CONNECT44.『勇治の意外な励まし?』


 突然現れた『ダーク・コネクター』を相手に、ゴウとカリスが戦う。
 プラディ・ラ・グーンが敵一体を巻き添えにバリアで囲む。
「ジェノサイドォォォッ、クラァァァッシュッ!」
 無数のビームがプラディ・ラ・グーンの全身から解き放たれ、敵ドライヴを襲った。
 仲間が倒される姿を見た、もう一体の『ダーク・コネクター』が逃げようとする。
 それに気づいたメシア・オブ・カイルスがライフルを構える。
「逃がしません!」
 撃つ。散りばった銃弾がもう一体を襲った。
 その好機を狙って、プラディ・ラ・グーンが急接近する。
「ラ・グーン……クラッシャァァァーッ!」
 殴る。これで、現れた『ダーク・コネクター』は全滅した。
 カリスが一息つく。
「ふう……」
「疲れたか?」
「いいえ、大丈夫です」
「そうか。しかし、まだレガリアの力を引き出せないようだな」
 ゴウが言う。『ドライヴ=レガリア』の力を引き出す、それは真の姿を解放させる事を意味する。
「まだ難しいです……ワイヴァーン・ウイングの意思って言うのが分からなくて……」
 レガリアの真の姿。それを解放させるには、レガリアの意思を知る必要がある。
 意思を知り、そして共感する事。それが、レガリアの力を引き出す鍵となる。
 まだそれができないカリスに対し、ゴウが優しく言う。
「焦らずゆっくりで良い。まだ、『ダーク・フォース』は動いていないみたいだからね」
「はい」



 自宅にて、飛鳥はドライヴをパソコンに接続した。
 セルハーツの事で頭が一杯である飛鳥は、『チーム・レザリオン』の子供達の練習を終わらせたのだ。
「……構築データが消えてる……他は……!」
 調べる。ドライヴの情報全てをパソコンに表示し、何もかも調べる。
 その時、玄関の方からチャイムが鳴るのが聞こえた。
 構わず調べていると、家政婦が声を掛ける。
「飛鳥坊ちゃん、明日香さんがお見えになりましたけど」
「……すぐに部屋に来てって言ってください。くそっ、やっぱりこれだけは無理か……」
 パソコンがエラーを表示している。飛鳥はエラーを表示した部分以外を調べた。
 特に問題なし。あとは、エラーを表示した部分のみ。
「飛鳥君、入るね?」
 明日香が部屋に入ってくる。
「何か用? 突然呼ばれたから、私びっくりしちゃった……」
「ドライヴ貸して」
「え?」
「シルフィーナディア、持って来てるだろ? ちょっと貸して欲しいんだ」
「う、うん……」
 訳も分からないまま、明日香は飛鳥にドライヴを渡す。受け取った飛鳥はすぐにパソコンに接続した。
 信じられないほどの手つきでキーボードを叩き、画面に様々な情報を表示させていく。
 明日香の目が点になる。目の前で行われている作業は、もはや明日香からすれば別次元だ。
「ここも異常ないか……となると、奪われたのは構築データだけか……」
 シルフィーナディアの入っているドライヴを接続したまま、顔を歪める。
 それを見て、明日香が首を傾げる。
「え、えっと……どうかしたの?」
「……セルハーツの構築データが奪われた」
「……構築データって何?」
「ドライヴの基本構造だよ。構築データがないと、ドライヴは存在できないんだ」
「じ、じゃあ、セルハーツは……」
「……このままじゃ、二度と使えない」
 飛鳥が歯を噛み締める。間違いなく怒っている。それも、今まで見た事がないほどに。
「難しいけど、構築をデータをどうにかしないと……」
「……できるの?」
「やろうと思えば。シルフィーナディアの構築データを元にできるはずだし」
「シルフィーナディアじゃないとダメなの?」
「ああ。シルフィーナディアはセルハーツを元に作ってるからね、これでも」
 そう言って、再びキーボードを素早い手つきで叩き始める。



 暗い闇の中でイブリスが不敵に笑う。
「ふふふふふふ……これは何とも素晴らしい……」
 セルハーツの構築データを見る。これほどまでに素晴らしい出来のドライヴを見た事が無い。
 基本に忠実なようで、全く異なる作りを持つ完成されたドライヴ。
 操者の実力によって、このドライヴは無限に強くなれるほどの出来だ。
「これが『ソード・マスター』のドライヴの正体ですか……流石は、輝凰を上回る男だ」
 現在の『フォース・コネクター』の中でも、最も長けた才能を秘めるコネクター。
 なにより、自分の駆るエヴィル・アスラフィルに傷を入れた相手だ。
 まさに、輝凰をも上回る強敵だろう。
「さて……『ブラッディ・ファング』」
 後ろを振り向く。一人の少年がイブリスを睨んでいた。
「…………」
「絶対的な力、欲しいのだろう?」
「……ああ。誰にも屈しない力……それがあれば、俺だって……!」
「では、私があなたにその力を与えてあげましょう。あなたなら、『ソード・マスター』を超えるはずですよ」
 一体のドライヴを『ブラッディ・ファング』に渡す。



「馬鹿か、お前は?」
『悪かったな……まさか、構築データを取られるなんて誰も思わないぜ』
「馬鹿は認めるのか?」
『テメ……!』
 飛鳥からの電話で、セルハーツについて聞いた勇治。思いっきり飛鳥を馬鹿にしていた
「奴らにドライヴのデータを奪われる奴は馬鹿以外にいないぞ」
『……あのな、相手はあのイブリスだぞ、おい』
「関係ないな。用件はそれだけか?」
『……そうだ。まぁ、レガリアは死守してるから安心しろ。じゃあな』
 電話を切る。勇治はふっと鼻を鳴らした。
 そして、ショップに設置されているシミュレータに近づく。
 マリアがシミュレータでトレーニングしていた。
「はぁ……何、この子……? とんでもないじゃじゃ馬……!」
「じゃじゃ馬はお前の方だ」
「何ですって!? 誰がじゃじゃ馬よ、誰が!」
 勇治を睨む。睨まれた勇治は、平然とした顔で買って来たコーラをマリアに渡す。
「飲め。俺の奢りだ」
「…………」
「何だ?」
「……勇治が奢るのって、かなり珍しくない? 普段は奢らせるのに」
「飲みたくないなら飲まなくて良いぞ」
「誰も飲まないって言ってないってば」
 そう言ってコーラを飲む。炭酸が完全に抜けていた
 飲んだ後に、勇治の頬を引っ張る。
「ちょっと、炭酸抜けてるじゃないの、これ!」
「ひゃれがふふうのほーらをのまへるとおもっはは」(訳:誰が普通のコーラを飲ませると思ったか)
「うわ、酷っ」
「しはし、はにをはっている? しんははをうまふあふはえてないのは、ほまえらひくないほ」
(訳:しかし、何をやっている? 新型を上手く扱えてないのは、お前らしくないぞ)
 勇治の一言に、マリアが目を見開かせる。
「……気づいてた?」
「あひゃひまえは。ほへふはいのぼふぁいぶなら、ふぐにあふはへるはろ」
(訳:当たり前だ。それくらいのドライヴなら、すぐに扱えるだろ)
「そんなわけないでしょ……」
 勇治の頬から手を離し、ドライヴを握り締める。
「もう一度『ストーム・クラウン』に戻るには、あのカリスって子とバトルしないといけない。
 けどさ、今の私じゃSRランクに上がれるかどうか……」
「…………」
「勇治は良いわよね……優姉さまの後継者で、負ける事ないし……」
「マリア」
「何……――――!?」
 勇治がいきなりマリアの頬を引っ叩く。乾いた音が響いた。
 一瞬唖然としたマリアが、勇治を睨みつける。
「何するのよ!?」
「ふざけた事を言うな。お前らしくもない」
「だからって叩く!?」
「馬鹿な事を言ったからだろう。お前、まだ気づいていないのか?」
「え……?」
 勇治が自分のドライヴをマリアに見せる。マリアが目を見開いた。
「ちょ……これ……!?」
「言ったはずだ、お前以外を『ストーム・クラウン』として認めないと。これがその証拠だ」
「…………」
「こんな所で弱気になるな。とっとと、空の女王として戻って来い」
「……うん」
 勇治に抱きつく。そして、キスを交わした。
 しかし、勇治の表情は変わらない。マリアが「ありがとう」と耳元で言う。
「勇治は、私にとってのナイトね……3年前から、ずっとそう……」
「礼を言うなら、『ストーム・クラウン』に戻ってから言え」
「そうね。でも……」
 勇治の頬を強く引っ張る。
「さっきのビンタは流石に痛かったわよ、勇治。この落とし前、キッチリとつけるわよ!」
「ふなほほをふるひははあうははほへーにんふしろ」(訳:んな事をする暇があるならトレーニングしろ)
「トレーニングよりも、こっちが優先よ優先! 勇治、覚悟なさい!」
 マリアに拉致される勇治の姿があった。



次回予告

 飛鳥 「……勇治がまともな事しやがった。それも久々に」(←前に一度見た事あるらしい人)
 明日香「あんな勇治君、初めて見たかも……」(←意外だと思った人)
 亜美 「お兄ちゃん、何だかんだ言いながら、マリアさんの事気にしてるよね」(←兄の事分かってる妹)
 勇治 「…………」(←黙る馬鹿カイザー)
 マリア「勇治ぃ〜、今日は”あれ”行っとく?」(←すぐ調子に乗る元女王)
 飛鳥 「……殺すなよ、マリア」
 明日香(”あれ”って一体……?)

  次回、CONNECT45.『ジャッジメント・ウィザード』

 明日香「次回は、いよいよ最後の『ダーク・フォース』登場!」
 飛鳥 「……なんとなく、予測されてる可能性あるな」
 明日香「飛鳥君、それを言ったらダメだよ……」
 マリア「良いわよね〜、そんな楽しい事があって」
 勇治 「だったら、すぐに『ストーム・クラウン』になれ」
 明日香「……そう言えば、カリス君の存在薄いね」(←一度も会っていないヒロイン)
 勇治 「当然だ。奴は所詮脇役だからな」(←自分は主役だと思ってる脇役)
 飛鳥 「お前が言うな、お前が」(←ツッコミが担当な主役)

 カリス「……僕って一体……」(←かなり影の薄い新『ストーム・クラウン』)



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