CONNECT02.『突然のチーム結成!』


 飛鳥君へ

 おはよう、明日香です。今日はバトルの日だから緊張してます。
 でも、飛鳥君が応援に来てくれるから、頑張らなきゃっ。

 ちゃんと応援に来てね。約束だよ! 明日香より

「…………」
 午前7時半。意識が遠くなる感覚に襲われつつ、飛鳥はメールを読んでいた。
 ドライヴがパソコンに接続され、画面にはセルハーツが表示されている。
 結局、徹夜で作業してしまった。パソコンの電源を切り、ベッドに横たわる。
「……眠い。けれど、今日は明日香の応援に行かないと……約束だし」
 まさか、セルハーツの状態を確認するだけで徹夜をしていたとは、明日香にも言えない。
 少しずつ睡魔に襲われていき、瞼が閉じていく。
「……ぐぅ……」
『飛鳥くーん、朝ご飯作ったよー!』
「……何で来てるんだよ、おい」
 なぜか家に来ている彼女の言葉に、飛鳥は眠たい身体を起こした。



「おはよう、飛鳥君!」
「……明日香、何でいるんだよ……? しかも、わざわざメールまでして」
「だって、今日みたいな日は、飛鳥君の事だから寝てそうだと思って……」
 こう言う時、明日香の直感は正しい。飛鳥はそう思う。
 今日は土曜日。当然、学校は休みだ。だからこそ、今日は一日中寝ておきたい。
 ややふらついている飛鳥に、明日香が訊く。
「……飛鳥君、寝不足?」
「……徹夜」
 どちらも同じである。
「……そ、それよりも、今日は亜美ちゃんも来るんだよ!」
「亜美ちゃんって……勇治の妹の?」
「うん。今日からドライヴをはじめて、デビュー戦やりたいって」
「……唐突だな。今日からコネクター登録して、早速バトルなんて」
 そう言いつつ、飛鳥も登録後はすぐにバトルをしていたりする。
 勇治とは、『フォース・コネクター』の一人『マグナム・カイザー』の事だ。
 遠距離戦において、彼の右に出る奴はいない。
「そう言えば、勇治も今日は来るって行っていたな。久々にあいつとコンビでバトルしたいけど……」
「でも、相手がいないんじゃないのかな? だって、『ソード&マグナム』だし」
『ソード&マグナム』とは、飛鳥と勇治のコンビ名の事である。
 接近戦、遠距離戦の各スペシャリストである二人の強さは、当然のように常戦無敗だ。
 飛鳥がドライヴを手に取る。
「明日香、ドライヴの状態は?」
「大丈夫だよ。昨日のバトルの損傷もどうにか直せたし……」
「……しょうがないな。行く前に俺が見てやるよ。今日は万全の状態でバトルしたいだろ?」
「うん。ありがとうっ」



 明日香のドライヴの調子を見て、二人はショップへ向かった。
 明日香が飛鳥の方を気にしている。珍しくサングラスをかけていた為に。
「……飛鳥君、どうしてサングラスしてるの?」
「ソード・マスターだからだろ……。色々とあるんだよ」
 そう言いつつ、昨日は普通にショップに行ったのは言うまでもない。
 サングラスをかけていれば、少しはソード・マスターであると気づかれないはず。
 そう思っていた飛鳥だったが、すぐに気づかれた。
「何をしているんだ、ソード・マスター」
「……その名で呼ぶな!」
 反射的にツッコミを入れる。彼はいつもと変わらなかった。
 ニットキャップをかぶっているが、後ろでまとめている尻尾――――もとい、髪が目立っていた。
 サングラスをかけたまま、飛鳥は平然としている彼を白い目で睨む。
「……帽子だけで、良く気づかれないな。勇治」
「当たり前だ。俺はそれほど有名じゃないからな」
「……いや、十分有名だと思うぞ」
「お前ほどではない。ソード・マスター」
「だから、それで呼ぶな!」
 同じ『フォース・コネクター』の一人である親友に吼える。その時、勇治がサングラスを外した。
 一人の通りすがりが、飛鳥に気づいた。
「あー! ソード・マスターだ!」
 その叫びに、周りが騒ぎを起こす。

「え!? ソード・マスター!?」
「きゃー、うそー!?」
「サイン貰わなきゃ、サイン!」
「サインじゃなくて、写真よ、写真!」

「……勇治、お前……!」
「大丈夫だ。俺は気づかれない」
「俺はどうでも良いのか、馬鹿カイザー!
「馬鹿とは失礼だな。『マグナム・カイザー』だ」
「んな事言わんでも分か――――ぬぉっ!?」
 刹那、何十人もの女性ファンに押し寄せられる。それでも勇治は無表情だった。

「ソード・マスター、サインください!」
「ソード・マスター、ずっと好きでした! 付き合ってください!」
「ソード・マスター、写真撮りましょう、写真!」
「ソード・マスター――――」

「…………」
 女性に押し寄せられる飛鳥の姿を、明日香は白い目で見ていた。
 どことなく、怒りのオーラ―が溢れている。
「やはり、常戦無敗のソード・マスターは人気だな」
「勇治、後で覚えとけー!」
 飛鳥の叫びが響いた。



「もうっ、お兄ちゃん遅い!」
 待ち合わせをしていたバトル・フィールドの前で、彼女は頬を膨らませていた。
「すまんな」と言いつつ、勇治がニットキャップをかぶり直す。
 その後ろで、飛鳥は明日香の機嫌を窺っていた。
「だから、何を怒ってるんだよ、明日香?」
「知らないっ! 別に怒ってないよ!」
 ずっとこの調子である。飛鳥はため息をついた。
 なぜか知らないが、ソード・マスターになってから、ファンクラブなどが出来ていた。
 制服の時は良いものの、休みの日などにショップに出掛けると、必ず騒ぎになる。
 サングラスをかけるのは、そう言った騒ぎが苦手な為だ。
 勇治がボソリと言う。
「鈍感だな」
「テメェが人の事バラしたんじゃねぇか!」
 ツッコミを入れる。それを見て、彼女は笑い出した。
「あははははっ。飛鳥さん、またファンの人達に押し寄せられたんですか?」
「……それを言わないでくれ、亜美ちゃん。ただでさえ、明日香が怒ってるんだから」
「亜美の文句は言うな」
「……文句じゃねぇだろ。このシスコン」
 彼女――――荻原亜美(おぎはら あみ)は、『マグナム・カイザー』である勇治の妹だ。
 今日からコネクターを始める事になり、これからバトルらしい。
「……今日バトルするのやめた。明日香、このアクティブ・ウェポン、お前に渡しとく」
 明日香のドライヴと自分のドライヴのモニター画面を合わせる。
 赤外線通信を利用したアクティブ・ウェポンの転送だ。飛鳥が説明する。
「簡単な奴だけど、アローナディア専用のプラズマライフル。調整とかは自分でしてくれ」
「……う、うん。ありがとうっ」
 明日香の機嫌が直る。飛鳥はほっとした。
 対戦相手がこちらを見ている。黒髪にポニーテールで竹刀袋を持っている女の子が特に目立っていた。
 亜美が対戦相手の紹介を始める。
「対戦相手の人です。お名前は――――」
「はじめまして、大滝美里(おおたき みさと)です!」
「黒石曜(くろいし ひかる)です。この度は、バトルの申し込みをお受け頂きまして、ありがとうございます」
「はう、私の台詞……」
 亜美が落ち込む。飛鳥は竹刀袋を持っている女の子の名前を聞いて何かを思い出した。
「黒石さんって……隣のクラスの!?」
「あ、よく見ればソード・マスターで、B組の蓮杖君!」
「そう言えば、聞いた事がある名前だな。確か、Sランクだったか」
「……悪いけど、ソード・マスターって軽々言わないでくれ。落ち込むから」
 SランクでSRに上がれる有力候補。そんな彼女とは、同じ学校の生徒だ。
 美里が色々と話しかける。
「蓮杖君って、やっぱり強いんでしょう? 良かったね、曜! 心置きなくバトルできるよ!」
「そうですね」
「バトルって……、今日はバトルする予定ないんだけど……」
 それに、徹夜のせいか、眠たい。今日は応援するだけで早く帰りたいのだ。
「大丈夫だ。今日はチーム戦の予定だからな」
「チーム戦でも、俺らはチームじゃなくてコンビだし……って、チーム戦!?
 飛鳥が驚く。よく見れば、相手は4人のチームのようだった。
 嫌な予感――――いや、嫌な事をやってくれた、この馬鹿は。そんな目で勇治を睨む。
「……まさかとは思うけど、俺とお前もチームのメンバーって事はないよな?」
「その通りだ」
「その通りだ、じゃねぇ!」
 ツッコミを入れる。
「第一、俺達は『ソード&マグナム』って言うコンビだぞ!」
「安心しろ。亜美のチームに吸収された
「吸収された、じゃねぇ! って、亜美ちゃんのチーム!? ってか、独断で決めるなぁ!」
「少し静かにしてくれ、飛鳥」
「テメェのせいだろが、馬鹿カイザー!」
 取り乱れる。飛鳥は完全に肩で呼吸をしていた。
 独断でコンビを妹のチームに吸収させた。これをシスコンと言わずして、何と言おうか。
 怒りを堪えつつ、ドライヴを手にする。
「……今回だけだからなッ! 俺はチームに入る気はない!」
「何を言う。今後もチームだ」
「その話は後にする! それで、バトル形式は!?」
「あ、は、はい! えっと……総当たり戦で、先にリーダーを倒した方の勝ちです」
 亜美が説明する。飛鳥はとりあえず了承した。
 明日香のバトルの応援をするはずだったが、気が変わった。
 馬鹿には妹の守りを任せて、こっちは独断で動こう。

 ――――そのバトル、両チームの合意と確認しましたっ!

 突然、バトル・フィールドから声が聞こえた。
 中心に穴が開いて、そこからタキシードを纏ったおじさんが出てくる。
「ただ今より、このバトルは公式バトルと認められました。審判は私、リュウマチ小暮さんがやりますっ!」
「いつも思うが、あれは誰だ?」
「審判だろが! テメェのボケはそこか!」
 とりあえずツッコミが炸裂する。審判はお構いなしに続けた。
「ルールはチーム総当たり戦! 先にリーダー機を倒したチームが勝利となります。コネクトの準備を!」
「ドライヴ・コネクト! セルハーツ、セットアップ!」
 飛鳥がコクピットランサーに乗り込む。ドライヴをコンピュータに接続した。
 コンピュータがドライヴの情報を読み込み、バトル・フィールドに構築する。
 鮮やかな青の塗装が輝く装甲、やや幅広い刀身の剣は、『ソード・マスター』が唯一手にする事のできる武器。
『セットアップ、コンプリート! ドライヴ、セルハーツ』
『セットアップ、コンプリート! ドライヴ、ディル・ゼレイク』
 同時に、背中に長い砲身のビームランチャーであるゴッドランチャーを二装持ったドライヴが構築された。
 右手に目立つ漆黒の大型マグナムが、『マグナム・カイザー』を冠する証。
「全機能異常なし。飛鳥、どうだ?」
「当然、異常なしだ。勝つぞ、マグナム・カイザー」
 こう言う時の勇治は真剣だ。下手に相手をすると、また馬鹿になるのだが。
 明日香と亜美のドライヴも構築される。飛鳥は亜美のドライヴを見て目を見開いた。
 女性型になっているが、青紫の装甲にやや大型のブースト。両腰にライフル型の武器が見られる。
 それは、間違いなく勇治が昔使っていたドライヴに似ていた。
「勇治、あのドライヴ……」
「ああ。昔のエル・センティアを亜美に合わせて作り直した」
「良かったのか? エル・センティアは、お前にとって……」
「別に構わない。今は、ディル・ゼレイクが気に入っているからな」



 飛鳥達の対戦相手である彼女達の中で、黒石曜は一人、その強さを感じていた。
 同じ格闘戦――――特に剣を使った戦いにおいて常戦無敗を誇る『ソード・マスター』。
 彼から感じられる威圧感は、これまで戦ってきたコネクターにはないものだった。
『……ドライヴの性能は、ブラックダイヤモンドに似ているけど』
 鈍く光り輝く漆黒の装甲。その姿は鎧武者であり、どこか洗練されていた。
 隣で細長い砲身が目立つライフルを持ったドライヴに乗る彼女――――大滝美里が感嘆とする。
『うわぁ……『ソード・マスター』と『マグナム・カイザー』なんて、豪華なチームだよねぇ』
『……私が蓮杖君の相手をします』
『うん。よろしく頼むね、うちのエースなんだからっ!』
 美里の言葉に、曜が少しだけ微笑む。審判が両チームのドライヴを確認した。
「『フォース・コネクター』にはハンデとして、パワーゲージを30%とさせて頂きます!
 それでは、ただ今より『チーム・エンジェル』VS『チーム・アレス』のバトルを行います!」
「相手チームの総合ランクはAか。なるほど、一人だけSランクだからな」
「……いや、それ以前にチーム名がセンスないって言うか……」
 飛鳥が溜め息をつく。ともかく、一番厄介なのは鎧武者のドライヴだ。
 Sランクのコネクターの実力は、SRランクに相当するほど強い。
「勇治、一気に片付けるぞ。明日香と亜美ちゃんの為にはならないけど」
「Sランクの相手が気になるのか? 守りは任せろ。思う存分に戦え」
「……おう」
 審判が腕を振り上げる。
「それでは、コネクト・バトル……ファイトォォォッ!」



 審判の合図と共に、ブラックダイヤモンドが駆ける。その瞬発力は凄かった。
 刹那、風の刃が襲い掛かってくる。
『――――!?』
 全感覚を加速させ、ブラックダイヤモンドの瞬発力を使って回避する。チームの二体のドライヴが倒れた。
 たった一撃であの強さを誇るセルハーツが、ブラックダイヤモンドと剣を交わらせる。
「フラッシングソード!」
『一閃!』
 高速の斬撃を両者共に放つ。セルハーツが距離を置いた。
「……なるほど、エアブレードを避けれたのは彼女の実力って事か」
 エアブレードはなかなか避ける事のできない攻撃だ。それを避けれるとなれば、かなりの実力を持っている。
 流石はSランクだ。しかし、あくまで『技』による回避。『資質』じゃない。
 ブラックダイヤモンドが二刀を振るう。
『飛燕・裂十字!』
 十字の真空刃が放たれる。飛鳥はそれを凝視した。
 瞬間、その動きを完全に見切った上で捉える。瞳が鋭くなり、真空刃を叩き落した。
 剣を構え直し、セルハーツが急接近する。
『早い!?』
「…………」
 ブラックダイヤモンドが対抗する前に、首元に刃先が突きつけられた。
「結構良い動きをしている。それに、まさかエアブレードが避けられるなんて思わなかったし」
『……私の……負けです』
 彼には勝てない。彼女はすぐにそう悟った。



「意外と余裕だったみたいだな」
「……まぁ、な。けど、今回はチームの勝ちじゃない」
 ハッキリ言うと、一人での圧倒的な勝利だった。
 やはり、チームからは距離を置く必要がある。たとえ、勝手にチームの一員になっていても。
 黒石曜が飛鳥に近づく。
「あの……先ほどの攻撃はどうやって避けたのですか?」
「……『鷹の瞳(ファルコン・アイ)』で見切った。それだけさ」
『ソード・マスター』の座に立つ者が必ず持っているといわれる資質、『鷹の瞳』。
 全ての攻撃と言う攻撃を見切り、敵を捉える。それが強さの証でもあった。
「でも、あまり使わないものだけどね。SRには上がるの?」
「いえ、考えていませんが……」
「SRに上がってきなよ。もし、黒石さんがトップに上がったら、今度は全力で戦う」
「……はいっ」
 まだ全力じゃない事に対して驚いたが、どこか嬉しかった。
 そんな彼女の笑顔を見て飛鳥が照れる。その照れている姿を明日香は逃さなかった。
 白い目で睨む。その怒りのオーラを飛鳥がすぐに感じ取る。
「……明日香、な、何を怒って……!?」
「……知らないっ! 飛鳥君なんか、もう知らないっ!」
「あ、明日香!?」
「知らないったら、知らないっ!」
 そんな明日香をなだめる事が出来たのは、それから数日後の事である。



次回予告

はーい、亜美です!
チームが出来たのは良いけど、飛鳥さんが参戦拒否! えぇ、どうしてですか!?
せっかく、バトルの相手見つけたのに……。
と言うより作者さん、私の初バトル、出番なかったじゃないですか!

次回、CONNECT03.『厄介な敵』

ドライヴ・コネクト! え、お兄ちゃん達が大苦戦!?



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