勇治は亜美と二人でショップ内の喫茶店にいた。 しかし、飛鳥のいるショップとは別のショップだ。わざわざ、遠いショップの喫茶店でコーヒーを飲む。 「あの男はどこにいる……? 今度こそ、確実に倒してやる……!」 頭の中は、『アサルト・ハンター』を倒す事で一杯だった。 銃による戦いで、先代とのバトル以来、苦戦するはずないと思っていたせいか、苛立ちもある。 そして、飛鳥とのケンカによる苛立ちもあるせいか、勇治の表情は恐かった。 妹の亜美は、誰よりもそう思えた。こんな兄の姿を見たのは初めてである。 「お、お兄ちゃん、そんなイライラしない方が良いような……」 「亜美は黙ってろ……」 「でも……」 「黙ってろ」 「あう……」 「こら、いくら妹とは言え、女の子にそんな事言わない」 直後、勇治の背後からチョップによる制裁が下される。亜美は目を見開いた。 兄にちょっかいが出せる人間はマリアだけだと思ったが、他にもいた事に驚いていた。 やや茶色のかかったロングヘアの女性。勇治が彼女を見たと思ったら、すぐに目を逸らす。 「あ、私に対してそう言う態度を取る? マリアのあれを発動させるわよ?」 「……何の用ですか、先代」 「ふぇ……お兄ちゃん、この人って……?」 「お、これが噂の妹ちゃんね〜。私は逢坂優。ゆうゆうの前の『マグナム・カイザー』よ」 「じ、じゃあ、先代の『マグナム・カイザー』なんですか!?」 亜美の目が輝く。 「正解〜。あ、サインが欲しかったりするだろうけど、後回しでお願いね」 「どうでも良いですよ、そんなもの」 「何か言った、ゆうゆう? そんなにマリアのあれを発動させて欲しい?」 「……すみません」 「お、お兄ちゃんが謝った……」 弱い立場になっている兄の姿を見るのも初めてだったりする。 「ま、それは良いとして。あすあすとケンカしたんだって、ゆうゆう?」 「…………」 「黙らないで答える。オーバー・ドライヴ・システムの事でケンカしたんでしょ?」 思いっきりケンカの原因は知られていた。 勇治が小さくも頷く。そんな勇治に対し、優はやや呆れていた。 「何を考えてるの、ゆうゆう? あすあすは、ゆうゆうの考えてる事が知りたいだけだと思うわよ」 「……システムの負荷を中和するシステム」 勇治が口を開く。 「連続使用で資質を失いかけた時から、あの負担を中和する為のシステムを考えていた……。 それがついに分かったから、自分で作っただけです」 「そのシステムって、完成したわけ?」 「してません。エル・センティアで試しましたが、結局無駄骨でした」 「なるほど。あすあすが怒ったのは、そう言う事ね」 「あいつとの約束は忘れていない。俺があの時使っていれば、飛鳥はさらにキレたはず」 「そんな事であすあすが怒ったと思う?」 指をチッチッと振り、優が否定する。 「あすあすが怒ったのは、何も相談しなかったゆうゆうに対してよ。 3年もコンビ組んでるのに、そう言った事で相談してくれないから怒ったわけ」 「…………」 「確かにあすあすは、ゆうゆうの一番のライバルよ。それは、私や郁美、ゴウが良く知ってる」 先代『フォース・コネクター』のバトルを圧倒させたバトル。 互いの持てる力を全て出し切った最大のバトル。 そんなバトルができたからこそ、互いの実力を分かり合う事ができ、コンビを組んだ。 それが飛鳥と勇治。最強のコンビだ。 「それに、ゆうゆうはドライヴ作ったりするのが苦手でしょ。少しは、あすあすに頼っても良いんじゃない?」 「…………」 その時、ドライヴが強い反応を示す。勇治はすぐに確認した。 ドライヴ=レガリア『サタン・オブ・マグナム』の強い反応。間違いなく奴だ。 勇治がドライヴを強く握る。 「出たか……!」 「ちょっと待ちなさい、ゆうゆう。一人で戦うのは無謀だと思うけど?」 「平気です。今度こそ、あの銃を持つ奴を俺だけで倒します」 そう言って走り出す。そんな勇治の姿に優は呆れるだけだった。 取り残された亜美も兄の後を追おうとするが、すぐに止められる。 「一般のコネクターは手出ししない。オッケー?」 「で、でも……」 「ま、様子だけは見に行きましょうか。とりあえず、あすあすに連絡しといてくれる?」 「は、はい」 素直に先代『マグナム・カイザー』の言う事を聞く亜美だった。 喫茶店にて、飛鳥は明日香に全てを話した。 オーバー・ドライヴ・システムによって、資質を失いかけた勇治の事。 そんな勇治の為に、オーバー・ドライヴ・システムについて色々と調べた事を。 「俺にできるのは、あのシステムの負荷をどうすれば無力化できるか。 けど、どれだけ調べても、出てくる答えはノーで、諦めてたんだ」 「飛鳥君でも、諦める事ってあるの?」 「そりゃ、あるよ。特に、学校の英語のテストとか」 「あ、やっぱり……」 明日香が苦笑する。 「もしかして、勇治君は飛鳥君が作ろうとしたシステムを作ったんじゃ?」 「そうだとしても、勇治じゃ完成できないよ。あいつが不器用なのは、誰よりも俺が知ってる」 「そ、そうなんだ……」 「……だから、相談して欲しかったんだ。ライバルとしてじゃなく、相棒としてさ」 「飛鳥君……」 飛鳥にとって、勇治は掛け替えのない相棒。 互いを意識し合い、その実力を上げていくライバルであり、親友。 つくづく、勇治が羨ましいと明日香は思った。 いつか、自分もそんな風に飛鳥の同等の立場に立ちたいと思った。 「飛鳥君、仲直りしたら? 勇治君も仲直りしたいと思ってるはずだよ」 「…………」 そんな時、ドライヴに電話が掛かる。亜美からだ。 「もしもし、亜美ちゃん?」 『あぁ、飛鳥さん、ちゃんと出てくれたぁ!』 「どうしたの? 何かあった?」 『えっとですね……ダーク・コネクターが……』 「場所は?」 『ば、場所はえーと……』 『場所はメールで送るわよ、あすあす』 突然、電話の相手が優に変わった。 『相手は銃よ。ゆうゆうが負ける前に来る事』 「負ける? 優さん、あの馬鹿が負ける訳――――」 『負けるわよ。相手は、ゆうゆうの攻撃を全て防げるほどの実力者よ』 「……そんな奴が『ダーク・フォース』に……!?」 飛鳥の表情に焦りが見える。優の言葉が信じられなかったからだ。 勇治の射撃の腕は、間違いなくトップクラスだ。 そんな勇治の攻撃を全て防げる相手は、間違いなくそれ以上の射撃の腕前を持っている。 『ゆうゆうの力になれるのは、あすあすだけよ』 そして電話が切れる。飛鳥はドライヴを握り締めた。 「……飛鳥君」 「……セルハーツを取りに行く」 「え……」 「あの馬鹿のドライヴとコンビを組むのは、セルハーツだ。グロウファルコンじゃない」 そう、グロウファルコンではディル・ゼレイクとの相性が悪い。 機動性を高め、接近戦に重点を置いたセルハーツでなければ、絶妙なコンビネーションを引き出せない。 「明日香は先に行ってて。すぐに向かうから」 「うん!」 バトル・フィールドでは、『ランドライザー・コマンド』の佐々木晃鉄のドライヴのみ存在していた。 SR同士によるシングル戦を行っていたのだが、突然の乱入で対戦相手が倒された。 晃鉄が周囲を警戒する。目の前に一体のドライヴが構築された。 そのドライヴの姿に、晃鉄が目を見開く。 「白戦鬼レイ・マキシマム……将射か!」 『そのドライヴは晃鉄……そうか、お前か』 「彼――――『マグナム・カイザー』から聞いてはいたが、本当にお前が『ダーク・フォース』とは……」 信じたくはなかったが、やはり彼だった。晃鉄のドライヴ・スキルヴィングが構える。 刹那、一気に両腕の関節部を撃ち抜かれた。それも数発。 「な……!?」 『会わないうちに弱くなったみたいだな、晃鉄。一発も避けれないとは』 「早い……! あれが、リーダーの言う『ダーク=レガリア』の強さ……!」 晃鉄の頬を冷たい汗が流れ落ちる。 ――――フルパワーショット。 突然、レイ・マキシマムに一閃の波動が襲い掛かる。将射は鋭く睨みつけた。 波動の中心点を見抜き、撃ち抜く。すぐに無力化された。 「くっ……」 攻撃したドライヴを駆る勇治が舌打ちする。またも攻撃を止められたからだ。 サタン・オブ・マグナムを構えたまま、ゆっくりと歩み寄る。 「……『マグナム・カイザー』か」 「コネクト・アウトしろ。こいつを仕留める」 「……ああ。頼む、あいつを止めてくれ」 スキルヴィングがバトル・フィールドから消える。勇治は敵を睨んだ。 「今度こそ、お前を倒す」 『無理だ。貴様の攻撃は、俺には一切通用しないと言ったはずだ』 「ふざけるな。俺は『マグナム・カイザー』だ」 ディル・ゼレイクが全武装の砲門と言う砲門を開く。 今度こそ、自分だけであの銃を持つ『ダーク・フォース』を倒してみせる。 「見せてやる、俺の本気を」 『何度言わせる、貴様では無理だ』 互いに睨み合う。そして、互いの攻撃がぶつかり始めた。 次回予告 明日香「こんにちは、明日香です」 亜美 「亜美です! えっと、お兄ちゃん、今度は大丈夫だよね!?」 マリア「それはどうかな? ほら、勇治って弱い時は弱いし」 亜美 「ふぇ……それじゃ、お兄ちゃんはレギュラー降板になりますよ!?」 マリア「あ、それはヤバイかも」 明日香「マリアさん、何だかキャラが違うような……」 次回、CONNECT30.『飛鳥と勇治』 明日香「次回は、勇治君と相手の大激突だよ」 亜美 「あの、飛鳥さんは!?」 マリア「あそこ」 飛鳥 「だーかーらぁーっ! ファンの人達は俺を追いかけないでぇぇぇっ!」(←ファンに追い回され中) 明日香「…………」(←思いっきり怒ってます) |
<< CONNECT28. CONNECT30. >> 戻る トップへ
SEO | [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送 | ||