CONNECT41.『新たなるストーム・クラウン』


 マリアが負けた。そう聞いた飛鳥は、ゴウ達と共に現地へ向かった。
 相変わらずな状態の勇治と、異様な雰囲気の『レディエンス・ビューティーズ』の姿を見つける。
 リーダーが負けて悲しんでいるメンバー。それを励ましているのは、なぜか明るい表情のマリアだ。
 飛鳥が首を傾げる。
「……本当に負けたのか?」
「電話で言っただろう。あれは、無理してるだけだ」
「誰も無理してないわよ」
 そう言って、マリアが勇治の頬を引っ張る。
 そして、飛鳥達の前で軽く笑いながら言う。
「と言う事で、『ストーム・クラウン』じゃなくなっちゃいました」
「なくなっちゃいました、って……」
「マリア、無理は……」
「無理してないしてない。ほら、ゴウは新しい『ストーム・クラウン』のところに行って来て!」
 そう言って、ゴウの背中を押す。そんなマリアの姿を優と郁美が黙って見ている。
 それに気づいたのか、マリアが二人に近づいて、頭を下げる。
「ごめんなさい、お姉さま方。負けちゃいました」
「無理しなくて良いんじゃない?」
 優が言う。
「本当は悔しいんでしょ? 無理しないで、出すもん出しちゃえば?」
「何を言いますか、優姉さま。私は別に無理なんて……」
「はいはい。素直になりなさい」
 郁美がマリアを抱きしめる。今まで我慢していたマリアが泣き出した。
 予想通り、と言わんばかりに、優がマリアの頭を撫でる。
「やれやれ、困った子ね、マリアは」
「ごめ……なさい……。私……私っ……!」
「気にする事はないわ。いずれ負ける時があるものでしょう? ただ、その相手が後継者じゃなかっただけよ」
 二人でマリアを慰める。勇治は自分のドライヴを黙って見ていた後、行動に出た。
 マリアの耳を強く引っ張る。マリアの顔が引きつった。
「い……痛い! 痛い痛い痛い痛い痛い痛い! 痛いってば!
「だろうな。強く引っ張ったからな」
「な、何で引っ張るのよ、勇治!?」
 勇治を睨む。勇治がふんと、そっぽを向いた。
「悔しいなら、『ストーム・クラウン』にもう一度なれ」
「え……!?」
「お前以外を『ストーム・クラウン』として認める気はない。
 俺が『マグナム・カイザー』で居続ける限りは、お前が『ストーム・クラウン』だ」
「勇治……」
 そう言って、勇治がドライヴを操作して、SDカードを取り出す。
 取り出したSDカードを飛鳥に投げ渡す。
 受け取った飛鳥が溜め息をつく。
「……お前、カードは投げるなよ。失くしても責任は取れないぞ」
「サタン・オブ・マグナムは預けた」
「何!?」
 飛鳥がすぐに受け取ったSDカードの中身を調べる。
 サタン・オブ・マグナムがSDカードに入っていた。飛鳥が目を見開く。
「おい、何考えてんだよ!?」
「マリアが再び『ストーム・クラウン』になるまで、俺はサタン・オブ・マグナムを使わん」
「だからって、俺に預けるな! 自分でどうにかしろ!」
「俺の勝手だ」
「……ったく、どうなっても知らねぇからな!」
 そう言って、サタン・オブ・マグナムを自分のドライヴに入れる。
 色々と文句を言いつつも、勇治の頼みを聞く飛鳥は、人が良い
 そんなやり取りの中、ゴウが新たなる『ストーム・クラウン』を連れて来る。
「飛鳥君、勇治君、彼が新『ストーム・クラウン』のカリス=ハーツェルト君だ」
「初めてお目にかかります、『ソード・マスター』に『マグナム・カイザー』。カリス=ハーツェルトです」
「ああ。『ソード・マスター』蓮杖飛鳥だ」
「……『マグナム・カイザー』の荻原勇治だ」
 互いに挨拶を交わす。飛鳥がカリスに訊く。
「……お前、いくつだ?」
「15歳の中学3年生です」
「若いな……」
「飛鳥君、君も十分若いよ。まだ17歳だろう?」
 ゴウが苦笑する。確かに、ゴウからすれば若い『フォース・コネクター』達である。
 ちなみに、ゴウは約2年ほど前から「とっとと引退しろ」と言われ続けられているが、全くの余談である。
 勇治が飛鳥の腕を小突く。
「飛鳥、話がある。お前の家に行って良いか?」
「話って、別にここでも良いだろ?」
「良くない。これは、お前にしか分からない事だからな」
「俺にしか分からない事、ね……」
 そう言いつつ、すんなりと了承する飛鳥だった。



 ショップ内に設置されているコンピュータで、優がマリアのドライヴをチェックする。
「ふーん、自分で良い感じに調整してるじゃない。ちょっと甘いけど」
「……甘いですか、優姉さま?」
「甘い。色々とムラがある」
 ドライヴの全体図を出して、マリアに説明していく。しかし、マリアには理解できなかった
 それもそのはず。天才肌である優の説明は、細か過ぎて逆に分からないのだ。
 優が軽く溜め息をつく。
「ま、機械に疎いマリアにしては上出来だけど。さて、これどうしよっか?」
「どうって、性能上げるしかないと思いますけど、優姉さま?」
 そう答えるマリアに、デコピンする。
「性能上げられるわけないでしょ。これが限界よ、ムササビ丸は」
「……じゃあ、どうするんですか?」
「新型に作り変える」
 そう言って、優の表情が真剣になる。
 ドライヴ、アクティブ・ウェポンを手掛ける時の姿。本来の彼女と言っても良い。
「久々に、とんでもないドライヴを作るとしますか。驚くほどのドライヴをね」



 自宅。飛鳥が溜め息をつく。
「……ったく、厚かましいぞ、おい」
「何がだ?」
「その態度だ、その態度!」
 怒鳴る。現在、21時半過ぎ。勇治が帰る気配など全くない
「前々から言っていたはずだ、『いつか泊まりに行く』と」
「ああ、言ってたよ。まさか今日とは思わなかったけどな」
「だったら別に良いだろう?」
「それが、図々しくも最高級のステーキとかリクエストしやがった奴の台詞か!」
 そう、勇治はとても厚かましかった
 夕食のメニューを家政婦がリクエストしたところ、勇治は「最高級のステーキ」と言い出した。
 当然、どうにか近所のスーパーで売っているようなステーキにまでランクを下げたのは言うまでもない。
「ったく、少しは遠慮くらいしろよ」
「お前に遠慮してどうする?」
「……おい」
 もはや、何も言う気が起きなくなった。
 そんな時、飛鳥のドライヴから某ゲームの勝利のテーマが着信音として鳴り響く。
「電話か? しかし、その着信音は何だ?」
「お前も聴いた事がある曲だ」
 そう答えながら、電話に出る。
「もしもし?」
『飛鳥か。俺だ』
「輝凰さん? どうかしました?」
『ああ。今度のダーク・フォースの事で、お前に話だけはしておこうと思ってな』
 輝凰の言葉に、飛鳥が真剣な表情になる。
「今度の『ダーク・フォース』……!」
『空を支配せしダーク・フォース。間違いない、ジャッジメント・ウィザードが今回の相手になるはずだ』
「『ジャッジメント・ウィザード』? それが、空の『ダーク・フォース』ですか?」
『そうだ。7年前からその座についていた存在で、今度こそ動きを見せるはずだ』
「7年前から? けど、前に現れた空の『ダーク・フォース』は……」
『ゴウから聞いてはいたが、そいつは偽者だ。おそらく、こちらの目を欺く為に存在していただけだろう』
「偽者って……回りくどいですね、それ」
 今までバトルしてきた空の『ダーク・フォース』は偽りの存在。
 本当の空の『ダーク・フォース』――――『ジャッジメント・ウィザード』は、7年前から存在する。
『イブリスの事だ、何か企んでいるんだろう』
「……なるほど、確かにイブリスなら……。けど、輝凰さん、やけに詳しいですね……?」
 飛鳥の疑問に、輝凰が「ん?」と電話の向こうで首を傾げる。
『ゴウから聞いていないのか? ……いや、俺が話しておくべきか』
「何をですか?」
『俺が、元々ダーク・コネクター幹部だったって事だ』
「な……!?」
 目を見開く。流石に、こればかりは驚くしかない。そんな飛鳥とは逆に、勇治は平然とゲームをしている
 先代『ソード・マスター』が敵の幹部だった。信じられるわけがない。
 輝凰が話を続ける。
『ダーク・コネクター幹部、修羅を司りし者。それが、昔の俺だ』
「……ほ、本当ですか!?」
『ああ。と言っても、7年近くも前の話だ。ゴウに負けて、自分の間違いに気づいたからな』
「間違い?」
『俺は総帥から、最強の強さを与えてもらう事を約束されていた。しかし、それは間違いだった。
 最強の強さとは、人に与えられるものじゃない。自分で手に入れるものだと知ったからな。
 だからこそ、俺は奴らを裏切った。元々、イブリスとはウマが合わなかったからな』
「優さんや郁美さんは、その事……」
『知っている。と言うより、この事を知っているのは、上の人間くらいだ』
 輝凰が軽く息を吐く。
『……本来なら、俺の代で奴らを倒すべきだった。だが、俺にはイブリスは倒せない』
「倒せないって……輝凰さんが!?」
『イブリスの奴は俺の事を知り尽くしている。俺の戦い方全てを、な。
 奴を倒せる強さがあれば、ダーク・コネクターを壊滅させる事ができる。
 その為に、俺は最強を貫きながら、イブリスを倒せる後継者を探していたんだ』
「……それが、俺って事ですか?」
『そうだ。その証拠に、お前は俺を倒してソード・マスターになってくれた。
 すまないな、お前にとんでもない事を押し付けてしまって』
「……いいえ、大丈夫です。なにせ、あなたの後継者ですから」
 輝凰の言葉に、強く応える飛鳥だった。
 ちなみに、勇治はゲームオーバーになって、意味もなく不機嫌だったのは余談である



次回予告

 明日香「輝凰さんって、『ダーク・コネクター』だったんだ……」
 飛鳥 「流石に俺も驚いた。全く、人が悪いよな……」
 明日香「そう言えば、カリス君ってどんな感じだったの?」
 飛鳥 「真面目な少年って感じ。何で?」
 明日香「ううん、気になっただけだから。女の子だったら、どう答えるのかなって思っただけだよ
 飛鳥 「……そ、そうなんだ……」(←久々に彼女の嫉妬の恐ろしさを知った人)

  次回、CONNECT42.『謎のダーク・フォース』

 明日香「次回は、ダーク・フォースの登場!?」
 飛鳥 「何気に疑問系だね」
 明日香「何かありそうだよね……」
  ※そこ、変な推測しない!



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