CONNECT38.『暗き闇を断つ鍵を』


 大地に屈したセルハーツ。イブリスが近づく。
「バハムート・ティアァァァッ!」
 その時、巨大なビームアックスが振り下ろされる。エヴィル・アスラフィルが宙を舞って避けた。
 セルハーツの目の前に立つプラディ・ラ・グーン。そのドライヴを駆るゴウが敵を睨む。
 そして、飛鳥に呼びかける。
「飛鳥、立てるか!?」
「…………」
「飛鳥!」
「……だ……嘘だ……あの人が死んだなんて……嘘だ……」
「死んだ、だと……?」
 ゴウの眉がピクリと動く。イブリスが笑みを浮かべる。
『先代『ソード・マスター』は死にました。私が殺しましたので』
「……ふざけた事を言うな、イブリス。あいつは、死ぬような奴じゃない!」
『この剣が証拠ですよ。色が変わってしまいましたが、あのドライヴの持っていた剣です』
 闇へと染まった剣を見せられる。ゴウはまだ信じる事をしなかった。
 あの剣は、あいつにしか持てない特殊な剣。それをイブリスが持つなど不可能。
 バハムート・ティアを構えながら、ゴウが敵と対峙する。



 バトル・フィールドの外。優が持っていたノートパソコンで端末を操作する。
「えっと、ハッキング許可は出てるから、ちょちょいのちょい、と」
 慣れた手つきで操作する。普通、ハッキングなど不可能にも関わらず。
 郁美がイブリスの持っている剣を見て口を開く。
「優、イブリスはあの剣の外見だけコピーしてるみたいね」
「だと思う。データも思いっきり違うし」
 構わず、操作を続ける。そんな時、郁美のドライヴの着信音が鳴り響いた。
「もしもし? どちら様かしら?」
『あ、あの、明日香です……!』
「あら、どうしたの?」
『あの、ダーク・コネクターが出たって、ゴウさんから……』
「大丈夫よ。今、その現場にいるわ。待機しているけれど」
 そう答える。すると、明日香が電話の向こうから声を上げた。
『飛鳥君を助けてくれないんですか!?』
「助けるわよ。ただ、今はまだ動かない方が良いの」
 今動けば、間違いなくイブリスは撤退するだろう。先代『フォース・コネクター』が二人も加勢するのだから。
 そうなれば、また飛鳥が単独で動く事になる。
 好機を待つしかない。それしか、手はないのだ。
 それに、イブリスはいつでもこよみを殺す事ができる。今、それに対して手を打つ必要がある。
「大丈夫よ。飛鳥は、私達が誰よりも認めてるコネクターなのだから」



 プラディ・ラ・グーンが防御体制のまま、押される。ゴウは舌打ちした。
 相手は4体。その強さも良く知っている。
 一人で4人の敵と同時に戦うのは、流石に難しい。
『おやおや、押されていますよ、ディフェンド・キング』
 イブリスが不敵に笑う。ゴウの後ろで守られている飛鳥は、相変わらずだった。
「……あの人が死んだ……憧れてた人が……死んだ……」
 憧れ、そして自分に勇気を与えてくれた人。その人はもういない。
 そんな飛鳥を守りながら、ゴウが攻撃を仕掛ける。
「ラ・グーン……クラッシャァァァーッ!」
 ヴォルト・デュラハンの攻撃を防ぎ、カウンターを仕掛ける。瞬間、グレート・ビックフットが動いた。
 巨大な拳を振るい、プラディ・ラ・グーンの左拳とぶつかり合う。見事、ゴウの攻撃を防いだ。
 攻撃した事により、アルティメットシールドのバリアが解除される。
 イブリスのエヴィル・アスラフィルが、セルハーツの頭部を掴んだ。
「しまった……!」
『お前の相手は俺だ、ディフェンド・キング!』
 グレート・ビックフットがプラディ・ラ・グーンに襲い掛かる。
 目の前の敵に集中していなければ、逆に自分が負ける。ゴウは歯を噛み締めた。



 セルハーツの頭部を左腕で掴むエヴィル・アスラフィル。イブリスは笑みを浮かべた。
 戦意が全くない『ソード・マスター』。この状態なら、洗脳など容易い。
『ソード・マスター、ファルシオンセイバーと共に我らが元へ……』
 右腕のデス・ハンドが不気味な光を放つ。
「……こよみさんにとって輝凰さんは……あの人がいないとこよみさんは……」
『ご安心を。彼女の記憶は消去しますし、あなたの記憶も全て消し去ります』
 デス・ハンドがセルハーツに近づく。

 ――――ジ・ハードッ! セイバァァァーッ!

 瞬間、エヴィル・アスラフィルの左腕が切断される。セルハーツが大地に倒れた。
 左腕を切断したのは、黄金に輝く装甲を持ったドライヴだ。
 鮮やかな黄金のビームセイバーを持ったドライヴ。その姿は、見ただけで圧倒される。
 黄金の騎士。そう言っても良いドライヴを見たイブリスの目が大きく開いた。
『な……お前は……!?』
「久しぶりだな、イブリス。予想外の助っ人の登場だ」
 黄金のドライヴを駆る彼がイブリスを睨みつける。



 再びバトル・フィールドの外。黄金のドライヴの登場を見ても、優と郁美は全く驚かなかった
「わーお、主役っぽい登場してくれるじゃない。タイミングが良い事」
「やっぱり、イブリスの言っていた事は嘘だったわね」
「久々に見たけど、ブランクあると思う?」
「ないわね。彼は私達の代の最強のコネクターだもの」
 いつもと変わらぬ口調で会話する二人。あれでブランクがあると言うなら、嘘だ、と言ってやりたい。
 優が端末の操作を続けたまま、溜め息をつく。
「全く、帰って来たなら連絡くらいしろっての」
「そうね。ところで、どうなの?」
「今終了したところ。これで、デス・ハンド対策はできたはず。あとは、あいつ次第ってところ」
「じゃあ、私は先にコネクトするわよ?」
「ん、よろしく」



 エヴィル・アスラフィルの前に現れた黄金のドライヴ。飛鳥がゆっくりと口を開く。
「……アーク……ウィザリオ……?」
「全く、イブリスには気をつけろって言っていただろ、飛鳥」
「……さん……輝凰……さん……輝凰さん……!」
 セルハーツが立ち上がる。飛鳥の目が少しだけ潤んでいる。
「輝凰さん……輝凰さん!」
「久しぶりだな。元気にしていたか?」
「はい……! って、輝凰さんはイブリスに殺されたって……」
「そんな訳ないだろ。お前はイブリスに騙されたんだ。しっかりしろ、飛鳥」
「す、すみません……」
 飛鳥が謝る。
 先代『ソード・マスター』洸月輝凰(こうげつ きおう)。最強を貫いたコネクター。
 黄金のビームセイバーをプラズマセイバーに持ち替えて、輝凰が口を開く。
「イブリスは任せる。こよみは、俺が助ける」
「任せるって……俺にですか……!?」
「お前は俺の後継者だろ。今更、弱気になるな。飛鳥、お前ならイブリスを倒せる」
「……はい、輝凰さん。イブリスは任せてください……!」
「それでこそ、俺から『ソード・マスター』を継いだコネクターだ」
 頷き、飛鳥がイブリスを睨む。その瞳は、いつもの飛鳥だ。
 その姿を見て、輝凰がふっと笑みを溢す。そして、プラズマセイバーをイブリスへと向けた。
「俺の女は返してもらうぞ、イブリス」
『ふふふ……ふははははははっ!』
 イブリスが高々と笑い出す。そして、輝凰を睨んだ。
『それは無理だ、輝凰。なにせ、お前はここで消えてもらうのだからな!』
 エヴィル・アスラフィルの切断された左腕が再生し、重力弾が放たれる。瞬間、飛鳥が動いた。
 重力弾の流れを見切り、両断する。
『ソード・マスター……! 早くも持ち直したか……!?』
「お前の相手は俺だ、イブリス! 輝凰さんの邪魔は絶対にさせない!」
「良く言った。頼むぞ、飛鳥」
 そして、輝凰の駆る黄金のドライヴ――――アーク・ウィザリオが駆け抜ける。



 輝凰の登場で、ゴウもついに本気を出した。
 アルティメットシールドを前に出し、ヴォルト・デュラハン、グレート・ビックフットの両者を遠ざける。
「グローアップッ! フルディフェンス・アスティメットォォォッ!」
 シールドが幾つものパーツに分離し、プラディ・ラ・グーンの鎧となって装備される。
 どんな攻撃をも防ぐ最強の鎧、フルディフェンス・アスティメット。
 グレート・ビックフットのジャイアント・サイクロプスが腕を大きく振り上げた。
『今更、レガリアの力を解放したところで何になる!』
 振り下ろされる。プラディ・ラ・グーンが右腕を引いた。
 右腕にエネルギーが黄金の光を出し、集束する。
「フルパワァァァ・ディオォォォスッ……クラッシャァァァァァァーッ!」
 目の前に振り下ろされた拳を殴る。衝撃がジャイアント・サイクロプスの全身へと伝わった。
 巨大な拳が、プラディ・ラ・グーンの拳の前に砕け散る。
 吹き飛ばされるジャイアント・サイクロプス。グレート・ビックフットが驚く。
『馬鹿な、ジャイアント・サイクロプスを!?』
「バハムート・ティアッ!」
 左手でバハムート・ティアを持つ。
「バハムゥゥゥト・ブレイクッ!」
 大地に振り落とす。地割れが発生し、ジャイアント・サイクロプスの動きを封じた。
 プラディ・ラ・グーンがその場を大きく跳躍し、ジャイアント・サイクロプスの頭上まで上昇する。
 フルディフェンス・アルティメットによるバリアが、巨大ドライヴを取り囲んだ。
 ゴウが瞳を鋭くし、『金剛の瞳』でジャイアント・サイクロプスの頭上に光る点を見つける。
「フルパワァァァ・ディオォォォスッ……クラッシャァァァァァァーッ!」
 頭上目掛けて、再び右腕が振るわれる。ジャイアント・サイクロプスの頭上が割れた。
 そのまま、プラディ・ラ・グーンが大地に降りる。
『馬鹿な、この俺が……!?』
「この俺に倒せぬものなど無いッ!」
 ジャイアント・サイクロプスが大爆発を起こす。
『ダーク・コネクター』幹部の一人、グレート・ビックフットが敗れた。
 ヴォルト・デュラハンが目を見開く。
『馬鹿な、グレート・ビックフットのドライヴは、ディフェンド・キングであろうと……』
「システム、鮮血のブラッディ・コート」
 瞬間、無数のレーザーが放たれる。ヴォルト・デュラハンは避けた。
 現れたのは、六枚の翼を持った白銀の天使。
「私が参戦する必要はなかったかしら?」
「いや、心強い。ヴォルト・デュラハンには、ラフレシアがあるからな」
『先代のストーム・クラウン……良いですわ、あなた方は私が倒します……!』
 ヴォルト・デュラハンの両隣から、ラフレシア2体が姿を見せる。
 1体はヴォルト・デュラハンと合体し、もう1体が攻撃を開始する。
 しかし、攻撃はプラディ・ラ・グーンの前に呆気なく散った。
「無駄な事をするな、ヴォルト・デュラハン! フルディフェンス・アルティメットには通用せん!」
『そうでしょうね。しかし、私も負けれないのです』



 輝凰の駆るアーク・ウィザリオが、『ナイトメア・クイーン』に近づく。
 プラズマセイバーを振り落とす。相手はバリアで防いだ。
「やはり、ティシフォネの盾にプラズマセイバーはダメか」
『先代ソード・マスター……あなたでは、私のオクス・メドゥサにダメージを与える事はできません』
 黒いローブで隠されていた姿が露わになる。ドライヴにしては珍しい、髪を持つ女性型だ。
 否、髪は一本一本が蛇のような姿をしている。輝凰がふっと鼻で笑った。
「なるほど、神話のメドゥサを再現しているわけか」
『我が僕よ、ここに……』
 オクス・メドゥサの周囲から、ゴーレムのようなドライヴが姿を見せる。
「オートマータか……全く、面白い事をやってくれるじゃないか、こよみ」
『私はそのような名ではない。私の名はスティアです』
「イブリスの洗脳は相変わらずか。だったら、助ける方法も一つだけだな」
 プラズマセイバーを構え、輝凰がオクス・メドゥサのみを睨みつける。
 助ける方法は一つ。ドライヴとこよみを切り離す、それだけだ。
「待ってろ、こよみ。今助けてやるからな」



次回予告

 輝凰 「さて、ようやく俺の出番ってところか」
 ゴウ 「余裕だな、輝凰」
 輝凰 「そうでもないぜ? 相手は結構大量みたいだしな」
 郁美 「その態度は余裕ね、あなた」
 飛鳥 「……いや、輝凰さんだけじゃなく、郁美さんや優さんも余裕な感じがするんですけど」
 明日香「年の功、かな?」
  ※多分違います。

  次回、CONNECT39.『輝く翼が勝利を刻む』

 明日香「次回は、先代『ソード・マスター』の輝凰さん本領発揮!」
 優  「本当にブランクあるわけ?」
 輝凰 「そりゃあるさ。向こうに行ってからは、ずっと医者の仕事しかしてない」
 飛鳥 「……どう見ても、俺より強そうな気がする」
 明日香「せ、先代の人達って一体……」
  ※下手すると、主役を誇れる先代達。
   飛鳥達、メインキャラの立場危うし(何



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