CONNECT40.『ソード・マスターとして』


 ジャイアント・サイクロプスが拳を振り落とす。プラディ・ラ・グーンが受け止めた。
 その隙を狙い、アーク・ウィザリオが剣を振るう。
「セット! 『スキル・プログラム』、鳳凰紅蓮ッ!」
 獅王紅蓮姫が二つの銃で攻撃し、アーク・ウィザリオが斬りつける。
「『スキル・プログラム』セットッ! 白銀鋼王ぉぉぉっ!」
 プラディ・ラ・グーンが殴り、シルバー=メルクリウスが無数のレーザーで撃つ。
 4体のドライヴがジャイアント・サイクロプスの周囲に立ち、そして敵を睨む。
「気高き紅蓮の炎よ」
 獅王紅蓮姫のカメラアイが光る。
「唸り轟く鋼王の鼓動よ!」
 プラディ・ラ・グーンのカメラアイが光る。
「吹き荒れる白銀の風よ」
 シルバー=メルクリウスのカメラアイが光る。
「天を舞い、悪を貫く鳳凰よ!」
 アーク・ウィザリオのカメラアイが光り、4体のドライヴが両腕を敵へと向ける。
 ジャイアント・サイクロプスを中心に、光の円が描かれた。
「4つの力よ、一つとなり無限の力となれ!」
 輝凰が一枚のSDカードを取り出し、ドライヴに装填する。

『スキル・プログラム! フォース・ジェノサイド・バーストッ!』

 4体のドライヴの両手から波動が放たれ、重なり合って共鳴波動となる。
 共鳴波動がジャイアント・サイクロプスを襲い、大爆発が連続で起こった。
 輝凰、優、郁美、ゴウの4人が誇り、誰も真似できない二段階式『スキル・プログラム』。
 大ダメージを受けたジャイアント・サイクロプスの動きは、完全に止まった。
 4体のドライヴが同時にクールダウンを始める。
「クールダウン120秒……相変わらずトドメ専用だな、こいつは」
「久々にやると疲れるわね」
「動きは止まったけれど、倒せたのかしら?」
「いや、まだのようだ……!」
 ゴウが睨む。止まったはずのジャイアント・サイクロプスが動いた。
 今の自分達じゃ動く事ができない。ゴウが舌打ちする。
 ジャイアント・サイクロプスが腕を振り上げる。刹那、振り上げた腕が吹き飛んだ。
「……ようやく、動けるようになったか、飛鳥」
「……あとは任せてください、先代!」
 青く輝く、長い光の刀身。全てを断つバスターファルシオンを手にしたセルハーツの姿。
『――――』
 サタン・ビックフットが雄叫びを上げる。
 ジャイアント・サイクロプスが斬り飛ばされていない方の腕を振り落とす。
 飛鳥が敵を睨みつけ、バスターファルシオンで受け止めた。
 否、振り落とした腕はバスターファルシオンの前に、綺麗に二つに割れていく。
 集中力を増し、飛鳥がその鼓動を感じる。
「敵を断て、ファルシオンッ!」
 振り上げたバスターファルシオンの刀身が、セルハーツの20倍以上の長さに伸びる。
「バスタァァァ、クラァァァァァァシュッ!」
 振り落とし、ジャイアント・サイクロプスが盾と共に両断される。
 大爆発を起こすジャイアント・サイクロプス。再生が起きていない事を確認し、飛鳥が剣を肩上に持っていく。
 バスターファルシオンが光の刀身を光の粒子へと拡散させ、元の姿に戻った。
 そして、バトルは終わった。



 コクピットランサーから降りて、輝凰が飛鳥の頬を叩く。
 そして、深い溜め息をついて呆れた。
「こよみの事はともかく、一人で動いてどうする気だったんだ、飛鳥?」
「すみません……」
「お前の事だ、どうせ自分のせいだとか思っていたんだろ?」
 思いっきり図星だった。輝凰が話を続ける。
「お前は悪くない。イブリスの方が一枚上手だっただけだ。
 こよみが洗脳されたのは、奴が変装でもして騙したからだろう」
「そう、ですかね……?」
「そうだ。俺が来なかったら、お前も『ダーク・コネクター』になっていたな」
「…………」
「まぁ、最後のバスタークラッシュは流石だった」
 輝凰が飛鳥の肩に手を置く。
「あれから3年。また強くなったな、飛鳥」
「輝凰さん……」
 飛鳥が顔を俯く。輝凰が頭に「?」を浮かべた。
 褒めたつもりなのだが、なぜか落ち込んでしまった。
 そんな輝凰に、飛鳥がドライヴを出す。
「……輝凰さん、ファルシオンセイバーを受け取ってください」
「どうしてだ?」
「……今の俺は、こいつに相応しくない。だから……」
「あすあす、馬鹿な事言ってるんじゃないの」
 突然、後ろから頬を強く引っ張られる。
「バスターファルシオンが使えるって事は、あすあすを所有者として認めてるのよ、ファルシオンは」
「けど、俺は……」
「相応しくないって事はないと思うよ?」
「――――!」
 声のした方へ振り向く。そこに、その人はいた。
 3年前に比べて、大人びた魅力を持った女性。まだ自分の知っている面影を残している。
「こよみ……さん……」
「ごめんね、私のせいで。けど、飛鳥君のせいじゃないからね?」
「……いいえ、あなたが『ダーク・フォース』になったのは俺のせいです」
「違うよ」
 こよみが飛鳥に近づく。そして、飛鳥の額に軽くデコピンする。
「今回は私が悪いの。輝凰さんの偽者って気づかなかったから」
「けど……」
「飛鳥君は悪くないの。悪いのは、洗脳された私に躊躇いもなく本気で攻撃した輝凰さんだから
「……俺のせいか?」
「当然だと思いますけど? 恋人である私に本気出すなんて、最低です
 そう言って、飛鳥の腕に抱きつく。優はまだ頬を引っ張っているままだ。
 輝凰に対し、こよみがペロっと舌を出す。
「飛鳥君と付き合っちゃおうかな? 輝凰さんより若いし、可愛いところあるし」
「……良く言いますよ。3年前は思いっきり輝凰さんが好きだって言ってたのに……」
「と言うより、残念だったね、こよちゃん。あすあすには、もう恋人がいるのよ、こう見えて」
「……と言うか、いい加減離してください。痛いんですけど」
 まだ頬を引っ張られている状態。そんな状態でまともに喋れたりするのは、そこまで引っ張られてないからだ。
 しかし、流石に痛い。飛鳥の表情を楽しみながら、優は手を止めない。
「別に良いじゃない、これくらい。一人で行動した罰」
「罰って事は、今日は一日中、飛鳥君を借りちゃおうかな?」
「あら、楽しい事をしてるわね。私も参加して良いかしら」
 そう言って、今度は先代『ストーム・クラウン』が絡んでくる。
 年上の女性三人に絡まれる飛鳥。その姿は幸せそうで幸せではない。
 そんな光景を見ている輝凰に、ゴウが話し掛ける。
「そう言えば、こっちに帰って来て、何をするんだい?」
「何って、医者に決まってるだろ。その為に、アメリカに行ってたんだからな」
「そうだったね。しかし、君に白衣は似合わないと思うけどね、僕は」
「大きなお世話だ」



 暗い闇の中に一つだけ無気味に光る液晶画面。
 その部屋で、総帥『ファイナル・ロード』は、イブリスからの報告を聞いていた。
「……ほう、洸月輝凰が」
『はい。その強さは、今のソード・マスターよりもまだ上かと』
「それはない」
 ファイナル・ロードが否定する。
「洸月輝凰は、所詮は剣を得意としていただけに過ぎんコネクターだ。
 しかし、『ソード・マスター』は違う。彼は、恵まれた素質を持っている」
『恵まれた素質、ですか?』
「そうだ。なにせ、お前に傷をつけたコネクターでもあるからな」
 イブリスの強さは、どんなコネクターでも太刀打ちできない。
 それが、たとえ最強と言われた先代『ソード・マスター』の輝凰であっても。
「『ソード・マスター』を倒す術を頼むぞ。イブリス」
『……分かりました、ファイナル・ロード様』



 飛鳥は、まだ女性三人に絡まれていた。
 そこに、バッドタイミングとも言える時に明日香がやって来た
「あ……明日香……」
 今の自分の状況から、破局の瞬間が頭の中に浮かび上がる
 自分のせいで関係が拗れつつあるのに、この状況はさらにそれを拗れさせる。
 そう思った矢先、明日香が飛鳥に近づいて来る。
 そして、優とこよみ、そして郁美の三人から飛鳥を引き離し、飛鳥の腕に強く抱きつく。
「……は?」
 予測していなかった行動に対し、飛鳥が頭に「?」を浮かべる。
「飛鳥君に変な事しないでください!」
 明日香がムッとした表情で言う。
 どちらかと言えば、変な事と言うより絡まれていたのだが。
「……って、それ以前に。明日香、怒ってないの……?」
「うん。だって、ゴウさんから聞いてから。でも……」
「で、でも……?」
「好きって言ってくれないと、許してあげない」
 明日香は明日香で、意地悪だった。飛鳥が苦笑する。
 そんな飛鳥に、輝凰が「それくらい簡単だろ」と追い詰めた。
「それに、明日香ちゃんに礼を言わないとな」
「れ、礼……?」
「俺が駆けつける事ができたのは、明日香ちゃんが俺に教えてくれたからだ」
「そうだったんですか……」
「そうだ」
 飛鳥が明日香に頭を下げる。
「……明日香、ごめん。そして、ありがとう……」
「飛鳥君、好きって言わないと許さないって言ったよ?」
「…………」
「それとも、私の事が嫌いになったのかな?」
「そんな事はない! 俺は明日香が好きだ!」
「うん。私も大好きだよ、飛鳥君っ」
 首に腕が回り、明日香がキスする。飛鳥の顔が瞬く間に赤くなっていく。
 二人の姿に優が「ひゅー」と茶化し、他のメンバーも可笑しそうな顔をする。
 ゆでだこ状態の飛鳥。そんな飛鳥を見て、輝凰が笑った。
「おいおい、キスくらいで真っ赤にしてると、これからの展開で苦労するぞ」
「な、何ですか、これからの展開って!?」
「それは俺の口からは言えないな。まぁ、明日香ちゃんに嫌われないようにな」
「き、輝凰さん!」
 その瞬間、輝凰が真面目な顔をする。
「良いか、飛鳥? 奴らを最も倒す力があるのはお前だ。それを忘れるな」
「え……?」
「『ソード・マスター』として、絶対に負けるな。頼んだぜ、俺の後継者」
「……はい。そのお言葉、しっかりと受け止めておきます。先代『ソード・マスター』」
 飛鳥が頷く。輝凰がふっと笑う。
 先代『ソード・マスター』から、今の『ソード・マスター』への心強い言葉。
 そんな二人に心動かされたか、ファルシオンセイバーが少しだけ反応する。
 その瞬間、脱力感漂う着信音が鳴り響き、雰囲気を崩した。
「……何だ、その着信音は?」
「……某ライブレードの曲です」
 そう答えながら、電話に出る。
「何か用か、勇治?」
『片付いたようだな。さっき電話した時と声が違う』
「……ああ。悪かったな、色々と」
『いや、別に良い』
「それより、どうしたんだよ?」
 訊く。電話の向こうの勇治が黙った。
「勇治?」
『負けた』
「何……?」
『マリアが負けた。ストーム・クラウン戦において、マリアが負けた』
 勇治からの意外な一言が、新たな展開を呼んだ。



次回予告

 明日香「こんにちは、明日香です!」
 飛鳥 「飛鳥です。……って、元気そうだね、明日香?」
 明日香「だって、次回予告での出番が増えたから
 飛鳥 「……それ聞くと、あの人達のキャラの濃さが良く分かるよ……」
 明日香「それより、前から気になってたんだけど、あの着信音って……」
 飛鳥 「勇治にピッタリだろ?」
 明日香「ど、どうだろう……?」
  ※某ライブレードの、某じじいキャラのテーマ曲。
   どんな曲かは、ライブレファンなら分かるはずw

  次回、CONNECT41.『新たなるストーム・クラウン』

 明日香「次回は早くも新『ストーム・クラウン』登場!」
 飛鳥 「どんな奴になるんだか……」
 明日香「あれ、飛鳥君も知らないんだ?」
 飛鳥 「うん。あまり興味ないから
 明日香「あははは……」



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