CONNECT13.『久々のソード&マグナム』


 バトルを見ている時に、ドライヴのアラームが鳴り響く。飛鳥はすぐにドライヴを手にした。
『ダーク・コネクター』だ。通話ボタンを押して、勇治と連絡を取る。
『……誰だ?』
「俺だ。今どこにいるんだ?」
『マリアのところだ。飛鳥、今すぐ助けにk――――』
 ブツッ。電話が切れる。どうやら、マリアが電話を切ったらしい
 まだこっちには来れそうもないようだ。ポリポリと頭を掻きつつ、コクピットランサーの方へ向かう。
「紗雪さん、これからちょっと片付けに行ってきます」
「ええ。気をつけて」



 明日香の乗るグロウファルコンと、隆也の乗るドライヴは互角の戦いを見せていた。
「うう、天空機でも辛いよ〜」
「飛鳥君みたいな戦い方するね、やっぱり……」
 射撃系の武器は持っていても、接近戦を貫き通す戦い方。まさに、飛鳥の持ち味とも言えるスタイルだ。
 けれど、それとは別にこの子からは強いプレッシャーを感じる。
「光斬破!」
「カタルシス、お願い!」
 再び放たれる光の刃。そして、それを受け止めるシールド。
 明日香はまだ信じ難かった。自分が、グロウファルコンを完全に扱いこなしている事を。
 いや、それほどまでに自分と息が合っている。それは、飛鳥によるものかもしれない。
「……飛鳥君は、やっぱり凄い人だよね」
 ここまで、自分のドライヴを他人に合わせられる。グロウファルコンがもう一本の剣を構えた。
 カタルシスと一組になっているもう一本の剣シンクレア。先端からビーム状の刃が姿を見せる。
 グロウファルコンが駆ける。瞬間、雷の豪雨が降り注いだ。
 明日香の乗るグロウファルコンと、隆也の乗る天空機がその場から吹き飛ばされる。
『すぅぅぅ……はぁぁぁ……』
 大きく呼吸する一体のドライヴ。背中に巨大なコンテナを持ち、両腕をハンマーのようにしている。
『ふはぁーははははははぁぁぁーっ!』
『きーけけけけけけぇぇぇっ!』
 そして、高笑いを上げるドライヴが二体。二本の大鎌を持つドライヴと妙に脚が長いドライヴ。
 明日香はその三体のドライヴを見て、『ダーク・コネクター』だと大体分かった。
『砕け砕け砕けやぁぁぁ!』
 両腕がハンマーになっているドライヴが大地をがむしゃらに叩く。バトル・フィールドが大きく揺れた。
『首斬れ首斬れ!』
 大鎌を持つドライヴがグロウファルコンに襲い掛かる。カタルシスのシールドで明日香は大鎌を防いだ。
 力負けしている。それは、どちらかと言えばコネクターとしての差だった。
『壊してやるぅ! けけけけけけぇぇぇっ!』
 脚の長いドライヴが雷の豪雨を放つ。その強さは、普通のコネクターで言うとSランクに相当するほどだ。
「飛鳥君……助けてっ……!」
 大鎌を受け止めながら、明日香が目を瞑る。



「ドライヴ・コネクト!」
 コクピットランサーにドライヴをセットする。瞬間、エラーが出た。
「コネクト拒否!? 外部からのコネクトをガードしているのか……!」
 コクピットランサーの中に入り、カタカタとキーボードを叩いていく。
 外部からのコネクト拒否。ならば、それを元に戻さなければコネクトが出来ない。
 ガードをかけている場所を着きとめる。しかし、エラーが連続で表示された。
「エラーかよ……ったく、早くしないと明日香達が危ないって言うのに……!」
「つーか、勇治の馬鹿は早く来やがれ!」と文句を言いたいが、マリアに捕まっていれば無理だろう
 状況を確認しつつ、素早くガードを破壊していく。その時、グロウファルコンが倒れる姿を見た。
 キーボードをカタカタと叩きながら、それを見て激昂する。
「――――奴ら! くそっ、ドライヴ・コネクト!」
 再びセットする。またエラーが返された。
『くぅぅぅけけけけけけぇぇぇぇぇぇっ! 終わりだぁぁぁっ!』
「くそっ! 明日香ぁぁぁっ!」
 キーボードのエンターキーを強く叩き、ドライヴをセットする。エラーが返ってきた。
 しかし、その瞬間、一筋の巨大な波動が大鎌を持ったドライヴを襲う。飛鳥はすぐに気づいた。
 漆黒の大型マグナムを持つ『マグナム・カイザー』。ディル・ゼレイクの姿があった。
「勇治……意外と来るのが早い……!?」
『お前の電話の様子が変だったからな。どうにか間に合わせた』
「って、お前どこからコネクトしてるんだ!? こっちはエラーばっかで無理なのに!」
『すぐ近くのショップからだ。そこから、ネット回線を使ってこっちに来た』
「って、それは違法だろが!」
『安心しろ、協会の方には許可を取っている』
 やや肩を落とす。しかし、今回は流石だ。
『早くコネクトしろ。そっちのガードは来る時に破壊した』
「……お前って、こう言う時だけ動き早くないか?」
 そう言いつつも、ドライヴをコクピットランサーへとセットする。



 勇治の乱入は、『ダーク・コネクター』をびびらせた。
 簡単に敵を見て、勇治が呟く。
ハンマー馬鹿に、死神もどき足長おじさんと言ったところか」
『は、ハンマー馬鹿!?』
『死神もどき!?』
『あ、足長おじさんんんんんん!? 俺はまだ24歳だけけけけけけぇぇぇっ!』
「お前達の歳などどうだって良い。覚悟しろ、三馬鹿
 さらに言う。そして、サタン・オブ・マグナムを連射した。
 相手に攻撃させる隙を与えず、難なく後ろへと後退させる。
 そんな時、飛鳥のセルハーツが構築され、姿を見せた。
「……お前さ、いくらなんでもハンマー馬鹿死神もどき足長おじさんは酷いだろ」
「意外と良いネーミングだぞ」
「いや、良くない」
「それよりも、早く終わらせるぞ。でないと、マリアに見つかる可能性が高い
「一体何やってんだよ、マリアと? まさか、あれか……?」

「……分かってるなら聞くな」

「……だよな。すまん、俺が悪かった」
 あれを思い出すだけで、全身が震える。それほど、マリアの”あれ”は嫌だった。
 明日香の乗るグロウファルコンを立たせる。
「明日香、隆也君達とすぐにコネクト・アウト。あとは、俺と勇治に任せて」
「え? で、でも、2対3じゃ……」
「大丈夫。なにせ、俺と勇治は最強のソード&マグナムだ」
 あんな奴らには負けない。飛鳥の目がそう言っていた。明日香は頷く。
 コネクト・アウトしていくドライヴ。そんな中、「出番少ないですぅ……」と言う亜美の言葉があった。
 苦笑しつつ、セルハーツがゴッドランチャーを構えた。
「さて、久々に見せてやるか、ソード&マグナムの強さって奴を」
「それは良いが、早く終わらせろ」
「分かってるって。とりあえず、ぶっ続けで決めるか」
 セルハーツとディル・ゼレイクが狙いをつける。
「『スキル・プログラム』セットッ! トリプルゴッドランチャーッ!」
 二体がゴッドランチャーを構え、放つ。三本のビームが一つに重なり、巨大なビームとなった。
 両腕にハンマーを持ったドライヴ以外の二体が呑み込まれる。続けて、セルハーツが接近した。
 ファルシオンセイバーを構え、敵ドライヴの懐に入り込む。
『は、早ぇぇぇ!?』
「『スキル・プログラム』セットッ! お前らの負けだ!」
 下段から振り上げ、敵を空高くへと押し上げる。
「ブレイバー・クロス・フレアッ!」
 空中に上げられたドライヴを斬る。光の筋が走り、その中心をディル・ゼレイクが撃ち抜く。
 高速で繰り返される斬撃と銃撃。敵は成す術もなかった。
 ディル・ゼレイクがフルパワーショットでドライヴの中心点を射抜き、最後にセルハーツが両断する。
 その威力は、言葉では言い表せないほど強力なものであった。
「いつやっても、呆気ないな」
「……だな。作った本人としても、そう思う」
 互いに親指をグッと立てる。



 二人の『フォース・コネクター』による最強のコンビ『ソード&マグナム』。
 その凄さを見て、亜美は「ふぇぇぇ……」と感嘆していた。
「お兄ちゃん達って、なんだか凄いですね……」
「うん。久しぶりに見たけど。やっぱり飛鳥君と勇治君のコンビは強いよ」
 激闘と呼べるバトルを行い、そして互いの実力を認め合った最強のコンビ。
 それが、飛鳥と勇治だった。どんな経緯で二人がコンビを組む事になったのか、明日香は知らないが。
 しかし、その反面、勇治が羨ましいと思う。
 自分がドライヴを始めたのは、大好きな人がその世界で上を見ていたから。その役に立ちたいと思ったから。
 だからこそ、いつの日かAランクになって、彼のパートナーになりたい。
「頑張らなきゃね、私も……」
「そう言えば、今日のバトルなんですけど……あの子供達強いですね。私、結局一撃も与えられませんでした」
「私もだよ。お互い、ランクアップする為にも頑張らなきゃね」
『亜美』
 二人が話をしている時に、勇治がドライヴに乗ったまま割り込む。
『俺はこのままマリアから逃げる。もし連絡があっても、俺の事は絶対に話すな』
「う、うん。でも、そんな事して、マリアさん怒らないのかな……?」
『む……』
『……怒るだろうな、マリアは。なにせ、”あれ”だし……』
 一体何なのか分からず、明日香と亜美は首を傾げるだけだった。

 そしてこの日、今まで見た事のない兄の姿を見る事になる亜美なのだが、余談である。



次回予告

 どもども、『チーム・アレス』の大滝美里です!
 え、誰だか分からないって!? 今までの本編読み返しなさい!

 次回はいよいよ、曜がSRランクアップに挑戦! 頑張れ、曜!
 って、ちょっと、非常事態発生って何よ!?

 次回、CONNECT14.『灼熱と狂気の剣』

 ドライヴ・コネクト! 今回はいつもと展開違うわよ!?



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