CONNECT06.『ソード&マグナムの偽者』


「さ、今日は皆で特訓するよー!」
「美里さん、今はそんな場合じゃないと思うのですけれど……」
 放課後の教室で、『チーム・アレス』のリーダーである大滝美里の発言に、黒石曜は言葉を返した。
 なぜなら、今は期末考査中。午前中で学校が終わるのは良いが、勉強をしないといけない。
 そんな曜に対し、美里はちっちと指を振った。
「何言ってるのよ! こんな時だからこそ、チームの特訓ができるんじゃない!」
「で、でも……」
「大丈夫! そんなにやらないし、それに勉強なんて一夜漬けでも間に合うわよ!」
 こう言う時、美里はある意味凄いと思ったりする曜。
 そんな二人に、一人の男子生徒が話し掛ける。
「これからショップに行くのか? だったらやめといた方が良いぜ?」
「何で?」
「今、『ソード&マグナム』って言う有名なコンビが乱入しかけてるらしいぞ」
「ソード&マグナムが!?」
 真っ先に驚いたのは曜だった。
「蓮杖君達がそんな事するわけ……」
「でもよ、事実だぜ? あのコンビが違法行為してるなんてのは」
「でも、それだと新聞沙汰だよね? あの二人、『フォース・コネクター』なんだし」
 今では、新聞の記事にも載るほど、ドライヴは有名だ。
『フォース・コネクター』に関しては、誰もが憧れの存在なせいか、雑誌に載るほど人気がある。
 そんな人気者の二人が違法行為をやったとすれば、間違いなくマスコミが動くはず。
 何か考えついたのか、美里がニヤリと笑みを浮かべる。
「これは、何かありそうね、曜! よし、特訓ついでに姫里と千里も誘って真実を確かめるのよ!」
「はいっ」
 こればかりは、曜も合意した。



 夕方頃、彼女――――大滝美里は、『チーム・アレス』のメンバーと共にまだ飛鳥達を探していた。
 彼らと同じチームである明日香と亜美を呼び出して。
「ごめんね、美里の奴、『真実を確かめるまでは!』とか言い出してさ」
「ううん、別に大丈夫だよ。それに、私も確かめたいし……」
 メンバーの一人である天鷹姫里(あまたか きり)に、明日香は首を横に振った。
 確かに、飛鳥達が違法行為をしたと言うのは疑わしい。
 それに、飛鳥はそう言った事が嫌いで、逆に許せない性格だ。
 どう考えても、彼がそんな事をするはずがない。
「……そう言えば、星川さんは蓮杖君の番号知ってたっけ?」
 ふと、美里が訊いて来る。明日香は頷いた。
「うん。飛鳥君とはたまに電話とか、メールとかしているけど……?」
「……そっか、お兄ちゃん達に聞いてみれば……」
「初めからそうした方が良かったって事よね?」
 姫里の一言に、一同がそれに気づく。
 本人達に連絡を取るのが一番早い。電話が繋がらない場合は、圏外にしているか、電源を切っているか。
 そして、ドライヴでバトルをしているかの三つだけ。
 明日香がすぐに電話をかける。



 飛鳥は自宅で勉強をしていた。明日の期末考査の科目が危なくて。
「……ぐあぁぁぁ! 対等接続詞なんか分かるかぁ!」
 英語が苦手だった。それも極端に。
 今日のテストは割と楽だったのだが、英語だけはそんな風にはいかない。
「うるさいぞ、飛鳥」
「うるせぇ……。って、何ゲームやってんだよ、お前は!?」
「お前が数学を教えないからだ」
 ピコピコと、コントローラーのボタンをリズムよく叩き、ゲームを楽しんでいる勇治。
 彼もまた、数学が極端に苦手だった。飛鳥が言う。
「だったら、俺に英語を教えろ!」
「それは無理だ」
「なぜだよ?」
「俺が日本人だからだ」
「んな理由が通用するか! 俺だって日本人だぞ!」
 呆れる。そんな時、二人のドライヴが鳴り出した。
 電話だ。相手は「明日香」と表示されている。意外とタイミングが良い。
「もしもし?」
『あ、飛鳥君? 私、明日香だよ』
「うん。って言うか、明日香、俺に対等接続詞……つーか、英語を教えてくれ!」
『え!? う、うん……別に良いけど……』
「助かる! 今日の夜でも大丈夫か!?」
『うん、大丈夫だよ。何かお夜食作ってから持ってくるね』
 そして電話を切る。飛鳥は軽くガッツポーズをした。
 これで明日のテストは大丈夫だ。
「ああ。飛鳥の家で勉強中だ。……気をつけろ。じゃあな」
 ちょうど、勇治も電話を切る。そして、飛鳥に向かってこう言った。
「今、俺達の偽者が悪さをしているそうだ」
「偽者? ……おいおい、今さら偽者かよ」
「大丈夫だ。亜美達が今からそいつらを倒す」
「……うわ、不安だな」
 勉強に集中できなくなる飛鳥だった。



 電話を終え、明日香はほっとしていた。
 やはり飛鳥本人ではなかった。それだけでも、心が救われる。
 そんな明日香を見て、美里がニヤついている。
「ストロベリートークだったね〜。ね、やっぱり彼の事が好きなの?」
「え!? そ、そんな事……」
「本当の事言っちゃいなよ〜。ねぇ〜」
「美里さん、そう言う事は……」
 言い寄る美里を止める曜。明日香は頬を真っ赤に染めていた。
 もし、これが本人の前で聞かれていたらと思うと、もう顔を見られないような気がする。
 亜美が電話を終え、すぐに言った。
「お兄ちゃん、勉強中みたいです。飛鳥さんと一緒に」
「じゃあ、二人は一緒にいて、バトルはしてないわけだ」
「それじゃあ、あの人達が偽者さん達ですねぇ」
 姫里の双子の妹であり、『チーム・アレス』のメンバーである天鷹千里(あまたか せんり)が言う。
 彼女が見ている先には、セルハーツとディル・ゼレイクに似たドライヴが映るモニターがあった。
「……千里、それを早く言ってよ」
「本物だったらどうしようかと……」
「……はぁ」
 姫里がため息をつく。そしてすぐに美里が動いた。
「そこの偽者さん達! 有名な『ソード&マグナム』の偽者やったって、全然人気出ないわよ!」
 その言葉に反応したのか、偽者達がコクピットランサーから降りてくる。
 一人は半袖のジャケットにいくつものドライヴをつけている男。もう一人は両手に紙袋を持った男だった。
 しかも、紙袋にはたくさんの人形が入っている。
「うわっ、思いっきりオタクじゃん……」
「姫里ちゃん、そんな事言ったら、相手に失礼ですよぉ」
「……千里、あのね」
「明日香さん、オタクって?」
「……今度教えてあげるね」
 二人の男を見て、明日香、亜美、姫里、千里が小声で話し合う。
 ジャケットを着ている男が、「ん?」と美里達に話しかける。
「俺達のやり方に文句があるのか?」
「大有りよ! 偽者なんてやっても、あの二人はそう簡単に『フォース・コネクター』剥奪はならないのよ!」
「そんな事関係ないんだなー」
 両手に紙袋を持った男が言う。
「僕達はただ、彼らが気に食わないだけなんだな。天才コネクターだとか、周りから有名がられてるのが」
「それって、ただのひがみでは?」
 曜の言葉。美里が「ナイス」と言葉を続ける。
 ジャケットを着た男が、二人の言葉で怒りに震えている。
「……テメェら」
「何? 文句があるなら、バトルで受けて立つけど? コンビバトルで」
「上等だ。けどな、コンビバトルなんて事は言わねぇ。お前らは6人で構わないぜ」
「だな。僕達は最強の『ソード&マグナム』なんだな」

 ――――そのバトル、両チームの合意と確認しましたっ!

 バトル・フィールド中心に穴が開き、そこからタキシードを纏ったおじさんが出てくる。
「ただ今より、このバトルは公式バトルと認められました。審判は私、リュウマチ小暮さんがやりますっ!」
「うわ、やっぱり出てきたよ、あの人……」
「み、美里さん……」
 審判が説明を始める。
「今回のバトルは、2対6と言うバトルである為、チーム戦とさせて頂きます! それでは、コネクトを!」
「ちゃちゃっと終わらせちゃうわよ、曜!」
「はいっ! 全力で参らせてもらいます!」
「曜、燃えてるね……。千里、私達も!」
「ああ〜、待ってぇ、姫里ちゃん〜」



 バトルは総当たり戦。先に全滅した方が負け。
 明日香は、『チーム・エンジェル』と『チーム・アレス』の混合に対し、「良いのかな……?」と思った。
 そんな明日香を、ローズウェルに乗った美里が「気にしない、気にしない」と答える。
「それに、今回は蓮杖君の為なんだし!」
「そうだけど……」
「大丈夫! こっちには、Sランクが一人いるんだし!」
 そう、『チーム・アレス』の一番の強みはSランクのコネクターである曜の存在だ。
「今日も頼むわよ、曜!」
「それは構わないですけど……美里さん、その武装は……?」
 曜がローズウェルを見て訊く。確かに、今までのローズウェルとは違っている。
 いつも持っているロングライフルは背中に回っており、手にはやや刀身の長い剣を持っている。
 美里が待ってましたと言わんばかりに、説明を始めた。
「これぞ、稼ぎに稼いだポイントを費やしたローズウェル! その名も、ローズウェル・ブレードカスタム!」
「カスタムって……美里、よくそんな事できるわね……」
「伊達に、勝って負けての繰り返しばっかりやってないもの」
 こんな時、美里の実力と言うのはかなり適当だったりする。
 しかし、ドライヴを作ると言う事に関しては、実は意外と凄かったりするのかもしれない。
『へん、意外と強そうなドライヴばかりみたいだ』
『レア・ウェポンがあるかもしれないんだな。早く倒して奪ってやるんだな』
 対する偽者コンビのドライヴが構築され、姿を見せる。
 青い装甲に覆われ、セルハーツと同じ外見のドライヴ。そして、漆黒でディル・ゼレイクに似たドライヴ。
 しかし、二機のドライヴの武装は、本物と全く異なっていた。
「……全然似てないじゃない、特に武装! そんなので偽者やってて恥ずかしくない、おっさん達!?」
『おっさんじゃない! これでも俺らは20歳だ!』
『失礼な奴らなんだな。僕のディル・ゼントクでやっつけてやるんだな』
『こっちも、セルギートの強さを教えてやるよ!』
 名前も微妙だった。そう美里は思う。
 しかし、勝てる相手だ。Aランクのコネクターだが、こっちにはSランクの主戦力が入る。
 なにより、6人もいれば楽勝だろう。
「それでは、コネクト・バトル……ファイトォォォッ!」
 審判が始まりを告げた。



 先手必勝。そう言わんばかりに、曜のブラックダイヤモンドがバトル・フィールドを駆ける。
 まず先に倒すのは、セルハーツを似せたセルギート。
 刀を一本手にし、振り落とす。
「飛燕!」
 真空刃が放たれる。セルギートは瞬間的に避けた。
 ビームセイバーを手に、セルギートがブラックダイヤモンドとぶつかり合いを始める。
『ふん、Sランクだからって、Aランクを甘く見てんじゃねぇぜ』
「……強い。でも、これ位なら」
 一度、ソード・マスターである飛鳥とバトルしてから、本当の高みを目指していた。
 逆に、この程度の相手とバトルをすると、絶対に飛鳥の時と比較してしまう。
 勝てる。刀を鞘に戻して、曜は確信した。
「行きます――――」
「エアブレード!」
 ブラックダイヤモンドの後ろから放たれた風の刃。曜が目を見開く。
 ローズウェルがロングライフルを手に、さっきの技を放っていた。
「今の……!?」
「これが、ブレードカスタムの必殺技! ……蓮杖君の技のパクリだけどね」
「ですが、ロングライフルで出来るわけ……」
「これ、ロングライフル・ナギナタ。ブレードカスタム用に、ロングライフルにビームセイバーを組んだの」
 言われてみれば、ロングライフルの銃口にビーム状の刃が構成されている。
 やはり、大滝美里と言う友人は、結構侮り難い人である。
 セルギートに乗る偽者が舌打ちする。接近戦型のドライヴを二体相手にするのは厳しかった。
『いざとなったら、”アレ”を使うしかねぇな』



 ディル・ゼントクに乗る『マグナム・カイザー』の偽者は、何度も驚いては、何度もピンチになっていた。
 攻撃をしようとする度に、遠距離から威力の高い攻撃が邪魔をしてくる。
「敵の位置送信。姫里ちゃん、ここ」
「オッケー。グングニル、クールダウン完了。攻撃!」
 千里の乗るきのこ型のドライヴ・ヘイムダルの前に、姫里のドライヴ・オーディンが立つ。
 ドライヴの全長の二倍はあるかと思われるライフルを撃つ。
 ディル・ゼントクはそれをどうにか避けるが、その攻撃の着弾による爆発は、ドライヴを吹き飛ばした。
『な、何だな!?』
「あちゃ、命中してない……」
「大丈夫。次の発射の時までには、完璧な位置送るから」
 千里の言葉に、姫里は頷く。こう言う時の千里は、普段からは想像できないほど頭が冴える。
 正直、心強いのだ。美里が千里にドライヴを勧めたのも頷けるかもしれない。
『な、なんだか強いんだな……!?』
『強くねぇよ、ブタ。まだ”アレ”があるだろが』
『ぶ、ブタじゃないんだな! 確かに、まだ”アレ”があるんだな』
 二人がニヤリと勝利を確信する。
『このバトル、良い収穫になるぜ』
『僕もそう思うんだな』
 偽者二人は、互いに頷くのだった。



次回予告

 黒石曜です。
 蓮杖君達の偽者の二人を相手に、私が習得した剣術が通用しない……!?
 こうなったら、あの技を……。え? 美里さん、秘策って……?

 次回、CONNECT07.『発動、必殺の合体攻撃』

 ドライヴ・コネクト。美里さん、本当に大丈夫なんですか?



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