CONNECT05.『ソード・マスターVS獣帝』


 審判の判定が下りた瞬間、飛鳥はすぐにコクピットランサーの方に向かった。
 外部からコクピットランサーを開く。気を失っている明日香の姿がある。
「明日香……明日香!」
 呼び掛ける。明日香はゆっくりと瞳を開けた。
「……飛鳥……君……」
「大丈夫か!? い、いや……軽く頭を打ってるかも……」
「ごめ……んね……。負けちゃった……」
「何言ってるんだ! ……あとは俺に任せろ。だから、少し休め」
「……うん……」
 明日香に聞こえないほど小さな声で、「ごめん」と呟く。
 そして、桐生を睨んだ。
「……桐生、手加減はしなかったようだな」
「ああ。相手がCランクと言えど、全力で戦わせてもらう」
「そうか」
 ドライヴを目の前に出す。
「俺とのバトルが狙いだろ? だったら、すぐにでも決着をつけてやる!」
「望むところだ。進化した『獣帝』を見せてやる」



「え……えっと……良いの、お兄ちゃん?」
「異論はない。それに、俺でも奴には勝てん」
 飛鳥と桐生のやり取りを見つつ、勇治が言う。亜美が「えー!?」と大声を上げた。
「勝てないって、お兄ちゃんが!?」
「そうだ。悔しいが、接近戦において、桐生の強さは飛鳥に迫るほどだ」
 まだ、『ソード・マスター』になる前――――Sランクの飛鳥が苦戦した相手。
 今の飛鳥では、どうなるのか分からないように思えるが、桐生もあれから強くなっているはず。
 間違いなく、飛鳥は『ソード・マスター』として、苦戦を強いられるだろう。
「あ、あのー……」
 審判のリュウマチ小暮が勇治に言い寄る。
「勝手に話が進んでいますが、代表者は……?」
「蓮杖飛鳥だ。もう両者合意していると思うぞ」
 その言葉に偽りはない。飛鳥と桐生は、お互いにバトルを意識している。
 審判が少しだけ咳を吐く。
「えー、キューブバトルによる結果は引き分けにつき、代表戦にて勝敗を決めます。
 代表者、『チーム・エンジェル』は蓮杖飛鳥! 『ゾディアック』は桐生彰でよろしいですね!?」
「ああ」
「問題ない」
 両者、答える。
「それでは、代表者はコネクトを!」
「ドライヴ・コネクト! セルハーツ、セットアップッ!」
「ドライヴ・コネクト」
 同時にコクピットランサーに接続する。



 バトル・フィールドは荒れ果てた大地をイメージした場所だった。
 セルハーツが構築され、飛鳥は目の前に構築されていく桐生のドライヴを待つ。
「……!」
 構築されていく目の前のドライヴの大きさに、目を見開く。
 巨大な爪と牙を持ったサーベルタイガー。背中には、巨大な砲身が剥き出しになっている。
 それは、どう見てもベルセルクと言う桐生のドライヴではなかった。
 セルハーツの5倍はあると思われる巨体が、ゆっくりと動き出す。
『キング・ゾディアック。それが、このドライヴの名だ』
「……それが、進化した『獣帝』か?」
『そうだ。お前がソード・マスターとして強くなったように、俺も新たな力を得た』
 キング・ゾディアックが巨大な爪を振り下ろす。セルハーツはすぐに避けた。
 刹那、物凄い勢いでキング・ゾディアックが迫り、再び爪が振り下ろされる。
「この……!」
 瞳を鋭くさせ、その動きを見切る。飛鳥は距離を取って軽く息を吐いた。
 強い。SRでトップクラスのコネクターより、数段上の実力だ。
 キング・ゾディアックと言うドライヴを手に入れた事で、桐生はその強さを上げている。
「エアブレードッ!」
 剣を振るい、風の刃を放つ。キング・ゾディアックの前足に直撃したが、それほどダメージはなかった。
 かなりの機動性を持った巨体は、それ相応の装甲も持ち合わせている。
『どうした? その程度でキング・ゾディアックに傷をつけたつもりか?』
「…………」
 桐生の言葉に、飛鳥は黙る。



 セルハーツとキング・ゾディアックのバトルは、セルハーツが不利な状態だった。
 二人のバトルをモニターで観戦する亜美が焦る。
「あ、飛鳥さん、負けちゃうよ!?」
「焦るな。それに、飛鳥が負ける事がまずない」
 勇治には分かっていた。セルハーツのパワーゲージは減っていない。
 いや、減る事はないのだ。周りから見れば不利な状態に見えるが、それは飛鳥が寸前で避けているだけだ。
 まだ全力ではない。少なくとも、ドライヴ=レガリアの力に頼っていない。
「まだ飛鳥は全力で戦っていない。このバトル、飛鳥は勝てる」
「え、飛鳥さん、まだ本気じゃないの!?」



 少しきつい。飛鳥はそう思った。
 キング・ゾディアックは、機動性や装甲が高くて、普通に戦ってもまともなダメージを与えられない。
『この程度か、蓮杖。お前は、ソード・マスターになってから弱くなったな』
 キング・ゾディアックが背中の砲身をセルハーツに向ける。
『蓮杖、お前の負けだ』
「……誰が負けだって?」
 桐生の言葉に飛鳥が返す。セルハーツが剣を構えた。
 ドライヴ=レガリアである『ファルシオンセイバー』が、わずかだが光を放っている。
「……見せてやるよ、俺の本気を。ここからが、全力勝負だ!」
 ファルシオンセイバーを空へと向ける。
「ファルシオンセイバー、封印解除ッ! バスターファルシオン、グローアップッ!」
 飛鳥の言葉に反応し、コンピュータが『OK!』の文字を表示する。
 ファルシオンセイバーのやや横幅が広い刀身が真ん中から綺麗に割れ、横に開く。
 刀身があった部分にエネルギーが集まり、燃え上がる青いビームソードが姿を見せた。
 セルハーツの全長と同じくらいの刀身。セルハーツがその剣をキング・ゾディアックへ向ける。
「……バスターファルシオン。こいつを本当の姿にさせたのは、お前で二人目だ」
『それがお前の全力か。ならば、こちらも本気で挑むまでだ!』
 キング・ゾディアックが巨大な爪を振り下ろす。セルハーツがバスターファルシオンで受け止めた。
 否、巨大な爪を根元から切り刻んだ。それも簡単に。
『何……!?』
「フラッシングソードッ!」
 瞬間的に斬撃を繰り出す。背中の砲身が吹き飛んだ。
 本気を出した飛鳥の強さは圧倒的だった。桐生がやや目を大きく開く。
 セルハーツが距離を取る。キング・ゾディアックが口元にエネルギーを集中した。
『これをくらえ! アルティメット・ロンギヌス!』
 放たれる怒涛の波動。セルハーツがバスターファルシオンでそれを受け止めた。
『受け止めただと!?』
「全てを断て、ファルシオン!」
 波動を両断する。飛鳥は次の一撃で決めようと思った。
 バスターファルシオンを構え、エネルギーを集中させる。
「これで……ラストだ!」
 バスターファルシオンの刀身がさらに伸び、セルハーツがそれを振り上げる。
 刀身の長さは、セルハーツの全長の6倍以上に伸びていた。
「バスタァァァ、クラァァァシュッ!」
 振り下ろす。巨大な刀身がキング・ゾディアックの巨体を両断した。
『何……ゾディアックが負けるだと……!?』
「……俺は勝ち続ける! それが、俺の目指した道だからな!」



「勝者、蓮杖飛鳥! よって、このバトル、『チーム・エンジェル』の勝利ぃぃぃっ!」
 審判の判定が下されてから、飛鳥は置いてあるベンチに座っていた。
 恥ずかしいが、安らかな寝息を立てている明日香を膝枕にして。
「……にしても、勇治の馬鹿、こう言う時だけ気を回してんじゃねぇよ」
 バトルが終わって、すぐに勇治は「邪魔者は去る」と言って、妹の亜美とすぐに帰ってしまった。
 こう言う時だけ、あいつは気を回す。やはり、馬鹿としか言い様がない。
 明日香の髪を少しだけ撫でる。すると、ゆっくりと明日香が目を覚ました。
「う……ん……?」
「起きたか?」
「え……!?」
 すぐ視界に入ったのは、飛鳥の顔。明日香は自分が今どうなっているのか分からなかった。
 焦り、そして頬を朱色に染めて混乱する。
「え、あ、あ、飛鳥君!? な、何!? ば、バトルは!?」
「落ち着け。とりあえず、バトルは俺達の勝ち」
 明日香の撫でつつ、飛鳥が言う。明日香はさらに頬を赤くした。
「あ、飛鳥君……くすぐったい……」
「大丈夫か? バトルの時、強く頭打ったろ?」
「う、うん……でも、飛鳥君がこうしてくれてるから……大丈夫……」
 飛鳥の手を握る。冷たくて、温もりのある手。
 飛鳥はそんな明日香の行動に、少しだけ頬を赤くした。
「飛鳥君、もう少しだけこのままにしてくれる?」
「……それは勘弁してくれ。恥ずかしいから」
「だーめっ。うふふふふふふっ」
 恥ずかしがる飛鳥を、明日香は可笑しそうに笑っていた。



次回予告

 こんにちは、明日香です。
 最近、周りで『ソード&マグナム』の悪い噂を良く聞くの。
 でも、飛鳥君は最近、テスト勉強に励んでいるんと思うけど……?

 次回、CONNECT06.『ソード&マグナムの偽者』

 ドライヴ・コネクト! 飛鳥君の偽者は、私がどうにかしなきゃ!



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