CONNECT12.『ソード・マスターに憧れる少年』


「バトル終了! 勝者、『チーム・エンジェル』!」
「わーい、これで三連勝〜!」
 最強チーム『ランドライザー・コマンド』とのバトルから一週間。『チーム・エンジェル』は好調だった。
 と言うのも、『マグナム・カイザー』もバトルしているからなのだが。
 飛鳥が「やれやれ」と溜め息をつく。
「勇治、お前が出たら意味ないってば……たとえ、3連勝しても」
「何を言う。あと一回勝てば、亜美はランクアップする」
「……いや、結果的にランドライザーとのバトルは無効だったから、あと2連勝だ」
 チーム戦においてのランクアップは、シングル戦より少しだけ規定が多い。
 通常、ランクアップは相手が同ランク以下であれば5連勝。相手が上のランクであれば1ランクアップ。
 それはチーム戦でも同じだが、相手チームの一番ランクの高い相手より上のランクがメンバーにいれば別だ。
 つまり、Eランクの亜美とCランクの明日香、SRの勇治がメンバーによるバトルでは、5連勝が基本になる。
 しかも、チーム・エンジェルは一度どこかのチームとバトルして、負けているらしい。
「そう言えば、ゴウさんとことバトルする前に、どことバトルしたの?」
「えっと……『チーム・アレス』です」
「……そりゃ、負けるよな」
 亜美の返答に飛鳥が納得する。『チーム・アレス』は、その構成はともかく、実力はあるチームだ。
 その中でも、主戦力の強さは半端じゃない。負けて当然と言えば当然だ。
 勇治が言う。
「俺に言えば、いつでも参戦すると言ったはずだぞ、亜美」
「だから、お前が出たら意味ないんだってば。明日香達の為にも」
「だったら、勝てる相手をお前が探せ」
「あのな……」
 勇治の言葉に肩を落とす。
「……そうだ。明日、あるチームの練習に付き合うんだけど、試しにバトルしてみるか?」
「あそこか。亜美でも勝てるな」
「だから、そう言う事じゃないって……」



 暗い闇に包まれた部屋で、不気味に光りを発するパソコンの液晶画面。
 画面に表示されている一体のドライヴを眺めていたところで、隣の液晶画面に人影が映し出される。
「……イブリスか」
『はい。キング・オブ・バリアの報告を行いに』
「始末したか?」
『はい。ディフェンド・キングとのバトルにて敗北しました故に、私自ら』
「そうか」
 キング・オブ・バリアは幹部の中で一番弱い幹部だ。
 確かに、SRクラスのコネクターでも苦戦はするだろうが、『フォース・コネクター』の前では通用しない。
 イブリスに彼が言う。
「すぐに新しい幹部を立てろ。それから、彼らにも動くように伝えておけ」
『……もう動かす気でございますか?』
「そうだ。これ以上、『フォース・コネクター』には、私の邪魔をされては困るからな」
 静かに彼はそう答えた。



 次の日の午前中。飛鳥達は電車を使って、いつも行っているショップとは別のショップに集まった。
 しかし、『マグナム・カイザー』の姿がない。
「あれ? また勇治は?」
「あ、今日の朝、いきりなりマリアさんから電話があって……」
「……なるほど、また呼び出されたわけだ」
 もはや苦笑するしかない。
「ま、そのうち来るだろう。とりあえず、昨日話したチームの所に行こう」
「ねぇ、飛鳥君。そのチームの名前は何て言うの?」
「ん、言ってなかったっけ?」
「うん」
 明日香がそう答えると、飛鳥は「そっか」と言いつつ歩き出す。
 そして、振り向かずにこう言った。
「『チーム・レザリオン』。過去、『フォース・コネクター』が集い、そして最強の名を称した伝説のチーム」
『え!? 伝説のチーム!?』
 明日香と亜美の二人が同時に驚くのだった。



 チーム・レザリオン。過去、一人のコネクターをリーダーとして、『フォース・コネクター』を束ねたチーム。
 そして、その名は他のコネクター達からも最強と称され、思うがままにしていた。
「まぁ、昔の話なんだけどな」
「で、でも、伝説のチームなんでしょ? そんなチームの練習って……」
「大丈夫だよ。明日香達は負けるかもしれないけど
「え……?」
「何でもない」
 そう言いつつ、バトル・フィールドの近くでバトルを観戦している子供二人に近づく飛鳥。
 そんな飛鳥を見て、明日香は首を傾げたが、飛鳥が近づいた子供達は「お兄ちゃん!」と声を上げた。
「久しぶり。元気にしてたかな、隆也君、美雪ちゃん」
「うん! 僕ね、僕ね、Dランクになったんだよ!」
「私も……」
「そうか。おめでとう」
 二人の子供達は頭を撫でられて喜んでいる。明日香はきょとんとしていた。
「っと、この子達が『チーム・レザリオン』の隆也君と美雪ちゃん」
「え!? この子達が、伝説のチームの……?」
「こ、こんなに小さい子がコネクターなんですかぁ!?」
「コネクターに年齢は関係ないんだよ」
 驚く二人に可笑しそうな顔をして飛鳥が言う。そして、隆也と呼ばれた男の子がドライヴを持って言った。
「僕、絶対に飛鳥にーちゃんみたいなソード・マスターになるんだ!」
「飛鳥君みたいな? そうなんだ……頑張らないとね」
「うん!」
「さて、早速バトル開始かな。今回は練習バトルだからラックアップは関係なし。頑張れ」



 バトル・フィールドに構築される四体のドライヴ。その中で、明日香は亜美のドライヴの変化に気づいた。
 初期装備であるビームセイバーが、刀身の長いロングプラズマセイバーに変わっている。
「亜美ちゃん、それって前に買ったものだよね?」
「あ、これは飛鳥さんにお願いしてロングプラズマセイバー2と交換してもらったんです!」
「お蔭で、エル・センティアの攻撃力アップです!」とロングプラズマセイバーを振るう。
 実体剣カタルシスのシールドを展開させ、明日香が言う。
「亜美ちゃんはいつも通り戦って。私は援護するから」
「はい! 明日香さん、頑張りましょう!」
「うん。そうだね」
 バトル形式の練習とは言え、油断はできない。理由は、飛鳥が関わっているからだ。
 間違いなく、飛鳥はあの子供たちにドライヴについて色々と教えている。
 そう思うと、「私には『攻撃のスタイルが違うから無理』って言ってたのに……」と呟く。

「今日は、飛鳥にーちゃんに教えてもらった技使ってみよ!」
「うん……私も使う……」
 似たようなデザインの剣と盾を持つドライヴと、ドライヴよりも大きな盾を持つドライヴ。
 剣と盾を持つドライヴに乗る少年・隆也は、剣を大きく振るった。
「いっくよー、光斬破!」
 十字に振るう。光の刃が一瞬にして放たれた。
 勢いよく突き進む十字の光の刃。それを、グロウファルコンが防御して防いだ。
 その時、隆也のドライヴの後方から、少女・美雪が弱々しい声で言う。
「えっと……ソーラーカノン……」
 背中に装備されたウイングユニットにエネルギーが集まり、巨大なビームが放たれる。
 グロウファルコンが背中に装備しているゴッドランチャーを構えて、応戦する。
 そんな明日香の戦いを見て、亜美は一人「ふぇー」と感嘆していた。
(……もしかして、明日香さんって、実はかなり強かったり?)
 などと思ったりもする。



 バトルを見つつ、飛鳥は開いた口が塞がらなかった。
「……明日香があそこまで戦えるのが意外だよな」
 自分とは戦い方が全く違う為、あまり教えていないのだが、明日香の強さは意外に伸びている。
 いや、それは当然の事だ。なにせ、今まで使っていたアローナディアでは、明日香の力になれない。
 だからこそ、アローナディアを作り直そうと思っているのだが。
「それにしても、相変わらず隆也君の呑み込みは早い……光斬破を、二ヶ月で使いこなせるなんて……」
 二ヶ月で必殺技を連発できると言う事は、その技の特性を知り尽くしているからだ。
 とは言え、まだ8歳の子の操縦技術は、半端ではないだろう。
「隆也は、やはりあの人の息子ですからね」
「……ですね。流石は、レザリオンの正統後継者です、紗雪さん」
 隣で同じようにバトルを見ている落ち着きのある女性に言う。
「まだ8歳なのに、あそこまでドライヴを動かせる。しかも、俺が持ってる”資質”がないのに……」
「あの子は、いつも飛鳥君に憧れていたのよ」
「憧れって……隆也君は、間違いなく俺なんかより強くなるのに、ですか?」
「ええ。隆也はあの人からレザリオンのリーダーの血を濃く受け継いでいる。
 でも、ドライヴと言う楽しさを教えたのは、『ソード・マスター』の飛鳥君、あなたなの」
「俺は、ただドライヴが好きだから……」
 そう言ってバトルを見る。そんな飛鳥の姿を、隆也と美雪の母親である紗雪は静かに微笑んだ。
「似ているわね」
「え……?」
「そう言うところは、春香に――――あなたのお母さんに似ているわ」
「母さんに?」
 紗雪が頷く。飛鳥はその言葉にやや疑問を持った。
 母。自分が生まれて間もないうちに亡くなったと、家政婦のおばさんに聞いている。
 しかし、どんな人だったのかは父から聞いた事がない。と言うか、教えてくれない。
 正直、母の事は何も知らないのだ。
「……母さんって、どんな人だったんですか?」
「そうね……春香は、素直な人だった。楽しいと思えば、素直に楽しいと言う、そんな人」
「……どこが似てるんですか、俺と?」
「その目、かしらね。春香もあなたのように、真っ直ぐな目をしていた」
 紗雪がニッコリと笑顔で言う。飛鳥はドキリとした。
 その笑顔は、間違いなく美人と言う代名詞が相応しい女性の笑顔。そう思えたからである。
(つーか、俺って意外と照れ屋とか言うオチか……?)
 馬鹿な事を思うのだった。



次回予告

 どうも、飛鳥です。
 明日香達のバトル中に、突然俺のドライヴが反応を示し出した。
 ダーク・コネクターの反応だ。……最近、こう言う登場多いな、奴らって。

 次回、CONNECT13.『久々のソード&マグナム』

 ドライヴ・コネクト! 久々にやるか、マグナム・カイザー!



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