CONNECT07.『発動、必殺の合体攻撃』


 ドライヴで英単語の問題を解きつつ、飛鳥はショップへ向かった。
「……バトルが行われているのか。って、バトルしてるのは明日香達だし……」
 身近にあるコンピュータにドライブを接続し、相手のデータを調べる。
 偽者達のランクはAランク。まぁ、『チーム・アレス』の一人、黒石曜がいれば大丈夫だと思う。
 しかし、何か忘れているような気がする。
「あの二体……前に一度制裁下したような覚えがあるよな……」
 しばし思い出そうとするが、なかなか思い出せない。
「……ま、いざとなったら俺がコネクトすれば良い事だし」
 無責任な気もするが、今は無闇に動かない方が良いだろう。
 そんな事を思っていた矢先、モニターの前で奴らは行動に出た。



 ブラックダイヤモンドがセルギートに連続で刀を振るう。相手は舌打ちした。
 Sランクのコネクターの中には、自分の得意な戦い方をさらに特化できるコネクターがいる。
 今戦っている相手こそ、まさにそれだ。
『チッ、こいつだけ強いな。おい、ブタ!』
『ブタじゃないって言ってるんだな! こっちも苦戦中なんだな!』
 遠距離からの攻撃をどうにか避けつつ、ディル・ゼントクのコネクターが言う。
 同じAランクにしては、アクティブ・ウェポンの威力が強い。やはり、レア・ウェポンだ。
『レア・ウェポンは手に入れるんだな! 見せてやるんだな、ディル・ゼントクの実力!』
『よし、やるぞ!』
 セルギートが左腕を切断する。ブラックダイヤモンドを動かす曜がその行動を止める。
 ディル・ゼントクが手足を本体に格納し、巨大な盾と変形する。セルギートと合体した。
 セルギートが右手にチェーンソーが刀身についている剣を手にする。
『ファイナル・シールドなんだな』
『これで、お前らの負けは確定だな』
「ちょっと待てなさいよ! 合体機構はルール違反でしょーが!」
『知った事か! 勝ちゃ良いんだよ、勝ちゃあよ!』
『そうなんだな! レア・ウェポンは必ず手に入れるんだな!』



 モニターが見れるベンチに腰掛け、何気なく自販機で買った紅茶を飲みつつ、飛鳥は思い出した。
 いや、奴らがそれをやったから思い出したと言った方が正しいか。
「……そう言えば、あいつら合体機構持ってたんだっけ。あれは硬いんだよな、確か」
 倒す時も、勇治との必殺技を使って倒した記憶がある。
「偽者と言うのは、やはりあいつらか」
「ああ。俺らが『フォース・コネクター』なったばかり――――って、帰ったんじゃなかったのか?
「亜美が心配だった」
 ベンチに腰掛け、『マグナム・カイザー』である勇治が答える。
 ちなみに、二人の試験勉強はどうなったかと言うと、あれから集中できなくなり、勉強は終わりにした。
「あれを破るには、やはり『スキル・プログラム』が必要になるな」
「……けど、亜美ちゃんは当然の事、明日香は持ってないんだよな。って、俺らも使ってないだろ。
 あとは、『チーム・アレス』の彼女達が持ってるかどうか」
「いざとなれば、俺達が出れば良い」
「もう少しだけ様子を見てな」
 英単語を覚えつつ、飛鳥は紅茶を飲み干した。



 違法を行った相手に、曜は斬撃を繰り出した。
 ブラックダイヤモンドが、二本の刀を巧みに操る。
『無駄だって言ってるだろぉ!』
 セルギートが盾を前に出し、受け止める。全く攻撃が通用しなかった。
『いくらSランクでも、こいつだけは破れねぇよ!』
『そうなんだな。このシールドを甘く見てはいけないんだな』
「……でしたら、この技で……!」
 ブラックダイヤモンドが刀を腰の鞘に二本とも納める。全感覚を加速させた。
 あの盾を壊すには、もうあの技しか残っていない。
 集中力を高め、ブラックダイヤモンドが左腰の鞘に納められた刀の柄に手をかける。
 それをローズウェルが止めた。
「ちょっと待った。あれを使ったら、ブラックダイヤモンドが壊れるでしょ?
 そんな事なったら、もしあの盾壊せても、もう一体が残っちゃう。主戦力は残っておかないと」
「ですが、他に方法が……」
「大丈夫。ちゃんと秘策があるから」
 美里がVサインを見せる。曜は小さく頷いた。
「姫里、千里。こっちでどうにかするから、”アレ”使って盾の方壊しちゃって」
「……”アレ”って、タイミングとかが難しいんだけど」
「大丈夫、大丈夫! 星川さんは姫里の援護で、亜美ちゃんはこっちの援護頼める?」
「う、うん。別に良いけど……秘策?」
 明日香が首を傾げる。美里は「任せて、任せて」と返した。
 ローズウェルが実体剣を手に、セルギートへと突撃する。
「と言う事だから、勝たせてもらうわね」
『何ふざけた事言ってんだよ、テメェ!』
 セルギートが剣を振り落とす。
「そんな攻撃が通用するわけないでしょ、ローズウェルに!」
 セルギートの剣をローズウェルが剣で受け止める。美里は曜に一つのデータを転送した。
 曜がその中身を確認して、目を見開く。
「美里さん、これ……!?」
「ローズウェルとブラックダイヤモンドの『スキル・プログラム』! これで、あの盾を攻撃するわよ!」
「け、けれど、これって接近戦タイプのドライヴ二体じゃないと……」
「だから、ローズウェル・ブレードカスタムなわけ♪」
「……そう言う事ですね……」
 美里の行動が読めたのか、曜は渋々頷いた。
 二体以上のドライヴで発動させる『スキル・プログラム』。その威力は通常の技よりも上回る。
 美里は試そうとしている。一度も練習していない『スキル・プログラム』を。
「……秘策って、『スキル・プログラム』による合体技の事だったんですね」
「当たり前でしょ! これなら、間違いなくあの盾を攻撃できるから!」
「はい!」
 ローズウェルとブラックダイヤモンドが同時に構える。美里が『スキル・プログラム』を発動させた。
「必殺! 飛燕・風牙裂刃!」
 二体が同時に振るう。放たれた真空刃とビームセイバーが一つに重なった。
 一つになった事で、真空刃の威力が増し、勢いを加速させる。
 セルギートが盾で防御する。刹那、真空刃を受け止めた衝撃で盾が吹き飛んだ。
『何!?』
「姫里、千里!」
「分かってる!」
「はぁ〜い」
 グングニルを事前に構え、オーディンが吹き飛ばされた盾へと狙いを定める。
「姫里ちゃん、敵照準チェック。座標地はここだよ」
「OK! こっちと同じ!」
 ヘイムダルから送られてきたデータと、オーディンの方のデータを重ねる。
 全一致。狙いを定めたまま、姫里が『スキル・プログラム』を発動させる。
「スレイプニル発射! ラグナロク!」
 背中に搭載されている二発のミサイルを撃ち、グングニルが火を噴いた。
 盾へと変形しているディル・ゼントクが空中で体勢を整えようとするが、二発のミサイルを受ける。
 そして、落下位置にグングニルの弾が着弾し、大爆発を起こした。
『な、なんだなぁぁぁぁぁぁ……』
「ラグナロク大成功〜」
「これで、一体撃破っと」
 グングニルのクールダウンを確認しつつ、姫里と千里が美里に合図を送る。美里はVサインを返した。
 セルギートが剣を大きく振り上げる。
『盾が壊れても、俺だけで勝てりゃ十分なんだよぉ!』
「いいえ、あなたの負けです」
 一瞬だった。ブラックダイヤモンドがセルギートの懐へ入り込んでいる。
『いつの間――――』
「いざ――――」
 左腰に納められた刀を引き抜き、セルギートを斬る。
 しかし、それだけでは終わらず、ブラックダイヤモンドは納刀と抜刀を繰り返す。
 全部で17もの軌跡が、セルギートを切り刻んだ。
『ぐあぁぁぁ!?』
「……奥義、瞬……斬らせて頂きました」
 刀を納める。
「バトル終了! 勝者、『チーム・アレス』、星川明日香、荻原亜美!」
「……あの、明日香さん」
「……うん。出番なかったね、私達……」



「意外と強くなりつつあるな、『チーム・アレス』は」
「……まぁ、Sランクが一人にAランクが二人いるからな。普通は強いんだよ」
 そう、ドライヴの性能と言うものを除けば、『チーム・アレス』と言うチームは強いのだ。
 ドライヴで英単語を覚えつつ、彼女達が戻ってくるのを待つ。
 そんな矢先、ジャケットに大量のドライヴをつけている男と、両手に紙袋を持った男が逃げる姿を確認する。
 やはりあいつらだ。しかし、両手に紙袋を持った奴は前より太っている気がする。
「あ、飛鳥君!?」
「……よ」
 こっちに気づいた明日香に手を上げる。勇治はドライヴで時間を確認していた。
 美里が飛鳥の前に立つ。
「蓮杖君、見てた見てた!? どうだった、私の必殺技!?」
「……とりあえず、俺のパクリじゃないか」
「パクリで悪かったわね! あれでも、色々と研究したのよ!?」
 それから、話が長くなる。飛鳥は無視して、やや背伸びをした。
「……さて、そろそろ帰って勉強するかな」
「って、無視しないでよ!」
「美里さん、私達もそろそろ帰らないと……明日も期末試験ですし……」
「そう言えば、明日は数学と英語だっけ……千里、数学教えて……」
「うん、良いよ」
 曜が明日香達に一礼する。飛鳥もそれに応じた。
 曜を筆頭に、『チーム・アレス』がその場を去っていく。リーダーである美里は渋っていたが。
 勇治が自販機でコーヒーを買いつつ、飛鳥に一冊のノートを見せた。
「借りていく。亜美、帰るぞ」
「……何で俺の数学のノートを持ってんだよ!? 明日、必ず返せよ。それ、提出するんだからな!」
「分かっている」
「飛鳥さんに明日香さん、さようなら〜」
「うん。またね、亜美ちゃん」
 手を振りつつ、勇治と亜美も去っていく。飛鳥は溜め息をついた。
「……はぁ、今回はキャラ多過ぎだよな。しかも、主人公とヒロインの出番少なかったし」
「何の話?」
「いや、こっちの話。それより、今から少しだけでも英語教えてくれないか?」
「うん、良いよ」
 そして、一緒に帰路を共にする二人だった。

 次の日、「『ソード&マグナム』が敗北した」と言う嘘の噂を流そうとした美里がいたのは余談である。



次回予告

 こんにちは、亜美です。
 夏休みに入って、明日香さんが不機嫌なんだけど……ああ、そう言う事なんですね。
 いつも大変ですね、飛鳥さん。でも、それが人気者の運命です。

 次回、CONNECT08.『空の女王が招いた誤解を解く為に』

 ドライヴ・コネクト! え、お兄ちゃんに恋人!?



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