勇治が『サタン・オブ・アブソリュート』を目覚めさせた。 そして繰り広げられる『マグナム・カイザー』と『アサルト・ハンター』によるバトル。 しかし、『サタン・オブ・アブソリュート』の前に、『アサルト・ハンター』は無力だった。 「マッハバーストッ……!」 勇治が何十発も撃つ。その動作は速く、レイ・マキシマムを圧倒的に寄せ付けない。 レイ・マキシマムが銃型のドラウニプル・モードへと変形する。 『ドラウニプル、発射……!』 「無駄だ」 レイ・マキシマムの放った攻撃を、呆気なくディル・ゼレイクが阻止する。 そして、ディル・ゼレイクが『サタン・オブ・アブソリュート』を肩上へ持っていく。 ディル・ゼレイクのカメラアイが赤色へ変わり、機体全体がオーラを纏う。 その姿は、まさに悪魔であり、それを見た飛鳥は目を見開いた。 「……勇治の奴、やっぱオーバー・ドライヴ・システムを積んでやがったな……! つーか、まさか……!?」 嫌な予感がすると思ったら、それは思いっきり的中した。 『サタン・オブ・アブソリュート』の銃口にエネルギーが集中し、赤熱の球体が生成される。 赤熱の球体は、銃からエネルギーを得ているのか徐々に巨大化していった。 ディル・ゼレイクの全長を数倍上回るほどの巨大な赤熱の球体。まるで小さな太陽である。 それを見た『アサルト・ハンター』も勝負に出た。 『ナイン・ヘッド・ラグーン』 9つの砲門が開き、一斉に波動が放たれる。 「ファイナル・インフェルノッ……!」 同時に、ディル・ゼレイクが赤熱の球体を放ち、9つの波動と共にレイ・マキシマムを呑み込んだ。 そして大爆発が起き、その爆風でディル・ゼレイク自らが吹き飛ばされる。 「ったく、あの馬鹿……」 セルハーツは爆風に吹き飛ばされないように耐える。そして爆風が止んだ。 すぐに『アサルト・ハンター』の姿を確認する。反応はない。 どうやら、『ダーク=レガリア』と共に破壊したようだ。 爆風で吹き飛ばされたディル・ゼレイクは、仰向けで倒れている。間違いなく、もう動けないだろう。 呆れつつ、その場から飛鳥が話し掛ける。 「勇治、生きてるか?」 「…………」 「……まさか、前みたいに気を失ってるんじゃ……!?」 「……疲れた」 「ちょっと待ていッ!」 飛鳥が肩を落とす。 「人が心配した時に『疲れた』、じゃねぇっ!」 「疲れたから、素直にそう言っただけだ」 「……ああ、そうだろうよ。お前はそんな奴だったって事を忘れてた俺が悪いよ!」 しかし、苛立ちが収まらない。 「……ったく、疲れるに決まってるだろ。システム発動させてる上に、あの技使ったんだから」 勇治が最後に放ったファイナル・インフェルノは、コネクターに相当な疲労感を与える。 さらに、オーバー・ドライヴ・システムを使ったとなれば余計に、だ。 「これで連続使用だったら、間違いなく今度は資質失くしてたぞ」 「だろうな」 「……ま、今回はそんな事ないみたいだな」 飛鳥の言葉に、勇治が頷く。 「ああ。飛鳥、頼みがある……」 「何だよ?」 「コーラ奢ってくれ」 「自分で買え! つーか、疲れてんだったらポカリにしやがれっ!」 「そんなのは俺の自由だ。ポーションでも良いぞ」 「誰が奢るか! って、久々のボケがそれか、それなのか!?」 深く肩を落とす。すっかり、勇治は元に戻りきっていた。 もはや、ディル・ゼレイクにオーバー・ドライヴ・システムを積んでいた事に対して訊く気も起こらない。 ディル・ゼレイクの近くまで行こうとする。その時、ファルシオンセイバーが反応した。 「反応してる……? まさか、『アサルト・ハンター』はまだ……!?」 その時、奴らは姿を見せた。 暗い闇の中に一つだけ無気味に光る液晶画面。その部屋で、彼は一体のドライヴを眺める。 『ダーク・コネクター』と言う存在を作り、彼らの総帥『ファイナル・ロード』。 ドライヴが表示される液晶画面の隣の画面に、一つの人影が表示される。 「どうやら、『レイ・スペル・ショット』は破壊されたようだな」 『……申し訳ありません、ファイナル・ロード様』 「構わん。まさか、お前ほどの者がダメージを受けるとは。流石だ、『ソード・マスター』」 前より確実に実力を増している。イブリスのエヴィル・アスラフィルにダメージを与えたのが証拠だ。 エヴィル・アスラフィルの性能は、どんなに精通しているコネクターでも作れない。 「さて、次の手を打つ必要があるな」 『いえ、もはや手は打ってあります。今度こそ、必ずレガリアを……』 そう、今度こそ『ドライヴ=レガリア』を手に入れる。 突然現れる3体のドライヴ。一体だけ、かなりの巨体を誇る。 その中の一体――――全身をローブで覆い、姿を隠すドライヴの持つ盾に飛鳥が目を見開いた。 ダーク・ブルーで施され、闇に染まる女神のレリーフが刻まれた盾。 「ティシフォネの盾!? 三人目の『ダーク・フォース』!?」 『アサルト・ハンターの支援に来ましたが、遅かったようですね』 盾を持つドライヴを駆る『ダーク・フォース』が呟く。 その隣の紫の戦乙女――――ヴォルト・デュラハンが、不敵な笑みを浮かべた。 『けれど、マグナム・カイザーは動けないようですね、クイーン様』 『そのようですね』 『どうなさいますか?』 巨大なドライヴを駆る『ダーク・コネクター』が訊く。飛鳥は舌打ちした。 「こうも早く、三人目が動き出すなんて……!」 『ここは、ヴォルト・デュラハンに任せます。支援の対象がいないのならば、私の出番はありません』 「……撤退する気か? お前達にとっては、好都合な状況だぜ……!?」 『動けないマグナム・カイザーを仕留めるのは、ヴォルト・デュラハンで十分ですので。 あと、これは私なりの警告です。あなた達では、我々を倒す事などできません』 「何だと……!?」 『我らが総帥は、究極のドライヴを手に入れました。いずれ、全ては我らの物です』 盾の『ダーク・フォース』と巨大なドライヴが姿を消す。 ヴォルト・デュラハンがバトル・フィールドの地中から、一体のドライヴを出す。 巨大なラフレシア型のドライヴ。中心部にエネルギーがチャージされ、ディル・ゼレイクへと向けられる。 それを見た飛鳥が、ファルシオンセイバーを構える。 『その距離から私のラフレシアを破壊できるとでも?』 「できるさ。『バスターファルシオン』を使えば……!」 しかし、五分五分だった。間違いなく、時間ギリギリの勝負だ。 「ファルシオン、封印解――――!」 言葉を止める。飛鳥は目を見開いた。 気のせいだとは思うが、セルハーツが語りかけてきた。 「……セルハーツ……? 俺にあの技を使えって言うのか……!?」 その言葉に答えるかのように、セルハーツのカメラアイが一瞬だけ強く光る。 ラフレシアの中心部からビームから放たれようとする。飛鳥は迷わず動いた。 無謀かもしれない。しかし、セルハーツを信じたい。 ディル・ゼレイクの前――――少し距離を置いた場所に立ち、剣を構える。 「……頼むぜ、セルハーツッ!」 友を守る為にも、力を貸してくれ。その言葉に、セルハーツが応えた。 セルハーツの周囲から凄まじき闘気が発生し、ファルシオンセイバーが姿を変える。 全てを眩い光に包まれた剣。飛鳥の瞳が鋭くなり、敵を睨む。 『何をしようとしているか分かりませんが、無駄ですよ』 ラフレシアがビームを放つ。しかし、セルハーツの周囲から発せられる闘気に阻止された。 (力が漲る……これなら……!) 光の剣が、その光をさらに増す。 「うぉぉぉおおおおおおっ!」 周囲の闘気が、まるで灼熱の炎の如く燃え上がる。 セルハーツが「今だ!」と言っているような気がする。飛鳥が光の剣を大きく振り上げた。 「天翔蒼破ぁぁぁっ……絶・靭・斬ぁぁぁぁぁぁんッッッ!」 振り下ろす。一直線に伸びる波動がラフレシアを呑み込んだ。 その場からバトル・フィールドの端まで吹き飛ばされ、爆発するラフレシア。 ヴォルト・デュラハンが目を見開く。光の剣がファルシオンセイバーへ戻った。 とてもつない疲労感に襲われ、セルハーツが肩膝を大地につき、クールダウンを開始する。 「クールダウン300秒……これが、本当の天翔蒼破絶靭斬……!」 ドライヴと心を通い合わせる。それは、自分のドライヴを信じ、その鼓動を感じる事。 鼓動は、原型となる剣を媒体に光の剣に姿を変え、絶大な破壊力を得る。 それが母の残した”究極の光剣”、天翔蒼破絶靭斬だと飛鳥は知った。 『あのラフレシアを簡単に……しかし、そのお陰でソード・マスターも行動不能ですか』 「くっ……!」 ヴォルト・デュラハンが雷の鞭を振るう。 『剣と銃……二つのレガリアは頂きます』 「――――そうはさせぬ!」 刹那、大地が轟き、衝撃波がヴォルト・デュラハンを襲う。 巨大な剣を持ったドライヴがセルハーツの前に立ちはだかる。 「『ソード・マスター』は私がいる限り、絶対に倒させはせん」 「が、ガルノア……? あんた、何で……!?」 「言ったはずだ、お前を守ると。それが、今の私の役目だ」 「いや、だって……」 元『ダーク・コネクター』の幹部だったとは言え、今は普通のコネクターだ。 現『フォース・コネクター』と先代を除いて、一般のコネクターは敵とのバトルは許されない。 「協会より特例で許可は得ている。今の『マスター・コネクティブ』は、私の事を知っているからな」 「…………」 疲れてて何も言えない。特例を出す協会も協会だが、ガルノアもガルノアだった。 やや置いてけぼりの状態だったヴォルト・デュラハンが雷の鞭を構える。 『まさか、あなたが出てくるとは……”全てを悟りし者”ガルノア』 「その名は捨てた。今の私は、『ソード・マスター』を守る盾に過ぎん。戦うのであれば、私は容赦せぬ」 『勝つ確率が低いバトルは興味ありませんので、撤退させて頂きます』 そして、ヴォルト・デュラハンも姿を消した。 コクピットランサーから出て、飛鳥は優と亜美の姿がない事に気づいた。 「優さんと亜美ちゃんは?」 「優さんは病院に行ったよ。朧さんって人の検査をするって……亜美ちゃんもそれについて行って……」 「そうなんだ。どうする?」 勇治に訊く。 「……病院に行く」 「言うと思った。バイクで来てるから、後ろに乗って行くか?」 「それは遠慮する」 「おい……」 意外と運転は信用されていなかったりする。しかし、それも当然だった。 勇治が飛鳥にSDカードを渡す。 「オーバー・ドライヴ・システムの負荷を中和させるシステムだ」 「やってみるけど、本当に中和させる方法が分かったのか?」 「当然だ。とあるゲームを元に作ったからな」 「って、ちょっと待て、それ!」 飛鳥がすぐにSDカードをドライヴにセットする。 まるでメールを打つかのように素早く中身を確認し、そして肩を落とす。 「……やっぱり。これ、ただのミニゲームじゃねぇか!」 「そうなのか?」 「そうなのかって……エラー出まくってるのが分からねぇのか、テメェ!?」 ドライヴに表示されるエラーの文字。やはり、勇治は勇治だったりする。 いや、それ以前にゲームを元に作る事の方が凄い。流石と言えば流石か。 飛鳥がため息をつく。 「結局、中和は無理って事か。……けど、もうどうても良いか」 ドライヴからSDカードを取り出し、勇治に返す。 「連続使用は絶対にするなよ。あと、それプラス、ファイナル・インフェルノもな」 「当然だ。お前とバトルをする前に、力を失う気などない」 互いにふっと笑う。 (……けど、あの『ダーク・フォース』の声、どこかで……) 思い出せない。飛鳥は、新たな『ダーク・フォース』の事が気になっていた。 次回予告 明日香「こんにちは、明日香です」 飛鳥 「ようやく、アサルト・ハンターとのバトルが終わったな」 明日香「うん。次回から、また新展開だね」 次回、CONNECT34.『最強チームの敗北』 明日香「次回は、あのチームが敗北!?」 飛鳥 「……明日香、チーム名言わないと分からないって(汗)」 明日香「だって、台本に書いてないんだもん……」 飛鳥 「な、何だよ、台本って……?」 |
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