CONNECT03.『厄介な敵』


「……だから、俺はチーム戦には今後出ないって言ってるだろ」
「何を言う。チームの一員になったんだ。今後も出る事が絶対だ」
 あれから一週間。朝から飛鳥の自宅で、飛鳥と勇治はずっと揉めていた。
 突然、『ソード&マグナム』から『チーム・エンジェル』になった事は、すでにどうでも良かった。
 勇治が話を続ける。
「亜美達の為にも、俺達が一緒に戦った方が良い」
「逆だ。俺とお前がいたら、チームハンデが厳しくなるだろ。俺がいるだけでバトルの話は来ないんだから」
『ソード・マスター』である蓮杖飛鳥は強過ぎる。その為、バトルの話はあまりなかった。
 また、『フォース・コネクター』の存在によるチームハンデは、一番厳しくなっているのだ。
「二人の事を考えたら、俺達はチーム戦に出ない方が良い。強豪チーム相手は別として」
「しかし、二人だけで勝てると思うのか?」
「勝てるさ。少なくとも、亜美ちゃんが攻撃の要になれば。明日香のアローナディアは、防御重視だから」
 そう、かなり強いチームでなければ。そう考える。



 昼過ぎ、飛鳥と勇治は亜美達が通うショップへ向かった。
 バトル・フィールドの方で何か騒ぎが起きている。飛鳥は明日香の姿を見つけて話し掛ける。
「どうしたんだ?」
「あ、飛鳥君。さっき、『ゾディアック』って言うチームの試合があって……」
「ゾディアック!?」
 明日香が頷く。飛鳥はすぐに『ゾディアック』の方へ向かった。
 どこかつまらなそうにしている『ゾディアック』のリーダー。相変わらずだと思う。
「……久しぶりだな、桐生」
「……その声は久しぶりだな、蓮杖。いや、今は『ソード・マスター』か」
 互いに鋭い瞳をぶつける。飛鳥は久々に会った彼から、とてつもない強さを感じた。
 間違いない、一度バトルした時からまた強くなっている。
 飛鳥の隣に勇治が現れ、黙ったままバトルの結果を見ていた。
「……手加減はなしか」
「手加減など意味はない。真の強さを見せてやっただけだ。次はお前と戦う番だ、蓮杖」
「いや、俺は今日バトルの予定はないし」
「何を言っている。俺達の対戦相手だ。バトル形式はキューブバトル」
「って、いつ決めた!? この馬鹿カイザー!」
 勇治の首元を掴む。その時、亜美が止めに入った。
「あ、飛鳥さん、決めたのは私なんです……お兄ちゃんは何も……」
「今回のバトルはいくらなんでも分が悪い! 勇治、お前でも負けるかもしれないんだぞ!?」
「大丈夫だ。俺は『マグナム・カイザー』だからな」
「接近はボロボロだろが!」
 ただでさえ、接近戦は自分だけしかいないと言うのに、この馬鹿は何も考えていなかった。
 飛鳥が桐生と呼んだ男が、ドライヴを構える。
「蓮杖、バトルだ。それとも逃げるか?」
「……誰が逃げるって?『ソード・マスター』の名において、俺は逃げる気はない」

 ――――そのバトル、両チームの合意と確認しましたっ!

 バトル・フィールド中心に穴が開き、そこからタキシードを纏ったおじさんが出てくる。
「ただ今より、このバトルは公式バトルと認められました。審判は私、リュウマチ小暮さんがやりますっ!」
「いつも思うが、なぜ自分を『さん』付けしているんだ?」
「今さら疑問に思うな! ってか、今日のボケはそれか!?」
 飛鳥のツッコミが炸裂する。そんな中で審判が説明を始めた。
「ルールはキューブバトル! それぞれのキューブでシングルバトルを行い、勝利数の多いチームが勝ち!
 引き分けの場合は、両チームの代表者の勝敗にて決着をつけます! それでは、コネクトを!」
「亜美、気をつけろ。無理はするな」
「う、うん……」
「明日香、試作段階だけど、新しいウェポンを渡しておく」
 SDカードを明日香に渡し、飛鳥がドライヴを接続する。
 バトル・フィールドに用意された宙に浮かぶ四つの箱の中の一つに光が灯る。
 キューブバトルとは、その名の通り箱のようなバトル・フィールドでシングル戦を行うバトルを言う。
 しかし、対戦相手はランダムで決められ、誰が誰と戦うのかは全く分からないのだ。
「ウェポンって……シールドウイングの強化型……?」
 SDカードをドライヴに差込み、何が入っているのか確認する。
 アローナディアに装備されているシールドウイングより性能はやや劣っている。
「……頑張ろうね、アローナディアっ」



 キューブの中の一つに、飛鳥のセルハーツが構築された。
 相手はすでに準備を終えている。魔術師を思わせるマントを身に纏い、両手に光る球体を持つドライヴ。
『ソード・マスターが私の相手ですか……』
「……よりにもよって、『暗黒の魔術師』が相手か」
『良く言います。しかし、フォース・コネクターでも、暗黒の魔術師には勝てません』
「どうかな。俺は、常戦無敗だからな」
 セルハーツが剣を構える。飛鳥は早めに決着をつけようと思った。
 今回のバトルは、間違いなく引き分けになるはず。だからこそ、早めに結果を知りたい。
「……始まって速攻、亜美ちゃんは倒されるかな。勇治は……苦戦するか。ハンデがなくて良かった」
 キューブバトルでは、ハンデと言うものが存在しない為、上位ランクにとっては有難いバトルでもある。
 だからと言って、勇治が負ければ、あいつは『マグナム・カイザー』の名を失う事になる。
 いや、それよりも自分の方を心配した方が良いだろうか。

 暗黒の魔術師。それが今から戦う事になる敵のドライヴ。

 Sランクである相手の実力は、SRランクのコネクターでも負ける事がある。
『さぁ、こちらから攻撃させてもらいます』
 暗黒の魔術師が、静かにその両手の球体を放つ。



 飛鳥がバトルを行うキューブとはまた別のキューブ。そこに、勇治のドライヴが構築された。
 背中に長い砲身のゴッドランチャーを二装持った勇治のドライヴは、相手を睨む。
 巨大な棍棒を持ち、背中には大型のバックパックを装備しているドライヴが立つ。
『運が良いぜ。俺様の相手はマグナム・カイザーか』
「甘く見ない方が良いぞ。お前如き、一捻りで済む」
 挑発的だった。いや、勇治はいつもと変わらなかった。
 右手に構える漆黒の――――『サタン・オブ・マグナム』を構える。
「まずは、出力10%で相手をしてやる」
『面白ぇ! だったら、貴様からその称号を奪ってやるよ!』



 飛鳥が戦っているキューブ。飛鳥は苦戦を強いられた。
 攻撃するチャンスが全くない。やはり、暗黒の魔術師は厄介な奴だ。
『さあ、まだ続けますよ』
 両手の球体が宙に浮かび、無数のレーザーを放つ。
 飛鳥はそれを見切っているのか、セルハーツはその機動性を生かして避けていた。
 しかし、反撃する隙がない。相手が不気味に微笑む。
『ふふふ……手出しできないでしょう? ソード・マスターと言えど、この攻撃には』
「くっ……粋な事をやってくれるよ……」
 けどな、と言葉を続ける。飛鳥は相手の戦い方を良く見ていた。
 反撃する隙は確かにない。しかし、それは剣だけで戦おうとしていたからだ。
 なぜ、戦い方にこだわっていたのか自分でも分からないが、勝つ方法はいくらでもある。
「ここからが本番だ。って言っても、すぐに終わるけどな」
『それはないでしょう。なにせ、私は負ける気などないのですから』
 暗黒の魔術師が再び攻撃に入る。刹那、セルハーツが動いた。
 無数のレーザーが放たれる中、その攻撃を全て避け、懐に入り込む。
 左腕のガトリングガンを突き向け、撃つ。バリアが暗黒の魔術師を守った。
『ふふふ……実弾兵器では無理ですよ』
「……だろうな」
 瞬間、セルハーツの膝蹴りが繰り出される。飛鳥はこれを狙っていた。
 相手が目を見開く。暗黒の魔術師の腹部を襲った膝が開いた。
「ミサイル!」
 膝からミサイルが放たれ、再び暗黒の魔術師が攻撃を受ける。
 セルハーツがミサイルの爆発を利用して距離を取り、剣を構える。
 斬撃を繰り出し、その切り筋から光が走り、中心が浮かぶ。
「ミラージュ・ブレイドッ!」
 光の中心を斬る。暗黒の魔術師の全身から火花が飛び散った。
『な……!? たった一瞬で……』
「……どんな奴が相手でも俺は負けない。なぜなら――――」
 セルハーツが暗黒の魔術師に背を向ける。
「――――俺は、ソード・マスターとして戦うからだ!」
 暗黒の魔術師が倒れる。その勝利は誰もが疑うほど圧倒的な強さだった。
 審判が終了を告げる。
「キューブバトル、『チーム・エンジェル』蓮杖飛鳥VS『ゾディアック』紅遼! 勝者、蓮杖飛鳥ぁぁぁっ!」
 あとは勇治が勝つだけ。そう飛鳥は信じた。



次回予告

飛鳥です。
対戦相手を倒した俺は、勇治のバトルを確認した。
かなり苦戦している。けれど、これで終わりじゃないはずだ。
なにせお前は、俺の相棒だからな!

次回、CONNECT04.『勇治の強さ』

ドライヴ・コネクト! 見せてやれ、マグナム・カイザーの強さを!



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