「バトル終了! 勝者、『チーム・エンジェル』!」 「わーい、これで三連勝〜!」 最強チーム『ランドライザー・コマンド』とのバトルから一週間。『チーム・エンジェル』は好調だった。 と言うのも、『マグナム・カイザー』もバトルしているからなのだが。 飛鳥が「やれやれ」と溜め息をつく。 「勇治、お前が出たら意味ないってば……たとえ、3連勝しても」 「何を言う。あと一回勝てば、亜美はランクアップする」 「……いや、結果的にランドライザーとのバトルは無効だったから、あと2連勝だ」 チーム戦においてのランクアップは、シングル戦より少しだけ規定が多い。 通常、ランクアップは相手が同ランク以下であれば5連勝。相手が上のランクであれば1ランクアップ。 それはチーム戦でも同じだが、相手チームの一番ランクの高い相手より上のランクがメンバーにいれば別だ。 つまり、Eランクの亜美とCランクの明日香、SRの勇治がメンバーによるバトルでは、5連勝が基本になる。 しかも、チーム・エンジェルは一度どこかのチームとバトルして、負けているらしい。 「そう言えば、ゴウさんとことバトルする前に、どことバトルしたの?」 「えっと……『チーム・アレス』です」 「……そりゃ、負けるよな」 亜美の返答に飛鳥が納得する。『チーム・アレス』は、その構成はともかく、実力はあるチームだ。 その中でも、主戦力の強さは半端じゃない。負けて当然と言えば当然だ。 勇治が言う。 「俺に言えば、いつでも参戦すると言ったはずだぞ、亜美」 「だから、お前が出たら意味ないんだってば。明日香達の為にも」 「だったら、勝てる相手をお前が探せ」 「あのな……」 勇治の言葉に肩を落とす。 「……そうだ。明日、あるチームの練習に付き合うんだけど、試しにバトルしてみるか?」 「あそこか。亜美でも勝てるな」 「だから、そう言う事じゃないって……」 暗い闇に包まれた部屋で、不気味に光りを発するパソコンの液晶画面。 画面に表示されている一体のドライヴを眺めていたところで、隣の液晶画面に人影が映し出される。 「……イブリスか」 『はい。キング・オブ・バリアの報告を行いに』 「始末したか?」 『はい。ディフェンド・キングとのバトルにて敗北しました故に、私自ら』 「そうか」 キング・オブ・バリアは幹部の中で一番弱い幹部だ。 確かに、SRクラスのコネクターでも苦戦はするだろうが、『フォース・コネクター』の前では通用しない。 イブリスに彼が言う。 「すぐに新しい幹部を立てろ。それから、彼らにも動くように伝えておけ」 『……もう動かす気でございますか?』 「そうだ。これ以上、『フォース・コネクター』には、私の邪魔をされては困るからな」 静かに彼はそう答えた。 次の日の午前中。飛鳥達は電車を使って、いつも行っているショップとは別のショップに集まった。 しかし、『マグナム・カイザー』の姿がない。 「あれ? また勇治は?」 「あ、今日の朝、いきりなりマリアさんから電話があって……」 「……なるほど、また呼び出されたわけだ」 もはや苦笑するしかない。 「ま、そのうち来るだろう。とりあえず、昨日話したチームの所に行こう」 「ねぇ、飛鳥君。そのチームの名前は何て言うの?」 「ん、言ってなかったっけ?」 「うん」 明日香がそう答えると、飛鳥は「そっか」と言いつつ歩き出す。 そして、振り向かずにこう言った。 「『チーム・レザリオン』。過去、『フォース・コネクター』が集い、そして最強の名を称した伝説のチーム」 『え!? 伝説のチーム!?』 明日香と亜美の二人が同時に驚くのだった。 チーム・レザリオン。過去、一人のコネクターをリーダーとして、『フォース・コネクター』を束ねたチーム。 そして、その名は他のコネクター達からも最強と称され、思うがままにしていた。 「まぁ、昔の話なんだけどな」 「で、でも、伝説のチームなんでしょ? そんなチームの練習って……」 「大丈夫だよ。明日香達は負けるかもしれないけど」 「え……?」 「何でもない」 そう言いつつ、バトル・フィールドの近くでバトルを観戦している子供二人に近づく飛鳥。 そんな飛鳥を見て、明日香は首を傾げたが、飛鳥が近づいた子供達は「お兄ちゃん!」と声を上げた。 「久しぶり。元気にしてたかな、隆也君、美雪ちゃん」 「うん! 僕ね、僕ね、Dランクになったんだよ!」 「私も……」 「そうか。おめでとう」 二人の子供達は頭を撫でられて喜んでいる。明日香はきょとんとしていた。 「っと、この子達が『チーム・レザリオン』の隆也君と美雪ちゃん」 「え!? この子達が、伝説のチームの……?」 「こ、こんなに小さい子がコネクターなんですかぁ!?」 「コネクターに年齢は関係ないんだよ」 驚く二人に可笑しそうな顔をして飛鳥が言う。そして、隆也と呼ばれた男の子がドライヴを持って言った。 「僕、絶対に飛鳥にーちゃんみたいなソード・マスターになるんだ!」 「飛鳥君みたいな? そうなんだ……頑張らないとね」 「うん!」 「さて、早速バトル開始かな。今回は練習バトルだからラックアップは関係なし。頑張れ」 バトル・フィールドに構築される四体のドライヴ。その中で、明日香は亜美のドライヴの変化に気づいた。 初期装備であるビームセイバーが、刀身の長いロングプラズマセイバーに変わっている。 「亜美ちゃん、それって前に買ったものだよね?」 「あ、これは飛鳥さんにお願いしてロングプラズマセイバー2と交換してもらったんです!」 「お蔭で、エル・センティアの攻撃力アップです!」とロングプラズマセイバーを振るう。 実体剣カタルシスのシールドを展開させ、明日香が言う。 「亜美ちゃんはいつも通り戦って。私は援護するから」 「はい! 明日香さん、頑張りましょう!」 「うん。そうだね」 バトル形式の練習とは言え、油断はできない。理由は、飛鳥が関わっているからだ。 間違いなく、飛鳥はあの子供たちにドライヴについて色々と教えている。 そう思うと、「私には『攻撃のスタイルが違うから無理』って言ってたのに……」と呟く。 「今日は、飛鳥にーちゃんに教えてもらった技使ってみよ!」 「うん……私も使う……」 似たようなデザインの剣と盾を持つドライヴと、ドライヴよりも大きな盾を持つドライヴ。 剣と盾を持つドライヴに乗る少年・隆也は、剣を大きく振るった。 「いっくよー、光斬破!」 十字に振るう。光の刃が一瞬にして放たれた。 勢いよく突き進む十字の光の刃。それを、グロウファルコンが防御して防いだ。 その時、隆也のドライヴの後方から、少女・美雪が弱々しい声で言う。 「えっと……ソーラーカノン……」 背中に装備されたウイングユニットにエネルギーが集まり、巨大なビームが放たれる。 グロウファルコンが背中に装備しているゴッドランチャーを構えて、応戦する。 そんな明日香の戦いを見て、亜美は一人「ふぇー」と感嘆していた。 (……もしかして、明日香さんって、実はかなり強かったり?) などと思ったりもする。 バトルを見つつ、飛鳥は開いた口が塞がらなかった。 「……明日香があそこまで戦えるのが意外だよな」 自分とは戦い方が全く違う為、あまり教えていないのだが、明日香の強さは意外に伸びている。 いや、それは当然の事だ。なにせ、今まで使っていたアローナディアでは、明日香の力になれない。 だからこそ、アローナディアを作り直そうと思っているのだが。 「それにしても、相変わらず隆也君の呑み込みは早い……光斬破を、二ヶ月で使いこなせるなんて……」 二ヶ月で必殺技を連発できると言う事は、その技の特性を知り尽くしているからだ。 とは言え、まだ8歳の子の操縦技術は、半端ではないだろう。 「隆也は、やはりあの人の息子ですからね」 「……ですね。流石は、レザリオンの正統後継者です、紗雪さん」 隣で同じようにバトルを見ている落ち着きのある女性に言う。 「まだ8歳なのに、あそこまでドライヴを動かせる。しかも、俺が持ってる”資質”がないのに……」 「あの子は、いつも飛鳥君に憧れていたのよ」 「憧れって……隆也君は、間違いなく俺なんかより強くなるのに、ですか?」 「ええ。隆也はあの人からレザリオンのリーダーの血を濃く受け継いでいる。 でも、ドライヴと言う楽しさを教えたのは、『ソード・マスター』の飛鳥君、あなたなの」 「俺は、ただドライヴが好きだから……」 そう言ってバトルを見る。そんな飛鳥の姿を、隆也と美雪の母親である紗雪は静かに微笑んだ。 「似ているわね」 「え……?」 「そう言うところは、春香に――――あなたのお母さんに似ているわ」 「母さんに?」 紗雪が頷く。飛鳥はその言葉にやや疑問を持った。 母。自分が生まれて間もないうちに亡くなったと、家政婦のおばさんに聞いている。 しかし、どんな人だったのかは父から聞いた事がない。と言うか、教えてくれない。 正直、母の事は何も知らないのだ。 「……母さんって、どんな人だったんですか?」 「そうね……春香は、素直な人だった。楽しいと思えば、素直に楽しいと言う、そんな人」 「……どこが似てるんですか、俺と?」 「その目、かしらね。春香もあなたのように、真っ直ぐな目をしていた」 紗雪がニッコリと笑顔で言う。飛鳥はドキリとした。 その笑顔は、間違いなく美人と言う代名詞が相応しい女性の笑顔。そう思えたからである。 (つーか、俺って意外と照れ屋とか言うオチか……?) 馬鹿な事を思うのだった。 次回予告 どうも、飛鳥です。 明日香達のバトル中に、突然俺のドライヴが反応を示し出した。 ダーク・コネクターの反応だ。……最近、こう言う登場多いな、奴らって。 次回、CONNECT13.『久々のソード&マグナム』 ドライヴ・コネクト! 久々にやるか、マグナム・カイザー! |
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