飛鳥と勇治、最強の『ソード&マグナム』がコンビを解消したと言う話は早くも広まった。 マスコミは無責任に「元々、ウマが合わなかったから」などと説明している。 そんな事をしつこく書いてある新聞を手に、郁美は軽く溜め息をついた。 「あの子達がウマ合わないわけないでしょう。互いの長所を引き出しあっていたのだから」 『ソード&マグナム』が強かったのは、飛鳥と勇治の個々の実力だけではない。 互いの全力を出し合ったバトルをし、相手の戦い方を誰よりも知っているのが飛鳥と勇治だ。 剣と銃。似ていないようで似ている力を持つ二人だからこそ、最強コンビなのだ。 それは、同じように最強コンビと言われていたからこそ、そう思う。 「でも、突然ね。何かあったのかしら?」 とりあえず、先代『マグナム・カイザー』にでも連絡しておこうと郁美は考える。 月明かりの下の街と言う設定で構築されるバトル・フィールド。その中で、勇治はバトルしていた。 しかし、相手はすでに倒している。敵は乱入者だ。 「動きが早いか。いや、ステルスと言ったところだな」 動きが早いだけならば、軌道を読み取って攻撃すれば良いだけの事。 どうやら、敵は姿を隠している。勇治はふっと笑みを浮かべた。 姿を隠した程度で自分の相手をしようとは、かなり甘く見られている。 「サタン・オブ・マグナム、出力60%速射型」 銃を構える。勇治はサタン・オブ・マグナムを乱射した。 無限に放たれるその銃弾は、敵にとっても厄介な攻撃となり、姿を見せる。 戦神オーディーンのような姿をした漆黒のドライヴ。その右手には細長い刀がある。 勇治は敵の姿を確認した後、すぐに動きを止める為に足を狙った。 「フレアマグナム」 迫り来る弾丸を前に、漆黒のドライヴが刀を振り落とす。 サタン・オブ・マグナムの銃弾が、その刀の前に散った。 「何……?」 『…………』 そして、漆黒のドライヴが姿を消す。勇治は静かに考えた。 普通のアクティブ・ウェポンではサタン・オブ・マグナムの攻撃を斬るなどと言う芸当は無理だ。 そうなると、残るのはレア・ウェポンである。 「……なるほど、あの剣か」 その武器が何なのか分かっている勇治だった。 飛鳥と勇治のケンカより2日が過ぎ、ショップの喫茶店で明日香は深い溜め息をついた。 あれ以来、飛鳥との連絡が取れていない。 「飛鳥さん、家にはいなかったんですか?」 「うん……朝早くから出掛けたって、家政婦さんが……」 「ふぇ……それじゃどうしよう……」 「……もしかして、今日バトル?」 「……はい」 こう言う時に限って、ケンカしたと言うのは痛手である。 「勇治君は?」 「それが、『今日は用事がある』って言って……」 「じゃあ、明日奈に電話してみるね。協力してくれるかも……」 これで、正式なチーム戦と言うわけにはいかなくなったが、バトルは出来る。 ドライヴで明日奈に連絡を取ろうとする。繋がらなかった。 アナウンスは「ただ今、コネクト・バトル中です(以下略)」と告げる。 「……バトル中だって」 「えー!?」 「今回のバトル内容って、3対3のチームバトル?」 「そうですよ〜! 飛鳥さんかお兄ちゃん入れて3対3の総当りで……」 いくらDランクに上がれたとは言え、亜美はまだ自分だけで勝つ自信がなかった。 少しでも兄達と一緒にバトルして強くなっていきたい。それが本音である。 「……美月?」 「え……!?」 ふと、声をかけられる。黒いロングヘアーの結構な美女だ。 その美しさは、女である亜美でも惚れてしまう。 「あ、あの……その……?」 「ごめんなさい、妹と間違えちゃったわ」 「そ、そうだったんですかぁ……」 「私は朧。良かったら、あなたのお名前を聞かせてくれないかしら?」 「あ、お、荻原亜美です!」 朧と名乗った美女。すると、亜美が上目遣いで訊いてみる。 「あ、あの……朧さんはコネクターですか?」 「え?」 「あわわ……その、今日のバトルでメンバー足りなくて……」 「そう言う事ね……。ええ、私はAランクのコネクターよ」 「じ、じゃあ、今日のバトル一緒に出てくれませんか!?」 「良いわよ。それくらい」 朧の言葉に、亜美はとても嬉しがった。 この日、勇治はマリアに付き合わされていた。 『レディエンス・ビューティーズ』のバトルがあるのだが、メンバーが足らないので助っ人をしろとの事。 怪訝な顔をしている勇治に、マリアが訊く。 「そう言えば、何で飛鳥とケンカしてコンビ解消してんのよ、勇治? 何かあったの?」 「別に」 「正直に喋りなさい〜! どうせ勇治の方が悪いんでしょう?」 「違う」 「そう? 飛鳥ってツッコミは多いけど、滅多な事で怒らないでしょ? そうなると勇治が原因なんでしょう?」 その言葉に勇治が黙る。マリアはまさかと思いつつ、訊いてみた。 「オーバー・ドライヴ・システムを組んだとか言わないでしょうね?」 「…………」 「……予想的中って事ね。どうせ、理由が亜美ちゃんを強くする為、とか言ったんでしょう」 「……なぜ分かる?」 こう言う時、マリアの勘は絶対に当たる。 マリアが溜め息をつく。そして、勇治の頬を強く捻った。 「勇治ね〜……前々から言ってたけど、飛鳥に相談くらいしなさいよね〜!」 「大きなお世話だ」 「あれを組まないって二人で約束したんでしょ? 破るんだったら、飛鳥に一言でも伝えるのが普通でしょ」 最強のコンビ『ソード&マグナム』である二人は、妙な仲の良さだ。 それは『フォース・コネクター』になってから分かった事であるが、勇治は飛鳥に相談などを絶対にしない。 確かにアクティブ・ウェポンの整備などは飛鳥に頼む事がある。しかし、勇治は飛鳥を頼る事はなかった。 コンビである前にライバルだから。だからこそ、勇治は独自で判断するのだ。 「チーム組む時もそうだったって聞くし。少しは飛鳥と相談しなさいよ。3年もコンビ続けてたんだから」 「…………」 黙る勇治。やれやれとマリアが諦める。 そんな時、ドライヴのアラーム音が鳴り響いた。勇治がすかさずドライヴを取り出す。 画面にサタン・オブ・マグナムが表示され、何かに強い反応を示している。 「……ついに、出てきたか……!」 勇治の表情が変わる。獲物を狙う狼のように。 亜美達のバトルは呆気なく終わりを告げた。 朧の巧みに操るドライヴは、防御力に優れた敵ドライヴを両断し、その強さは凄まじいの一言である。 神話に出てくるオーディーンのような姿をした漆黒のドライヴ。右手の細長い刀が目立つ。 ほとんど戦わずして勝利を掴んだ亜美は、しばらく信じられなかった。 「ふぇ〜……」 「出番……ほとんどなしだね……」 「わー、凄いですね、朧さん! どうしてそんなに強いんですか!?」 「別に大した事じゃないわ。自分のドライヴの強さを把握していれば、自ずと戦い方が見えるのよ」 亜美に対して微笑む朧。瞬間、バトル・フィールドに一体のドライヴが姿を現した。 白を主体とし、頭部の角が目立つドライヴ。その外見は鬼を思わせた機体の姿。 朧がそのドライヴを見て目を見開く。 「……白戦鬼……!? このチームには近寄らない事にしてたはず……!?」 『…………』 敵が白銀のライフルを構え、撃つ。シルフィーナディアがバリアで防いだ。 いや、防げなかった。バリアがまるで紙のように薄く感じた。 「……嘘、リアクターウイングが……!?」 これで命中していれば、間違いなくシルフィーナディアは戦闘不能だった。 いや、それ以上に、飛鳥が作ってくれたアクティブ・ウェポンのバリアが通用しなかった。 白銀のライフルが再び構えられる。明日香はバリアを連続して展開させた。 「お願い、シルフィー・シルト!」 六枚の翼へと展開したリアクターウイングが巨大なバリアを形成し、三人を守る。 白銀のライフルから十字の形で銃弾が放たれる。刹那、目の前で爆発が起き、視界が奪われた。 「え……どこ……!?」 「ふえぇぇぇ!?」 「ミスト・ショット……くっ……」 『どこに目をつけている。ここだ』 上空に跳躍する敵。そして、すぐに白銀のライフルから銃弾が放たれた。 バリアを形成するシルフィーナディアを集中的に狙い、そして撃ち抜く。 シルフィーナディアが、バリア共々破壊された。 「きゃぁぁぁっ!?」 「あ、明日香さん!?」 『……次は、お前だ』 「マッハスナイパー」 射程外からの攻撃。敵ドライヴはそれを避け、どこから放たれた攻撃か索敵する。 静かに姿を見せた『マグナム・カイザー』のドライヴが、亜美の前に立った。 「お兄……ちゃん……お兄ちゃん!」 「亜美、コネクト・アウトしろ。そして、正体を現したらどうだ、そこのドライヴ」 勇治が朧を睨む。亜美には訳が分からなかった。 「俺の前に現れたドライヴだろう、貴様は。幹部なのは分かっているぞ」 「ええ!?」 「……そう、気づかれていたのね」 「朧さん!?」 朧のドライヴが敵ドライヴに近寄り、その刃をディル・ゼレイクへ向ける。 『私は朧。ダーク・コネクター幹部、その名も闇夜の姫君……』 「そんな……嘘でしょ、朧さん!?」 『ごめんなさいね。マグナム・カイザーの強さを知るには、あなたに近づくしかなかったの』 「朧さん……」 「亜美、コネクト・アウトしろ」 ディル・ゼレイクが銃を構える。勇治は静かに敵を睨んだ。 『サタン・オブ・マグナム』に似ている白銀のライフル。間違いない、『ダーク・レガリア』だ。 そして、自分の弱点を探る為に妹に近づいてきた幹部。もはや、許しておく事はできない。 白銀のライフルを持ったドライヴを操る彼が、勇治に向けて言葉を発する。 『貴様がマグナム・カイザーか』 「お前が『レイ・スペル・ショット』を持つ今度の『ダーク・フォース』か」 『……そうだ。貴様のサタン・オブ・マグナムを渡してもらうぞ』 「それは無理だな。その銃を破壊させてもらう……!」 『やれるものならば、やってみるが良い』 両者の銃撃が開始される。それは、もはや凄まじいの一言だった。 しかし、凄いのは敵の方だ。勇治のサタン・オブ・マグナムの攻撃を全て防いでいる。 「フレアマグナム」 敵ドライヴの関節部へと放たれる無数の銃弾。敵は瞳を鋭くした。 銃弾一つ一つに見えた光へと狙いを定めて、白銀のライフル――――レイ・スペル・ショットを撃つ。 勇治の攻撃を再び止める。 『無駄だ』 その時、彼はその一言を放った。 『確かに、貴様の銃の腕は良い。しかし、俺の”金剛の瞳”ならば、お前の攻撃は全て撃ち落とせる』 敵の急所とも言える点を見出す『ディフェンド・キング』の資質『金剛の瞳』。 その対象を銃弾とし、見えた点を撃てば、どんな攻撃でも撃ち落とす事ができる。 『マグナム・カイザー、貴様では俺は倒せない。大人しく、その銃を渡してもらう』 レイ・スペル・ショットがディル・ゼレイクに向けられる。勇治の頬に冷たい汗が流れた。 次回予告 明日香「こんにちは、明日香です」 亜美 「亜美でーす! な、何だか凄い事になってますね、明日香さん!」 明日香「う、うん。あの勇治君で全く歯が立たないなんて……」 亜美 「このままお兄ちゃん負けちゃうんじゃ!? あ、飛鳥さんを呼ばなきゃ!」 明日香「……今、ケンカ中だよ……?」 亜美 「ああっ! そうでしたぁ!(T□T)」 次回、CONNECT26.『光の銃を持つ白き戦鬼』後編 亜美 「えっと、次回も衝撃的な展開です! と言うより、朧さんまで敵だったなんて……」 明日香「そう言えば、私が倒された時、飛鳥君来なかったね……」(←静かに怒ってます) 飛鳥 「……いや、今回は俺出番無しだし(汗)」(←今回の出番これだけ) |
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