CONNECT01.『二人の距離』


 飛鳥くんへ

 こんにちは、明日香です。今日も学校が終わったね。
 飛鳥くんは、これからお店に行ってバトルでもするのかな?

 終わったらメールください。明日香より

 いつもと変わらない学校の放課後。教室で飛鳥は、はとこからのメールを見ていた。
 名前が同じはとこ。一度、曾祖父に名前を呼ばれた時、二人同時に返事をした事もある。
「バトルしたいんだけど、今日は別件なんだよなぁ……」
 いや、バトルをすると言うのは変わらないであろう。
 今では流行となった携帯ツール『ドライヴ』。それを使う『コネクター』には様々な奴らが存在する。
 今日はそんな中でも厄介な奴らを倒すように、『ドライヴ・マスター』から命令された。
 相手がよく現れると言う場所を確認する。明日香がよく行くショップだった。
「……マジ?」
 確かに、あのショップには強いコネクターはいない為、狙われやすいとは思っていた。
 嫌な予感がする。ドライヴを手に、飛鳥は教室を後にした。



 はとこにメールをした後、私――――星川明日香はショップで新型のアクティブ・ウェポンを見ていた。
 ドライヴを専門的に取り扱っているショップには、バトル・フィールドも用意されている。
「あ、これ可愛いな……」
 ふと並べられているアクティブ・ウェポンを見て呟く。
 ハート型のウイングユニットは、飛行能力を持っているだけだ。
 これを彼に見せたら何を言うのか、ある程度想像できる。
「早くAランクにならなきゃ……飛鳥君とコンビ組みたいし……」
 改めて思う。私がコネクターを始めたのは飛鳥が始めたからだった。
 しかし、飛鳥はわずか数ヶ月でコネクター達の憧れるトップの座まで上って行った。
 コンビを組みたいのだが、飛鳥とのランクによる差は大きく、私が上に行く必要がある。
 つくづく、とんでもない人を好きになってしまった。
「明日のバトル頑張ろうね、アローナディアっ」
 手にもっていたドライブに話し掛ける。ドライヴを始めた頃、飛鳥が私の為に作ってくれたドライヴだ。
「柏木影二様のお通りだ! 頭が高いんだよ、お前らぁ!」
 ショップの入り口から大声が響く。黒い服を着た男の人たちが沢山いた。
 その真ん中に、一人だけ金ラメの入った高そうな服を着ている人が見える。
「下品な言葉を使うな!」
「す、すいません……影二様……」
「”柏木影二様”だ! フルネームで呼べといっているだろう!」
 高そうな服を着ている人が、隣にいる人を蹴る。
 柏木影二。名前だけは聞いた事がある。
 ドライヴの大量生産をしている柏木コンツェルン社長の息子。
 そんな人が、なぜこんなところに来ているんだろう。
「貧しい貧しい生活を送っている平民ども、良く聞け! 今日から、このショップはスカルナイツの縄張りだ!」
 柏木影二が叫ぶ。私はそのチーム名を聞いて、すぐにドライヴでメールを始めた。
 スカルナイツは、今飛鳥君が探している人達だ。教えなきゃいけない。
 メールを送信した後、柏木影二が私に話しかける。
「そこのフロイライン、この僕、柏木影二とバトルをしませんか?」
「え!?」
 かなり丁寧な言い方だった。
「僕はこれでもCランクだから、手加減はします」
 Cランクって、私と同じだ。
「バトルは良いけど……でも、私はシングルだよ?」
「こちらもシングルですよ。ルールは守ります」
 どこか、嘘のように思えた。飛鳥君が言っていた相手だから、そう思えるのかもしれない。
 でも、飛鳥君が来るまで時間を稼がなきゃいけない。
 同じランクだったら、私でもどうにかなると思う。
「……うん。いいよ」
「決まりですね、フロイライン。では、早速はじめましょうか」

 ――――そのバトル、両者の合意と確認しましたっ!

 突然、バトル・フィールドから声が聞こえた。
 中心に穴が開いて、そこからタキシードを纏ったおじさんが出てくる。
「ただ今より、このバトルは公式バトルと認められました。審判は私、リュウマチ小暮さんがやりますっ!」
 公式バトルになったのは分かるけど、どうして自分の事を「さん」付けするんだろう?
 それに、リュウマチって名前なのかな……。
「ルールは一対一のシングル戦。乱入はルール違反です。それでは、対戦するコネクターはドライヴを!」
 バトル・フィールドと連結しているドライヴを操作する場所――――コクピットランサーに乗り込む。
「……ど、ドライヴ・コネクト!」
 ドライヴをコンピュータに接続する。コンピュータが私のドライヴを読込んだ。
 バトル・フィールドにドライヴが構築されていく。戦乙女をイメージされたドライヴ。
『セットアップ、コンプリート! ドライヴ、アローナディア』
 コンピュータの確認後、私はグリップを握った。
 ドライヴはコクピットランサーのグリップを扱う事で、初めて操作が出来るようになる。
 相手もドライヴを接続したのか、向こう側に一体のドライヴが立っていた。
 黄金に輝く塗装が目立ったドライヴ。肩に骸骨が刻まれている。
 バトル・フィールドの中心で審判が手を上げた。
「バトル・フィールドは荒野! 先に戦闘不能または、降参した方が負けです」
『ふん、当然だね。さぁ、ゴールドマスターでカッコイイ所を見せてあげますよ、フロイライン』
「…………」
 なんだか寒気がする。
「それでは、コネクト・バトル……ファイトォォォッ!」
 審判の合図と共に、向こうのドライヴが動いた。普通より大きいビームセイバーが振り上げられる。
 黄金に輝く装甲が眩しかった。
『ゴォォォルデン・ソードッ!』
「あ、アローナディアッ!」
 アローナディアがウイングを前に展開してバリアを張る。ビームセイバーが受け止められた。
 飛鳥君が渡してくれたアクティブ・ウェポン、シールドウイング。とても心強かった。
『……チッ、厄介なものを持ってるな、フロイライン』
 口調が思いっきり変わってる。
『見てみれば同じCランクのようだし、早いが終わらせるか。ラルク!』
『……ドライヴ・コネクト』
 ゴールドマスターの前に、ドライヴが構築される。
 銀色の装甲で両腕に鋭い爪を持ったドライヴ。私は目を見開いた。
「ら、乱入!? そんな……乱入はルール違反……」
『ルールなんてどうだって良いんだよ。この僕、柏木影二は、君をフィアンセとして迎えたいだけだからね!』
「ふ、フィアンセ!?」
『ラルク、一気に片付けろ!』
『……そう言う事だ。死ね』
 銀色のドライヴが襲い掛かってくる。私はすぐにシールドウイングでバリアを形成した。
 けれど、遅かった。バリアを張る前に銀色のドライヴが接近して、爪で攻撃してきた。
 アローナディアの装甲に爪の跡が残る。
 ドライヴの衝撃が来て、私はコクピットランサーの中で頭をぶつけた。
「痛っ……」
『光栄に思え、このバトルで負ければ、お前は影二様の花嫁となれるのだからな』



 明日香がたまに行くショップに、飛鳥はようやく着いた。
 それと同時にメールが入る。明日香からだ。


 飛鳥君へ

 明日香です。今、近くのショップにスカルナイツが来ているの!

 私が時間を稼ぐから、早く来て!


「……うわ、タイミング悪いな」
 バトル・フィールドには大量の取り巻きのような奴らがいる。どうやら、明日香がバトルをしているようだ。
 取り巻きの一人がコクピットランサーの方で何かをやっている。
「……あれは、乱入する気か! 急ぐ必要があるな……!」
 ショップのカウンターに走る。店員が驚く中、飛鳥はドライヴを見せた。
 ドライヴの中央に、コネクト協会のマークが浮かび上がる。
「『フォース・コネクター』だ。コンピュータの使用を許可してくれ!」
 コネクター達が目指す頂点、『フォース・コネクター』。
 店員がコンピュータで飛鳥が本物かどうか確かめると、すぐにカウンターの中に入れた。
 コンピュータにドライヴを接続する。
「ドライヴ・コネクト! 明日香、すぐに助けるからな!」



 アローナディアの装甲にかなりの傷が残る。明日香は何も出来なかった。
 相手が強かった。銀色のドライヴの人は、コネクターとして強い。
『ラルク、そろそろ良いだろう。さぁ、フィアンセ、降参するんだ』
「……いや……そんなの嫌……!」
 好きな人がいるのに、勝手にフィアンセとか言われなくない。
 アローナディアが立ち上がろうとする。

 ――――ゴッドランチャー、セット! 明日香、助けに来たぞ!

「え――――!?」
 刹那、アローナディアの上空から一閃のビームが放たれた。
 影二のゴールドマスターを襲うが、それを銀色のドライヴが防ぐ。
 鮮やかな青い塗装の施された装甲のドライヴが大地に降り立つ。右手にはやや刀身が広い実体剣を持っていた。
 そのドライヴに乗る彼は、剣を影二の乗るドライヴに突き向けた。
「スカルナイツ、コネクタールールにおいて違法行為が確認された為、お前ら全員を違法者と定める。
 ソード・マスターの剣の制裁、覚悟しろ!」
『ソード・マスターだと? 笑わせてくれるね。僕は柏木影二だぞ! お前ら!』
 影二のドライブを中心に、スカルナイツの面々がドライヴを接続して、影二の元に集結する。
 明日香は『ソード・マスター』である彼の名を呼んだ。
「飛鳥君!」
「……今は下がってろ、明日香。すぐに終わらせるから」
 剣を構える飛鳥のドライヴ。
「相手はざっと20体。行くぞ、セルハーツ!」
『やれぇ、お前ら!』
 飛鳥のドライヴ――――セルハーツにスカルナイツが襲い掛かる。飛鳥は敵の動きを凝視した。
 瞳が鋭くなり、全ての敵の動きを見切る。
 セルハーツが一瞬のうちに駆け抜け、一撃で倒す。その数は軽く4体。
「エアブレード!」
 風の流れに従って剣を振り、風の刃を放つ。
「フラッシングソード!」
 瞬間、風の刃で敵3体を倒し、1体に急接近して斬る。
 強かった。ソード・マスターという実力は、スカルナイツなど足元に及ばないほど。
 影二が焦る。
『ら、ラルク!』
『……分かっています』
 銀色のドライヴがセルハーツに勝負を挑む。
「……Sランクのコネクターか。なるほど、お前だけ、他の奴と違うようだな」
『ソード・マスター……ここでお前が負ければ、私がソード・マスターとなれる』
「それは無理だな。なにせ、俺は――――」
 セルハーツが銀色のドライヴを吹き飛ばす。
「――――まだ、常戦無敗だからな!」
 剣が銀色のドライヴを捉え、斬る。
 その瞬間、セルハーツが何度も斬撃を繰り返した。
「ミラージュ・ブレイド!」
 銀色のドライヴが受けた傷から光が走り、その中心点をセルハーツが両断する。
 銀色のドライヴが倒れ、影二の表情に焦りが走る。
『ぼ、僕は柏木影二だぞ! こ、こんなところで負けるわけには――――!?』
 セルハーツが背中から長い砲身のビームランチャーを取り出す。
『ま、待て! ぼ、僕が、僕が悪かっ――――』
「お前の負けだ。零距離、発射!」
 砲口を影二のドライヴに密着させ、そのままビームを放つ。
 バトル終了。やや唖然としていた審判が我に返り、終了を告げた。
「ば、バトル終了! 今回はソード・マスターによる制裁が行われた為、無効バトルとなります!」



 ドライヴをコネクトアウトし、明日香はすぐに飛鳥を探した。
 自販機で水を買い、口に含んでいる飛鳥を発見し、抱きつく。
「飛鳥君っ」
「ぬぉ!?」
 突然の事で水を吐きそうになったが、どうにか堪える。飛鳥は赤くなった。
「あ、あ、明日香……?」
「……もう駄目かと思ったの……負けたらどうしようって……」
「……とりあえず、離れてくれるか?」
 すると、明日香は自分が何をしているのか把握し、すぐに離れた。
 お互い、顔を真っ赤にする。
「ご、ごめんね……」
「い、いや、別に良いけど……それより、間に合ってよかった」
「うん……。ありがとう、飛鳥君……」
「どういたしまして。明日香、早くAになれると良いな」
「うんっ。Aになったら、約束守ってくれるよね?」
「当然」
 ドライヴで時間を確認し、飛鳥が水を一口飲む。
「悪いけど、そろそろ帰るな。明日のバトル、頑張れよ」
「う、うんっ」
 この時、明日香は言えなかった。本当の気持ちが。
 負けたら、あの柏木影二と結婚させられていた。けれど、飛鳥が助けてくれた。
 自分に何かあったら、すぐ飛鳥は助けに来てくれる。そんな彼が好きだった。
「……飛鳥君っ」
「ん?」
 チュッ。飛鳥の頬に明日香の唇が当てられる。飛鳥はそれに驚いて耳まで赤くなった。
「あ、明日香!?」
「……ありがとうっ。明日のバトル、必ず応援に来てね」

 二人の距離は、それほど遠くないのかもしれない。



次回予告

 こんにちは、明日香です。
 明日はいよいよバトルの日! 飛鳥君が応援に来てくれるから頑張らないと!
 ……そう言えば、相手の人って誰なのかな?

 次回、CONNECT02.『突然のチーム結成!』

 ドライヴ・コネクト! 一緒に頑張ろうね、アローナディアっ。



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