飛鳥は走った。とにかく、ひたすらに。 そして到着した。コネクト協会に。 「村雲さ……『マスター・コネクティブ』!」 協会の内部――――『マスター・コネクティブ』のいる部屋に入る。そこに勇治、マリア、晃鉄もいた。 「勇治達も来ていたか……見たな、あれ?」 「ああ。何だ、あの男は?」 「ドクター・ググロって名乗ってたわね」 「あの謎のドライヴ達は、アンブロッドと呼んでいたな」 四人がドクター・ググロと名乗った男について話を始める。その時、全員のドライヴが強い反応を見せた。 否、『ドライヴ=レガリア』だ。今まで見た事のないほど、強い反応を示している。 「これは……!?」 「やはり、レガリアに影響は出ていないようだな。レガリアを持つ君達のドライヴも」 『マスター・コネクティブ』が口を開く。それを聞いた飛鳥がすぐに彼の方を見た。 「……どう言う意味ですか?」 「…………」 コンピュータを操作し、画面に表示する。 「……『ドライヴ・マスター』は、コンピュータ・ウィルスに寄生された」 「コンピュータ・ウィルス……!? そうか、だから……」 だから、ドライヴの通話機能が使えなくなった。いや、ドクター・ググロの言葉の意味が分かった。 ドクター・ググロが言っていた支配。それが、コンピュータ・ウィルスなのだろう。 『ドライヴ・マスター』に寄生する事で、全てのドライヴを使用不可能にしたのだ。 「……『マスター・コネクティブ』、ドクター・ググロは一体何者なんですか……!?」 「ドクター・ググロ……彼は――――」 『フフフッ……どうだい、村雲君』 突然、画面が切り替わる。白衣を纏い、眼鏡を掛けた長髪の男――――ドクター・ググロが姿を見せた。 『流石の君も驚いただろう? ドライヴ・マスターが完全に機能しなくなった事については』 「…………」 『ドライヴ・マスターには、私の最高傑作であるアルティメット・ギャリオが寄生した。 もちろん、アルティメットシステム搭載だから、どんな事も通用しない』 「ググロ、何を企んでいる?」 『企んでいる? フフフフフフッ……君は分かっているはずだ。私は、プロジェクト・アルティメットを実行しただけだよ』 ググロの言葉に、『マスター・コネクティブ』が目を大きく見開く。 『もっと驚いてくれたまえ。この計画は、君達によって破棄された計画なのだから』 「……ググロ、お前は……!」 『もうすぐ、プロジェクト・アルティメットは完了する。その時、私は世界の神となる。フフフフフフッ……』 画面が消える。マリアが首を傾げた。 「……何? プロジェクト・アルティメットって?」 「…………」 「…………」 「ん? 『マスター・コネクティブ』が黙り込むのは分かるけど、何で飛鳥まで?」 マリアが飛鳥の頬を指で突っつく。飛鳥は拳を強く握った。 ドクター・ググロがやろうとしている事。それがもしも”あれ”なのだとしたら。 そう思った飛鳥が『マスター・コネクティブ』に訊く。 「……『マスター・コネクティブ』、プロジェクト・アルティメットは……あの事件の事ですか……?」 「……!」 飛鳥の言葉に、『マスター・コネクティブ』の眉がピクリと動く。 その様子を見ていた勇治、マリア、晃鉄には話が全く分からなかった。 「あの事件? 飛鳥、何言ってるわけ?」 「…………」 「飛鳥? おーい?」 「私から話そう」 『マスター・コネクティブ』が口を開く。 「……今から17年くらい前の話だ。ドライヴが開発され、『ドライヴ=レガリア』が誕生。 そして、初代『フォース・コネクター』が決まり、ドライヴの発展は順調だった」 17年前、ある推測が行われた。 もし、意思があると言われる『ドライヴ=レガリア』が悪者の手に渡った場合、何が起きるか。 その推測で出た答えは、『ドライヴ・マスター』の破壊が挙げられた。 そこで、一つのプロジェクトが作られた。それが、プロジェクト・アルティメットである。 『ドライヴ=レガリア』に対抗できるのは、同じ『ドライヴ=レガリア』のみ。 しかし、全ての『ドライヴ=レガリア』が悪者の手に渡った場合、対抗できる術は存在しない。 その為、コネクト協会は『ドライヴ=レガリア』に対抗できるドライヴの開発を行った。 「『ドライヴ=レガリア』に対抗できるドライヴの開発は難航した。元々、無理があった計画でもあった。 しかし、17年前、試作段階だったそのドライヴのテスト起動が行われてしまった」 「行われてしまった?」 晃鉄の言葉に、『マスター・コネクティブ』が頷く。 「初代『フォース・コネクター』は、そのドライヴの起動に反対していた。動かすには、まだ開発途中だからと。 だが、彼らの言葉を無視し、ドライヴは投入されてしまった」 投入されたドライヴは制御できず、暴走した。 暴走したドライヴはバトル・フィールドを破壊し、下手をすれば『ドライヴ=マスター』を破壊するほどだった。 それを止める為、初代『フォース・コネクター』は暴走したドライヴの破壊を行った。 「……暴走したドライヴは、あまりにも強かった。『ドライヴ=レガリア』でも通用しない程に」 「レガリアでも倒せないドライヴか……」 「まるで、『ダーク・コネクター』総帥の作ったドライヴね……」 「それで、そのドライヴは……?」 「……初代の『ソード・マスター』……俺の母さんが破壊した」 飛鳥が口を開く。飛鳥の言葉に勇治、マリア、晃鉄が驚く。 「え、何? 飛鳥のお母さんって初代『ソード・マスター』だったの?」 「……ああ。その時の戦いで無茶をして身体を壊して、そのまま……」 飛鳥が『ドライヴ・マスター』に寄生したアルティメット・ギャリオを睨む。 「ドクター・ググロ、俺はお前を絶対に許さない……! 母さんが守った物は、俺が必ず守る……!」 「しかし、どうする? これまでの戦いのデータを元に強化されているなら、こちらの攻撃は通用しない」 「問題無い。サタン・オブ・マグナムで攻撃するだけだ」 「……いや、それは無理だ」 勇治の言葉に、飛鳥が首を横に振る。 「レガリアは『ドライヴ・マスター』を破壊する可能性がある。下手をすれば……」 「そっか、『ドライヴ・マスター』に寄生している訳だから、下手な攻撃で壊しちゃうわけね」 4人が悩み始める。まさか、唯一無二である最強の武器が仇になってしまう為に。 『ドライヴ・マスター』を破壊せずにアルティメット・ギャリオを倒す。それは、かなりの難題だった。 翌日。結局何も思い浮かばなかった飛鳥は、とある場所に来ていた。 母が眠る墓。花を供えて、話し掛ける。 「……母さん、俺はどう戦えば良い?」 ドクター・ググロと戦う方法が浮かばない。飛鳥は弱音を吐いた。 「レガリアは使えない。いつもの戦い方は分析されてる……正直、どう戦えば良いか分からない」 ポケットからセルハーツを取り出し、強く握り締める。 「ドクター・ググロを倒すには、レガリアのように強力な力がある技があれば……」 『ドライヴ=レガリア』による攻撃で『ドライヴ・マスター』が破壊される可能性は高い。 しかし、それ相当の技であればどうだろうか。飛鳥は以前、ガルノアから聞いた事を思い出した。 ドライヴは全て『ドライヴ・マスター』によって管理されている。その為、ドライヴは『ドライヴ・マスター』を破壊できない。 つまり、倒す方法は残っているのだ。 「……そうか、天翔蒼破絶靭斬なら……!」 あの技なら、レガリアにも匹敵する威力を誇る。あれなら、『ドライヴ・マスター』を破壊する事もない。 少なくとも、可能性はゼロではない。そう思った飛鳥はメモリースティックを取り出した。 「残る問題は、今までの戦い方は分析されて通用しないと言う事……!」 しかし、それは単純に考えれば、戦い方を変更すれば良いと言う事。 メモリースティックの中身を確認し、考える。敵を倒す一番の方法を。 『ドライヴ・マスター』に寄生したアルティメット・ギャリオの状態を確認する。 全てのドライヴの戦闘データを瞬時に分析・反映させるアルティメットシステムは正常に動いている。 「フフフフフフッ……この段階でアルティメット・ギャリオを倒せるドライヴは存在しない」 アルティメット・ギャリオを完成させる為に作られた、大量発生型ドライヴのアンブロットによるデータ収集。 そのアンブロットを『フォース・コネクター』以外のコネクターも破壊してくれたのだ。 最早、このドライヴを倒せるドライヴは存在するはずがない。 まだ、『ドライヴ=レガリア』と言う物が残っているが、それも問題ではない。 「レガリアは『ドライヴ・マスター』を破壊させる可能性がある。それはつまり……」 下手にアルティメット・ギャリオに攻撃は出来ない。ドクター・ググロはニヤリと笑みを浮かべた。 プロジェクト・アルティメットは、問題無く完了する。そして、その時が全ての始まりだ。 「これで神になる事ができる……私の計画に間違いは無かった……!」 17年前からの計画。当時は初代『フォース・コネクター』に邪魔された。 しかし、今回は成功する。アルティメット・ギャリオを倒す力を持つ者は存在しない。 「フフフフフフッ……フフフフフフッ!」 ドクター・ググロによる、プロジェクト・アルティメットから半月。 静まり返ったドライヴ・ショップ。それも当然だった。 バトルフィールドには、アンブロッドと言うドライヴが徘徊している。 「…………」 その光景を見つつ、飛鳥は『鷹の瞳』を発動させた。 敵の動きは、どちらかと言えば鈍い。この程度なら、セルハーツだけでも倒す事はできる。 しかし、今動いている状態で戦闘はして来ないだろう。 「ドクター・ググロは動いていない。次は何を考えているのか……」 奴の言うプロジェクト・アルティメットが一体どんな物なのか。 分かっているのは、ドクター・ググロの野望は阻止しないといけない。 「必要な物は準備できた。あとは……」 あとは、今考えている作戦について、勇治達と話し合う必要がある。 そう思った飛鳥は、ドライヴを操作しながらショップを後にした。 「あ、あそこにいたわね。飛鳥君ー!」 ショップの入口から出た途端、遠くから呼ばれる。向かい側に叔母の月子がいた。 そして、その隣には美緒もいた。どうやら、迎えに来たようだ。 「ほら、お兄ちゃんはあそこにいたわよ。良かったね、美緒ちゃん」 月子の言葉に、美緒が小さく頷く。飛鳥の所に歩み寄ろうする。飛鳥はそれを微笑ましく見ていた。 「――――!」 瞬間、悪寒が走る。何か嫌な事が起きる前触れなのか、ただの気のせいなのか。 それは、すぐに分かった。車が走って来ているのが見える。美緒がその車線上に入った。 「――――美緒ッ!」 呼ぶだけでは駄目だ。車の走る速度からして、車の運転手は美緒に気づいていない。 飛鳥の瞳が鋭くなる。そして、一気に駈け出した。 『鷹の瞳』で美緒を捉え、今までに無いほどの速さで駆ける。 美緒を抱いて走る余裕は無いと判断し、美緒を月子の方へと押し飛ばす。 その判断は正しかった。しかし―――― ドンッ 鈍く、そして大きい音。宙を舞い、吹き飛ばされる。 身体が大地に叩きつけられる。その中で、飛鳥は意識を失った。 次回予告 明日香「あ、飛鳥君が……飛鳥君が……!?」 明日奈「落ち着きなさい。ほら、次回予告しないと」 明日香「でも、飛鳥君が……飛鳥君が……」 明日奈「当分は次回予告できそうにないわね……」 次回、CONNECT06.『ドクター・ググロの脅威』 勇治 「飛鳥はいなくても、俺がいる。俺がいる限り、貴様は必ず倒される」 明日香「飛鳥君が……飛鳥君が……」 明日奈「次回は、ググロとの直接対決ね。主人公がいなくて大丈夫なのかしら?」 明日香「飛鳥君が……」 明日奈「……先が思いやられるわ」 |
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