「うーん……このアクティブ・ウェポン作るとしたら、結構大変だよ。この設計じゃ無理だし」 「え!? そ、そうなんですか!?」 ある日の放課後、ショップの喫茶店で飛鳥は勇治の妹である亜美の相談に乗っていた。 相談の内容は、当然ドライヴの事である。 亜美が書いてきたアクティブ・ウェポンの設計図を見つつ、飛鳥が色々と手を加えていく。 「いくら、ドライヴの世界が電脳世界って言っても、不可能なものは不可能なんだよ。 でも、この考えは良いかもしれない。亜美ちゃんが作る上じゃ難しいけど」 「ほぇ!?」 「エル・センティアの性能に合わせる必要があるんだ。ただ作れば良いってわけじゃない」 ドライヴとアクティブ・ウェポンの相性によって、その性能は大幅に変わる。 それは、飛鳥の経験上の事からだった。 「うぅ……自分だけのオリジナルって難しいんですね……」 「だからこそ、完成した時の嬉しさがあるんだよ。……そうだね、イメージだけ詳しく教えて」 「作ってくれるんですか!?」 「うん。ちょうど、似たようなもの作ろうとしてたし。それに、そろそろ実力がついてきてるしね」 そう、最近の『チーム・エンジェル』の戦績は目を張るものがあった。 明日香の新型ドライヴが影響しているのだが、亜美の実力も上がっている。 大器晩成、と言ったところか。操縦テクニックの呑み込みが早い、それが亜美だ。 「あ、そうだ! 今度の日曜日のバトルで、私、ランクアップするかもしれないんですよ!」 「今度? ……そう言えば、明日香がそう言っていたっけ。まぁ、頑張ってとしか言えないんだけどね」 この時、飛鳥は訊くのを忘れていた。対戦相手の事を。 「って、『ゾディアック』かよ!?」 日曜日のショップ。飛鳥は早くも勇治を鋭く睨みつける。 「問題ない。これに勝てばランクアップだ」 「んな事言って誤魔化すんじゃねぇよ、馬鹿カイザー! 俺はバトルしないって言う事にしてただろ!」 「だから問題ない。肝心の桐生は来ていない」 「何!?」 そう言って、『ゾディアック』を見る。確かに、リーダーである桐生の姿はなかった。 サブリーダーである藤堂が答える。 「今日は、うちのリーダーは用事があって来れない」 「用事? 学校の補習とか?」 「桐生はお前より馬鹿ではないぞ、蓮杖飛鳥」 「ほっとけ! つーか、俺はそこまで馬鹿じゃねぇ!」 「馬鹿と言うのは認めたのか、飛鳥?」 「テメェも細かい事を言ってんじゃねぇよ、馬鹿カイザー!」 しかし、これで自分はバトルしないで済む。が、相手が『ゾディアック』である事に変わりはない。 相変わらず、勇治の考えている事は分からない。 「え、えっと……バトル形式は総当たり戦で良かったですよね……?」 「ああ。バトル内容、条件ともに承諾している」 「条件?」 飛鳥が亜美に訊く。 「えっと、『ランクによるハンデはなし』が条件です」 「ハンデなし!?」 「大丈夫だ。ちゃんと策はある」 「策はあるって、お前なぁ……」 コォォォネクト・バトォォォルッ! バトル・フィールド中心に穴が開き、そこから季節外れの海の中年おじさんが出てくる。 「皆様ごきけんよう。今回のバトルの審判は私、モリ森田が担当します!」 「季節外れな……つーか、あんたは海限定だろが! 今は10月だぞ!」 「なるほど、今回のバトル・フィールドは海と言う事か」 「いえ、今回のバトル・フィールドは東京タワー周辺をイメージとした街中です」 「海関係ねぇ! つーか、何で東京タワー周辺!? 作者は言った事ないぞ、そこには!」 「あ、飛鳥君、その事言ったらダメなような……」 飛鳥をなだめる明日香。飛鳥は自分のドライヴを取り出した。 ドライヴの中に入れてあるデータをSDカードに入れ、勇治に投げつける。 「お前に注文されてた、ツインゴッドランチャー。ちゃんと整備してやったからな!」 「うむ、あとで褒美をやる」 「テメェはどこぞの御曹司か、このボケェ!」 「それでは、両チームはコネクトを!」 「だそうだ。飛鳥、どけ」 飛鳥を跳ね除け、コクピットランサーに勇治が乗り込む。 「……ツインゴッドランチャーに爆破装置仕掛けりゃ良かった」 サラリと惨酷な事を言ったりする飛鳥だった。 東京タワーが目の前にある。亜美はそれを見て感嘆としていた。 これが本物の街並みだとすれば、ドライヴの全長は約15メートル。今更ながら、ロボットに乗ってる感じだ。 「東京タワーだ〜。お兄ちゃん、東京タワーだよ! 実物じゃないけど」 「はしゃぐな。亜美、今回はお前一人の力で敵一体を倒せ」 「うん! ……って、私だけで!?」 「大丈夫だ。もしもの時は、昨日教えた奴を使え」 ディル・ゼレイクがサタン・オブ・マグナムを構える。 構築される『ゾディアック』のドライヴ。勇治は静かに、魔術師型のドライヴ・暗黒の魔術師を見る。 「……厄介なのは、暗黒の魔術師。しかし、総当りでは弱い」 そして、両腕にトンファーを装備しているドライヴ・グランレオルトへと目を向ける。 「総当りで厄介と言えば、やはり藤堂だな。俺が奴を仕留める。他は任せた」 「亜美ちゃん、どうする?」 「ふぇ!? え、えーと……」 「亜美はあの棍棒馬鹿が良い。あいつが、チームの中で一番弱いからな」 「う、うん! や、やってみる!」 審判が腕を振り上げる。 「それでは、コネクト・バトル……ファイトォォォッ!」 バトルが始まって、飛鳥は『ダーク・コネクター』の反応を調べた。 動きはない。どうやら、『アサシン・ブレード』を倒した影響がまだ残っているようだ。 「……ゴウさん以外の『フォース・コネクター』を狙うはずだから、やっぱり俺と勇治かな」 今でも現役としてバトルしているゴウに挑むと言う事は、奴らはまだしないだろう。 なぜなら、最強の盾はそう簡単に破れるアクティブ・ウェポンはない。 奴らがまず狙うとすれば、間違いなく剣と銃――――ファルシオンセイバーとサタン・オブ・マグナムだ。 「けど、『ダーク・フォース』が動き出したんだ……そう油断はできないよな」 『ダーク・フォース』の実力は、そのままコネクターとしていれば間違いなく『フォース・コネクター』候補だ。 「やはり、一度ゴウさんと話し合うか。勇治は相変わらず、あの銃の奴と戦う事しか頭にないし」 勇治が気にする相手――――『サタン・オブ・マグナム』を似せて作られた『ダーク=レガリア』を持つ敵。 前に二人で倒した為か、勇治はそれ以来、その『ダーク=レガリア』を持つ敵とのバトルを望んでいる。 「……一応、ゴウさんとマリアに連絡だけして、勇治と相談するか」 ドライヴでセルハーツの状態を見つつ、飛鳥は呟いた。 ディル・ゼレイクとグランレオルトのバトルは、勇治対飛鳥(弱)を思わせた。 接近戦の強さを求める者と射撃の強さを求める者。これが飛鳥だったら、どれほど凄まじいバトルだろうか。 グランレオルトがトンファーを捨て、ロングプラズマセイバーを構える。 『覚悟しろ、マグナム・カイザー! グランティルス・スペリオ!』 「安心しろ、お前の負けだ。サタン・オブ・マグナム、出力80%、速射型」 ロングプラズマセイバーにエネルギーを溜め、突撃する。勇治は目を見開いた。 瞳が鋭くなり、瞬時にグランレオルトの関節部に狙いを全て定める。 「フレアマグナム」 サタン・オブ・マグナムが轟音を上げる。それも、一度だけではなく無数に。 グランレオルトの関節部に、それぞれ十発以上の銃弾が撃ち込まれた。 「出力100%。フルパワーショット」 巨大な波動を放ち、呑み込む。早くも、一体撃破が決まった。 「やはり、飛鳥ほど強くはないか」 暗黒の魔術師が無数のレーザーを放つ。明日香のシルフィーナディアは防御した。 リアクターウイングの防御力は高く、暗黒の魔術師は一撃もダメージを与える事ができていない。 「そう言えば、飛鳥君に必殺技がどうこうって前に言われたような……」 シルフィーナディアは防御型だが、それでは相手を倒す事はできない。 その為、必殺技と呼べるものを一つでも持った方が良いと言われている。 しかし、そう簡単に思いつくわけがなかった。 「飛鳥君のフラッシングソードとか使えたら良いのに……」 そう思うが、そこまで格闘戦は得意ではないので止める。 「ん〜……レイブラスターを上手く使って攻撃できないかなぁ……」 『防御ばかりでは、暗黒の魔術師は倒せませんよ』 暗黒の魔術師が両手に持つ球体を宙へと浮かす。そして、エネルギーを集中した。 二つの球体がそれぞれ、赤、青の眩しい光を放つ。 『エレメント・スプラッシャー』 無数のレーザーが放たれる。帯状に広がる赤いレーザーと、曲線を描く青いレーザー。 明日香が防御の体勢を維持させたまま、シルフィーナディアを操作する。リアクターウイングが起動した。 六枚に展開し、巨大なバリアを生み出す。 「え……!?」 『あの攻撃を防ぎ切ったと……? 防御力の高さは、Sランク並みですね』 「……そう言えば、飛鳥君が教えてくれたんだっけ……」 シルフィーナディアに装備されているリアクターウイングの最大の特性”シルフィー・シルト”。 バリア展開状態に、さらにバリア展開を行う事で発動するSランク並みのバリア。 それはまだ未完成に近いが、それでも防御力は凄まじい。 「……そっか、シルフィーナディアは元々攻撃タイプじゃないけど、これを使えば……」 『エレメント・スプラッシャーが効かないとは驚きです。しかし、次で仕留めます』 「……やってみる、だけだよね!」 『再び参ります、エレメント・スプラッシャー』 暗黒の魔術師が先ほどの攻撃を繰り返す。明日香はシルフィー・シルトを起動させた。 攻撃を防ぎつつ、シルフィーナディアがシールドバスターを構える。 エネルギーを集中させ、リアクターウイングからレイブラスターの砲身が姿を見せた。 「お願い!」 バリアが解除されて放たれる一斉射撃。暗黒の魔術師はそれに呑み込まれた。 突然の事で考え付いた一斉射撃。見事、敵を撃破した。 「……やった。やったね、シルフィーナディア!」 本当に信じられないと思いつつも、明日香はその勝利を喜んだ。 棍棒を持ったドライヴ・ティターンを相手に、亜美のエル・センティアは必死に避ける。 どれだけ攻撃しようが、棍棒の前に全く歯が立たなかった。 『チッ、つまんねぇ……ザコは相手にならねぇんだよぉ!』 ティターンのバックパックから無数のミサイルが放たれる。亜美はひえ〜と悲鳴を上げた。 ――――もしもの時は、昨日教えた奴を使え。 ふと、バトル開始前に言われた事を思い出す。亜美は一つのボタンを押した。 画面に『SYSTEM OVER-DRIVE OK?』と表示され、何の躊躇いもなくボタンをさらに押す。 コンピュータが『SYSTEM OVER-DRIVE START!』を表示した。 エル・センティアのカメラアイが緑色から赤色へ変わり、全体がオーラを纏ったかのようになる。 ティターンの放ったミサイルが迫る。亜美は思い切って前に進んだ。 「ふ……」 エル・センティアが大地を強く蹴り、瞬時にティターンの懐に入り込む。 『何!?』 「ふえ〜〜〜!?」 そのまま体当たり。ティターンが思いっきり吹き飛ばされた。 バトル・フィールドによって構築されている東京タワーへ直撃し、東京タワーが壊滅する。 「あ、あわわわ〜……あれれ?」 東京タワーを壊してしまった為、どうしようかと思った瞬間、とてつもない疲労感に襲われる。 コンピュータが『DRIVE COOL-DOWN』を表示していた。 「バトル終了! 勝者、『チーム・エンジェル』ゥゥゥッ!」 審判が勝利を告げる。同時に、亜美はチーム5連勝と言う事でランクアップを果たす事ができた。 「……わ、わーい……私Dに上がった〜……」 疲労を感じつつも、ランクアップに喜ぶ。 亜美のバトルを見て、飛鳥はすぐにエル・センティアの状態を調べた。 突然の戦闘性能の急上昇。間違いなく、これはアクティブ・ウェポンによるものだ。 「……あの野郎、装備させて……!」 どれほど”あれ”が危険なのか知ってて装備させた。間違いない。 コクピットランサーから降りた明日香達が戻ってくる。飛鳥も彼女達に近づいた。 ややふらつきながら、亜美が笑顔で手を振る。 「あ、飛鳥さーん! さっきのバトル見ま――――」 瞬間、勇治が床に倒れる。飛鳥は勇治を思いっきり殴った。 「あ、飛鳥君!?」 「あ、飛鳥さん!? 何でいきなりお兄ちゃんを――――」 「二人は黙ってろ!」 飛鳥の一声に二人の言葉が掻き消される。勇治の胸元を掴み、持ち上げた。 鋭い瞳が勇治を睨む。 「テメェ、何考えてやがる!? 何で……何で、オーバー・ドライヴ・システムを組み込んでんだ!」 「何の事だ?」 「しらばっくれるな! エル・センティアの急激な戦闘レベル上昇……あれが危険なのを忘れたか!」 オーバー・ドライヴ・システム。ドライヴの戦闘レベルを急激に上昇させるアクティブ・ウェポン。 市販化された当時、そのシステムは誰もが装備していたのだが、その代償も大きかった。 使用したドライヴは180秒のクールダウンを必要とし、コネクターはとてつもない疲労感を得る。 下手すれば、そのまま引退と言う自体を起こしかねないのだ。 「あれは二度と使わない。そう決めたはずだ! なのに、何で組み込んだ!?」 「今の亜美の実力を上げる為だ」 「それだけの為に組み込んだのか!?」 「当然だ。強さを追い求めたからこその結果だ。第一、お前にとやかく言われる理由はない」 「……そうかよ。そうだな、元々、俺とお前は相性悪かったからな!」 勇治の胸元を離す。 「チームを抜けさせてもらう。これ以上、お前の身勝手な行動に付き合ってられない!」 「飛鳥君!」 「お前の事を、少しでも凄いと思った俺が馬鹿だったよ!」 飛鳥の言葉に、勇治は何も言い返す事はしなかった。 この日を境に、最強コンビ『ソード&マグナム』の名は消えた。 次回予告 明日香「こんにちは、明日香です」 亜美 「亜美です! た、大変な事になっちゃいましたよ、明日香さん!」 明日香「う、うん……飛鳥君と勇治君がケンカしちゃって、これからどうなるのかな……」 亜美 「もしかして、『Drive-Connect!』最終回が近いんじゃ!?」 明日香「それはないよ。だって、こんなにプロット作ってるし」(←なぜか持ってる) ※返してください。_| ̄|○ 次回、CONNECT25.『光の銃を持つ白き戦鬼』前編 明日香「次回は前編・後編の二部構成!」 亜美 「いよいよ、お兄ちゃんの凄さが明らかに!? って、飛鳥さんは!?」 明日香「お休み、かな……」 |
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