一方、勇治は『ジャッジメント・ウィザード』のカリスを追い詰めていた。 「サタン・オブ・マグナム、出力40%。速射型」 カリスのメシア・オブ・カイルスに照準をつける。 「フレアマグナム」 撃つ。カリスは舌打ちしつつ、辛うじて回避した。 否、回避できていない。関節部には命中していないが、腕や脚をかすめている。 攻撃を回避された勇治は、瞳を鋭くさせた。 勇治の『狙撃の瞳』がメシア・オブ・カイルスを完全に捉え、再び攻撃する。 見事、メシア・オブ・カイルスの左足関節部を撃ち抜いた。 『な……!?』 「避けれたと思ったか? 甘いな」 サタン・オブ・マグナムの銃口を向けたまま、勇治が鼻で笑う。 「俺が相手だと言う事を後悔しろ。お前程度の奴じゃ、俺は倒せん」 『言ってくれるね……!』 カリスが勇治を睨む。 『僕はまだ本気じゃない。僕が本気を出したら、あのイブリスでも勝てないからね』 不敵に笑う。しかし、勇治は「どうでも良い」と返した。 マリアのセイレント・クイーンが空を舞い、新たに現れた幹部『ゼパール・フラズグズ』をかく乱する。 「これで行きますか、と」 ランスを片手に、ワルキューレ・エイルのグリップを回す。 加速し、ランスで敵を切り刻む。 「レディエンス・ワルツ♪」 高速の攻撃に、『ゼパール・フラズグズ』が目を見開く。 『速い……!? それに、レーダーで捉えられないなんて!?』 「あれ、知らなかった? 本当の姿になったこの子の凄さ」 空を制する『フォース・コネクター』の一人、『ストーム・クラウン』が所持する『ドライヴ=レガリア』。 それは、決してレーダーでは捉えられない絶対的なステルスを持つ、空における最強の翼だ。 マリアが敵ドライヴの喉元にランスを突きつける。 「何か、バトルしてると違和感あるんだけど? ねぇ、本当に『ダーク・コネクター』なわけ?」 『当たり前よ! 何が言いたいの!?』 「私の勘がそう言ってるだけ。ま、気にしなくて良いわよ」 そう言いつつ、敵の動きを止めたままにするマリア。 イブリスと言う強敵を前に、飛鳥のセルハーツが駆ける。それは、閃光の如くだった。 繰り出される斬撃をエヴィル・アスラフィルが受け止める。 『本来の性能を引き出せないドライヴで、エヴィル・アスラフィルを倒せると?』 「倒せるさ。俺が本気を出せばな!」 セルハーツがゴッドランチャーを取り出す。 「零距離!」 『無駄です』 近接距離で放たれるビーム。しかし、イブリスは重力を操って回避した。 ビームの軌道が強制的に変えられ、大空へと放たれる。 飛鳥が舌打ちしつつ、次の攻撃へと素早く移る。 『遅い』 重力波が放たれ、セルハーツを襲う。大地に動きを固定させられた。 動きを止められ、飛鳥が歯を噛み締める。 『その程度で本気とは……笑わせるな、ソード・マスターよ』 「くっ……!」 『輝凰の方がまだ強かった……ファルシオンセイバーは奪わせてもらいます』 左腕を肩上に持って行き、エヴィル・アスラフィルの上空に光の槍が生成される。 『フォトン・ランサー』 放たれた光の槍。飛鳥は反射的に目を瞑った――――が、セルハーツには命中しなかった。 セルハーツの目の前に、カイゼルハーツの姿があり、身を挺して光の槍からセルハーツを守ったのだ。 胸部を貫かれ、片膝を大地について行動不能に陥るカイゼルハーツ。 飛鳥が驚く。カイゼルハーツ――――『ブラッディ・ファング』の取った行動に対して。 『くっ……!』 「ブラッディ・ファング……お前、何を……!?」 『テメェに借りは作りたくないからな……! テメェを倒すのは俺だ! イブリスなんかに倒させるか!』 行動不能となったカイゼルハーツを無理に動かし、セルハーツの腕を掴む。 『カイゼルハーツを返してやる。元々、テメェのドライヴのデータで作ったドライヴだからな』 「良いのか? 最強の力を失う事になるぞ」 『誰もタダで返すなんて言ってねぇよ。絶対に負けるな! 俺がテメェを倒すまで、絶対に負けんじゃねぇ!』 「……ああ。だが、俺はお前にも負ける気はない」 『へっ……』 歩の口元が歪み、笑みを浮かべる。カイゼルハーツが光となり、セルハーツへと吸収された。 セルハーツの性能が上昇する。否、セルハーツが元の状態に戻った。 「セルハーツの構築データが戻った……これなら、まだ手はある……!」 飛鳥が集中力を高める。強者としての威圧感がイブリスへと発せられる。 その姿を見て、イブリスがふっと笑う。 『そのやり方……なるほど、輝凰に教わったのか』 「…………」 『しかし、それで私を倒せると思わない方が良い』 エヴィル・アスラフィルの右手に漆黒の球体が生成される。 『絶望へと堕ちなさい、ソード・マスター。シャドウ・ブラスト』 「――――!」 漆黒のビームが無数に放たれる。同時に、飛鳥もコンピュータを操作した。 しかし、操作が遅かったのか、セルハーツの周囲が炎上し、爆発する。 爆発に巻き込まれたと確信し、イブリスが笑みを浮かべる。 ――――うぉぉぉおおおおおおっ! その時、上空から声が聞こえた。セルハーツが剣を構え、エヴィル・アスラフィルを捉えている。 イブリスが目を見開く。確実に仕留めたと思っていたが為に。 「くらえ、イブリスッ!」 剣にエネルギーが集中し、光り輝く。 「ミラージュ・ブレイドッ!」 『――――!』 繰り出される剣技。しかし、それは呆気なく受け止められた。 エヴィル・アスラフィルの背中から突然現れた七色の翼。その翼が、セルハーツの攻撃を防いだ。 「な、七色の……翼……!?」 着地し、イブリスとの距離を取る。その時、頬を冷たい汗がつうっと流れ落ちた。 セルハーツの機動性を使って、イブリスに奇襲をかけたが失敗に終わった。 いや、これは予想外だった。イブリスにあれほどの防御技があったとは思わなかった。 バスターファルシオンを使うか迷う。ここで使えば、もしもの時に使えなくなる。 『……まさか、私にこれを使わせるとは……』 イブリスが飛鳥を睨む。 『そのドライヴには、まだ何かが隠れていたか……』 「……だったら、どうする? セルハーツは、まだこんなものじゃねぇぜ?」 『でしょうね。ここは、撤退するとします』 その言葉に、飛鳥が目を見開く。 『私も本気を出さなければ、危険のようですからね。しかし、私が本気を出せば、あなた達は確実に死ぬ』 そう言い残し、姿を消す。 ゴウのプラディ・ラ・グーンが吼え、ダーク・コネクター幹部『ヴォルト・デュラハン』を追い詰める。 否、元々勝負にもならなかった。ゴウが圧倒的に強いのだ。 今まで見せていた強さとは違った強さに、流石のヴォルト・デュラハンも驚く。 『今までのデータとは違う……? これは、一体……!?』 「うぉぉぉっ!」 斧が振り回される。ヴォルト・デュラハンは辛うじて回避した。 『くっ……ヴォルト・スティング』 雷の鞭が真っ直ぐに放たれる。ゴウは瞬時に盾で受け止めた。 プラディ・ラ・グーンの左腕が輝く。 「ラ・グーン……クラッシャァァァァァァッ!」 真っ直ぐに伸びた雷の鞭を殴り、粉砕する。ヴォルト・デュラハンの攻撃の術が無くなった。 『ヴォルト・ビュートを……!?』 「次で終わりだ、ヴォルト・デュラハン! 大人しく、降参したらどうだ!?」 『降参? この私が、降参ですか? ふふふ……甘く見ないでください』 ヴォルト・デュラハンがゴウを睨みつける。 『私もイブリス同様、まだ全力ではありません。私が全力を出せば、フォース・コネクターを倒すなど容易い事』 「…………」 『しかし、今回はイブリスも撤退しましたし、私もここで引き下がります。では……』 不敵な笑みを残しながら、ヴォルト・デュラハンもまた、その姿を消した。 残る敵は『ジャッジメント・ウィザード』と『ゼパール・フラズグズ』のみ。 勇治の凄まじき射撃センスが、さらに発揮される。 「サタン・オブ・マグナム、出力最大。フルパワーショット」 エネルギーをチャージし、撃つ。カリスは舌打ちし、辛うじて回避した。 『くっ、どうにか……』 「遅い。出力40%、速射型。フレアマグナム」 刹那、追撃を受ける。ディル・ゼレイクがメシア・オブ・カイルスの左腕関節部を撃ち抜いた。 左の腕、脚の機能を奪われたメシア・オブ・カイルス。それを待っていたかのように、勇治がふっと笑う。 ディル・ゼレイクが装備する武装の砲門が全て開く。 「終わりだ。フルバースト・フレア」 全ての砲門から放たれる一斉射撃がカリスを襲う。メシア・オブ・カイルスが大地に落下し、倒れた。 「呆気ない奴だったな」 「……何だよ、もう倒したのか」 飛鳥のセルハーツが近づく。勇治は素っ気無く答えた。 「遅い。何を遊んでいた」 「あのな……こっちはこっちで幹部と戦ってたんだぞ、おい」 「幹部程度のザコくらい、10秒で倒せ」 「10秒って、おい……。つーか、テメェも無理だろが!」 「二人とも、漫才はしないで良いから。面白いけど」 マリアが割り込む。しかも、敵に武器を突きつけたままの状態で。 それを見て、勇治が言う。 「とっとと倒せ。何をやっている」 「そうしたいんだけど、何か『ダーク・コネクター』って感じがしないのよねぇ」 「そうだろうな。敵意を持っていないし、本気を倒す気もないようだしな」 飛鳥の言葉に、『ゼパール・フラズグズ』が――――瑞樹が目を見開く。 『気づいてた……!?』 「一度バトルした時に分かっていた。何で『ダーク・コネクター』なんかになった?」 『……歩がいたから』 瑞樹が顔を俯かせる。 『歩は天才と呼ばれる人間に思いっきり負けたせいで、人を憎んだり、強さを求めるようになって……。 そして、その為に自分からダーク・コネクターなんかに……』 「なるほど。それを止めさせようとして、お前もなったのか」 『……けれど、無理だった。どんなに言っても、歩は……』 「だったら、伝えておけ」 『え……?』 飛鳥を見る。飛鳥は『ソード・マスター』として、一人の王として言った。 「SRランク、それもソードクラスのトップになれ。そうしたら、いつでも挑戦を受けてやるってな」 『……!』 「天才なんて関係ない。それを教えてやるって、伝えろ」 『ソード・マスター……。……はい。必ず、歩に――――』 瞬間、『ゼパール・フラズグズ』のドライヴを一閃のビームが後ろから貫通する。 飛鳥はすぐに放たれた方向を睨む。そこに、メシア・オブ・カイルスの姿があった。 「カリス……まだ戦えるのか……!」 『アハハ……アハハハハハハッ! 僕が……ジャッジメント・ウィザードが負けるわけないだろ……!』 『ジャッジメント・ウィザード……』 『ゼパール・フラズグズ、最初から本心でダーク・コネクターになっていないのは気づいていたよ』 『……!』 『今まで遊ばせてあげたけど、もう終わりだよ。ここで、僕が殺してやる!』 メシア・オブ・カイルスの背中の翼から風が巻き起こる。そして、襲い掛かった。 恐怖のあまりに目を閉じる瑞樹。しかし、風は直撃しなかった。 プラディ・ラ・グーンが盾で防御している。カリスを睨み、ゴウが言う。 「お前の相手は俺達、『フォース・コネクター』だ、カリス! いや、ジャッジメント・ウィザードッ!」 「その通りだ。まだ倒れていないなら、今度こそ俺が倒してやる」 「ちょっと、今回は私が倒す番でしょ? なにせ、同じ空中戦タイプだし」 勇治とマリアが構える。飛鳥も同じく構え、瑞樹に言った。 「コネクト・アウトしろ。あとは、俺達の役目だ」 『…………』 「さっき言った事、ちゃんと伝えておけ。良いな?」 『……はい』 頷き、瑞樹がコネクト・アウトする。そして、飛鳥はメシア・オブ・カイルスの背中の翼を見た。 一対の翼が二対となり、さらに大気が翼の周囲に集まって真空の翼を生み出している。 「キメラ・バグラム……! ついに本気を出したって事か」 「問題ない。俺が倒すまでだ」 「だから、今回は私の番だって。出番取ったら許さないわよ、勇治?」 「知らん」 「……勇治、あとで覚えておきなさい」 「忘れたな」 「むっ! 勇――――」 「んな事してる場合か、お前ら! とっとと決着つけるぞ!」 キリのない勇治とマリアのやり取りに、飛鳥が終止符を打つ。 それとは関係なく、カリスが笑う。まるで、勝利を確信しているかのように。 『見せてあげるよ、僕の本気を! これが、最強のメシア・オブ・カイルスだ!』 メシア・オブ・カイルスの両腕から爪が現れる。 七色に輝く爪。それを見た飛鳥は、まさかと目を見開いた。 「あの爪……まさか――――」 『アハハハハッ……くらえぇぇぇっ!』 振り下ろされる。風の刃が放たれ、飛鳥達に襲い掛かった。すかさず、勇治が迎撃体制を取る。 「出力60%、速射型」 「無理だ、勇治! 避けろ!」 「何……――――!」 飛鳥の言葉に、勇治が寸前のところで風の刃を回避する。そして、すぐに飛鳥を白い目で見た。 なぜ邪魔をした、そう言わんばかりの目。 「飛鳥……!」 「文句言う前にバトル・フィールドを見ろ!」 そう言われて、渋々見る。バトル・フィールドにいくつか斬られた跡があった。 「聖爪ソウガ……空間を切り裂く、違法の『レア・ウェポン』だ」 空間と同時に敵を切り裂く『レア・ウェポン』、聖爪ソウガ。 バトル・フィールドを直接破壊し、多大な負荷をかけてしまう事から、違法とされた武器。 その存在は名だけと言われていたが、目の前に存在している。 「空間を裂かれたら、どんな攻撃も無意味になる。それがどう言う事か……」 このまま戦えば、間違いなくバトル・フィールドが崩壊し、自分達が危険になる。 しかし、コネクト・アウトをすれば、自分達の負けを意味する。 『手も足も出ないだろ? いい気味だね、アハハハハハハッ!』 高々と笑うカリスの声が、バトル・フィールドに響く。 次回予告 飛鳥 「聖爪ソウガ……。まさか、あんなものを使ってくるなんてな……!」 明日香「だ、大丈夫なの!?」 勇治 「関係ない。あいつを倒すだけだ」 飛鳥 「……だよな。レガリアの力に頼らないと無理かもな」 明日香「本当にピンチなんだ……」 飛鳥 「そう言ってるじゃないか、明日香……」 次回、CONNECT49.『天国? 地獄? それとも奇跡?』 明日香「えっと、次回は……何だろ、このタイトル……」 飛鳥 「天国と地獄ってのが気になる……」 勇治 「天国は勝利だろ。奇跡は知らん」 飛鳥 「じゃあ、残る地獄って言うのは……」 飛鳥&勇治「…………」(← 一瞬で凍りつく最強コンビ) 明日香「あ、あれ……?」 |
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