『カイザーネイル!』 カイゼルハーツが攻撃を仕掛ける。セルハーツは素早く対応した。 赤熱の刀身を持つ剣を受け止め、左手でプラズマセイバーを取り出す。 「フラッシングソード!」 カウンター。カイゼルハーツは後退して回避した。 が、それは飛鳥の狙いだった。セルハーツが加速して接近し、ファルシオンセイバーを構える。 「ミラージュ・ブレイドッ!」 『――――!? このッ……!』 『ブラッディ・ファング』――――歩が舌打ちしつつ、剣で受け止める。ミラージュ・ブレイドが防御された。 (ミラージュ・ブレイドを受け止めた……!? あの剣、一体……!?) 赤熱と化したかのように燃える刀身を持つ剣。その剣は、どこか知っている。 (まるで、ラグレオスセイバーを思わせる剣……まさか……!?) 飛鳥がイブリスを睨む。 「……イブリス、まさか……!」 『察しが早いですね、ソード・マスター。その剣はラグレオスセイバーを模して作られた剣です』 「『ダーク=レガリア』を模しただと!?」 『ええ。名を魔剣アンラ・マンユ。輝凰が持つ剣と同等……いや、それ以上の剣です』 イブリスが不敵に笑う。 『ブラッディ・ファングよ、ソード・マスターを倒すのです。その剣で』 『言われなくても分かってる! ウインガーネイル!』 加速し、セルハーツに斬りかかる。飛鳥は「くそがっ!」と言葉を吐いた。 剣でカイゼルハーツの攻撃の軌道を逸らし、上手く回避する。 そして、再びミラージュ・ブレイドを振るった。 「ミラージュ・ブレイドォォォッ!」 振るわれる剣。歩が瞳を鋭くさせた。セルハーツの攻撃を寸前で回避する。 それを見た飛鳥の目が見開かれる。 「ミラージュ・ブレイドを寸前で避けた……こいつ、資質が……!?」 『まさか、テメェ相手にこいつを使うなんてな! けど、これでもうテメェは勝てねぇ! 風の流れが読める限り、テメェの攻撃は、俺には通用しねぇ!』 「風の流れ……そうか、『空の瞳』か」 風の流れを”実際”に見る事で読む事ができる、『ストーム・クラウン』が持つと言われる資質。 敵はそれを持ち、風の流れを知る事で攻撃を回避した。 歩が飛鳥を睨む。 『テメェの負けだ、蓮杖飛鳥! 最強になった俺に勝てる奴はいねぇ!』 「……最強か。ふん、笑わせるなよ」 飛鳥の瞳が、歩を鋭く睨みつける。 「言ったはずだ、お前は俺に勝てないって。資質を持とうが、強い力を得ようがな」 『ふん、負け惜しみを!』 「それを今から証明してやる。見ておけ、これが『ソード・マスター』の……蓮杖飛鳥の恐ろしさの一つだ!」 セルハーツが剣を構え、飛鳥が集中した。 ヤマタノオロチを倒し、その復活を遂げた『ストーム・クラウン』のマリアは、次にカリスへと狙いを向けた。 「さーて、本命を叩いちゃいますか」 『そうはさせないわ!』 マリアのセイレント・クイーンにビームの刃が襲い掛かる。マリアは軽々と回避した。 深い青の装甲でナギナタを持ったドライヴが、地上から攻撃してきた。 『ジャッジメント・ウィザードはやらせない! あなたの相手は、この私よ!』 「幹部のご登場って事ね。でも、相手が悪いわね。今の私は最高だから♪」 余裕を見せる。 二体の巨大ドライヴを撃破したゴウは、真っ先にイブリスを睨んだ。 『ダーク・フォース』の相手は、勇治だけでも十分勝てる。 そして、ドライヴが本調子でないとは言え、飛鳥は負けないと分かっている。 そう考えると、問題はイブリスだ。どんな行動を取るのか予測できない。 「イブリスが動く前に、先手を取る! バハムート・ティアッ!」 アルティメットシールドからバハムート・ティアを取り出す。 「うぉぉぉおおおおおおッ!」 イブリスに狙いをつけて、バハムート・ティアを振り投げる。 高回転で勢い良く放たれたバハムート・ティア。イブリスのエヴィル・アスラフィルへと襲い掛かる。 刹那、何かがバハムート・ティアを弾いた。ゴウの瞳が見開かれる。 『イブリスはやらせませんわ。あなたのお相手は、この私がさせて頂きます』 ゴウのプラディ・ラ・グーンの前に、雷の鞭を持った紫の戦乙女――――ヴォルト・デュラハンが現れる。 『ディフェンド・キング、今度こそ倒しますわ』 「できるものなら、やってみろ! このディフェンド・キング、ゴウボーグ=レンダリムは負けん!」 飛鳥が集中し始めて、数分が経った。 しかし、歩は動かない。いや、動けないのだ。 (くっ……何なんだ、こいつ……!?) 集中している飛鳥から発せられる、とてつもない威圧感。 何もして来ない相手に攻撃するのは簡単だ。だが、何が起こるか分からない。そう、自分の勘が言っている。 『くっ……!』 「…………」 一方の飛鳥は、集中して風を感じていた。 そして、先代『ソード・マスター』から教わった事を思い出す。 「良いか、飛鳥。『フォース・コネクター』はコネクター達にとって、憧れの存在だ」 勝利し、『ソード・マスター』になった直後の飛鳥に、先代として輝凰が教える。 「『フォース・コネクター』は強く、そして負けてはいけない。他の奴らに示しをつける意味もあるからな。 しかし、負ける時は負ける。ドライヴの性能の差や、実力の差……様々な差でな」 「…………」 「だが、そんな差を無にする方法がある。今から教えるのは、その一つだ」 輝凰が飛鳥の胸に拳を当てる。 「心を強く持ち、『俺は、お前には絶対に負けない』と言う意思を相手に叩き込む事。 それはつまり、自分の存在をプレッシャーとして相手に与える事だ」 「自分の存在をプレッシャーとして与える、ですか……?」 「ああ。これから先、必ず使う事になる。覚えておけ」 「はい」 頷く。飛鳥の真剣な表情を見て、輝凰がふっと微笑む。 「良い返事だ。次で、俺からお前に託すものは最後だ。俺が編み出した技をお前に教えてやる」 心を強く持ち、存在感のみで敵を圧倒する。それが、先代から教わった事。 威圧感に呑み込まれた敵は、相手の強さが分からなくなり、恐怖する。 「どうした? 攻撃してこないのか?」 飛鳥が挑発する。 「お前は俺には勝てない。それは、俺とお前には、三つの大きな差があるからだ。 その差がある限り、お前がいくら強くなろうが、力を得ようが、俺には絶対に勝てない」 『ふざっ……ふざけた事をぉっ!』 カイゼルハーツが突撃する。セルハーツは剣を振り、余裕で受け流した。 無駄な動きがない、最小限の回避。歩が目を見開いた。 「動きが丸見えだ!」 反撃。セルハーツがカイゼルハーツを殴り、吹き飛ばす。続けて、ゴッドランチャーを構えて撃つ。 素早い動作からなる連続攻撃。『空の瞳』で風の流れを読み、歩が回避する。 刹那、飛鳥の瞳が鋭くなる。 「エアブレードッ!」 風の刃を放つ。歩は再び『空の瞳』を使って回避した。 飛鳥の今までと違い、とてつもない戦い方に歩が動揺する。 『こいつ、今までと戦い方が……!?』 「エアブレード・アトモスフィアッ!」 セルハーツが跳躍し、風の飛礫を放つ。歩が舌打ちしつつも、『空の瞳』を使う。 『――――ッ!?』 途端、視界がぼやける。カイゼルハーツは攻撃をそのまま受けた。 片目を瞑り、奥歯を噛み締める歩。 『……くそっ、時間切れかよっ……!』 「違う。資質はそんなものじゃない」 セルハーツが目の前まで接近し、腹部に蹴りを繰り出す。 『ぐっ!?』 「まず一つ目。お前は、資質と言うものが何なのかを間違えている」 『何……!?』 「資質は万物の力じゃない。資質と呼ばれる瞳は、その視覚能力の一部を限界以上まで引き出すだけのもの。 それは少なからず、視覚能力に代償を与える。そう、普段よりも負担が掛かると言う代償をな!」 初代『フォース・コネクター』が持ち、四つの名で呼ばれるようになった資質。 それは、視覚能力を上昇させるもので、決して万能ではない。 通常よりも視覚能力が上がる為、負担が大きくなるのだ。これは、どうやっても軽くする事ができない。 「そして、二つ目。俺とお前じゃ、実力の差がハッキリと出ていると言う事」 資質に頼らなくても強くなる為に技を身につけた飛鳥。 資質と言う力に頼り、自分を過信する歩。 飛鳥からすれば、歩は敵ではない。弱い者イジメをするようなほどだ。 「そして――――」 『いい加減にしろぉぉぉっ!』 カイゼルハーツが背中のブースターで空高く跳躍する。 エネルギーを魔剣アンラ・マンユに込め、大地へ降下すると同時に振る。 『ブラッディ・ブレイザァァァァァァッ!』 巨大な暗黒の刃が放たれる。それは、まさに『ダーク=レガリア』のラグレオスセイバーが放つものと同じだ。 しかし、飛鳥は動じなかった。いや、動揺するわけが無かった。 なぜなら、自分と歩には決定的な差があるからだ。 向かってくる暗黒の刃を前に、セルハーツが剣を構える。 「そして、三つ目。それは……」 瞳が鋭くなり、『鷹の瞳』で睨みつける。 「使っているのが自分のドライヴかどうか、だ!」 剣を連続で振り、見出した光の中心点を捉え、断つ。暗黒の刃が散った。 それを見て、歩が目を見開く。自分の最大の技が破られて。 動揺する歩の隙を突いて、セルハーツが突撃する。そして、カイゼルハーツの首元に剣を突きつけた。 「勝負あり、だ。分かっただろ、お前じゃ絶対に俺には勝てない」 『くっ……!』 「最強の力は、他人の力を借りて得るものじゃない。どんなに辛くても、自分だけで手に入れるのが、最強だ!」 飛鳥の言葉に、歩が歯を噛み締める。それは、まだ敗北を認めていないと言う表れだった。 カイゼルハーツが剣を振り上げる。刹那、すかさずセルハーツが阻止する。 「大人しく負けを認めろ、ブラッディ・ファング! これ以上、バトルする意味は無い!」 『意味だと……!? 意味ならある! 天才って呼ばれたテメェが許せないって言うなぁ!』 歩が睨む。 『俺は最強の力を手に入れる! テメェを倒して、最強になるんだ! 天才のテメェを倒してな!』 「まだ言うのか……他人の力を借りたお前が、俺を倒せると思うな!」 『倒す! 倒してやる!』 『いや、もうその必要はない』 カイゼルハーツの前に、イブリスのエヴィル・アスラフィルが立つ。 『カイゼルハーツと言う最強のドライヴを手にしながら、敗北したあなたは、もはや用無しです』 『俺はまだ負けてない! イブリス、俺は奴を倒す!』 『無駄だ。お前では、ソード・マスターを仕留める事はできない。消えなさい』 エヴィル・アスラフィルの右手から氷の剣が生成され、振り下ろされる。カイゼルハーツが凍りついた。 魔剣アンラ・マンユを回収し、イブリスが冷たい眼差しで歩を見る。それは、まさに絶望を下す眼差し。 『絶望を知りなさい。デス・ハン――――』 「エアブレード・アトモスフィアッ!」 瞬間、無数の風の飛礫がエヴィル・アスラフィルへと放たれる。しかし、全て軌道を逸らして散った。 飛鳥が軽く舌打ちする。そんな飛鳥に驚いたのは、歩だった。 『蓮杖飛鳥、何で……!?』 「お前が敵でも、死なせるわけにはいかないからな」 歩に目線を向ける。 「一度だけ見せてやる。蓮杖飛鳥と言うコネクターの、本当の意味で全力の姿を」 飛鳥の『鷹の瞳』が、鋭くイブリスを睨みつけた。 次回予告 明日香「……飛鳥君、疑問に思った事訊いても良い?」 飛鳥 「何?」 明日香「飛鳥君って、どれ位強いの?」 飛鳥 「さあ?」 明日香「さあって……」 飛鳥 「それより、次回予告しないと」 明日香「……飛鳥君、ワザと話逸らしてる?」 次回、CONNECT48.『暗黒の翼が征する空』 明日香「次回は、『フォース・コネクター』予想外の大ピンチ!?」 飛鳥 「予想外……最近流行ってるのか? ○○トバ○○とかで言ってるけど」 明日香「流行ってはないと思うけど……」 飛鳥 「ま、大丈夫だって。ピンチは俺が切り開いてみせる」 明日香「……いつもの飛鳥君じゃないような気がする」 飛鳥 「え?(汗)」 ※蓮杖飛鳥、本当に実力が不明な主役(何 |
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