CONNECT30.『飛鳥と勇治』


 勇治と『アサルト・ハンター』による銃撃戦が始まる。
 しかし、そのバトルは前と同じ結果だった。ディル・ゼレイクの攻撃が全て撃ち落とされる。
『それが本気か? 弱いな』
「……!」
 敵の言葉に触発され、サタン・オブ・マグナムの出力を上げる。
 今度こそ、一人で倒すと言う想いが焦りを生んでいた。
『金剛の瞳』でディル・ゼレイクの銃弾の中心点を見極め、レイ・マキシマムが全て撃ち落とす。
 その差は、まさしくコネクターの差だった。
『確かに狙いは良い。だが、俺の資質の前では通用しない』
「くっ……」
『おやおや、ソード・マスターの姿がありませんね』
 レイ・マキシマムの後方から、2体のドライヴが姿を見せる。
 漆黒の翼を持ち、暗黒のローブを纏うドライヴと神話に出てくるオーディーンを模した漆黒のドライヴ。
「イブリス……あと、”闇夜の姫君”朧か……!」
『ファイナル・ロード様の為にも、サタン・オブ・マグナムを頂きます』
『覚悟しなさい、マグナム・カイザー……』
 イブリスのエヴィル・アスラフィルと、朧のオーディーンが構える。
 勇治の頬を、冷たい汗が流れ落ちる。



 勇治達がバトルしているバトル・フィールドの状況を見つつ、晃鉄が手を強く握る。
『アサルト・ハンター』である村瀬将射の強さは、格段に上がっている。
「3対1……これでは、いくら『マグナム・カイザー』でも……」
「危険でしょうね、あれじゃ。私も戦うしかないかなぁ……」
 隣で彼女が言う。晃鉄はすぐに気づいた。
「逢坂……来てたのか?」
「今来たのよ。ゆうゆうの妹ちゃんと一緒にね」
 そう言って、勇治のバトルの様子を見る。明らかに不利なのは確かだった。
 朧のドライヴ・オーディーンの姿を見つけ、亜美が目を見開く。
「あれは朧さん!」
「ん? あのドライヴのコネクターと知り合い?」
「は、はい……けど、朧さんはお兄ちゃんの敵なんかじゃ……」
「『ダーク・コネクター』だから、ゆうゆうの敵だと思うけど?」
「そんな事ないです! 朧さんは、本当は良い人なんです!」
 そんな亜美の言葉に、「ふーん」と優が返す。
 しかし、優は何か疑問を抱いていた。目の前の朧と亜美の言う朧の違いに。
 3体のドライヴを相手に苦戦せざる負えない勇治の姿を見て、晃鉄がドライヴを手にする。
「逢坂、ドライヴを修理して彼の手助けをしたい。手伝ってくれないか?」
「それはダメ。奴らと戦えるのは『フォース・コネクター』だけって、知ってるでしょ?」
「しかし、このままでは、彼は負けてしまう」
「分かってるって。ちゃーんと助っ人は呼んであるから」
「お、お待たせしましたっ……」
 その時、明日香が駆けつけた。走ってきたのか、肩で息をして疲れている。
「ご苦労さん」と優が声をかけ、飛鳥の姿を探す。
「……あれ? あすあすは?」
「それが……セルハーツを取りに……」
「何、今日はセルハーツを持ってなかったわけ、あすあす?」
 呆れる。こんな時に自分のドライヴを持っていなかった飛鳥は、あとでお仕置きだ
 途端、勇治のディル・ゼレイクが倒れる姿が映し出された。
「お兄ちゃん!」
「うわ、このままだと持たないみたいね……」
「……!」
 その言葉を聞いて、亜美がコクピットランサーまで駆ける。
「ちょっと待って、妹ちゃん。さっきも言ったように――――」
「そんな事言ってられないです! お兄ちゃんが危ないんです!」



 3対1と言う状況は、流石に『フォース・コネクター』でも不利な状況だった。
 なにせ、3体の強さはSRランク同等かそれ以上。
 そんな強さを持つ複数の敵を倒すには、間違いなくパートナーの力が必要だ。
「…………」
 歯を噛み締め、ディル・ゼレイクを立ち上がらせる。勇治は意地でも一人で倒そうと思った。
 相手が複数でも負けるわけにはいかない。自分はまだ、自分の限界を超えていない。
 サタン・オブ・マグナムを構え、集中する。
「……サタン・オブ・マグナム、システム移行……?」
 反応がなかった。勇治が目を見開く。
「なぜだ……なぜ、真の姿を見せない……!?」
 サタン・オブ・マグナムの真の姿。その強さは、どんな相手でも太刀打ちできない強さへと変わる。
 しかし、その反応がない。『アサルト・ハンター』が鼻で笑う。
『レガリアに見放されたようだな、マグナム・カイザー』
「くっ……!」
『イブリスや朧がいなくても、十分、お前を倒せるようだ。これで終わりしてやろう』
「そんな事させない!」
 ディル・ゼレイクの前に、1体のドライヴが立ちはだかる。
 亜美の乗るエル・センティアだ。
「お兄ちゃんは絶対に倒させない! お兄ちゃんは私が守ってみせるもん!」
『どけ、純粋な少女よ。俺はお前を撃ちたくない』
「どかない! まだお兄ちゃんは負けてないから!」
『もはや、マグナム・カイザーは負けた。だから、どけ』
「どかない!」
『どけ。でなければ……』
『私があなたを斬る』
 オーディーンが刀を構える。
「朧さん……」
『オーディーンの斬鉄剣は、レア・ウェポンの中でも一撃必殺を誇れる刀。邪魔をするなら、容赦はできない』
「違う……。今の朧さんは朧さんじゃない!」
『違わないわ。私は私、どこも違わない』
「違うよ! だって朧さん、凄く優しかったもん! 知り合った時、良い人だって思えたもん!」
『そんなのは、ただの戯言よ。人には必ず仮面がある。偽りと言う名の、ね』
「朧さん!」
『本当はあなたを斬りたくないけれど、仕方ないわね……』
 斬鉄剣がオーディーンのエネルギーを得て刀身を光らせる。同時に、レイ・マキシマムも銃を構えた。
 襲い掛かるオーディーンとレイ・マキシマムの攻撃。亜美が目を瞑る。
 瞬間、一閃の風がオーディーンの斬鉄剣を受け流し、レイ・マキシマムの攻撃を全て弾いた。
 鮮やかな青い装甲が目立つドライヴ。その右手に握るのは、全てを断つ力を秘めた剣。
 そして、ドライヴと同じ大きさの赤熱の盾を持ったセルハーツの姿があった。
「飛鳥……」
「飛鳥さんっ」
「…………」
 飛鳥がようやく到着した瞬間だった。



 飛鳥到着を確認し、優は「ギリギリセーフ」と一安心した。
 もう少し遅ければ、間違いなく勇治は倒され、サタン・オブ・マグナムは敵の手に渡っていただろう。
「それにしても、何で盾を装備してるわけ? あすあすは盾を使わないはずだけど」
「それを私に聞かれても……」
 明日香が苦笑する。しかし、セルハーツに盾と言う組み合わせは珍しかった。
 いや、剣だけで戦える飛鳥が今更盾を使うのは変である。
 新装備なのかどうか、それは明日香ですら分からない。
「でも、これで大丈夫かな、一応。あとは、妹ちゃんをコネクト・アウトさせないとね」
 優がドライブを構える。
「もう少し様子を見て、ヤバイと思ったらコネクトしますか」



 勇治と亜美の元に駆けつけた飛鳥。『アサルト・ハンター』がレイ・スペル・ショットを構える。
 そして連射。飛鳥は瞳を鋭くさせ、銃弾全てを見切った。
 ファルシオンセイバーが振り下ろされ、放たれた銃弾を全て弾き落とす。
 敵を睨みつつ、飛鳥が言う。
「どんなに連射に優れていても、銃弾は真っ直ぐにしか飛ばない。それさえ見切れれば、簡単に弾き落とせる」
『流石はソード・マスターだな。あのアサシン・ブレードが負けたのも頷ける』
「…………」
 飛鳥と『アサルト・ハンター』の両者が睨み合う。その時、ディル・ゼレイクが立ち上がった。
 かなりボロボロになってはいるものの、まだ戦えるようだ。
 ディル・ゼレイクが立ち上がったのを確認すると、セルハーツがディル・ゼレイクの前に剣を突き向けた。
「……!」
「ふぇっ……あ、飛鳥さん!?」
 飛鳥の意外な行動に驚く勇治と亜美。飛鳥が勇治を睨む。
「一つだけ答えろ。何で、またオーバー・ドライヴ・システムを使おうと思ったんだ?」
「…………」
「答えろ。答えないなら、容赦なく俺自らがお前を斬る!」
「……お前に勝つ為だ」
 勇治が口を開く。
「お前ともう一度バトルする時、俺は俺の本気でお前を倒そうと思っている。
 だからこそ、あのシステムの連続使用が必要だと思ったからだ」
「だったら、自分で使えば良いだろ。何で亜美ちゃんに使わせた?」
「あのシステムの負荷を中和するシステムを作る事ができたからだ。失敗したがな」
「…………」
 セルハーツが剣を下ろす。
「……亜美ちゃんで実験したのは、俺との約束があったからだな?」
「そうなる。だが、失敗するとは思っていなかった」
「失敗するに決まってるだろ。お前は、アクティブ・ウェポンとか作れないんだからな」
 セルハーツが敵へと姿を向ける。
「一度くらい相談しろよ、相棒だろ、俺達?」
「そうだな……俺と飛鳥はコンビだったな……」
「ああ。……イブリスと朧は任せろ。必ず勝てよ」
「当然だ」
 互いに笑みを浮かべる。そして、セルハーツとディル・ゼレイクが構えた。
 最強のコンビ復活。イブリスのエヴィル・アスラフィルが宙へと浮き上がる。
『幹部二人を相手にすると言うのですか、ソード・マスター?』
「ああ。勇治の邪魔は絶対にさせない」
 セルハーツがエル・センティアに盾を渡す。
「ふぇ……?」
「前に亜美ちゃんが作ろうと思ってたアクティブ・ウェポン。テストもちゃんとしてる」
「もう出来たんですか!?」
「意外と単純な作りだったからね。名前はレオハルト・シールド。援護は頼むよ」
「は、はい!」
 そして、勇治が再び『アサルト・ハンター』と睨み合う。
「今度こそ、その銃を破壊してみせる」
『レガリアに見放されたマグナム・カイザーが俺に勝てると思うな』

 最強のコンビが、『ダーク・フォース』と『ダーク・コネクター』の幹部2人に挑む!



次回予告

 明日香「こんにちは、明日香です」
 飛鳥 「どうも、飛鳥です」
 明日香「ようやく仲直りしたね、飛鳥君」
 飛鳥 「まーね。ここからが、俺と勇治の強さってところかな?」
 勇治 「必ずあの銃は破壊する」
 亜美 「お兄ちゃんの真剣な表情って、意外と珍しいかも……」

  次回、CONNECT31.『姫君の真実』

 明日香「次回は亜美ちゃんが大活躍!?」
 亜美 「私ですか!?」
 勇治 「頑張れ、亜美」
 明日香「そう言えば、亜美ちゃんに渡した盾って、凄いの?」
 飛鳥 「それは次回のお楽しみ。それじゃ、次回も皆でドライヴ・コネクト!」



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