Drive-Connect!

 エピソードT ソード・マスターの軌跡

  CONNECT05.『鷹が大空へと舞う時』



 開始されたバトル。敵は、荻原勇治と名乗った、射撃に優れたAランクのコネクター。
 その勇治が、真っ先に攻撃を開始する。
『くらえ』
 ビームを撃つ。飛鳥はすぐに反応して避けた。
 ギリギリに近い回避。負けじと飛鳥も応戦する。
「……!」
 グロウファルコンがライフルを構えて撃つ。しかし、狙いを外した。
「外れた……やっぱり、射撃は難しい……」
『下手くそ』
 勇治が反撃する。それを再び飛鳥は避けた。
 一度ならず二度も攻撃を避けられ、勇治が鋭く睨みつける。
『俺の攻撃を避けるか……面白い』



 同時刻。喫茶店にて色々と雑談する輝凰、ゴウ、優。
 その時、優のドライヴに着信が入った。
「はいはいっと。もしもし?」
『私よ。今、輝凰達といるのかしら?』
「もちろん。で、どうしたの、郁美?」
 優の問いに、電話の相手――――郁美が答える。
『見つけたわよ、あなたが探してた子を』
「お、ようやく? 場所は?」
『メールしておいたから、そっちを見て。私は待っているから』
 と、すぐに切れる。優は嬉しそうな顔をしていた。
 ようやく、例の子を捕まえる事ができる。
「郁美か?」
「うん。候補の子を見つけたって。と言う事で行くわよ、きー、ゴウ」
「……俺達も行けと言うのか?」
「当然。見ておいて損はないでしょ?」
 そう言われて、連行される輝凰とゴウである。



 勇治の攻撃が続く。飛鳥はひたすら回避していた。
 反撃しようにもすぐに攻撃され、その機会を逃してしまう。
 それ以前に、接近する事さえできない。
「剣で戦うには、近づかないといけない……けど、ゴッドランチャーじゃ……」
 接近できないなら、遠くから強力な一撃を放てば良い。それができるのがゴッドランチャーだ。
 しかし、命中率が悪い。勇治はすぐに避けるだろう。
 考える。何も思いつかない。それは当然だった。
 まだドライヴを始めて2週間程度の自分が、SRランクに匹敵する強さを持った相手に勝てるとは思えない。
「カタルシスで防御して、それで……」
『マッハショット』
 勇治が攻撃する。飛鳥は直感的に回避した。
「こ、攻撃してきた……こっちが考え中に……」
『隙を見せるお前が悪い。第一、俺の攻撃を避けるな』
「避けるなって、勝手だよ……」
 やや愚痴をこぼしながら、反撃の方法を考える。銃系の武器を使った反撃はすぐに心の中で却下した。
 なにより、銃系の武器に関しては相手の方が上だ。カウンターの可能性もある。
 考える。別の方法を。その時、勇治が攻撃する。
「――――! カタルシス……いや、間に合わない……!?」
 命中。グロウファルコンの左肩を撃ち抜かれた。
 その衝撃で、左手に持っていたカタルシスを落とす。
『フレアマグナム』
 続けて放たれた複数の弾丸が、グロウファルコンの左腕の関節に撃ち込まれる。左腕が破壊された。
「ぐあぁぁぁっ!?」
『隙だらけだ。何をやっている』
 勇治が銃を構えたまま、グロウファルコンに近付く。飛鳥は相当焦っていた。
 このままでは負ける。何も出来ずに終わってしまう。
「どうすれば……どうすれば……!」
 考える。その時、飛鳥は感じた。
 風が吹き出した。グロウファルコンを倒さんと言わんばかりの強い風が。
「風……そうだ、できるなら……!」
 何かを思いつく。そして、剣を構えた。それを見た勇治が攻撃する。
『フレアマグナム』
 放たれる弾丸。飛鳥は剣を振るった。
 剣に風を切る感覚がある。それを一気に振り抜く。
「えぇぇぇいっ!」
 風の刃が放たれる。それを見た勇治が目を見開いた。弾丸が風の刃によって弾かれる。
『何……!?』
「……出来た……。剣で遠くの敵に攻撃できる技……」
 まだ信じられないが、これならどうにかなるかもしれない。そう、飛鳥は思った。
 しかし、勇治は黙っていなかった。背中から多数のミサイルが発射される。
「……!?」
『面白い技を持っているな……。だが、それ位で俺は倒せん。必ず俺が勝つ』
 そして銃を撃つ。



 飛鳥と勇治のバトルを見ていたこよみは、飛鳥の放った技を見て驚いた。
「バトルの時に必殺技思いつくなんて……」
 まだ始めたばかりのコネクターで、自分とは全く対照的な相手と初めて戦っている最中で。
 驚く事ばかりだ。飛鳥は、とてつもない早さでドライヴの実力を上げている。
「飛鳥君って、天才なんじゃ……」
「いや、どう見ても天才だ。先輩の言っていた通り、彼のセンスは凄まじい」
 隣で見ていた晃鉄が言う。
「しかし、ここまでか。流石に、初めて異なる戦い方をする相手とは、流石にまだ早過ぎるようだな」
「そう思うだろうが、何が起きるか分からないのが、ドライヴだ」
「輝凰さん!」
 いつの間にか現れていた輝凰に、晃鉄が驚く。その背後にはゴウと優の姿もあった。
 バトルを見ながら、優が訊く。
「あのバトルしてるCランクの子が例の?」
「ああ。あれが、飛鳥だ」
「へぇ……偶然ってあるのね」
 優の言葉に、輝凰が首を傾げる。
「どう言う意味だ?」
「バトルの相手、私が探してた子だわ。荻原勇治、SかSRランクとしかバトルしない変な子」



 勇治の攻撃に追い込まれる。飛鳥は辛うじて攻撃を避けていた。
 風の刃を使いたいが、その隙すら与えてくれない。
「はぁ……はぁ……」
『左腕を破壊してから、俺の攻撃を全部避けているが、ここまでだ』
 勇治が言う。そう、飛鳥のグロウファルコンは、気づけばバトル・フィールドの端に立たされていた。
 これでは、左右のどちらかにしか避けられない。
「どうしよう……どうしよう……!?」
『終わりだ』
 弾丸が放たれる。負ける、そう飛鳥は思った。
「負ける……そんな……? ……たくない……負けたくない……!」
 負けたくない。こんな簡単に負けたくは無い。
 初めて戦う異なった戦い方をする相手。もっとバトルがしたい。
「負けて……負けて……負けてたまるかぁぁぁっ!」
 立ち向かう。飛鳥の瞳が鋭くなった。
 勇治の攻撃を避け、グロウファルコンが前に出る。
「うぉぉぉぉぉぉっ!」
 剣を振り、風の刃を放つ。勇治はすぐに撃ち落した。
「まだまだぁっ!」
 さらに剣を振るい、風の刃を再び放つ。勇治が舌打ちして撃ち落す。



 飛鳥の反撃。それを見たこよみは、さらに驚いた。
「……飛鳥君、ですよね?」
「ああ。追い込まれたお陰で、何か吹っ切れた感じだな」
 輝凰が話す。そして、飛鳥の放つ技を見ながら、「大した奴だ」と呟いた。
 バトルを見ているところで、郁美が合流する。
「どう、優の探していた子は?」
「うん、データ通り。それに、面白い子がもう一人いるみたいだし」
「今バトルしている子ね? 名前は……蓮杖飛鳥?」
「きーが見つけた後継者だって」
「輝凰の? 偶然ってあるものね」
 剣の王、銃の王がそれぞれ見つけた後継者。それが今、偶然にもバトルしている。
 輝凰が郁美に話し掛ける。
「郁美、飛鳥――――風の刃を放ったドライヴの、風の流れを見てくれるか?」
「すでに見ているわ。彼、本当にCランク? あの技、結構高度な技よ」
「そうか」
 風の流れ等、様々な条件を無視した状態で放たれた技。相手には予測し難いに技だ。
 驚いたのは、戦い方等ほとんど知らないはずなのに、その技を閃いた飛鳥のセンス。
「このバトル、次の一撃で決まるな」
「どうして、そんな事が言えるんだい、輝凰?」
「理由は簡単だ。どっちもそろそろ資質の方が限界のはずだ」
「やっぱり持ってるかぁ。きーの方は『鷹の瞳』で、こっちは『狙撃の瞳』で」
「ああ。だが、どっちも自覚はないだろう。だからこそ、後継者として選ぶのは面白いんだがな」



 飛鳥と勇治。二人はお互いに焦っていた。
 飛鳥は回避に集中し、風の刃で対抗。勇治は命中に集中し、持てる武器全てで対抗。
 どちらも譲らない戦い。二人同時に片目を瞑る。まるで、目薬でも注されたかのように。
「……瞳が……!?」
『くっ……狙いが定まり難い……』
 そして、お互いに分かった。これ以上のバトルは、逆に自滅するだけだと。
 決めるのは次の一撃。これで決着を着けなければ、敗北してしまう。
「……一か八か……!」
 グロウファルコンが構える。その姿は、まるでフェンシングのようだった。
 それを見た勇治も構える。瞬間、飛鳥が動いた。
 接近し、攻撃を狙う飛鳥。勇治が狙いを定め、その銃を放った。
 ほとんど無いにも等しい距離。銃弾は回避できない――――そう、誰もが思った。
「うぉぉぉっ!」
 が、その予想は裏切られた。否、飛鳥には見えていた。近い距離からの射撃が。
 回避される銃弾。勇治が目を見開く。そして、グロウファルコンの剣が見事、勇治のドライヴの胸部を貫いた。



 バトル終了。コクピットランサーから降りた飛鳥は、肩で呼吸をしていた。
 こよみがスポーツドリンクを差し出す。そして、飛鳥を褒めた。
「凄いね、飛鳥君。おめでとう、Bランク!」
「あ、ありがとうございます……」
 差し出されたドリンクを受け取ろうとする。が、すぐに落とした。
 手が震えている。その様子を見ていた輝凰が近づいてきた。
「バトルで疲れたみたいだな」
「き、輝凰さん……」
「楽しかったか?」
「はい……凄く楽しかった……」
 突然のバトルだったが、それでも楽しかった。
 自分とは全く違った戦い方をする相手。今まで見た事のない戦い方の相手。
 まだ、胸の鼓動が収まらない。熱い。
「僕……輝凰さん、僕……」
「なるほど、これがきーの選んだ子かぁ」
「ふぇ!?」
 と、後ろから両頬を引っ張られる。気づけば、一人の女性が飛鳥の頬を引っ張っていた。
 突然の出来事でパニックになる飛鳥。溜め息をつきながら、輝凰が女性に言う。
「……優、いきなり頬を引っ張るな」
「いやー、気になって気になって」
「……優って……こよみさんが言ってた『マグナム・カイザー』……!?」
「あ、覚えてたんだ。うん、今飛鳥君のほっぺを引っ張ってるのが、優さんだよ」
「そうそう。逢坂優、よろしくね〜。で、名前は?」
「れ、蓮杖……飛鳥です……」
 名前を聞いて、優がうんうんと頷く。すると、今度は別の女性がバトルした勇治を連れてきた。
 勇治を見て、優が飛鳥を解放する。そして、今度は勇治に絡む。
「ふーん……君があの射撃のね。名前は?」
「…………」
「名前は?」
「…………」
「な・ま・え・は?」
「……荻原勇治」
 優の威圧感が凄かったのか、勇治が名乗る。名前を聞いた優がニッコリと笑みを浮かべた。
「勇治ね。早速だけど、『マグナム・カイザー』になる気はない?」
「ない」
「即答〜。ますます気に入った」
 何をどう解釈すれば気に入るのか、周囲にいる人間には理解できない。
 優がドライヴを構え、勇治に向ける。
「銃で強くなりたいんでしょ? だったら、私の後継者になりなさい。『マグナム・カイザー』として、ちゃんと導いてあげる」
「直球だな」
「まぁ、優はいつもの事だからね。優の方は優に任せて、こっちはこっちの用件を済ませようか」
 ゴウの言葉に輝凰が頷く。そして、飛鳥に話し掛けた。
「飛鳥、最強のコネクター最強のチーム、どっちが良い?」
「え、さ、最強の……?」
「どっちもトーナメントで優勝しないと貰えない名前だよ。輝凰さんが最強のコネクターで、ゴウさんが最強のチーム」
 こよみがドライヴの規定を見せる。ゴウが話を進めた。
「飛鳥君の好きに選んで良いよ。どっちでも、誰も責めたりはしないから」
「えっと……」
「深く考えなくて良い。それとも、まだ決められないか?」
「あ、その……はい」
 飛鳥が頷く。輝凰とゴウはしょうがない、と言わんばかりに溜め息をつくのだった。



次回予告

 出会った剣と銃。勇治とのバトルが忘れられない飛鳥。
 そして、それは勇治も同じだった。
 異なるようで同じ二つの力が、飛鳥と勇治を導く。

 次回、CONNECT06.『ソード&マグナム』

 その名は、後の最強の名。後の二人の絆となる――――



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