聖爪ソウガ。そう呼ばれる『レア・ウェポン』を前に、飛鳥達が苦戦する。 空間を引き裂くその爪は、まさに脅威だった。 『ハハハハハハッ! 手も足も出せないのかい、フォース・コネクター?』 「貴様……!」 勇治が攻撃する。しかし、聖爪ソウガがそれを無力化した。 「ソウガをどうにかしないと……! ファルシオン、封印解――――」 『そうはさせないよ!』 ファルシオンセイバーを構えるセルハーツに風の刃が放たれる。飛鳥は舌打ちして避けた。 聖爪ソウガをどうにかするには、どう考えても『ドライヴ=レガリア』の力を引き出す必要がある。 しかし、カリスもそれは分かっている。力を引き出そうとすれば、聖爪ソウガで阻止してくる。 「レガリアの力を引き出す時間はくれないか……!」 「だったら、ここは私の出番でしょ。ワイヴァーンはすでにゴッドステルスだし」 「無理だな」 「勇治、今無理って言った!?」 「言った。その状態が長く続くわけないだろ」 「あ……そう言えば、もう発動して5分くらいだっけ……」 そう言った途端、ゴッドステルス・ワイヴァーンがワイヴァーン・ウイングに戻る。 「言ってる側から元に戻っちゃった……」 「仕方ない、勇治と二人でかく乱して、俺が囮になる。その間に……」 「サタン・オブ・アブソリュートを発動させる」 二人が頷く。そして、すぐに動き出した。 メシア・オブ・カイルスの左側からセルハーツが風の刃を放ち、右側から勇治が攻撃する。 カリスが笑う。真空の翼が二つの攻撃を無力化した。 直後、すぐに聖爪ソウガによる風の刃が放たれる。 『無駄だって言っただろ? 僕には誰も勝てないんだよ、あのイブリスでもね。ハハハハハハッ!』 「……チッ、キメラ・バグラムが邪魔だな……!」 「ここは、フルディフェンス・アルティメットでどうにかするしかないようだね」 「待ってください、ゴウさん。フルディフェンス・アルティメットでも、ソウガは止められない」 「じゃあ、どうするの? このままじゃ、バトル・フィールドが壊れるわよ、飛鳥」 「分かってる……この状況をどうにかするには、ファルシオンの力を引き出さないと……!」 しかし、レガリアの真の力を引き出そうとすれば、カリスがすぐに邪魔をする。 考える。もはや、答えは一つしかなかった。 「……勇治、マリア、ゴウさん、”アレ”を使います」 飛鳥の一言に、ゴウが目を見開く。 「”アレ”だと……!? 出来ると思っているのか、飛鳥? 輝凰や俺、優、郁美でも無理だったんだぞ!」 「もう、それしか方法はないんです。カリスを……ソウガを破壊するには……」 「ソウガを破壊した後はどうするのよ?」 「勇治に任せる」 飛鳥の瞳が勇治を見る。 「俺がやるのは、あくまでソウガの破壊。けれど、カリスを倒すのは……」 「俺の役目だ。あいつは、俺が必ずぶっ倒す」 「……って、相手が空なんだから、倒すのは私でしょ?」 「俺だ。お前の為にも俺が倒す」 「だからって、私の出番取るわけ!?」 「十分活躍しただろ、新型で」 そう言い切り、勇治がポケットからSDカードを取り出す。 適当に入れていたが、どうやらアタリのようだ。 「早くしろ、飛鳥。失敗したら、ポーションを奢れ」 「もう売ってねぇって! 安心しろ、必ず成功させてやるよ! マリア、ゴウさん!」 「妙に納得しないけど、もう良いか。思う存分やっちゃって」 「……分かった。君に賭ける、飛鳥!」 二人に頷き、飛鳥がSDカードを取り出す。 「力を貸してくれ、レガリア! 『スキル・プログラム』ッ!」 SDカードを素早く入れる。 「レガリア・フォースッ!」 『OK! Skill-Program, Input! Regalia-Force!』 コンピュータが認証する。四つの『ドライヴ=レガリア』が眩い輝きに包まれ、セルハーツに集まった。 それを見たカリスが、阻止しようとソウガを振るう。 『何をしようとしても、ソウガで阻止するだけだ!』 放たれる風の刃。しかし、それは呆気なく散った。カリスが目を見開く。 ファルシオンセイバーの柄にアルティメットシールド、その反対側にワイヴァーン・ウイング。 刀身の根元にサタン・オブ・マグナムが合体し、ファルシオンセイバーの刀身が黄金に輝き出した。 黄金の輝きが剣となり、セルハーツの全長と同じ大きさの剣が完成する。 レガリア・フォース。『ドライヴ=レガリア』の力を全て借りる『スキル・プログラム』。 「――――く……くぅッ……!?」 剣が上がらず、大地に先を突き刺したまま動かない。飛鳥は半端ない力を感じた。 「……なんて力だ。少しでも気を緩めたら……セルハーツごと暴走しそうだ……ッ!」 初めてバスターファルシオンを使った時を思い出す。まだ、あの時の方がマシだと言えるほどだ。 先代達が無理だったのも頷ける。この武器は、そう簡単に扱えるものじゃない。 歯を噛み締め、剣を力の限り持ち上げる。 『レガリアを一つに……!? けれど、そんなもので僕は倒せない!』 風の刃が放たれる。飛鳥の瞳が鋭くなった。 「エア……ブレードッ!」 振るう。風の刃を放ち、カリスの放った風の刃を無力化した。 その威力は、バスターファルシオンの時よりも強い。 「一度振るうだけで相当きついな……!」 この状態は長く続かせない方が良いようだ。相当な負担が掛かっている。 おそらく、聖爪ソウガを破壊は、次で決めなければいけないようだ。 「敵は空を飛んでいるから、攻撃するにはあの技か……」 『ソウガを無力化できても、空を飛んでいる相手に剣は無意味だね』 「いいや、そうでもないぜ?」 飛鳥が集中する。それに同調するかのように、セルハーツの瞳も強く光った。 レガリア・フォースの刀身が輝きを増し、周囲を凄まじい闘気が舞う。 狙いは一つ。メシア・オブ・カイルスの両腕。 「うぉぉぉおおおおおおっ!」 飛鳥の瞳がカリスを睨んだ。 「天翔蒼破ぁぁぁッ! 絶ッ! 靭ッ! 斬ぁぁぁぁぁぁんッッッ!」 空へと振るう。一直線に伸びる波動が、信じられない速さで空へと放たれた。 放たれた波動はカリスに行動する間も与えず、メシア・オブ・カイルスの両腕を奪う。 そして聖爪ソウガを跡形もなく消し去った。 『な……ソウガを……!?』 「……くっ……! ……あとは任せたぜ、勇治ッ!」 セルハーツが大地に肩膝をつき、クールダウン状態に入る。レガリア・フォースが四つのレガリアに分離した。 それぞれ主の元へ戻る。そして、勇治が「任せろ」と静かに言った。 「システム移行、サタン・オブ・アブソリュート」 コンピュータが『OK!』を出す。サタン・オブ・マグナムの銃口が開き、禍々しい銃口が姿を見せた。 絶対的な貫通力を持つ銃弾を撃つサタン・オブ・アブソリュート。 「マッハバースト」 瞳を鋭くし、撃つ。瞬時にキメラ・バグラムの翼を奪った。 メシア・オブ・カイルスが空を飛ぶ力を失い、大地へと落ちる。 カリスの目が見開き、泳ぐ。それは、明らかに動揺していた。 『……ま、待て! 僕の負けで良い! だから……だから!』 「聞く気はない。これで終わりだ」 サタン・オブ・アブソリュートを肩上まで持っていき、銃口にエネルギーを集中させる。 発生する巨大な赤熱の火球。ディル・ゼレイクが足場を固定し、狙いを定めた。 「ファイルナル・インフェルノ」 撃つ。巨大な火球がメシア・オブ・カイルスを襲った。 『そんな……僕が……!? ジャッジメント・ウィザードの僕が負けるわけがぁぁぁっ……!?』 火球に呑み込まれ、『ダーク・フォース』最後の一人、『ジャッジメント・ウィザード』は倒れた。 暗い闇の中に一つだけ無気味に光る液晶画面。その部屋で、彼は完成した『究極のドライヴ』を見ていた。 存在するドライヴを軽く一掃できるほどの力を秘め、レガリアですら太刀打ちできないドライヴ。 その時、イブリスが報告する。 『ファイナル・ロード様』 「分かっている。『ジャッジメント・ウィザード』が敗れ、『キメラ・ウイング』までもが破壊されたか」 『申し訳ありません』 「……まさか、レガリア・フォースを使うとはな。恵まれた才能とは恐ろしいものだな」 バトルの度に強さを増し、まだ全てを見せていない『ソード・マスター』。 間違いなく、一番の障害になるのは奴だ。 「やはり、『ソード・マスター』からレガリアを奪うには、お前しかいないようだな、イブリス」 『そのようです』 イブリスの言葉に、『ファイナル・ロード』が瞳を鋭くする。 「時は既に満ちている。イブリス、『フォース・コネクター』に本気で挑め」 それは、明らかな行動開始の合図だった。 コクピットランサーから降りて、飛鳥はセルハーツを見て少しだけ笑った。 「やっぱりお前は最高だな、セルハーツ」 イブリスとのバトルを思い出して言う。セルハーツなら、間違いなくイブリスは倒せる。 問題は、奴の本気がどんなものか分からないと言う事。 「……けれど、俺は負けない。輝凰が託した決着は、俺が必ず……!」 「うん、頑張ってね」 そう言われながら、首元に冷たいものを当てられる。当然、飛鳥の反応は大きかった。 ビクッと反応する飛鳥を見て、彼女は再び笑う。そんな彼女に対し、飛鳥は肩を落とした。 「……こよみさん、悪ふざけは止めてくださいよ」 「だって、飛鳥君の反応面白いもの。これは、二本目の差し入れ」 首元に当てたものを渡す。今度は普通のウーロン茶で、まともな飲み物だった。 「ありがとうございます」 「どういたしまして。あ、輝凰さんから伝言があったから、言うね?」 こよみが飛鳥を指差す。 「『とっとと本気を出せ。イブリスを倒せる方法はもう見つけているはずだ』だって」 「……バレてたんだ、やっぱり」 イブリスを――――いや、『ダーク・コネクター』を壊滅させる方法はすでにある。 その方法は一つ。セルハーツを本来の状態に戻せば良いだけ。 しかし、逆にそれは危険だと飛鳥は分かっている。 (……あくまで、『切り札』だよな) どう足掻いても勝ち目が無い。そんな時の切り札。 「じゃあ、私は帰るね。このまま長居するわけにはいかないから」 「はい。差し入れ、ありがとうございます、こよみさん」 「うん」 そう言って、軽く手を振りながらこよみが帰っていく。その時、飛鳥は悪寒を感じた。 明日香の嫉妬の悪寒ではない。それ以上に恐ろしいものが訪れようとしている悪寒。 それは、すぐに訪れた。 「さーて、私の『ストーム・クラウン』復活を祝って、パーティーでもやりますか! もち、私の部屋で!」 マリアのその言葉を聞いて、飛鳥と勇治がすぐに反応する。そして、互いに顔を見た。 目で会話する。 「逃げるぞ」 「当然だ」 そんな会話が行われ、二人がマリアに気づかれないように逃げようとするが、それは無理だった。 「そこの二人、逃げようなんて考えちゃダメよ?」 「逃げるんじゃない。セルハーツの構築データが戻ったから、再調整する為に帰るだけだ」 「ファイナル・インフェルノを使ったから疲れた。今日は帰る」 「再調整は明日でも大丈夫大丈夫。疲れたなら、なおさら来ないと」 強制連行決定。 「あ、もちろんゴウも来るでしょ?」 「うん。特に用事もないしね」 ゴウが頷く。実は、ゴウは何も知らなかった。 彼女の――――マリアの恐ろしさと言うものを。 所変わって、飛鳥達と別れたこよみ。 「あのままいたら、間違いなくマリアさんの”あれ”に付き合わされるもんね」 3年前の事だが、今でも覚えている。”あれ”の恐ろしさを。 先輩である優と郁美ですら拒む恐ろしい”あれ”。一度でも経験すれば、必ずトラウマになる。 「あの様子だと、飛鳥君は捕まるかな……ご愁傷様」 軽く苦笑する。 強制的に連れて来られた飛鳥と勇治。そしてゴウ。彼らはマリアの住むマンションにいた。 「はーい、銀だこならぬ金だこ♪」 そう言って、三人の目の前に金箔塗れのたこ焼きが置かれる。 「ちょっと待て、何だこれは!?」 「だから、金だこ。ほら、銀だこってあるでしょ?」 「それは店の名前だ! 別にたこ焼きが銀色じゃねぇ!」 「そんなの気にしない気にしない♪」 「気にするわ!」 飛鳥のツッコミ炸裂。しかし、マリアには全くと言って通用しない。 金箔塗れのたこ焼きを前に、流石の勇治も固まっている。 唯一、何も知らないゴウはかなり興味を持っていた。 「金色のたこ焼きと言うのは初めてだね……」 「いや、ゴウさん! そう言う問題じゃないですから! つーか、食べたら危険ですから!」 「大丈夫。僕の胃は結構頑丈だから」 「だから、そう言う問題じゃ……って、食べるなーっ!」 しかし、時既に遅し。ゴウの口にたこ焼きが運ばれる。 ゆっくりと噛み、その味を確かめるゴウ。そこで全ては終わりを告げた。 ゴウの口の動きが止まる。それを見て、飛鳥が恐る恐る訊く。 「……ゴウさん、生きてますか?」 「…………」(←無反応) 「き、気絶してる!?」 「気絶するほどの美味さと……うん、今回は大成功って事ね」 「んなわけねぇだろ!? どう見たって違うだろ、これは!」 「飛鳥」 勇治が口を開き、無表情でこちらを見てくる。 「……南無」 「な!? 南無って何だ、南無って!? おい、勇――――」 直後、口にたこ焼きが投入される。飛鳥の目が大きく見開かれた。 口の中に広がるたこ焼きの味――――とは全く異なる、何とも言えない謎の味。 そのまま気を失い、倒れる。それを見た勇治は「やはりな」と呟いた。 「……俺も死ぬのか」 「はい、勇治、あーん♪」 「…………」 逃れる術などあるはずがなく、勇治の口にたこ焼きが運ばれる。 翌日、間違いなく体重も落ちているほどやつれてしまった三人の姿があったのは、言うまでもない。 次回予告 明日香「え、えっと……奇跡は『スキル・プログラム』の事で、地獄は勇治君の技、かな……?」 亜美 「じゃあ、天国はマリアさんの事になるんですか?」 明日香「ど、どうだろう……? ねぇ、飛鳥君――――」 飛鳥 (ガクガクブルブル……) 勇治 (ガクガクブルブル……) ゴウ (ガクガクブルブル……) 明日香「……な、何かに怯えてる!? と言うより、ゴウさんも!?」 亜美 「こ、こんなお兄ちゃん初めて見たかも……」 次回、CONNECT50.『絶望と言う名の宴の始まり』 明日香「じ、次回は、ついに『ダーク・コネクター』との全面戦争!」 飛鳥 (ガクガクブルブル……) 勇治 (ガクガクブルブル……) ゴウ (ガクガクブルブル……) 明日香「ま、まだ、怯えてる……大丈夫かな、次回……」 |
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