Drive-Connect!

 エピソードT ソード・マスターの軌跡

  CONNECT04.『二人の天才』



 バトル・フィールドに構築される二体のドライヴ。
 初期型のドライヴに二本の実体剣を装備させた飛鳥は、すぐにドライヴの状態を確認した。
「武器を作って装備させてみたけど、問題ないみたい……」
 逆に、ドライヴにとって良い感じの武器に思える。
 初めて作った自分だけのオリジナル・ウェポン。その出来や性能は分からないが、とても心強い感じだ。
 飛鳥のドライヴ――――グロウファルコンの目の前に構築されたドライヴを動かす晃鉄が訊く。
『ドライヴは初期型のままで良いのかな? 俺のスキルヴィングとは、性能が段違いだが?』
「大丈夫です……。僕には、この二本の剣があります……!」
 そう飛鳥が答えながら、二本の剣を見せる。
『……オリジナル・ウェポンと言う事か。しかし、それだけで俺を倒せるとは思わないで欲しい』
「勝ちます……僕は、あなたに勝ちます……!」
 二本の剣を大きく振り構える。そして、審判がバトル開始の合図を見せた。
 如意棒を構え、晃鉄のスキルヴィングがグロウファルコンを睨む。
『もう一度言っておく。手加減はしない』
「…………」
『ランドライザー・コマンドのサブリーダー、佐々木晃鉄。全身全霊を持って参る!』
 スキルヴィングが駆けた。



 開始されたバトル。それを見て、ゴウは深い溜め息をついた。
「……このバトルはする必要などないのに」
 しかし、始まってしまってはどうしようもない。『フォース・コネクター』でも、このバトルは止められない。
 そもそも、飛鳥が晃鉄に勝てる可能性はゼロだ。そう、晃鉄には勝てない。
 理由は一つ。飛鳥がまだ素人の領域だから。
「勝てたとしたら、それは間違いなく……奇跡だ」
 この時、ゴウはその奇跡が起こる事など思ってもいなかった。
 蓮杖飛鳥。その未知なる才能を秘めたコネクターは、ゴウの予測を容易く裏切った。



 一瞬でグロウファルコンに接近し、攻撃するスキルヴィング。
 しかし、それはグロウファルコンにダメージを与える事はなかった。
『何……!?』
 驚く。目の前には、剣から展開されたシールド。
「……お、驚いた……いきなり攻撃して来るんだもん……」
 運良く、作ったばかりのアクティブ・ウェポンが役に立った。
 シールドを展開する事で、防御を可能にした実体剣カタルシス。その防御力は予想以上に高い。
 相手が動揺している隙を狙って、飛鳥が攻撃を仕掛ける。
 もう一つの剣から、ビーム状の刀身が姿を見せた。
「たぁーっ!」
『――――!』
 晃鉄が素早く反応し、如意棒で受け止める。
『今度は実体剣にエネルギーを纏わせたのか……なるほど、攻撃と防御二つを得る為の武器か……』
 距離を取る。そして、晃鉄は自分の甘さに恥じた。
 手加減はしないと言っておきながらも、結局はDランクと思って手加減していた。
 だが、意外にも動きが良い。リーダーであるゴウが彼をチームに入れたいのも頷けた。
 素質が素人の領域ではないのだ。そう、ドライヴを動かす素質が彼にはある。
 このまま強くなっていけば、確実に『フォース・コネクター』になれるだろう。
『だが、素質だけでは通用しない!』
 スキルヴィングが如意棒を引く。グロウファルコンは剣を構えて突撃した。
 晃鉄がふっと笑みを浮かべる。それを待っていたかのように。
 如意棒にエネルギーを集中させる。
『牙突金剛砕!』
 繰り出される突き。飛鳥は目を見開いた。
 間違いなく避けれない。その時、再び目の前に見える”世界”が変わった。
 ハッキリと見える動き。無意識に反応した身体がグロウファルコンを動かし、スキルヴィングの攻撃を避ける。
 自分の誇る技を避けられて驚く晃鉄。しかし、これだけで終わらなかった。
 いつの間にか実体剣をゴッドランチャーへと持ち替えたグロウファルコンが、その砲身を密着させている。
 零距離。それは、一瞬の出来事だった。
『零……距離……!?』
「えぇぇぇぇぇぇいっ!」
 ゴッドランチャーが火を吹く。これが、バトル終了の合図となった。



 それから一週間後。一般の喫茶店にて、輝凰とゴウは飛鳥の話をしていた。
「デビューしてから、たった一週間で晃鉄を倒しただと?」
「ああ。成り行きでバトルする事になってね。それで、結果は彼の勝利だった」
「あの晃鉄が負けるなんてな……」
「僕も驚いた。まだ素人なんだから、晃鉄に勝つのは無理だと思っていたのも事実だ」
 晃鉄はSランクのコネクターだが、その実力は間違いなくSRランクでもトップレベルで通用する。
 そんな実力を持った相手に、まだドライヴを始めたばかりのコネクターが勝つ事など不可能だ。
「Dランク……それも一週間程度しかドライヴをやっていない人間がSR並みの人間に勝てるはずがない。
 しかし、彼は晃鉄に勝った。輝凰、これがどう言う事か、君なら分かるだろう?」
「……ああ」
「飛鳥君はSRでも通用する。彼は、まさしく天才コネクターだ」
 それも、今まで見た事がない分類の。ゴウの言葉に、輝凰は少しだけ笑みを浮かべた。
 自分の見つけたコネクターは、素人でありながらSRでも通用するバトルセンスを持っている。
 しかも、その状態でダイヤの原石なのだ。これに磨きが掛かれば、自分など簡単に超えてしまうだろう。
 注文していたコーヒーを飲み干して、輝凰が訊く。
「それで、飛鳥は何て答えたんだ?」
「何をだい?」
「スカウトの件だ。チームにスカウトしただろ、ゴウ。その答えは?」
 ゴウがああ、と口を開く。
「残念ながらまだだよ。やっぱり、いきなり過ぎたかな」
「当たり前だ。ま、俺は断ると思うけどな」
「理由は?」
「性格はともかく、飛鳥は俺に似ている。あいつは、他人が作ったチームに入るような奴じゃない」
 輝凰が言い切る。その時、喫茶店の入り口のドアが開く音がした。
 喫茶店に入る、やや茶色のかかったロングヘアの女性。ゴウが手を上げて彼女に存在を教える。
「ここだよ、優。遅かったね」
「ごめんごめん。色々とやっててね〜」
「郁美はどうした?」
「ちょっとした頼みを聞いてもらってるから、今日は来ない。それより見つけたわよ、私の後継者候補」
 女性――――優の言葉に、輝凰とゴウが反応する。
「見つけたなのかい?」
「見つけるの早くないか、優? まだ、あれから2ヶ月位しか経っていないだろう?」
「過去の事をいつまでも抱えてもねー。それに、今度の子は面白い子なのよ」
「面白い?」
 輝凰が首を傾げる。優が一枚の紙を渡した。
 優が見つけたと言うコネクターの戦績。それを見て輝凰が目を見開く。
「……本当なのか、これは?」
「協会のデータだから間違いない。結構面白い子でしょ?」
「どちらかと言うと変わってる奴、だな。これは無茶苦茶だろう」
「どんな子だい?」
「見れば分かる」
 そう言って、ゴウに紙を渡す。そして、やはりゴウも驚いた。
 勝敗は五分五分で、コネクターになってからの期間やランクだけを見れば普通だ。
 しかし、問題はその対戦記録である。対戦相手は全てSランクかSRランクのコネクターなのだ。
「これは……」
「無茶苦茶だろ? ランクアップの回数も多ければ、逆も多い。何がしたいのか、俺には分からん」
 強い相手にしか興味が無いのか、それとも自分が強いと思い込んでいるのか。
 優が選んだコネクターのランクは現在Bランク。しかし、少なくともSランクでも通用するだろう。
 優が鼻を高くする。
「あとは、本人を見つけて後継者にするだけ。そうなると、まだ見つけてないのはきーだけになるもんね」
「そう言えば、まだ言ってなかったな。俺も見つけているぞ」
 輝凰がそう答えると、優が「え?」と目を点にする。
「今はCランクだが、実力は間違いなくSRでも通用する奴だ」
「何それ、私が見つけたのと似てるじゃない」
「似てるようだが、全く違う。俺が見つけた奴は、かなり特殊だ」
 優に飛鳥の戦績を見せる。優の目が見開いた。
「たった2回バトルしてC!? それも、2戦目の相手はあの晃鉄!?」
「ゴウがその目で見ているから確かだ。全く、とんでもない奴を見つけてしまったと言うべきだろうな」
「まさか、こんな子がいたなんて……きー、その子ちょうだい」
「誰がやるか、誰が。あいつは、俺が『ソード・マスター』に導くんだからな」



 同時刻、飛鳥は一つのバトルを見ていた。
 銃を使った、遠くからの戦い方。自分とは全く違う戦い方。
 特に、青紫の装甲にやや大型のブーストを持つドライヴは、銃での戦い方に優れているかのように見える。
「あんな戦い方、僕にもできるのかな……」
「優さんならともかく、飛鳥君じゃ無理かもね」
 首筋に冷たいものを当てられる。当然のように、飛鳥はビクッと反応した。
 その驚き様を見つつ、彼女――――こよみは笑う。
「良い反応するね、飛鳥君。輝凰さんだったら、全然だよ?」
「い、いきなりそんな事されたら驚きますよ、こよみさん……」
「ふふっ、ごめんね。はい、これは差し入れ」
 そう言って、缶コーヒーを渡される。
「話を戻すけど、飛鳥君は『ソード・マスター』を目指しているんだから、あんな風に凄い射撃は無理だよ」
「そ、そうなんですか……?」
「うん。輝凰さんでも無理って言ってたし、あんな射撃ができるのは、優さんくらいだよ?」
「優さん?」
「あ、優さんは『マグナム・カイザー』をやってる人だよ。私の先輩でもあるんだ」
「じゃあ、今バトルしてるのは、その優さんって人が……?」
 飛鳥が訊く。こよみはバトルしている二体のドライヴを見て首を傾げた。
「あれは優さんじゃないよ? ドライヴだって違うし、それに今日は輝凰さん達で集まるって言ってたし……」
『マグナム・カイザー』並みの射撃を見せるドライヴ。それは『マグナム・カイザー』のドライヴではない。
 しかし、魅入られるバトルだった。射撃だけで相手を圧倒する姿は、まさに王者の姿。
 飛鳥の口から「凄い」と言葉が漏れる。
「輝凰さんの時もそうだったけど……やっぱり凄い……」
「そうだね。でも、私は飛鳥君も凄いと思うよ」
「え……?」
 こよみの言葉に、飛鳥が少しだけ目を見開く。
「聞いたよ。あの晃鉄さんに勝って、Cランクになったって。デビュー1週間で2連勝は凄い事だよ」
「そ、そんな事ないです……あれはたまたま……」
「凄いよ。だって、晃鉄さんはゴウさんの後継者なんだから」
「後継者?」
「うん。飛鳥君はそんな凄い人を倒したんだよ」
 すると、飛鳥が首を横に振る。
「勝ってないです……たまたま、前にやったやり方で倒せただけですし……。
 それに武器だってまだ未完成で、結局ゴウさんに教えてもらって、ようやく完成したし……」
「武器は関係ないよ。晃鉄さんに勝ったのは、飛鳥君の実力。もっと自信持って良いと思うよ」
「け、けど……」
『バトル終了! 勝者、荻原勇治(おぎはら ゆうじ)ッ!』
 その時、観ていたバトルの終了が告げられる。飛鳥はモニターに釘付けだった。
 最後まで射撃での戦闘を貫いたと思われるドライヴが表示されている。
 こよみが対戦していたコネクターの情報を見て驚いた。
「勝ったのはBランクの人で、相手はSRランク……!?」
「SRランクって、確か……」
 自分が憧れる人――――『ソード・マスター』と同じランク。
 そんな強いコネクターに勝った人間を、飛鳥は改めて凄いと思った。
「輝凰さんみたいに……強い人がたくさんいる……」
 自分が始めたドライヴには、強い人間が多い事を知る。そして、拳を強く握った。
 強い人間が多いと分かったのに、なぜかドキドキしている。なぜか胸が高鳴る。
 凄いコネクター達とバトルしたい。そんな飛鳥を見て、こよみが苦笑する。
(弱気になると思ったんだけど、逆みたいだね……)
 輝凰が彼をコネクターにしたのも頷ける。飛鳥はどこか輝凰に似ているのだ。
 今の姿を輝凰が見れば、間違いなく嬉しさを隠せないだろう。

「テメェ、もう一度言ってみろ!」
「何度も言ってやる。お前はザコだ。SRになれたのが不思議としか思えん」
「この……!」

 コクピットランサーが設置されている方から聞こえてきたやり取り。飛鳥がすぐに反応した。
 明らかに相手を馬鹿にしている態度を取る、背の低い少年。
 そして、その少年の言葉に怒り、今にも殴り掛かろうと思わんばかりの青年。
 いや、思いっきり殴り掛かった。飛鳥が目を見開く。
「――――危ない!」
 気づけば身体が動き、少年の前で拳を受け止めた。
 それを見てなのか、少年がわずかに反応する。
「いぃぃぃっ!?」
 拳を受け止めた飛鳥は、その痛みを堪えられずに声を上げた。青年が飛鳥を睨む。
「何だ、テメェは! こいつのダチか!?」
「い、いえ……そ、そうじゃないです……けど……」
「テメェのせいで、こいつを殴れなかっただろうが!」
 そう言って、飛鳥に対して拳を振り上げる。刹那、すぐに制せられた。
 青年が制した相手を睨む。が、その相手の眼光は青年を鋭く睨み返し、威圧していた。
「う……」
 青年が逃げる。「やれやれ」と眼鏡をかけている彼――――佐々木晃鉄は言った。
「ああ言う輩がSRランクだったとはな」
「あ、ありがとうございます……さ、佐々木さん……」
「晃鉄で構わない。君は、リーダーが認めたコネクターであり、俺に勝ったコネクターでもあるからな」
「あ、あれはたまたま……」
「たまたまであんな攻撃はそうできない。自分に自信を持っても良いと俺は思うが」
 こよみと同じ事を言われる。飛鳥はまだ実感がなかった。
 自分が晃鉄と言う強敵を倒した。それは、凄い事らしい。
(自信を持てって言われても、偶然勝っただけだし……)
「おい」
 ふと、声を掛けられる。先程の少年が飛鳥にドライヴを向けた。
 鋭い瞳で見られ、飛鳥がたじろう。
「な、何……?」
「俺とバトルしろ」
「え……? バトルって、僕はそんなに強く……」
「お前は強い。さっきの動きを見て良く分かった」
「そ、そんな事……」
 否定する。いきなりの申し込みに飛鳥は戸惑った。
 相手の強さは見ていて分かっている。あの射撃は凄かった。
 そんな相手に勝てるわけが無い。
「バトルはシングル。ハンデは無しで良いな」
「あ、あの、僕はまだ……」
「審判、バトル開始の合図をしろ」

 ――――バトルの合図ですね!? 承知しましたっ!

 バトル・フィールドから声が聞こえ、中心からタキシードを纏った眼帯の男性が現れる。
「さて皆さん! 本日、新たなコネクト・バトルの時間がやって参りました!
 審判はこの私、ドッグ飯塚が務めさせて頂きます!」
「とっととコネクトしろ」
「で、でも……」
「もう遅い。審判が公式バトルとして認定した以上、バトルしないと君は不戦勝になる」
 晃鉄が言う。それに続いて、いつの間にか近づいて来ていたこよみが飛鳥を励ます。
「大丈夫だよ。飛鳥君なら勝てるから」
「そう言われても……相手はさっきの凄かった人ですし……」
「弱気になっちゃダメだよ。飛鳥君、輝凰さん同じ場所に立つんでしょ?」
「それは……」
 輝凰と同じ場所に立つ。そして、バトルする。
 それは自分にとっての目標であり、今進みつつある道。
 ドライヴを握り締めて飛鳥が頷く。こよみが微笑んで頷いた。
 コクピットランサーへと向かい、ドライヴをセットする。
「……ドライヴ・コネクト!」



 ドライヴの情報が読み込まれ、バトル・フィールドにグロウファルコンが構築される。
 目の前には、相手のドライヴがすでに構築されていた。
『ふん、ようやくその気になったようだな』
 相手が銃を構える。飛鳥も覚悟を決めて剣を構えた。
 勝てるかどうか分からない。けれど、輝凰と同じ場所に立つ為には勝つしかない。
『お前、名前は何だ?』
「……飛鳥。蓮杖飛鳥」
『変わった名前だな。俺は荻原勇治だ。このバトル、勝たせてもらう』
「…………」
 二人の様子を見て、ドッグ飯塚が手を振り上げる。
「それでは、コネクト・バトル……レディィィッ、ゴォォォッ!」

 バトル開始が告げられる。

 これが二人にとって、互いに大きな影響を与えるバトルとなる事を、二人はまだ知るわけがなかった。



次回予告

 対となる射撃に優れ、攻撃する隙を見せない勇治。
 必死に対抗する為の術を考える飛鳥。
 このバトルで、飛鳥は秘めていた”何か”を目覚めさせる!

 次回、CONNECT05.『鷹が大空へと舞う時』

 剣と銃の激突が、少年の中で眠るものを呼び起こす――――



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