Drive-Connect!

 Valentine's-Episode in 2005
 『バレンタインは大変だ!』



 いつもと変わらない――――いや、いつもより寒い朝、飛鳥は欠伸をしつつ、ストーブの電源を入れた。
 パンを電子レンジの中に入れ、紅茶を淹れる。
「こう寒いと冬眠したくなるよな……できないけど」
「飛鳥坊ちゃん、今日はやけにのんびりですね」
「坊ちゃんはやめて……俺、そんな感じじゃないし。って、のんびり……?」
 家政婦に言われて時計を見る。いつもより5分は早い。
「のんびりって、いつもより早いけど?」
「今日は早く行かないと、飛鳥坊ちゃんの場合は危ないでしょう? バレンタインデーですので」
「……忘れてた」
 バレンタインデー。『フォース・コネクター』になってから、かなりの量のチョコを貰っていたりする。
 しかし、飛鳥はチョコレートを好まない。いや、甘い物全般苦手なのだ。
 だからこそ、今日と言う日は早めに登校し、なるべくチョコを受け取らないようにする必要がある。
「ヤベ……パン食べてる暇ないか」
 紅茶を熱いまま飲み干す。そして、すぐに制服に着替えた。
 時間を確認し、ヘルメットに手をかける。
「飛鳥坊ちゃん、学校はバイク通学禁止のはずですけども?」
「どこかに隠す! いつものように掃除とか頼みます!」
 校則違反でも、今日だけはやるしかないと覚悟する飛鳥だった。



 朝5時半。いつも以上に早起きをして、明日香は一人台所でそれを作っていた。
 型に流し込む前に、味見をしてみる。少し苦味がする。これなら彼でも大丈夫だ。
「あとは冷やして固めるだけ……飛鳥君、ちゃんと受け取ってくれるかな?」
 飛鳥が甘い物全般苦手だと言うのは、親戚として当然知っている。
 その為、毎年この日はクッキーを作るようにしていたが、今年はチャレンジ精神があった。
 型にチョコを流し込み、冷蔵庫に入れる。それを密かに全て見ていた母がにやついた顔をして寄ってくる。
「飛鳥ちゃんへのチョコレート? 飛鳥ちゃんって、甘い物苦手じゃなかったかしら〜?」
「ち、ちゃんと味は飛鳥君好みにしてるよ!」
「本当に飛鳥ちゃんが大好きね、明日香は。お母さん妬けちゃう!「お、お母さん!」
 顔を真っ赤にする。母は可笑しそうに明日香の側を離れた。
「もうっ」と言いつつ、エプロンを取る。
「……でも、飛鳥君人気あるから、やっぱり他の女の子からチョコ貰うのかな……?」
 そう思うと、なぜか怒りがこみ上がって来る感じがした。



「はぁ〜〜〜」
「深い溜め息だな」
 教室。朝のHRが始まる前に、飛鳥は大きく肩を落としていた。
 どうにか結構余裕で学校に到着し(もちろん、バイクは隠している)、どうにか逃げ切った。
 しかし、下駄箱にチョコレートと思われる包み箱が三個ほどあった。
 どうやら、遅かったらしい。一通り話すと、勇治は「大変だな」と返す。
「……って、お前も『フォース・コネクター』だから貰ってるだろ」
「……聞くな」
「……大変だよな、俺達」
 流石に勇治の方もかなり人気があるようだ。なにせ、やや嫌なオーラがある。
 お互い、『ソード&マグナム』、『フォース・コネクター』として大変な日だ、今日は。
 朝のHRを告げるチャイムが鳴り、担任が教室に入ってくる。
「HR始めるぞー、ベランダに溜まってる奴らは席に着けー」
「……飛鳥、今日は別行動だ」
「……ったり前だろ、毎年の事なんだから」
 互いに合図を送り、席に着く。



 放課後。どうにか、チョコをあまり貰わずに逃げ延びた飛鳥は、ショップ内の喫茶店で本を読んでいた。
 しかし、たまに女性が近くを歩くのを見かければ、すぐに本で顔を隠すと言う行動が見られる。
「何してるのかな〜、あすあす〜」
 後ろからそう言われ、手で目隠しされる。「だーれだ?」と言う声に飛鳥は溜め息をついた。
 ポンと本を閉じて答える。
「……優さん」
「あったり〜。珍しいねー、あすあすが本読んでるなんて」
「今はまってるのがあるんですよ。……って、人の本取らないでください」
「ふむふむ……『風とお前と私と』かぁ。これって、某他作品でも存在だけしていた映画の本でしょ?」
「……何ですか、某他作品って。有名で結構楽しめるんですよ、その小説」
 映画にもなっているが、小説は作者の描写の書き方や、独特な表現の仕方があって十分楽しい。
「優さんも読んでみたらどうです?」
「うーん、やめとく。眠たそうな話だし」
「……眠そうなって……優さん、小説とか苦手な方――――」

「あー、『ソード・マスター』発見!」

「ヤベェ、見つかった!? 煤i ̄□ ̄;)」
「ん、どうしたの? ……あー、今日はバレンタインだっけ。ごめんね、あすあす、チョコ持って来てないや」
 ガタッと席を立つ飛鳥、彼を見つけて騒ぎ出す女性達を見て、優が思い出す。
 飛鳥は「いや、甘い物苦手だから別に良いですけどね」と言って、椅子に置いていたヘルメットを取る。
「んじゃ、逃げますんで失礼します!」
「ちょっと待った。せっかくファンがチョコを渡そうとしてるんだから、ちゃんと受け取りなさい「あんたは鬼か!?」
 その言葉に、優が笑顔で飛鳥を捕まえる。その動き、わずか1秒。
「鬼? 誰が鬼かな、あすあす〜?」
(ヤベェ、言ったら駄目な事言ってしまった!?)
「堪忍しなさい、あすあす♪」

「これだからバレンタインは嫌いだぁぁぁ!」

 飛鳥の叫びが、喫茶店内に響くのだった。



「はぁ……どう見ても、200個以上あるよな、絶対……」
 積まれたチョコの数を見て、大きく肩を落とす。「うわぁ、先代以上ねぇー」と優は言った。
「こりゃ、ゆうゆうも大変かな。ご愁傷様」
「勝手にそんな事言わないでください」
 がっくりと落ち込む飛鳥の元に、勇治がやって来る。飛鳥は勇治の持っている紙袋に注目した。
 中にはチョコが入っている。しかし、どう見ても少な過ぎる。
「……一つ聞いて良いか、勇治」
「何だ?」
「何で、そんなに少ないんだよ、テメェは!」上手く逃げる事ができたからだ。いるか?」
「いるわけねぇだろ! つーか、チョコの山を見て物を言え!」
「俺の知った事ではない」
「だったら『いるか?』なんて聞くんじゃねぇよ、馬鹿カイザァァァッ!」
「キシャー!」と吼える。今の飛鳥は、かなり壊れていた。
 ただでさえ、いつも以上にツッコミを繰り出している事もあるのだが、今日と言う日が彼を壊す。
 そんな飛鳥の姿を、優は思いっきり笑い、勇治は容赦なくチョコを積まれた場所に置く。
 勇治のその行動を見て、飛鳥がドライヴを取り出す。
「……勇治、そろそろEランクに落ちるか?」
「そんな気はない」
「そうそう。勇治はまだ『マグナム・カイザー』でいてくれないと。私の為に♪」
「飛鳥、これ上げるー」と言って、さらにチョコが追加される。
 現『ストーム・クラウン』を担うマリアは、勇治の頬を引っ張る。
 飛鳥は追加されたチョコを見て、マリアに訊いた。
「……何で、あんなにチョコ持ってるんだよ、マリア……?」
「私だって大変なのよ〜。『マリア様、これ受け取ってください!』って、女の子達からね〜……」
「ほまえもひゃいひぇんだな」(訳:お前も大変だな)
「そう思うでしょ、勇治も。私は勇治の為にチョコを作って来ただけなのにね♪」
「いや、ほへはいひゃん」(訳:いや、それはいらん)
「……ちょっと、何で即答なわけ、勇治〜!?」
 マリアが勇治の頬を強く引っ張る。
「ほまえのひょひょなんざ、ふってられるか」(訳:お前のチョコなんざ、食ってられるか)
「何ですってぇ〜!? もう一度言ってみなさいよ、このこの〜!」
「……マリア、一応勇治が可哀想だから、それくらいにしとけよ」
 飛鳥が勇治の姿を見て言う。マリアは「だーめ♪」と言って、さらに勇治の頬を引っ張る。
 そんな三人の『フォース・コネクター』の様子を、思いっきり人事のように優は笑ってた。
「……俺らでこの調子だから、ゴウさんも大変だろうな」
「ほへはない」(訳:それはない)
「何で?」
「ふふさいのひほり、ほうさんのほはりにいた」(訳:うるさいのが一人、ゴウさんの隣にいた)
 それを聞いて、飛鳥はすぐに納得した。

 ちなみに、その『ディフェンド・キング』ことゴウはと言うと。
「あ、ディフェンド・キング、このチョコ――――」
「む!?」
「……あ、いえ……何でもありませんっ!」
「……紅葉、そこまで怪訝にしなくても……」
「何を言いますか! 今日と言う日は、リーダーにとって一番の厄日なんです。それだけは必ず阻止します!」
 彼の率いる最強チーム『ランドライザー・コマンド』サブリーダー・紅葉が阻まんでいた。
「やれやれ、うちのサブリーダーは相変わらずだな。リーダーも大変だ」
 そう言いつつ、ゴウの代理として受け取ったチョコと、紅葉を見る。
 メガネをくいっと上げ、「俺も一応大変だがな」と参謀である晃鉄は不敵に笑う。



 再びショップの喫茶店。勇治とマリアの分が追加されたチョコの山を見て溜め息をつく。
 これだけチョコをもらうと、もう二度とチョコと言う食べ物を見たくない。そう飛鳥は思った。
「……誰か譲り受けてくれないかなぁ、これ」
 一体、これほどのチョコをどうしろと言うのだろうか。
 いや、一番怖いのは明日香にこの現状を見られる事だったりする。
 前に、マリアがワザと頬にキスとした時、明日香からは殺気とも言えるオーラを感じた事がある。
 それを再び感じてしまうのは、正直、コネクター生命どころか、本当に命すら危うい。
「……俺が知ってる中でモテなさそうなのって、骸骨騎士団くらいだしなぁ」
「誰が骸骨騎士団だ! スカルナイツだ!」
「どっちも同じ意味だろが、ボケ。……つーか、タイミング良いなぁ、おい」
 チョコの山を見つつ、タイミング良く来てくれた大勢に軽く挨拶する。
 違法で有名な柏木影二とゆかいな手下達――――もとい、『スカルナイツ』だ。
「ちょーど良いや、このチョコ貰ってくれ。つーか、くれてやる」
「ふっ。この僕、柏木影二は、君の倍以上貰っているからいらない」
「その肝心のチョコは?」
 そう言うと、影二は目をそらす。やはり1個も貰っていないと飛鳥は判断した。
 彼の後ろにいる黒スーツの手下達は、漫画のような目幅一杯の涙を流している。
「じゃあ、お前ら全員とバトルして、俺が勝ったら、このチョコ持って帰れ」
「この僕、柏木影二に命令するな! 第一、僕が勝ったらどうする気だ!」
「ありえないけど、その時はレガリアでもくれてやる」
 思いっきり爆弾発言を繰り出す飛鳥だった。

 ――――そのバトル、両者の合意と確認しましたっ!

 バトル・フィールド中心に穴が開き、そこから審判――――リュウマチ小暮が出てくる。
「ただ今より、このバトルは公式バトルと認められました。審判は私、リュウマチ小暮さんがやりますっ!」
「……審判、今回はどちらかと言うと非公式バトルだから、引っ込んで「な、何ですと!? 煤i ̄□ ̄;)」
 強制的にリュウマチ小暮がバトル・フィールドの中に戻されていく。
「さて、うるさいのがいなくなった事だし、始めるか」
「望むところだ! この僕、柏木影二に勝てると思うなよ!」



 30分後。飛鳥は清々しい笑顔で思いっきり背伸びをした。
『スカルナイツ』はと言うと、圧倒的な強さで完全敗北をし、泣き泣きチョコを持って撤退した。
「それにしても、相変わらず弱いな、あいつらも。バトル開始後5分以内で総員50体全滅だもんな」
 それをやったのは、間違いなく常戦無敗を誇る飛鳥であるが。
「とりあえず帰るか。このまま居続けたら、またチョコ貰いかねないし……」
「飛鳥君っ」
 帰ろうと思い、ヘルメットを持ち出す飛鳥に、タイミング良く明日香が話しかける。
 胸を撫で下ろし、「良かった、間に合ったね」と言いつつ、綺麗な包み箱を渡す。
「はい、私から……」
「あ、ああ。サンキュ……いつものクッキーだよな?」
「ううん、今年は頑張ってチョコレートにしてみたの」
 それを聞いて、飛鳥の顔色が蒼白になる。チョコの山を見てしまったせいか、明日香からのは期待していた。
 なにしろ、明日香は自分でも食べれる菓子を作ってくれるからだ。
 がっくりと肩を落とす飛鳥。それを見て、明日香が「大丈夫だよ」と言う。
「ちゃんと飛鳥君でも食べれるように、甘くないように作ってきたから」
「……いや、それは分かってるんだけどね」
 もうチョコと言う存在自体を見たくないと言うのが本音である。
「……ま、一個くらいなら良いか。ちょうど帰るけど、明日香も一緒に帰るか?」
「え? う、ううん、飛鳥君バイクなんでしょ? ヘルメット持ってるし」
「予備がバイクにあるから、それ被れば大丈夫だよ。それに……」
「それに?」
「……たまには、一緒に紅茶飲みたいし。父さんから送られてきた結構上手い奴があるからさ」
 頬を赤くして言う。こう言う時、蓮杖飛鳥と言う男は思いっきり馬鹿である。
 明日香は「うん」と言って、飛鳥の手を握った。
「じゃあ、その時にチョコレートの感想聞かせてね」
「……う、うん」
 やはり照れまくりな馬鹿マスターである。





 −余談−

「あー、お兄ちゃんのチョコ作るの忘れてた!? って、私の出番これだけですかぁ!?」
「……亜美、俺は今とても悲しいぞ」
 バレンタインと言う日を忘れていた亜美と、深く落ち込む馬鹿カイザーこと勇治の姿があったとか。








 あとがきでコネクト!

 と言うわけで(謎)、全くバトル描写のなかった『Drive-Connect!』 in バレンタインでした。
 いや、最初は書く予定だったんですけどね。ネタ忘れたんで却下(滝汗
 とりあえず、『フォース・コネクター』がどれほど大変なのか理解して頂ければ良いかなと。
 さぁ、バレンタインの次はホワイトデーの話ですね。

 では、多分書くと思う(何)ホワイトデー・エピソードをご期待ください。






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