「きゃう!?」 キューブの一つで、亜美の乗るエル・センティアが壁まで吹き飛ばされて力尽きる。 「キューブバトル、『チーム・エンジェル』荻原亜美VS『ゾディアック』藤堂満! 勝者、藤堂満ッ!」 『チッ、もう終わりか……』 両腕にトンファーを装備しているドライヴを操る『ゾディアック』のコネクターが言葉を吐く。 バトル開始から5分。少し様子を見ていたが、グランレオルトは無傷と言っても良いほど攻撃を受けなかった。 Eランクのコネクターは弱過ぎる。今回のバトルはハズレを引いてしまった。 『……紅の野郎は負けたか。ま、今回のバトル、ゾディアックの圧勝だな』 相手に『フォース・コネクター』がいようと、キューブバトルでは勝ち目はないだろう。 接近戦のスペシャリストである『ソード・マスター』は勝つだろうが、他のメンバーが足を引っ張るはず。 『桐生も、何であの蓮杖飛鳥なんかにこだわるんだか……』 バトルが開始してから5分。明日香は一歩も動かなかった。 いや、動けなかった。目の前の相手は、飛鳥からとてつもなく強いと聞いていたから。 (……戦わなきゃ……私も、頑張らなきゃ……!) 『……まだ戦う気はない。他のバトルの経過を見せて欲しい』 明日香の心が読めているのか、彼――――『ソディアック』のリーダー、桐生はそう言った。 高貴なマントを纏ったドライヴが、静かにアローナディアを睨む。 『今のうちに言っておく。このベルセルクに勝てるコネクターはいない』 「……そんな事分からないと思います」 『分かる。蓮杖も昔、ベルセルクを相手に苦戦したからな』 そう、Sランクコネクター同士だった時に。 コクピットランサーから外へ出て、亜美は深くため息をついた。 相手がSランクとは言え、大きなダメージを与えられなかった。 「はぁ〜ぁ……もう少し練習しなくきゃ……」 「まだコネクターになって1週間なんだから、そこまで焦らなくて良いよ」 と、突然の言葉。亜美はびくっと驚き、隣を見る。 飛鳥だった。バトルの結果を見ると、相手を倒して、コクピットランサーから出てきたようだ。 飛鳥が一つのバトルの様子を見ている。 「……勇治の奴、苦戦しているな」 「え、お兄ちゃんが!?」 再び亜美が驚く。 「キューブバトルだと、接近戦タイプのドライヴが強いんだ。勇治のドライヴは遠距離タイプ。 しかも、ディル・ゼレイクには接近戦用のアクティブ・ウェポンがない」 「……それって、危ないんじゃ……!?」 「ああ。勇治が『マグナム・カイザー』じゃなかったら、今ごろ負けてるよ。間違いなく」 しかし、もし勇治が負けても、このバトルは引き分けになる事は間違いないだろう。 あくまで、桐生の目的は自分とのバトルのはず。キューブバトルでの勝利はしないだろう。 やや涙目になって、兄が負けるのを見たくない亜美に気づき、微笑み返す。 「大丈夫。あいつはまだ本気じゃない。それに、あいつは俺の相棒だから」 そう、誰よりも信頼できる相棒だから。 巨大な棍棒がディル・ゼレイクを襲う。勇治はどうにか攻撃を避けていた。 腰に装備しているレールガトリングを撃つ。高速のビーム弾が放たれた。 敵が巨大な棍棒を使って防御する。バリアが形成され、ビーム弾を防いだ。 「……ビームシールドか」 『そうだ。ビームフィールドみたいに発動し続ける奴は嫌いだからな』 巨大な棍棒を大きく振り上げる。 『ティターンを倒せるのは、蓮杖飛鳥でもお前でもないって事を俺が教えてやるよ!』 巨大な棍棒からビームソードが形成される。勇治はそれを見てふっと笑みを溢した。 確かに接近戦の相手では、あまり勝ち目が無い。しかし、逆にそれを有利に出来る。 ティターンが棍棒を振り落とす。 『お前の負けだ、マグナム・カイザー!』 「それは俺の台詞だ」 迫るビームソードを前に、ディル・ゼレイクが背中のゴッドランチャーを前に出す。 「発射」 高出力のビームが放たれる。ティターンはすぐに防御した。 ビームシールドを貫き、ダメージを受ける。その隙に勇治は相手と距離を取った。 相手が歯を噛み締める。 『貴様ぁ!』 ティターンのバックパックが展開する。 『うぉぉぉおおおおおおっ!』 大型のバックパックから、ミサイルが無数に放たれた。 ディル・ゼレイクに向かって来るミサイル。右手に持つ漆黒の銃を構える。 「……ミサイルの弾数50発。サタン・オブ・マグナム、出力を30%、速射型に設定」 瞳を鋭くさせ、瞬時にミサイルの弾数と軌道を見切る。サタン・オブ・マグナムが轟音を上げた。 ミサイルを全て撃ち落とし、勇治が言葉を続ける。 「出力50%に設定。お前の負けだ」 ディル・ゼレイクが、まるで意思を持っているかのように相手を睨んだ。 勇治のバトルを見て、亜美は目を大きく開いていた。 間違いなく、かなりの数のミサイルを撃ち落とした。それも、簡単そうに。 兄が有名なのは分かるが、ここまで凄いとはとても信じられない。 「あれが、『狙撃の瞳(ターゲット・アイ)』。勇治の持っている資質だよ」 「え!?」 隣で飛鳥が説明する。亜美はびくっと驚いた。 瞬間的に標的を定め、確実に捉える『マグナム・カイザー』の資質。 それさえあれば、大量のミサイルを前にしても恐れる事はない。 「それにしても、あの馬鹿、やっぱり遊んでいたな」 相手の動きを見ていたとは思うが、ツインゴッドランチャーを撃った時に分かった。 ツインゴッドランチャーは、飛鳥のセルハーツに装備している軽量型などと違い、エネルギーの消費が多い。 それを平然と撃つのは、普通遊んでいる時くらいだ。いつもの事である。 「亜美ちゃん、とりあえずあの馬鹿は強い。馬鹿だけど」 「……馬鹿は変わらないんですか?」 「馬鹿は馬鹿だから」 「なるほど」 兄の事を酷く言われているのだが、それでも納得してしまう彼女だった。 相手は信じられなかった。ミサイルを全て撃ち落とされて。 ディル・ゼレイクが再びサタン・オブ・マグナムを放つ。 『この!』 棍棒を盾にし、ビームシールドで防――――げなかった。 『何!?』 「無駄だ。サタン・オブ・マグナムの弾はビーム兵器ではない。実弾兵器でもないがな」 相手を睨みつけ、サタン・オブ・マグナムの出力を上げる。 「フルパワーショット。これで終わりだ」 放たれる巨大な一撃が、ティターンを呑み込む。決着は呆気なかった。 相手が倒れた事を確認し、審判が判定を下す。 「キューブバトル、『チーム・エンジェル』荻原勇治VS『ゾディアック』磐梯邦明! 勝者、荻原勇治ッ!」 バトルに勝利しても、勇治は相変わらず無表情だった。 「……ったく、遊んでんじゃねぇよ、馬鹿」 コクピットランサーから降りた途端、飛鳥が勇治と手を叩く。 馬鹿、と言っているものの、やはり最強のコンビである二人は、親友同士だった。 「これで、あとは奴が倒されるだけだな」 「いや、桐生は負けない。なにせ、あいつは強いからな」 それに、桐生とバトルするのは明日香だ。間違いなく、明日香は負ける。 相手はSランクでもSRランクのコネクターを倒せるほどの実力者だ。 バトル・フィールドを囲むギャラリーが歓声を上げる。飛鳥はすぐにモニターを見た。 「な……!?」 目を見開く。そこには、壁にのめり込んでいるアローナディアの姿があった。 そんなアローナディアの頭部を握る桐生のベルセルク。 「キューブバトル、『チーム・エンジェル』星川明日香VS『ゾディアック』桐生彰! 勝者、桐生彰ッ!」 「桐生の勝ち……いや、それよりも……、くそっ、桐生の奴……!」 どことなく湧き上がる怒りと不安が、飛鳥に戸惑いを与える。 この時、桐生が静かな笑みを浮かべていた事は、まだ誰も知らない……。 次回予告 こんにちは、亜美です! 明日香さんが負けてバトルは引き分け! あ、あの、飛鳥さん、落ち着いて……。 って、飛鳥さんが戦う事になるんだけど……えぇ!? な、何なんですか、あのドライヴ!? 次回、CONNECT05.『ソード・マスターVS獣帝』 ドライヴ・コネクト! え、まだ飛鳥さんは本気じゃない!? |
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