開始されたバトル。敵は、荻原勇治と名乗った、射撃に優れたAランクのコネクター。
その勇治が、真っ先に攻撃を開始する。
『くらえ』
ビームを撃つ。飛鳥はすぐに反応して避けた。
ギリギリに近い回避。負けじと飛鳥も応戦する。
「……!」
グロウファルコンがライフルを構えて撃つ。しかし、狙いを外した。
「外れた……やっぱり、射撃は難しい……」
『下手くそ』
勇治が反撃する。それを再び飛鳥は避けた。
一度ならず二度も攻撃を避けられ、勇治が鋭く睨みつける。
『俺の攻撃を避けるか……面白い』
同時刻。喫茶店にて色々と雑談する輝凰、ゴウ、優。
その時、優のドライヴに着信が入った。
「はいはいっと。もしもし?」
『私よ。今、輝凰達といるのかしら?』
「もちろん。で、どうしたの、郁美?」
優の問いに、電話の相手――――郁美が答える。
『見つけたわよ、あなたが探してた子を』
「お、ようやく? 場所は?」
『メールしておいたから、そっちを見て。私は待っているから』
と、すぐに切れる。優は嬉しそうな顔をしていた。
ようやく、例の子を捕まえる事ができる。
「郁美か?」
「うん。候補の子を見つけたって。と言う事で行くわよ、きー、ゴウ」
「……俺達も行けと言うのか?」
「当然。見ておいて損はないでしょ?」
そう言われて、連行される輝凰とゴウである。
勇治の攻撃が続く。飛鳥はひたすら回避していた。
反撃しようにもすぐに攻撃され、その機会を逃してしまう。
それ以前に、接近する事さえできない。
「剣で戦うには、近づかないといけない……けど、ゴッドランチャーじゃ……」
接近できないなら、遠くから強力な一撃を放てば良い。それができるのがゴッドランチャーだ。
しかし、命中率が悪い。勇治はすぐに避けるだろう。
考える。何も思いつかない。それは当然だった。
まだドライヴを始めて2週間程度の自分が、SRランクに匹敵する強さを持った相手に勝てるとは思えない。
「カタルシスで防御して、それで……」
『マッハショット』
勇治が攻撃する。飛鳥は直感的に回避した。
「こ、攻撃してきた……こっちが考え中に……」
『隙を見せるお前が悪い。第一、俺の攻撃を避けるな』
「避けるなって、勝手だよ……」
やや愚痴をこぼしながら、反撃の方法を考える。銃系の武器を使った反撃はすぐに心の中で却下した。
なにより、銃系の武器に関しては相手の方が上だ。カウンターの可能性もある。
考える。別の方法を。その時、勇治が攻撃する。
「――――! カタルシス……いや、間に合わない……!?」
命中。グロウファルコンの左肩を撃ち抜かれた。
その衝撃で、左手に持っていたカタルシスを落とす。
『フレアマグナム』
続けて放たれた複数の弾丸が、グロウファルコンの左腕の関節に撃ち込まれる。左腕が破壊された。
「ぐあぁぁぁっ!?」
『隙だらけだ。何をやっている』
勇治が銃を構えたまま、グロウファルコンに近付く。飛鳥は相当焦っていた。
このままでは負ける。何も出来ずに終わってしまう。
「どうすれば……どうすれば……!」
考える。その時、飛鳥は感じた。
風が吹き出した。グロウファルコンを倒さんと言わんばかりの強い風が。
「風……そうだ、できるなら……!」
何かを思いつく。そして、剣を構えた。それを見た勇治が攻撃する。
『フレアマグナム』
放たれる弾丸。飛鳥は剣を振るった。
剣に風を切る感覚がある。それを一気に振り抜く。
「えぇぇぇいっ!」
風の刃が放たれる。それを見た勇治が目を見開いた。弾丸が風の刃によって弾かれる。
『何……!?』
「……出来た……。剣で遠くの敵に攻撃できる技……」
まだ信じられないが、これならどうにかなるかもしれない。そう、飛鳥は思った。
しかし、勇治は黙っていなかった。背中から多数のミサイルが発射される。
「……!?」
『面白い技を持っているな……。だが、それ位で俺は倒せん。必ず俺が勝つ』
そして銃を撃つ。
飛鳥と勇治のバトルを見ていたこよみは、飛鳥の放った技を見て驚いた。
「バトルの時に必殺技思いつくなんて……」
まだ始めたばかりのコネクターで、自分とは全く対照的な相手と初めて戦っている最中で。
驚く事ばかりだ。飛鳥は、とてつもない早さでドライヴの実力を上げている。
「飛鳥君って、天才なんじゃ……」
「いや、どう見ても天才だ。先輩の言っていた通り、彼のセンスは凄まじい」
隣で見ていた晃鉄が言う。
「しかし、ここまでか。流石に、初めて異なる戦い方をする相手とは、流石にまだ早過ぎるようだな」
「そう思うだろうが、何が起きるか分からないのが、ドライヴだ」
「輝凰さん!」
いつの間にか現れていた輝凰に、晃鉄が驚く。その背後にはゴウと優の姿もあった。
バトルを見ながら、優が訊く。
「あのバトルしてるCランクの子が例の?」
「ああ。あれが、飛鳥だ」
「へぇ……偶然ってあるのね」
優の言葉に、輝凰が首を傾げる。
「どう言う意味だ?」
「バトルの相手、私が探してた子だわ。荻原勇治、SかSRランクとしかバトルしない変な子」
勇治の攻撃に追い込まれる。飛鳥は辛うじて攻撃を避けていた。
風の刃を使いたいが、その隙すら与えてくれない。
「はぁ……はぁ……」
『左腕を破壊してから、俺の攻撃を全部避けているが、ここまでだ』
勇治が言う。そう、飛鳥のグロウファルコンは、気づけばバトル・フィールドの端に立たされていた。
これでは、左右のどちらかにしか避けられない。
「どうしよう……どうしよう……!?」
『終わりだ』
弾丸が放たれる。負ける、そう飛鳥は思った。
「負ける……そんな……? ……たくない……負けたくない……!」
負けたくない。こんな簡単に負けたくは無い。
初めて戦う異なった戦い方をする相手。もっとバトルがしたい。
「負けて……負けて……負けてたまるかぁぁぁっ!」
立ち向かう。飛鳥の瞳が鋭くなった。
勇治の攻撃を避け、グロウファルコンが前に出る。
「うぉぉぉぉぉぉっ!」
剣を振り、風の刃を放つ。勇治はすぐに撃ち落した。
「まだまだぁっ!」
さらに剣を振るい、風の刃を再び放つ。勇治が舌打ちして撃ち落す。
飛鳥の反撃。それを見たこよみは、さらに驚いた。
「……飛鳥君、ですよね?」
「ああ。追い込まれたお陰で、何か吹っ切れた感じだな」
輝凰が話す。そして、飛鳥の放つ技を見ながら、「大した奴だ」と呟いた。
バトルを見ているところで、郁美が合流する。
「どう、優の探していた子は?」
「うん、データ通り。それに、面白い子がもう一人いるみたいだし」
「今バトルしている子ね? 名前は……蓮杖飛鳥?」
「きーが見つけた後継者だって」
「輝凰の? 偶然ってあるものね」
剣の王、銃の王がそれぞれ見つけた後継者。それが今、偶然にもバトルしている。
輝凰が郁美に話し掛ける。
「郁美、飛鳥――――風の刃を放ったドライヴの、風の流れを見てくれるか?」
「すでに見ているわ。彼、本当にCランク? あの技、結構高度な技よ」
「そうか」
風の流れ等、様々な条件を無視した状態で放たれた技。相手には予測し難いに技だ。
驚いたのは、戦い方等ほとんど知らないはずなのに、その技を閃いた飛鳥のセンス。
「このバトル、次の一撃で決まるな」
「どうして、そんな事が言えるんだい、輝凰?」
「理由は簡単だ。どっちもそろそろ資質の方が限界のはずだ」
「やっぱり持ってるかぁ。きーの方は『鷹の瞳』で、こっちは『狙撃の瞳』で」
「ああ。だが、どっちも自覚はないだろう。だからこそ、後継者として選ぶのは面白いんだがな」
飛鳥と勇治。二人はお互いに焦っていた。
飛鳥は回避に集中し、風の刃で対抗。勇治は命中に集中し、持てる武器全てで対抗。
どちらも譲らない戦い。二人同時に片目を瞑る。まるで、目薬でも注されたかのように。
「……瞳が……!?」
『くっ……狙いが定まり難い……』
そして、お互いに分かった。これ以上のバトルは、逆に自滅するだけだと。
決めるのは次の一撃。これで決着を着けなければ、敗北してしまう。
「……一か八か……!」
グロウファルコンが構える。その姿は、まるでフェンシングのようだった。
それを見た勇治も構える。瞬間、飛鳥が動いた。
接近し、攻撃を狙う飛鳥。勇治が狙いを定め、その銃を放った。
ほとんど無いにも等しい距離。銃弾は回避できない――――そう、誰もが思った。
「うぉぉぉっ!」
が、その予想は裏切られた。否、飛鳥には見えていた。近い距離からの射撃が。
回避される銃弾。勇治が目を見開く。そして、グロウファルコンの剣が見事、勇治のドライヴの胸部を貫いた。
バトル終了。コクピットランサーから降りた飛鳥は、肩で呼吸をしていた。
こよみがスポーツドリンクを差し出す。そして、飛鳥を褒めた。
「凄いね、飛鳥君。おめでとう、Bランク!」
「あ、ありがとうございます……」
差し出されたドリンクを受け取ろうとする。が、すぐに落とした。
手が震えている。その様子を見ていた輝凰が近づいてきた。
「バトルで疲れたみたいだな」
「き、輝凰さん……」
「楽しかったか?」
「はい……凄く楽しかった……」
突然のバトルだったが、それでも楽しかった。
自分とは全く違った戦い方をする相手。今まで見た事のない戦い方の相手。
まだ、胸の鼓動が収まらない。熱い。
「僕……輝凰さん、僕……」
「なるほど、これがきーの選んだ子かぁ」
「ふぇ!?」
と、後ろから両頬を引っ張られる。気づけば、一人の女性が飛鳥の頬を引っ張っていた。
突然の出来事でパニックになる飛鳥。溜め息をつきながら、輝凰が女性に言う。
「……優、いきなり頬を引っ張るな」
「いやー、気になって気になって」
「……優って……こよみさんが言ってた『マグナム・カイザー』……!?」
「あ、覚えてたんだ。うん、今飛鳥君のほっぺを引っ張ってるのが、優さんだよ」
「そうそう。逢坂優、よろしくね〜。で、名前は?」
「れ、蓮杖……飛鳥です……」
名前を聞いて、優がうんうんと頷く。すると、今度は別の女性がバトルした勇治を連れてきた。
勇治を見て、優が飛鳥を解放する。そして、今度は勇治に絡む。
「ふーん……君があの射撃のね。名前は?」
「…………」
「名前は?」
「…………」
「な・ま・え・は?」
「……荻原勇治」
優の威圧感が凄かったのか、勇治が名乗る。名前を聞いた優がニッコリと笑みを浮かべた。
「勇治ね。早速だけど、『マグナム・カイザー』になる気はない?」
「ない」
「即答〜。ますます気に入った」
何をどう解釈すれば気に入るのか、周囲にいる人間には理解できない。
優がドライヴを構え、勇治に向ける。
「銃で強くなりたいんでしょ? だったら、私の後継者になりなさい。『マグナム・カイザー』として、ちゃんと導いてあげる」
「直球だな」
「まぁ、優はいつもの事だからね。優の方は優に任せて、こっちはこっちの用件を済ませようか」
ゴウの言葉に輝凰が頷く。そして、飛鳥に話し掛けた。
「飛鳥、最強のコネクターと最強のチーム、どっちが良い?」
「え、さ、最強の……?」
「どっちもトーナメントで優勝しないと貰えない名前だよ。輝凰さんが最強のコネクターで、ゴウさんが最強のチーム」
こよみがドライヴの規定を見せる。ゴウが話を進めた。
「飛鳥君の好きに選んで良いよ。どっちでも、誰も責めたりはしないから」
「えっと……」
「深く考えなくて良い。それとも、まだ決められないか?」
「あ、その……はい」
飛鳥が頷く。輝凰とゴウはしょうがない、と言わんばかりに溜め息をつくのだった。
次回予告
出会った剣と銃。勇治とのバトルが忘れられない飛鳥。
そして、それは勇治も同じだった。
異なるようで同じ二つの力が、飛鳥と勇治を導く。
次回、CONNECT06.『ソード&マグナム』
その名は、後の最強の名。後の二人の絆となる――――
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