろしいですね!?」
 審判の言葉に、相手が頷く。飛鳥も小さく頷いた。
「それでは、コネクト・バトル……ファイトォォォッ!」
 合図が出る。瞬間、相手ドライヴが動いた。
 やや銃身の長いライフルを取り出し、そして撃つ。
「き、来た……!?」
 飛鳥が目を見開く。無意識にドライヴ――――グロウファルコンを動かした。
 大きく横に動いて攻撃を回避。その動作は、初心者らしいと言えば初心者らしい。
 しかし、動作の”速さ”は初心者にしては速い。
「よ、避けれた……?」
『チッ、避けやがった。初心者のくせによ……』
 近藤信彦が舌打ちする。そして、続けて攻撃が繰り出される。
 それをすぐに確認し、飛鳥が再び避ける。その動作は近藤信彦に苛立ちを抱かせた。
 初心者が、二度もAランク・コネクターの攻撃を避けた。
「……攻撃は、確か……」
 一通り教わった操作を思い出し、背中から砲身の長いランチャーを取り出す。
 そして撃つ。ビームが放たれた。
 近藤信彦が目を見開いて驚きつつも、ドライヴを操作して避ける。
 グロウファルコンの構えたランチャーを見て、近藤信彦が言う。
『ゴッドランチャー……初心者が、何でそんな物持ってやがる……!?』
「外れた……けど、この威力……」
 胸の鼓動が熱くなる。



 彼は偶然、そのショップにいた。
『フォース・コネクター』として、違法コネクターに制裁を下す為に来たのだが、相手は逃げたようだ。
「……仕方ない。協会に任せるとしよう」
 ドライヴを操作して、連絡を取る。その時、バトル・フィールドに目線が移った。
 AランクとEランクのバトル。それにしては、Aランクの動きはあまり良くない。
 内容を良く見ると、ハンデなしのシングル戦となっている。
「ハンデなしでバトル? Eランクのコネクターは自信があるのか、それとも……」
 無理やりバトルさせられているのか。そう思った時には、バトルに魅入っていた。
 Aランクの攻撃を次々と避けるEランク。動きこそ初心者だが、見事なものだ。
「初心者であの回避……資質、にしては何度も使えるとは思えない」
 あれほどの回避を何度もやれば、間違いなく支障が出てくるはず。しかし、それは全く確認できない。
 もしや、と思いつつ、バトルを見続ける。



 近藤信彦の攻撃を避けながら、飛鳥は操作のコツを少しずつ掴んでいった。
「……少しずつ分かってきた。ちゃんと見れば、攻撃が見えるんだ……」
 少なくとも、攻撃の軌道は分かる。それさえ分かれば、避ける事もできる。
 勝てるかもしれない。いや、勝てると思った。
「問題は、攻撃をどう当てるか、だよね……!」
 どれだけ攻撃しても、全く当たらない。当たらなければ意味が無かった。
「……遠くへ攻撃するのって……狙いを定めるのが難しい気がする……」
 それに、昨日見た『ソード・マスター』の戦いは、遠くから攻撃するようなものではなかった。
 反撃の可能性もある接近戦に、何の躊躇もなく挑む戦い。それが『ソード・マスター』の戦い。
「けど、このドライヴの武器じゃ……」
 初期型と言われているだけあってか、グロウファルコンは強くない。
 頼れるのは、輝凰からもらったゴッドランチャーのみ。
 一発でも当てれば倒せるかもしれないが、命中率が低い。
「……輝凰さんなら、こんな時どうするんだろ……?」
 考える。『ソード・マスター』だったら、どう戦うか。
 間違いなく、ビームセイバーと言う初期型の接近戦用の武器で倒すだろう。それも技と言うものを使って。
 しかし、自分には技はない。技など知るわけが無い。
「……違う。接近戦をやったとして、必ずその武器を使わなければいけないって事じゃない……!」
 そんなルールなど、あるわけが無い。飛鳥の頭の中で、何かが閃いた。
「そうだ……そうだよ……!」
『何をゴチャゴチャ言ってんだよ!』
 近藤信彦のドライヴがライフルを撃つ。飛鳥は瞬間的に動き出した。
 初心者とは思えない動き。それは、間違いなく上級者の動きに似ていた。
 ゴッドランチャーを構え、飛鳥のグロウファルコンが駆ける。
 そして、敵ドライヴのすぐ近くにまで接近した。
「遠くからじゃ当たらないなら、近くから当てれば良いんだ……!」
 そう、わざわざ遠くから攻撃する必要なんてない。当てるなら、近くから仕掛ければ良い。
 飛鳥の行動に、近藤信彦が目を見開く。
『チッ……お前には負けるわけにはいかなぇんだよ!』
 敵ドライヴの左腕から小型ナイフが射出され、装備される。
 隠し武器。それを見て、飛鳥が驚く。
「しまった……避けれな――――!?」
 瞬間、目の前に見える”世界”が変わる。
(……あれ? さっきと……違う……!?)
 敵ドライヴの腕の動きがハッキリと見える。避けれる。そう本気で思った。
 迫り来る攻撃を寸前で避ける。
『避けやがった……!?』
「……!」
 グロウファルコンがゴッドランチャーの砲身の先端を敵ドライヴに密着させる。
『な……蓮杖、こいつを狙って!?』
「いけぇぇぇぇぇぇっ!」
 ゴッドランチャーを撃つ。敵ドライヴがビームに呑み込まれた。
 攻撃したグロウファルコンが、その衝動で吹き飛ばされる。この時、決着がついた。
「バトル終了! 勝者、蓮杖飛鳥ぁぁぁ!」



 バトルが終了してコクピットランサーを降りる。飛鳥はまだ勝利したと言う事に実感がなかった。
 思いつきの行動での勝利。そして、最後の見えた感覚。
 自分でも信じられない。しかし、ドライヴに表示されるランクが「D」である事が、それを証明している。
「……本当に……勝てたんだ……」
 初めてのバトル。初めての勝利。胸の鼓動の熱さは、まだ冷めていない。
 輝凰のバトルを見た時とは違った感触。見ている時とはまた違っていた。
 そんな飛鳥に、月野一美が「凄い凄い!」と褒める。
「蓮杖君、凄いね! Aランク相手に勝っちゃうなんて!」
 その言葉に対し、飛鳥が謙遜する。
「す、凄くないよ……たまたま、だし……」
「たまたまでも凄いよ! Aランクって言えば、上級者に分類されるから!」
「蓮杖、貴様ぁっ!」
 突然、近藤信彦が突っかかってくる。
「お前、違法したろ!?」
「え……!?」
「Aランクの俺が、Eランクの初心者に負けるわけがねぇ! 違法でもしたんだろ!」
「し、してないよ……」
「嘘つくな! 違法でもしなけりゃ、初心者が俺に勝てるわけ……!」
「彼は違法なんてしていないよ」
 突っかかる近藤信彦を止める大柄の男。近藤信彦は、それを見て目を見開いた。
 同時に、月野一美も驚いている。しかし、二人がなぜ驚くのか、飛鳥には分からない。
「でぃ、ディフェンド・キング!?」
「違法すれば、その時点で強制的に機能停止する。それは、ルールにも書いてるあるはずだよ」
「それは分かる! けれど、初心者が……」
「負けを認めず相手を責めるのは、人として最低な事だ。素直に負けを負けを認めるんだ」
 男が睨みつける。近藤信彦は歯を強く噛み締めたまま、その場を逃げるかのように去って行った。
 月野一美が男に近づく。
「ほ、本当に『ディフェンド・キング』なんですか!?」
「……それは違う、と言いたいんだけれど、流石にもう隠せないかな……」
「ディフェンド・キング……?」
 飛鳥が首を傾げる。『ソード・マスター』は知っていても、『ディフェンド・キング』は知らなかった。
 男が飛鳥に近づく。
「さっきのバトルは見事だったよ。特に、零距離からのゴッドランチャーは良い応用だったね」
「そ、そうです、か……?」
「うん。僕はゴウボーグ=レンダリム。ゴウって呼んでくれて良い。君は?」
「あ、れ、蓮杖……蓮杖飛鳥です……」
 その名を聞いて、ゴウが目を見開く。
「……蓮杖飛鳥? まさか、君が輝凰の言っていた……?」
「輝凰さんを知ってるんですか?」
「知っている何も、僕と輝凰は同じ『フォース・コネクター』だからね」
 ゴウの言葉に、飛鳥が「あっ」とようやく気づいた。
『ディフェンド・キング』。耐久戦において最強を誇る『フォース・コネクター』。
 今になって、飛鳥が慌てる。相手が凄い人間だと分かって。
「え、あの……その……ぼ、僕、全然知らなくて……」
「構わないよ。昨日登録したばかりなんだよね?」
「は、はい……」
「じゃあ、あれが君のデビュー戦かな?」
「そ、そうですけど……?」
 それを聞いてゴウが驚く。飛鳥の強さが信じられなかった為に。
 デビュー当初、初期型のドライヴで勝てる確率は、同じ初期型であれば50%。
 チームを組んでいる場合は80%と言われているが、初心者で上級者に勝てる確率は1%にも満たない。
 それは、天才と呼ばれるコネクターにも言える事だ。
 しかし、飛鳥はその1%の確率で勝利した。それも、初心者とは思えぬ動きを見せて。
(天才の中の天才……いや、輝凰以上に優れているかもしれない、天性のバトルセンス……!)
 彼――――『ソード・マスター』が見つけた少年は、ダイヤの原石以上の逸材とも言える。
 間違いない。飛鳥こそ、輝凰が選んだコネクターだとゴウは確信した。
「……飛鳥君、僕のチームに来ないかい?」
「チーム?」
「うん。最強チーム『ランドライザー・コマンド』。僕は、君を主戦力としてチームに迎え入れたい」
 それは、紛れもないスカウトだった。



次回予告

 出会いは、少年に未知なる可能性への扉を叩かせる。
 最強チームからの誘い。自分だけのアクティブ・ウェポン。自分だけのオリジナル。
 少年が選ぶ道は? そして眠る才能は、どこまで開花し続けるのか?

 次回、CONNECT03.『初めてのオリジナル』

 少年の中で眠るもの、それは無限大の可能性――――



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