Drive-Connect!

 エピソードT ソード・マスターの軌跡

  CONNECT03.『初めてのオリジナル』



 デビュー戦を迎えた翌日の学校、飛鳥は上の空状態で掃除していた。

 ――――最強チーム『ランドライザー・コマンド』。僕は、君を主戦力としてチームに迎え入れたい。

『ディフェンド・キング』であるゴウに言われた言葉が何度も繰り返される。
 チームへの誘い。それは、信じられない誘いだった。
 しかも、そのチームの主戦力として。これが信じられない一番の理由でもある。
「……最強チーム『ランドライザー・コマンド』……」
「おい、そこ! ちんたら掃除するなよ。こっちはジムに早く行きたいんだからよ!」
 その時、背中を叩かれる。飛鳥は驚いた。
「え、あ、う……」
「何だよ、その驚き方はよ。ともかく、とっとと掃除しろよ、蓮杖!」
「あ、う、うん……。え、えっと……新垣君……」
 新垣蓮(あらがき れん)。クラスメイトでボクシングをやっている少年。
 飛鳥の「新垣君」と言う単語に、蓮が落胆する。
「その呼び方はやめてくれ。俺の事は蓮で良いからよ」
「う、うん、蓮君」
「君はいらねー! 男だったら呼び捨てにしろ!」
「よ、呼び捨てって……」
「俺がそれで良いって言ってんだから、それで良いんだよ。それに、俺はお前が気に入ったんだからよ」
「え……?」
 飛鳥がきょとんとする。
「聞いたぜ。近藤の奴をドライヴってので倒したんだろ? 朝から皆、その話題ばっかだぞ」
「倒してたって……あれはマグレだし……」
「マグレでも勝ちは勝ちだろ。それに、お前、あの近藤に立ち向かうなんて勇気あるじゃねーか」
 近藤信彦は調子に乗っている。そう、蓮は言う。
 聞けば、近藤は弱いコネクターを相手にバトルをする事が多かったらしい。
 俗に言う初心者狩り。蓮からすれば、近藤は外道だ。
「ま、あいつも蓮杖に負けて懲りただろうけどな」
「そうだと、良いね……」
「おう。ともかく、とっとと掃除終わらせてくれよ。今日はジムでスパーリングがあるんだからよ」
「う、うん……」
 蓮が飛鳥の胸をトンと手の甲で小突く。
「俺は良く分からねぇけどよ、ドライヴってのはボクシングと同じでチャンピオンみたいのがあるんだろ?」
「うん。詳しい事は分からないけど……」
「んじゃ、お互い頑張ろうぜ。お前はドライヴで最強。俺はボクシングで最強!」
「うん!」
 この後、飛鳥と蓮は担任教師に「掃除をしないで話をしていた」と言う事で怒られるのは余談である。



 とあるショップの喫茶店。彼は、その喫茶店を貸し切った。
 最強チーム『ランドライザー・コマンド』の集会。
 リーダーであり、『ディフェンド・キング』のゴウがコーヒーをブラックで飲み干す。
「リーダー、どう言う事でしょうか?」
 ゴウの前に座っている細メガネをかけている男が訊く。ゴウは答えた。
「さっきも言ったように、新メンバーを加えたい。問題があるかな?」
「新メンバーを加えたいと言う事に問題はありません。しかし、主戦力としてと言うのは納得がいきません」
 チームにおける主戦力。それは、如何なる戦況でも流れを変える事ができる上級者だ。
 メンバーの状態を誰よりも把握し、そしてメンバーの誰よりも強い存在。
 ゴウの新メンバーの立場に、サブリーダーである佐々木晃鉄(ささき こうてつ)は納得できなかった。
「主戦力と言うのは、チームの中で最強のコネクターが務めるもの。それは、リーダーが一番分かっているはず」
「何が言いたいんだい?」
「主戦力はリーダーが務めるものです。このチームで最強なのは、リーダーです」
「リーダーと主戦力は、一緒にするべきものじゃないよ、晃鉄」
 ゴウの言葉に、晃鉄の眉がわずかに動く。
「リーダーと言うのは、あくまでバトルを勝利に導く為にメンバーを束ねる存在だ。
 そして、主戦力はそのバトルの勝利を掴む流れを作る存在。それは、分かるね?」
「しかし、なぜ新メンバーに!?」
「それは、君の忘れているものを持っているコネクターだからだよ、晃鉄」
「――――!?」
 晃鉄の目が見開かされる。ゴウはさらに話を続けた。
「僕が主戦力として入れたいコネクターは、間違いなくチームにおける重要な存在になる。
 チームに入れて磨けば、間違いなく僕よりも強くなれる」
「そんな訳ありません……!」
 晃鉄の瞳がゴウを睨みつける。その瞳は、今まで見た晃鉄の瞳ではない。
 納得がいかないと言う訴えと認めないと言う感情が伝わる瞳。
「リーダーより強いコネクターなどいません。それに、そのコネクターが強くなると言う保障は……」
「ある。理由は、その彼が『ソード・マスター』の後継者になるコネクターだからだよ」



 ショップのシミュレータで練習する。飛鳥は、少しずつ操作が分かってきた。
「そ、そうか……。ゴッドランチャーって、元々多くの敵と戦う時に使うんだ……」
 高威力、そして広範囲で攻撃できるゴッドランチャー。
 しかし、それ以外の武器は特にこれと言った特徴がないのも知った。
 シミュレータ用のコクピットランサーから降りて、ドライヴを取り出す。
 その時、首筋に冷たいものが当たった。
「うわ!?」
「お疲れ様、飛鳥君」
 名前を呼ばれて振り向く。一人の女子高生がいた。
「二日前に会ったばかりだから、分かるよね?」
「えっと……こ、こよみさん、ですよね……?」
「うん。はい、差し入れ」
 そう言って彼女――――こよみが飛鳥に缶コーヒーを渡した。
 冷たい缶コーヒー。飛鳥が軽く頭を下げて礼を言う。
 そして、こよみが訊いてきた。
「練習どう? ゲームみたいって、輝凰は言ってたけど」
「まだ少ししか分からなくて……でも……」
「でも?」
「……凄く楽しいです。ドライヴをコネクトして、動かすのが楽しいんです……」
「そうなんだ。良かったね」
 こよみが微笑む。飛鳥はそんな彼女を見て頬を赤くして俯いた。
 照れていると分かり、こよみが可笑しそうに笑う。
「飛鳥君って、女の子とお話とかしたりしないの?」
「そ、そんなには……」
「そうなんだ」
「あ、あの、こよみさん……」
 飛鳥に呼ばれ、こよみが「うん?」と反応する。
「……あの、アクティブ・ウェポンって、どうすれば良いんですか……?」
「どうする……?」
「あ、その……アクティブ・ウェポンって、どうやって新しいのを……その……」
「新しいのが欲しいって事? それだったら、自分で欲しいのを買うんだよ?」
「そ、そうじゃなくて……その……」
 ショップで販売しているアクティブ・ウェポンを見ても、飛鳥はあまりピンと来なかった。
 と言うのも、自分が欲しいと思うものがなかったのだ。
 こよみが首を傾げる。
「えっと……ショップで売ってるアクティブ・ウェポンには、欲しいのなかったの?」
「は、はい……」
「じゃあ……」
「作ってみたらどうかな?」
 二人の会話に一人が割り込む。大柄の男だ。
『ディフェンド・キング』のゴウだ。こよみが挨拶する。
「こんにちは、ゴウさん」
「こんにちは。飛鳥君も、こんにちは」
「あ、はい……こ、こんにちは、ゴウ……さん……」
 流石に戸惑っていた。なにせ、チームに誘われた次の日だ。
 まだ答えは決めていない。返事を訊かれたらどうしようもない。
「えっと……」
「昨日の返事はまだ良いよ。ゆっくり考えて構わないから」
「あ、はい……」
「……あれ? ゴウさん、飛鳥君を知ってたんですか?」
 こよみの質問にゴウが頷く。
「うん。昨日偶然バトルを見てね」
「え、飛鳥君、もうバトルしたの!?」
「は、はい……」
「それだけじゃないよ。初勝利も昨日してるんだよ」
「ええ!?」
 ドライヴを知り、コネクターになったのが2日前。それなのに、早くも初勝利。
 飛鳥の信じられない事実に、こよみは驚いた。
「飛鳥君、凄いじゃない! まだ2日しか経ってないのに、もう初勝利って!」
「そ、そんなに凄いんですか……?」
「凄いも何も、輝凰さんだって驚くよ!?」
 こよみの言葉に、飛鳥が苦笑いを浮かべる。ゴウがふっと笑みを漏らした。
 初勝利の話題を切り上げ、話を進める。
「それで、話を戻すけど、アクティブ・ウェポンを作ってみたらどうかな?」
「作る……ですか?」
「うん。作り方さえ分かれば、自分の欲しいアクティブ・ウェポンが手に入るよ」
「……アクティブ・ウェポンって、作って良いんですか……?」
 飛鳥の意外な発言に、こよみが苦笑する。
「……飛鳥君、ルールはまだ読んでない?」
「す、少しだけしか……」
「ちゃんと読んでね。ルールにあるけど、ドライヴとアクティブ・ウェポンは自分なりに作る事ができるの」
「どうやって作るんですか……?」
「ショップの中に設置してあるコンピュータを使うんだよ。あとは、パソコンで作れるんですよね?」
「専用のソフトがあれば、パソコンでも作れるよ。作ってみるかい?」
「は、はい!」



 その日の夜、飛鳥はあまり慣れない手つきでパソコンを操作していた。
「……えっと、このディスクを入れて……」
 一枚のディスクを入れる。ゴウからもらったドライヴのパソコン専用ソフトだ。
 ゴウが言うには、ドライヴのメンテナンスは当然の事、簡易的なシミュレート。
 そして、ドライヴやアクティブ・ウェポンの作成が可能と言う便利なソフトである。
「CD一枚と専用の接続端子で10万円って高いよね……」
 パッケージに記載されている値段を見て思う。意外と、専用ソフトは高かった。
 パソコンに専用ソフトをインストールし、デスクトップに作られたアイコンをクリックする。
 ドライヴをパソコンと接続するように指示された。
「も、もう……?」
 パソコンとドライヴを専用の端子で接続する。自動的にソフトが動き出した。
 ドライヴのデータを読み取り、パソコンにグロウファルコンの全身図が表示される。
 さらに、飛鳥のコネクターとしてのデータも表示されており、非常に見やすかった。
「ランクはDで、ドライヴポイントは12000……? えっと、ドライヴポイントって言うのは……」
 ゴウに教えてもらっていた事を思い出す。
 ドライヴポイント。コネクト・バトルで獲得するもので、主にアクティブ・ウェポン開発で使用するもの。
 また、ショップ内では金銭として使えると言っていた。
 一通り思い出して、早速アクティブ・ウェポンを作ろうとマウスを操作する。
「どんな武器作ろうかな……? やっぱり、剣とかが良いよね」
『ソード・マスター』が得意とする武器は接近戦系の武器。これだけは外せない。
 剣、槍、爪など、考えれば考えるほど接近戦系の武器の種類が出てくる。
「色々あるけど、やっぱり剣が良いな……」
 どの武器を作ろうか迷うわけが無かった。なぜなら、自分が憧れた相手が得意とする武器が剣だからだ。
 飛鳥の瞳が輝く。それは、今まで知らなかったドライヴに出会った時と同じ輝き。
 作りたい。自分だけのドライヴを、自分だけのアクティブ・ウェポンを。



 輝凰は医学書を持ったまま溜め息をついた。電話の相手に対して。
 自分がやろうとしていた事を先にやられた事に対して。
「何でお前が色々と教えるんだよ、ゴウ? 俺が飛鳥に基本的な事を教えるつもりだったんだぜ」
『すまない。彼のデビュー戦を見た時に、かなり興味を持ってしまってね』
「興味ってお前な……。まさか、自分の後継者に仕立て上げようなんて思ってないだろうな?」
『それはないよ。僕には、もうすでに後継者がいるのだから』
「そうだよな」
 もし、ゴウが飛鳥を後継者として育てようとしていたなら、間違いなくバトルを叩きつけるだろう。
 それだけ、飛鳥が気になっていた。飛鳥の輝くほど澄んだ瞳が。
 今回ばかりはゴウにも譲る気はない。
「そう言えば、こよみから聞いた。飛鳥をスカウトしたらしいな? それも、主戦力として」
『うん。彼のバトルセンスの高さを見込んでね』
「そんなに凄かったのか? 俺が知る限りじゃ、飛鳥がバトルした相手の強さはAと言うよりCに近い」
『確かにね。けれど、Cランク程度の相手には勝てるとも取れる』
 弱いコネクターばかりとバトルしてAランクに成り上がったコネクターは、そこまで強くない。
 しかし、ゴウはそんな相手でも初心者では勝ち目が無いと続けて言った。
『今はまだ無理だろうけど、少しずつ実力をつければ、間違いなく半年でSRランクになれるはずだよ』
「半年でSR、か。確かにそうだろうな」
 どんなに優れた実力を持つコネクターでも、SRランクは少なくとも半年以上掛かる。
 輝凰が手に取っていた医学書を本棚へと戻す。
「少なくとも、半年は動けないな……」
 そして呟く。聞き取れなかったゴウが「ん?」と反応した。
『何か言ったかい?』
「いや、何も。ともかく、あとはあの二人だけだな」
『あと一人だ。白銀の薔薇は、すでに準備に入っている』
「そうか。色々とあったが、そう落ち着くか。問題は紅蓮の薔薇の方って事か」
 そう考えると、お互いに苦笑する二人だった。



「できた……これが、僕だけのアクティブ・ウェポン……!」
 一週間後。飛鳥はショップに設置されているコンピュータでアクティブ・ウェポンを完成させた。
 調整もどうにか完了。あとは、シミュレートで性能を確認するだけ。
 コンピュータの指示に従って、アクティブ・ウェポンをコネクト協会に申請する。
 少し時間が経ってから申請が完了し、コネクト協会から承諾された。
「良かった……ちゃんと出来て……」
 ルールを守ってちゃんと作ってはいるが、自分の好きなように作った為か、かなり自信がなかった。
 ドライヴポイントを消費して、アクティブ・ウェポンをドライヴへと転送する。
 ドライヴが「OK!」と表示し、ドライヴにアクティブ・ウェポンが表示された。
「あとは、装備すれば……」
「君が蓮杖飛鳥君、だね?」
 ふと、声を掛けられる。細メガネを掛けた男がいた。
 飛鳥が戸惑いながらも頷く。
「そうか。君がリーダーの言っていた……」
「あ、えっと……あの……」
「俺は佐々木晃鉄。『ランドライザー・コマンド』のサブリーダーをやっている者だ」
「『ランドライザー・コマンド』……それって、ゴウさんの……?」
「そう。リーダーの作ったチームだ」
 そう言って、晃鉄がドライヴを構える。
「君に、バトルを申し込む」
「え……!?」
「リーダーが君をチームに迎えたいと言っているが、どうしても納得がいかない。それが俺の本音だ。
 だからこそ、バトルで確かめさせてもらう。君が、リーダーの言うほどのコネクターかどうかを」
「…………」
 本気だ、と言わんばかりの晃鉄の表情が飛鳥を黙らせる。
 飛鳥は迷った。バトルをして良いのかどうか。
「えっと……その……」
「待つんだ、晃鉄」
 ゴウが割り込む。ゴウは、チームメンバーから晃鉄の事を聞いて駆けつけた。
「彼とバトルをしてどうするつもりだい?」
「確かめたいのです。リーダーが認める実力の持ち主かどうか」
「……やはり、彼を主戦力を迎えるのは反対なのかい?」
「当然です。それに、俺には彼が強くなれるとは思いません」
 言い切る。飛鳥はカチンと来た。
 他人が他人の事など分かるわけがない。それなのに、言い切るのはおかしいと思ったからだ。
 飛鳥がドライヴを強く握り締めながら、晃鉄に言う。
「そんなの分かるわけないと思います……! だって、僕はあの場所に……あの人と同じ場所に……!」
「君がどんな戦い方をするのかは知らないが、経験から言わせて貰う。君じゃ、俺を倒す事はできない」
「そんなのやってみないと分からないです……! 僕は、あなたには負けません」
 飛鳥が睨む。少し怯えが見られるものの、立ち向かう強さを秘めた目。
「……バトル、受けます。ハンデもいりません」
「な……!? 飛鳥君、それは流石に……」
「バトル成立だな。ルールはシングル。もちろん、手加減はしない」
「晃鉄……!」
 ゴウが驚きつつも、二人を止めようとする。しかし、二人は聞く耳など持つわけが無かった。

 ――――そのバトル、両者の合意と確認しましたっ!

 バトル・フィールドから声が聞こえ、中心からタキシードを纏った中年男性が現れる。
「ただ今より、このバトルは公式バトルと認められました。審判は私、リュウマチ小暮さんがやりますっ!」
 ルールはシングルバトル! ハンデは希望により無し! 両者、コネクトを!」
 そう言われ、二人がコクピットランサーへ乗り込む。
 ゴウが頭を抱える。もはや止める事など出来ない。
「全く……晃鉄も晃鉄だが……」
 まさか、飛鳥がバトルを受けるとは思わなかった。一番の予想外だ。
 そんなゴウの事など構わず、時は進む。
「……ドライヴ・コネクト!」
 飛鳥がドライヴを接続した。



次回予告

 眠る才能が開花する時、少年はさらなる強さに目覚める。
 そして出会った一人の天才コネクター。
 この出会いが、二人にとっての運命となる。

 次回、CONNECT04.『二人の天才』

 それは偶然か、それとも必然か――――



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