CONNECT47.『飛鳥の強さの法則』


『カイザーネイル!』
 カイゼルハーツが攻撃を仕掛ける。セルハーツは素早く対応した。
 赤熱の刀身を持つ剣を受け止め、左手でプラズマセイバーを取り出す。
「フラッシングソード!」
 カウンター。カイゼルハーツは後退して回避した。
 が、それは飛鳥の狙いだった。セルハーツが加速して接近し、ファルシオンセイバーを構える。
「ミラージュ・ブレイドッ!」
『――――!? このッ……!』
『ブラッディ・ファング』――――歩が舌打ちしつつ、剣で受け止める。ミラージュ・ブレイドが防御された。
(ミラージュ・ブレイドを受け止めた……!? あの剣、一体……!?)
 赤熱と化したかのように燃える刀身を持つ剣。その剣は、どこか知っている。
(まるで、ラグレオスセイバーを思わせる剣……まさか……!?)
 飛鳥がイブリスを睨む。
「……イブリス、まさか……!」
『察しが早いですね、ソード・マスター。その剣はラグレオスセイバーを模して作られた剣です』
「『ダーク=レガリア』を模しただと!?」
『ええ。名を魔剣アンラ・マンユ。輝凰が持つ剣と同等……いや、それ以上の剣です』
 イブリスが不敵に笑う。
『ブラッディ・ファングよ、ソード・マスターを倒すのです。その剣で』
『言われなくても分かってる! ウインガーネイル!』
 加速し、セルハーツに斬りかかる。飛鳥は「くそがっ!」と言葉を吐いた。
 剣でカイゼルハーツの攻撃の軌道を逸らし、上手く回避する。
 そして、再びミラージュ・ブレイドを振るった。
「ミラージュ・ブレイドォォォッ!」
 振るわれる剣。歩が瞳を鋭くさせた。セルハーツの攻撃を寸前で回避する。
 それを見た飛鳥の目が見開かれる。
「ミラージュ・ブレイドを寸前で避けた……こいつ、資質が……!?」
『まさか、テメェ相手にこいつを使うなんてな! けど、これでもうテメェは勝てねぇ!
 風の流れが読める限り、テメェの攻撃は、俺には通用しねぇ!』
「風の流れ……そうか、『空の瞳』か」
 風の流れを”実際”に見る事で読む事ができる、『ストーム・クラウン』が持つと言われる資質。
 敵はそれを持ち、風の流れを知る事で攻撃を回避した。
 歩が飛鳥を睨む。
『テメェの負けだ、蓮杖飛鳥! 最強になった俺に勝てる奴はいねぇ!』
「……最強か。ふん、笑わせるなよ」
 飛鳥の瞳が、歩を鋭く睨みつける。
「言ったはずだ、お前は俺に勝てないって。資質を持とうが、強い力を得ようがな」
『ふん、負け惜しみを!』
「それを今から証明してやる。見ておけ、これが『ソード・マスター』の……蓮杖飛鳥の恐ろしさの一つだ!」
 セルハーツが剣を構え、飛鳥が集中した。



 ヤマタノオロチを倒し、その復活を遂げた『ストーム・クラウン』のマリアは、次にカリスへと狙いを向けた。
「さーて、本命を叩いちゃいますか」
『そうはさせないわ!』
 マリアのセイレント・クイーンにビームの刃が襲い掛かる。マリアは軽々と回避した。
 深い青の装甲でナギナタを持ったドライヴが、地上から攻撃してきた。
ジャッジメント・ウィザードはやらせない! あなたの相手は、この私よ!』
「幹部のご登場って事ね。でも、相手が悪いわね。今の私は最高だから♪」
 余裕を見せる。



 二体の巨大ドライヴを撃破したゴウは、真っ先にイブリスを睨んだ。
『ダーク・フォース』の相手は、勇治だけでも十分勝てる。
 そして、ドライヴが本調子でないとは言え、飛鳥は負けないと分かっている。
 そう考えると、問題はイブリスだ。どんな行動を取るのか予測できない。
「イブリスが動く前に、先手を取る! バハムート・ティアッ!」
 アルティメットシールドからバハムート・ティアを取り出す。
「うぉぉぉおおおおおおッ!」
 イブリスに狙いをつけて、バハムート・ティアを振り投げる。
 高回転で勢い良く放たれたバハムート・ティア。イブリスのエヴィル・アスラフィルへと襲い掛かる。
 刹那、何かがバハムート・ティアを弾いた。ゴウの瞳が見開かれる。
『イブリスはやらせませんわ。あなたのお相手は、この私がさせて頂きます』
 ゴウのプラディ・ラ・グーンの前に、雷の鞭を持った紫の戦乙女――――ヴォルト・デュラハンが現れる。
『ディフェンド・キング、今度こそ倒しますわ』
「できるものなら、やってみろ! このディフェンド・キング、ゴウボーグ=レンダリムは負けん!」



 飛鳥が集中し始めて、数分が経った。
 しかし、歩は動かない。いや、動けないのだ。
(くっ……何なんだ、こいつ……!?)
 集中している飛鳥から発せられる、とてつもない威圧感。
 何もして来ない相手に攻撃するのは簡単だ。だが、何が起こるか分からない。そう、自分の勘が言っている。
『くっ……!』
「…………」
 一方の飛鳥は、集中して風を感じていた。
 そして、先代『ソード・マスター』から教わった事を思い出す。


「良いか、飛鳥。『フォース・コネクター』はコネクター達にとって、憧れの存在だ」
 勝利し、『ソード・マスター』になった直後の飛鳥に、先代として輝凰が教える。
「『フォース・コネクター』は強く、そして負けてはいけない。他の奴らに示しをつける意味もあるからな。
 しかし、負ける時は負ける。ドライヴの性能の差や、実力の差……様々な差でな」
「…………」
「だが、そんな差を無にする方法がある。今から教えるのは、その一つだ」
 輝凰が飛鳥の胸に拳を当てる。
「心を強く持ち、『俺は、お前には絶対に負けない』と言う意思を相手に叩き込む事。
 それはつまり、自分の存在をプレッシャーとして相手に与える事だ」
「自分の存在をプレッシャーとして与える、ですか……?」
「ああ。これから先、必ず使う事になる。覚えておけ」
「はい」
 頷く。飛鳥の真剣な表情を見て、輝凰がふっと微笑む。
「良い返事だ。次で、俺からお前に託すものは最後だ。俺が編み出した技をお前に教えてやる」


 心を強く持ち、存在感のみで敵を圧倒する。それが、先代から教わった事。
 威圧感に呑み込まれた敵は、相手の強さが分からなくなり、恐怖する。
「どうした? 攻撃してこないのか?」
 飛鳥が挑発する。
「お前は俺には勝てない。それは、俺とお前には、三つの大きな差があるからだ。
 その差がある限り、お前がいくら強くなろうが、力を得ようが、俺には絶対に勝てない」
『ふざっ……ふざけた事をぉっ!』
 カイゼルハーツが突撃する。セルハーツは剣を振り、余裕で受け流した。
 無駄な動きがない、最小限の回避。歩が目を見開いた。
「動きが丸見えだ!」
 反撃。セルハーツがカイゼルハーツを殴り、吹き飛ばす。続けて、ゴッドランチャーを構えて撃つ。
 素早い動作からなる連続攻撃。『空の瞳』で風の流れを読み、歩が回避する。
 刹那、飛鳥の瞳が鋭くなる。
「エアブレードッ!」
 風の刃を放つ。歩は再び『空の瞳』を使って回避した。
 飛鳥の今までと違い、とてつもない戦い方に歩が動揺する。
『こいつ、今までと戦い方が……!?』
「エアブレード・アトモスフィアッ!」
 セルハーツが跳躍し、風の飛礫を放つ。歩が舌打ちしつつも、『空の瞳』を使う。
『――――ッ!?』
 途端、視界がぼやける。カイゼルハーツは攻撃をそのまま受けた。
 片目を瞑り、奥歯を噛み締める歩。
『……くそっ、時間切れかよっ……!』
「違う。資質はそんなものじゃない」
 セルハーツが目の前まで接近し、腹部に蹴りを繰り出す。
『ぐっ!?』
「まず一つ目。お前は、資質と言うものが何なのかを間違えている」
『何……!?』
「資質は万物の力じゃない。資質と呼ばれる瞳は、その視覚能力の一部を限界以上まで引き出すだけのもの。
 それは少なからず、視覚能力に代償を与える。そう、普段よりも負担が掛かると言う代償をな!」
 初代『フォース・コネクター』が持ち、四つの名で呼ばれるようになった資質。
 それは、視覚能力を上昇させるもので、決して万能ではない。
 通常よりも視覚能力が上がる為、負担が大きくなるのだ。これは、どうやっても軽くする事ができない。
「そして、二つ目。俺とお前じゃ、実力の差がハッキリと出ていると言う事」
 資質に頼らなくても強くなる為に技を身につけた飛鳥。
 資質と言う力に頼り、自分を過信する歩。
 飛鳥からすれば、歩は敵ではない。弱い者イジメをするようなほどだ。
「そして――――」
『いい加減にしろぉぉぉっ!』
 カイゼルハーツが背中のブースターで空高く跳躍する。
 エネルギーを魔剣アンラ・マンユに込め、大地へ降下すると同時に振る。
『ブラッディ・ブレイザァァァァァァッ!』
 巨大な暗黒の刃が放たれる。それは、まさに『ダーク=レガリア』のラグレオスセイバーが放つものと同じだ。
 しかし、飛鳥は動じなかった。いや、動揺するわけが無かった。
 なぜなら、自分と歩には決定的な差があるからだ。
 向かってくる暗黒の刃を前に、セルハーツが剣を構える。
「そして、三つ目。それは……」
 瞳が鋭くなり、『鷹の瞳』で睨みつける。
「使っているのが自分のドライヴかどうか、だ!」
 剣を連続で振り、見出した光の中心点を捉え、断つ。暗黒の刃が散った。
 それを見て、歩が目を見開く。自分の最大の技が破られて。
 動揺する歩の隙を突いて、セルハーツが突撃する。そして、カイゼルハーツの首元に剣を突きつけた。
「勝負あり、だ。分かっただろ、お前じゃ絶対に俺には勝てない」
『くっ……!』
「最強の力は、他人の力を借りて得るものじゃない。どんなに辛くても、自分だけで手に入れるのが、最強だ!」
 飛鳥の言葉に、歩が歯を噛み締める。それは、まだ敗北を認めていないと言う表れだった。
 カイゼルハーツが剣を振り上げる。刹那、すかさずセルハーツが阻止する。
「大人しく負けを認めろ、ブラッディ・ファング! これ以上、バトルする意味は無い!」
『意味だと……!? 意味ならある! 天才って呼ばれたテメェが許せないって言うなぁ!』
 歩が睨む。
『俺は最強の力を手に入れる! テメェを倒して、最強になるんだ! 天才のテメェを倒してな!』
「まだ言うのか……他人の力を借りたお前が、俺を倒せると思うな!」
『倒す! 倒してやる!』
『いや、もうその必要はない』
 カイゼルハーツの前に、イブリスのエヴィル・アスラフィルが立つ。
『カイゼルハーツと言う最強のドライヴを手にしながら、敗北したあなたは、もはや用無しです』
『俺はまだ負けてない! イブリス、俺は奴を倒す!』
『無駄だ。お前では、ソード・マスターを仕留める事はできない。消えなさい』
 エヴィル・アスラフィルの右手から氷の剣が生成され、振り下ろされる。カイゼルハーツが凍りついた。
 魔剣アンラ・マンユを回収し、イブリスが冷たい眼差しで歩を見る。それは、まさに絶望を下す眼差し。
『絶望を知りなさい。デス・ハン――――』
「エアブレード・アトモスフィアッ!」
 瞬間、無数の風の飛礫がエヴィル・アスラフィルへと放たれる。しかし、全て軌道を逸らして散った。
 飛鳥が軽く舌打ちする。そんな飛鳥に驚いたのは、歩だった。
『蓮杖飛鳥、何で……!?』
「お前が敵でも、死なせるわけにはいかないからな」
 歩に目線を向ける。
「一度だけ見せてやる。蓮杖飛鳥と言うコネクターの、本当の意味で全力の姿を」
 飛鳥の『鷹の瞳』が、鋭くイブリスを睨みつけた。



次回予告

 明日香「……飛鳥君、疑問に思った事訊いても良い?」
 飛鳥 「何?」
 明日香「飛鳥君って、どれ位強いの?」
 飛鳥 「さあ?」
 明日香「さあって……」
 飛鳥 「それより、次回予告しないと」
 明日香「……飛鳥君、ワザと話逸らしてる?」

  次回、CONNECT48.『暗黒の翼が征する空』

 明日香「次回は、『フォース・コネクター』予想外の大ピンチ!?」
 飛鳥 「予想外……最近流行ってるのか? ○○トバ○○とかで言ってるけど」
 明日香「流行ってはないと思うけど……」
 飛鳥 「ま、大丈夫だって。ピンチは俺が切り開いてみせる」
 明日香「……いつもの飛鳥君じゃないような気がする」
 飛鳥 「え?(汗)」
  ※蓮杖飛鳥、本当に実力が不明な主役(何



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