バトルが開始し、紅葉のクリムゾン・ティアーズが早くも駆ける。 全長より長い槍が瞬時に繰り出された。 「赤光!」 瞬速とも言える突き。それを鷹のカラーリングが施されたドライヴ――――グロウファルコンは受け止めた。 一本の剣が全体的に大きく展開され、ビームシールドを張っている。 「止められた!?」 「……飛鳥君に教えられた防御法って……やっぱり難しい」 グロウファルコンが持っている武装で、防御としても役立てるように作られた実体剣カタルシス。 その扱い方は明日香にとって難しいものの、防御はシールドウイングを上回っている。 槍――――ショット・ランサーを構え直し、クリムゾン・ティアーズが距離を取る。 「……一筋縄では行きませんか」 Cランクのコネクターとは言え、油断は大敵。リーダーから前々から言われている事だ。 それに、グロウファルコンと言うドライヴは、過去最強の『ソード・マスター』を相手にしたと聞いている。 「お強いですね。彼のドライヴとは言え、上手く動かせています」 「そ、そんな事ないよ……今のだって、どうにか動かせたって感じだし……」 「それが強さなのです。ランドライザー・コマンドがサブリーダー、鳴澤紅葉。本気で参ります」 最強のチームのサブリーダーが、その集中力を研ぎ澄ませる。 「赤雨!」 ショット・ランサーによる神速とも呼ばれるかのような高速の連続突きが放たれる。 実体剣カタルシスを手にしたまま、グロウファルコンはその技を受け止めた。 突きによる攻撃が、じりじりとシールドによる防御を打ち崩そうとする。 「……っ」 「これで終わりです! 紅華!」 距離を取り、シールドを投げつける。そして、ミサイルを一斉射出して動きを止めた。 クリムゾン・ティアーズが身を低くし、ランサーを再び繰り出す。 「赤光!」 「――――! 今……!」 グロウファルコンがカタルシスで突きを防御し、背中からゴッドランチャーを取り出す。 砲口がちょうどクリムゾン・ティアーズと密着する。 「零距離!?」 「ええい!」 ゴッドランチャーにエネルギーが込められ、放たれようとする。瞬間、紅葉はランサーを地面へ向けた。 ランサーの先端を射出させ、地面で爆発を起こし、その反動を使って上手く避ける。 明日香が唖然と驚く。紅葉も自分が取った行動に驚いていた。 「……飛鳥君に教えてもらった方法、失敗しちゃったのかな……?」 「……避けれた……あと少し遅かったら、自分の負けだった……」 お互い、相手の行動に驚き、唖然としている。紅葉はすぐに今の現状を確認した。 上手く避けたものの、クリムゾン・ティアーズの機能が低下している。刹那の閃きは、とんでもなかった。 グロウファルコンの方を向き、「自分の負けです」と紅葉が言う。 明日香は目を見開いて驚いた。 「え!? で、でも、まだ……」 「いいえ、あの零距離には驚きましたし、クリムゾン・ティアーズの機能も低下しています。自分の負けです」 「で、でも……」 「負けです。星川さんの勝ちです」 素直に、紅葉はそう言った。 亜美の乗るエル・センティアと晃鉄の乗るスキルヴィングが対峙する。 晃鉄は、静かにメガネをくいっと上げた。 「あの『マグナム・カイザー』の妹だったか、確か。負けるわけにはいかないが、少し腕前を見てみるか」 『マグナム・カイザー』の妹となれば、間違いなく兄譲りの強さを持っているはず。 そう思っていた矢先、エル・センティアが転ぶ。 「あう!?」 「…………」 突然転んでしまった。流石に、こればかりは沈黙してしまう。 ランクもまだEランクと言う事は、まだ初心者だ。もう、Cランクくらいになってもおかしくないのだが。 晃鉄がゆっくりと構える。 「……あまり気が気ではないが、こちらから行くぞ」 棍棒を大きく振り回し、スキルヴィングがその雄々しく構える。 「岩砕裂破!」 大地に強く叩きつける。砕かれた大地の破片が弾け飛び、エル・センティアを襲う。 瞬間、バトル・フィールドが大きく揺れる。晃鉄はすぐに反応した。 「……乱入か? しかし、ここまでフィールドが揺れる事は……」 その矢先、その原因は目の前に姿を現した。 バトルを観戦していた時に、ドライヴのアラーム音が鳴り響く。飛鳥とゴウが立ち上がった。 モニターに映し出されているバトルの状況を確認し、ゴウがドライヴを構える。 「ゴウさん、俺も……」 「今回は僕だけで良い。それに、紅葉や晃鉄もいる」 「けれど、『幹部』が動いているんだったら、奴らだって……」 「大丈夫。僕は、『ディフェンド・キング』なんだよ?」 軽く余裕の表情を浮かべる。飛鳥は苦笑した。 確かに、心配しなくても良さそうな気がする。 「分かりました。けれど、状況によっては、俺もコネクトしますから」 「うん。頼むよ、『ソード・マスター』」 コクピットランサーにドライヴを接続する。 「ドライヴ・コネクト! 出でよ、プラディ・ラ・グーン!」 バトル・フィールドを襲う突然の地震。紅葉がランサーを構える。 巨大な腕を持ち、それに見合うかのようなハンマーを持つドライヴが目の前に見える。 「……乱入者、かな?」 「……そのようです。星川さんはコネクト・アウトを。ここは私に任せてください」 「え? でも、ここは飛鳥君達に任せた方が……」 「いえ、リーダーが戦うまでもありません」 クリムゾン・ティアーズが敵へと突撃する。 「赤雨!」 連続の突きが繰り出される。乱入してきたドライヴはそれを受け止めた。 巨大な腕がシールドを形成し、巨大なハンマーが振り上げられる。そして、振り落とされる。 クリムゾン・ティアーズが瞬時に避ける。ハンマーが振り落とされた大地から地響きが起きた。 乱入してきたコネクターが鼻で笑う。 『弱いな。その程度で俺を倒す気だったか?』 「意外と防御力が高いみたいですね。しかし、自分は負けません」 『面白い。ダーク・コネクター幹部、キング・オブ・バリアと呼ばれた俺に勝てると思うな』 ダーク・コネクターと名乗った相手が、紅葉に襲い掛かる。 晃鉄の目の前に出現したドライヴ。それは、奇妙なものだった。 外見こそ、ガトリングの両腕にしている普通のドライヴなのだが、動きが機械的過ぎるのだ。 「……この動き、”オートマータ・システム”か」 開発されたものの、違法パーツと決定され、廃止されたはずの自動操作システム。 それは本来、コネクターに不足している部分を補う事を目的とされていた。 しかし、それを利用した違法行為が増加し、全て撤廃されたはずだ。 自動人形と化しているドライヴのガトリングが、容赦なく晃鉄のスキルヴィングを襲う。 「くっ、岩砕裂破!」 大地を砕き、その破片を飛ばす。そして、亜美の乗るエル・センティアに近づいた。 「動けるか?」 「は、はい……」 「すぐにコネクト・アウトするんだ。もう、これはバトルじゃない」 「は、はいっ」 エル・センティアがすぐに姿を消す。晃鉄は棍棒を目の前で回転させた。 放たれるガトリングの弾を全て弾き飛ばし、続けて大地に棍棒を突き刺す。 「旋風衝撃!」 棍棒を軸に、スキルヴィングが回転を始め、竜巻と化す。 無人ドライヴがガトリングを撃つが、弾は全て竜巻の前では無力と化していた。 敵に近づき、スキルヴィングが棍棒を構える。 「煉獄綜雨!」 高速の突きが連続で放たれ、無人ドライヴを襲う。無人ドライヴの動きが止まった。 その好機を逃さないように、スキルヴィングが低く構える。 「牙突金剛砕!」 神速とも呼べる速さの突きを繰り出し、無人ドライヴを棍棒が貫く。 無人ドライヴの破壊に成功し、晃鉄が軽く息を漏らす。途端、スキルヴィングが機能を停止した。 旋風衝撃による負担を回復させる為のクールダウン。しかし、続けて技を放ったせいで、余計に時間がかかる。 「俺としては、らしくない行動を取ってしまったな」 メガネをくいっと上げ、少しだけ微笑む晃鉄だった。 キング・オブ・バリアと名乗った男の強さは、紅葉では太刀打ちできないほどだった。 どれだけ攻撃しても、その巨大な腕とハンマーによって、全て防御されてしまう。 「くっ、赤雨!」 連続の突きを繰り出す。しかし、すぐに受け止められた。 『効かねぇっつってんだろ? 俺は、あのディフェンド・キングよりも強いんだからな!』 「リーダーは、あなたのような人間には負けない!」 距離を取ってシールドを投げつける。 そして、ミサイルを一斉射出し、敵の周りで爆破させ、煙で目を眩ませた。 「はぁ!」 好機を狙い、無数の突きを繰り出す。 「これが、自分の持てる最高の奥義! 『紅牙』!」 無数の突きの中から、強烈な突きを繰り出す。刹那、いとも簡単に受け止められた。 巨大な腕がクリムゾン・ティアーズのランスを握る。 『そんな小細工で俺を倒したつもりか!』 巨大なハンマーが襲い掛かる。紅葉はランスを手放して後ろへと下がった。 途端、クリムゾン・ティアーズの動きが鈍くなる。紅葉は焦った。 状態を確認すると、連続で技を繰り出した事で、エネルギーの残量がほとんどなかった。 「そんな……!?」 『終わりだな!』 巨大なハンマーが再び振るわれる。 ――――アルティメットシールドッ! ハンマーが防御される。キング・オブ・バリアは目を見開いた。 攻撃を受け止めたドライヴ。その装甲は純白で美しく仕上げられ、一切の乱れがない。 ドライヴが手にする巨大な盾は黄金に輝き、吸い込まれそうなほどの美しい盾だ。 「大丈夫か、紅葉?」 「り、リーダー……申し訳ございません、油断してしまいました……」 「いや、良い。あとは俺に任せろ」 純白で黄金に輝く巨大な盾を持つドライヴに乗って、『ディフェンド・キング』のゴウは現れた。 ゴウの乗るドライヴ、プラディ・ラ・グーンがクリムゾン・ティアーズを立ち上がらせる。 そして、すぐに敵を睨みつけた。 「紅葉、君はすぐにコネクト・アウトを! そして、ダーク・コネクター!」 巨大な盾を前へ突き出し、その威圧感を叩きつける。 「ランドライザー・コマンドがリーダー! 『ディフェンド・キング』ゴウボーグ=レンダリム、参る!」 『ようやくお出ましかよ、フォース・コネクター!』 ハンマーを手にしていない方の巨大な腕が襲い掛かる。 「ラ・グーン……クラッシャァァァーッ! おぉぉぉっ!」 シールドを手にしていない左腕にエネルギーを込め、殴る。巨大な腕が砕かれた。 相手が目を見開く。ゴウは瞬間的に敵ドライヴの弱点を見出した。 瞳が鋭く、そして威圧感を放ちつつ、敵ドライヴの頭部に見えた光を捉える。 「バハムート・ティアッ! むんっ! はぁぁぁああああああっ!」 アルティメットシールドに装備していた巨大なビームアックスが姿を現し、振り落とされる。 キング・オブ・バリアの乗るドライヴの頭部のみを見事両断し、瞬間的にバリアで囲む。 「ジェノサイドォォォッ、クラァァァッシュッ!」 無数のビームが集中して敵ドライヴを攻撃する。その強さは圧倒的だった。 キング・オブ・バリアが歯を噛み締め、闘争心をむき出しにする。 瞬間、とてつもない恐怖感が彼を襲う。ゴウは鋭く睨みつけた。 暗黒のローブを纏い、漆黒に染まった天使の翼を持つドライヴ。キング・オブ・バリアが驚く。 『な……イブリス!?』 『いかにも、私は絶望へ誘う者・イブリスだ。キング・オブ・バリア』 イブリスと呼ばれた存在が、その瞳でキング・オブ・バリアを見下す。 バトル・フィールドの様子を見ていた飛鳥は、コネクト・アウトした明日香、亜美と合流した。 「明日香、無事だったんだな。良かった」 「う、うん……。それで、バトルはどうなったの?」 「さっきゴウさんが片付けたんだけど、厄介な奴が現れた」 「”絶望へ誘う者”か。最強の幹部のお出ましだな」 「……って、登場が遅いんだよ、お前」 ビシッと。突然現れた勇治にツッコミを入れる。しかし、いつもとは違ってやる気がなかった。 いつものように無愛想な顔をしている勇治を見て、亜美が言う。 「お兄ちゃん、朝に比べると結構やつれてるよ?」 「……何してたんだよ、お前?」 「……訊くな。何も思い出したくない」 何があったのかは知らないが、勇治がそんな事を言う時は、大抵、酷い目に遭っている時である。 バトル・フィールドで、キング・オブ・バリアがイブリスに叫んだ。 『イブリス! ま、待ってくれ、俺はまだ……!』 『何を言うか。敗者には”死”あるのみだ』 暗黒のローブを纏うドライヴがその手を空へ掲げる。 『デス・ハンド』 「――――! 明日香!」 「え……――――きゃっ!?」 飛鳥が明日香を抱きしめ、彼女の顔を自分の胸に押し付ける。勇治も亜美の目と耳を手で塞いだ。 飛鳥の取った行動に、明日香は頬を朱色に染める。刹那、悲鳴が聞こえた。 や、やめろぉぉぉぉぉぉっ……――――。 悲鳴の後、何も聞こえなくなる。否、何かが潰れる音――――とても嫌な音が聞こえる。 ぐしゃりと潰れる音。明日香がそれを聞いて、飛鳥の服を強く握る。 「……いつ見ても、えげつない事するよな、奴も……!」 明日香を強く抱きしめ、少しでも安心させようとする。飛鳥は敵を睨んだ。 バトル・フィールド上で、巨大な腕とハンマーを持つドライヴが潰され、人の潰れる音も聞こえた。 しかし、潰れたのはドライヴだけだ。人の潰れる音は、あくまで演出のようなもの。 ドライヴによる殺人。それは、相手を廃人にする事。 『キング・オブ・バリアの無礼は、これで慎ませて頂きます』 『イブリス、何しにここへ来た!』 『今回は勝手な行動を取った愚か者の裁きのみです。しかし、これだけはあなた方に伝えておきましょう』 イブリスが静かにゴウを見る。 『我々の計画が成就する時が来ました。次に戦う時は、そのレガリアを我らが手中に』 『そんな事はさせん! ディフェンド・キングの名において、俺はお前達を倒す!』 『ふふふ……そう言っているのも今のうちです』 イブリスが姿を消す。全てを見ていた飛鳥は、「奴には気をつけないとな……」と呟いた。 ダーク・コネクター幹部のトップであるイブリスまでもが動き出した。 ここまで来れば、おそらく奴らもすぐに動き出すはず。 「望むところだ。俺の相手はあくまで、あの銃を持つ奴だけだからな」 「……そうだな。気をつけなきゃならないのは、これからなんだよな」 この時、飛鳥の言葉に反応したのか、ドライヴの中で眠るファルシオンセイバーは静かに光を放っていた。 ちなみに、飛鳥が明日香を抱きしめたままである事に気づくのは、これより数分後の事だったりする。 次回予告 こんにちは、亜美です! 最近、『チーム・エンジェル』の調子が良くて、3連勝達成しました! お兄ちゃんの助けがあったけれど……。 そんな時、飛鳥さんから、あるチームを紹介してもらって……。 次回、CONNECT12.『ソード・マスターに憧れる少年』 ドライヴ・コネクト! えぇ!? こんな子がコネクターなんですか!? |
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