CONNECT50.『絶望と言う名の宴の始まり』


『ジャッジメント・ウィザード』とのバトルから数日。飛鳥はひたすらトレーニングしていた。
 自分で設定したシミュレートで、自分の限界に挑む。
「……っ」
 シミュレートを切る。目に大きな負担が掛かった。
「……少し、休むか」
 そうしないと、目が持たない。いや、精神的に疲れる。
「あと少しどうにかなれば、セルハーツの力を完全に引き出せるんだけど……」
 間違いなく、重要なのは自分の持つ『鷹の瞳』とタイミング。
 少しでも違えば、セルハーツの力は全て引き出せない。
「とりあえず10分位休憩して、セルハーツを調整するか」
 ドライヴを取り出し、そのままショップ内の喫茶店へ向かう。
「あ、いたいた! 飛鳥くーん!」
 その時、呼び止められる。明日香が大きく手を振っていた。
 飛鳥も軽く手を上げる。
「よう、明日香。どうしたんだ?」
「う、うん……。その……」
 明日香がドライヴを取り出す。
「シルフィーナディアが変みたいで……」
「変?」
「うん。見たら、訳分からない文字で一杯になってて……」
「ちょっと貸して」
 受け取り、すぐにコンピュータに接続する。飛鳥はシルフィーナディアを調べた。
 表示される文字だけの羅列。それを見た飛鳥の瞳が見開かされる。
 セルハーツを入れているドライヴを取り出す。何も変わりはない。
(……けど、これは間違いなく……)
 息を呑む。明日香が首を傾げた訊く。
「何か分かるの?」
「…………」
「……飛鳥君?」
「……明日香、しばらく預かって良いか? 修理するから」
「う、うん。良いけど……」
 コンピュータからシルフィーナディアを取り外し、自分のポケットに入れる。
 そして、グロウファルコンのドライヴを明日香に渡す。
「調整用に持って来てて良かった。少しの間、そいつ使ってくれ」
「うん。ありがとう、飛鳥君」



 とある病院の診察室。そこで、輝凰はいつものように患者の診察を行い、昼前に一通り終えた。
「カルテの整理も終わったし、少し早いが昼飯でも食うか」
 どうせ午後からまた忙しくなるだろう。医者とはそう言うものだ。
 そう思いつつ、席を立ち上がる。ドライヴが突然ポケットの中で振動した。
 メールの着信。相手はこよみだろうと予測しつつ、ドライヴを手にする。
「……!」
 目を見開く。

『Despair tells beginning.』(絶望が始まりを告げる)

 そう書かれたメールの本文。輝凰はすぐに分かった。
 送ってきた相手は間違いなく、奴ただ一人。
「イブリス、あの馬鹿野郎……!」
 ドライヴを強く握り締め、「飛鳥、油断するなよ」と心で思う。



 少しの休憩を取った後、飛鳥は近くのコンピュータに接続して、セルハーツの調整に取り掛かった。
 素早い手つきで状態を調べ、セルハーツを万全に仕上げて行く。
「……よし、あとは操縦性を確かめないとな」
 そのままシミュレートを起動させる。途端、ファルシオンセイバーが強い反応を示した。
 飛鳥が目を見開く。この反応は間違いなく、『ダーク=レガリア』だ。
「けれど、四つの『ダーク=レガリア』は完全に破壊して……――――!?」
 シミュレート用のバトル・フィールドに一体のドライヴが出現する。そして襲い掛かってきた。
 すぐに反応し、回避する。紅蓮のローブを纏い、黒炎の拳を持つドライヴ。
 そして、背後から再び別のドライヴが襲い掛かってくる。
『覚悟してもらいますわ、ソード・マスター!』
「――――! ヴォルト・デュラハン!」
 雷の鞭を放つヴォルト・デュラハン。飛鳥は瞳を鋭くし、『鷹の瞳』で攻撃を見切った。
 剣を逆手にし、大地へと突き刺す。
「輝凰! 斬・王・陣ッ!」
 セルハーツの周囲から無数の光の波動が大地から天空へと放たる――――が、一瞬にして無力化された。
『斬王陣封じ。これで、範囲攻撃は不可能だ、ソード・マスターよ』
「イブリス……!」
 さらにイブリスのエヴィル・アスラフィルまで現れる。飛鳥は歯を噛み締めた。
 まさか、このタイミングで現れるとは思わなかった。それも、かなり大勢で。
 目には見えないが、レーダーにはちゃんと反応がある。
「……『ダーク・コネクター』総動員か? それも、幹部のお前らまで……!」
『その通りだ、ソード・マスター。我が名は劫火の戦神ネクロフィス』
「ネクロフィス……輝凰さんが言っていた、厄介な幹部の一人……!」
 輝凰やイブリスに『ダーク・コネクター』としてのバトルを教え、そして鍛え上げた人物。
 無論、すぐに二人に追い抜かれたらしいが、その強さは『ダーク・フォース』でも太刀が悪いとか。
『輝凰から話を聞いているわけか。輝凰も、面白い奴を育てたものだ』
『いいえ、彼が輝凰から教わったのは斬王陣のみ。それ以外の強さは、彼自身の実力です、ネクロフィス』
『ほう……ならば、どれほどの実力か確かめさせてもらう』
 ネクロフィスが襲い掛かってくる。飛鳥は剣を構えた。
 黒炎の拳がセルハーツへと振り上げられる。
『おおおっ!』
「フラッシングソード!」
 素早く対応する。剣による斬撃が黒炎の拳を受け流した。
「ミラージュ・ブレイドッ!」
『炎の盾よ!』
 飛鳥がすかさず攻撃を繰り出す――――が、ネクロフィスはそれを受け止めた。
 黒炎の拳から発せられた盾が、飛鳥のミラージュ・ブレイドを防いだ。
 ネクロフィスが言う。
『確かに実力はあるようだ。だが、その程度で我を倒そうと思うな』
「くっ……!」
『このまま一気に仕留めさせてもらうぞ、ソード・マスターよ!』
 拳が振り下ろされる。飛鳥は瞳を鋭くする。
『鷹の瞳』がネクロフィスの攻撃を見切る。セルハーツが大地を蹴って回避する。
 その瞬間、突然の重力がセルハーツを襲った。
「ぐぅっ……!?」
 セルハーツが全く動かなくなる。ネクロフィスがイブリスへと目を向ける。
『邪魔をするな、イブリス』
『そのつもりでしたが、レガリアを手に入れるのが優先です』
『そうか。惜しいが、仕方ない』
 黒炎の拳の炎がさらに激しくなり、その姿を剣へと変えていく。
『戦火・炎王――――』
「バハムート・ティアッ! うぉぉぉおおおおおおっ!」
 巨大な斧が高回転しながらネクロフィスへと迫る。イブリスが重力でそれを阻止した。
 刹那、ネクロフィスが吹き飛ばされる。一閃がネクロフィスを襲ったのだ。
「どうやら、間に合ったようだな」
「当然でしょ。飛鳥がやられちゃってたら、ファルシオン奪われるんだし」
「ゴウさん、マリア……!」
「たかが幹部に何を苦戦している。お前の強さはそんなものじゃないだろ」
「勇治……何でそんなに早く来る事が……?」
「何でって、明日香ちゃんから連絡をもらったからでしょ」
 マリアが言う。飛鳥は「なるほど」と呆気なく納得した。
 集合した『フォース・コネクター』。吹き飛ばされたネクロフィスが立ち上がる。
『邪魔が入ったか。どうする気だ、イブリス?』
『ディフェンド・キングのお相手をお願いいたします。輝凰と互角の実力者ですので、油断せず』
『輝凰と互角か。だが、俺はソード・マスターを倒したいと言ったらどうする?』
『それはご遠慮願います。ソード・マスターは、私自らの手で始末します』
 イブリスのエヴィル・アスラフィルがセルハーツを睨む。飛鳥は身構えた。
 感じるのは今までにない威圧感と恐怖心。間違いない、イブリスは全力を出すつもりだ。
 ゴウがネクロフィスを睨んだまま言う。
「勇治とマリアはヴォルト・デュラハンを。そして、イブリスは任せて良いな、飛鳥?」
「……はい。イブリスを倒すのは、輝凰さんの後継者になった俺が託された事ですから」
「頼むぞ。勇治とマリアもそれで良いな?」
「構わない。ヴォルト・デュラハンは、俺とマリアで仕留める」
「例の悪趣味な合体使ってくるだろうし、それが良いかもね」
 決定。周りにかなりの数の敵がまだ潜んでいるが、幹部クラスじゃない限り敵ではないだろう。
 倒すべきなのは、幹部三人。そして、総帥『ファイナル・ロード』。
 ゴウが力を込めて大地を殴る。それが、始まりの合図となった。



 ゴウのプラディ・ラ・グーンが大地を殴る。バトル・フィールドに大地震が起きた。
 その瞬間を狙って、勇治とマリアが仕掛ける。
「分かってるな、マリア」
「もちろん。勇治の的にならないように注意するわよ」
 勇治が凄いのは、その射撃の腕。それは時と場合によって味方を不利にさせる事がある。
 しかし、そんな事態にさせないように撃つ、と言う考えを勇治は絶対に持たない
 だからこそ、飛鳥とのコンビ『ソード&マグナム』は凄いのだ。
 互いを不利にさせず、有利へと変えるコンビネーション。「飛鳥には嫉妬しちゃうわ」とマリアがぼやく。
「ちゃちゃっと終わらせますか。レディエンス・ワルツ♪」
 斬撃を繰り出す。ヴォルト・デュラハンは雷の鞭を振るって防いだ。
 その隙を突いて、針を通すような射撃が繰り出される。
『ラフレシア!』
 ヴォルト・デュラハンの目の前にラフレシアが姿を現し、勇治の攻撃を防ぐ。
『本気を出させて頂きますわ、マグナム・カイザーにストーム・クラウン』
「本気? その大きなお花ちゃんと合体して?」
『ええ、それも含めて……来なさい、ドナル』
 途端、地中から一体のドライヴが姿を現せる。巨大な蜘蛛型のドライヴだ。
 それを見たマリアが「うわ……」と嫌な顔をする。が、勇治は相変わらずだった
 ドナルを呼ばれた蜘蛛型ドライヴへと狙いをつけて撃つ。避けられた。
「避けただと……!」
『ドナルの機動性を甘く見ないでくださいますか? この子は、とても優秀なのです』
 ドナルの頭を撫でる。
『そして……』
 ヴォルト・デュラハンの下半身が背中へと移動する。
 ラフレシアが6つの花弁を分離し、中心部がヴォルト・デュラハンの背中に合体する。
 そして、ドナルの頭部にヴォルト・デュラハンの上半身が合体した。
『ヴォルト・ラファエル……これが、ヴォルト・デュラハンの本来の力を引き出した姿ですわ』
「うわ、すっごい悪趣味……見てるだけで寒気がするわ
「背中には花で、下には蜘蛛か。微妙だな
『そう言っているのは今のうちですわよ、二人の王。このドライヴは、絶対に力尽きませんもの』
 ヴォルト・ラファエルから無数のレーザーの雨が降られる。勇治の瞳が鋭くなった。
 レーザー全てに照準が定められ、全て迎撃する。
 刹那、今度は無数のミサイルがヴォルト・ラファエルから放たれた。
「面白い、この俺を本気にさせるか」
「って、今まで本気じゃなかったって事?」



 同じく、飛鳥も大地震と同時にイブリスへと攻撃を仕掛ける。
「フラッシングソード!」
『ディヴァイン・プロテクション・シルフ』
 エヴィル・アスラフィルの周辺を風が覆い、セルハーツの剣の軌道を逸らす。
『アシッド・ザ・ウンディーネ』
 右手を空へと掲げ、水を集中させる。集中された水が空へと放たれ、雨となって降り注がれた。
 飛鳥がゴッドランチャーを大地へと向けて放つ。セルハーツがその反動で大空へと舞い上がった。
 降り注がれる雨よりも高く舞うセルハーツ。装甲が少しだけ溶けている。
「酸の雨……あのままだったら、装甲が全部溶けてたって事かよ……!」
『イフリート・ブリット』
 瞬間、炎弾が放たれる。飛鳥は剣を振るった。
 炎弾全てを剣で叩き落としながら大地へと降下し、反撃に移る。
『遅い。ノーム・ギガント』
 エヴィル・アスラフィルの両手から巨大な岩が生成され、セルハーツへと振り落とされる。
「ミラージュ……ブレイドォォォッ!」
 巨大な岩を斬撃で粉砕し、跳躍する。
「もう一撃!」
『セルシウスキャリバー』
 氷の剣を生成し、セルハーツの剣を受け止める。飛鳥は舌打ちした。
 イブリスと距離を置き、風の刃を放つ。
『無駄です』
 風の刃がエヴィル・アスラフィルに命中する前に反れる。
『流石はソード・マスター。重力制御以外の攻撃を全て回避するとは』
「何度もバトルして思ったが、お前のドライヴの攻撃は……」
『察しが早いな、ソード・マスター。このドライヴには五つ目のダーク=レガリアが装備されている』
「何……!?」
 イブリスが不敵に笑う。
『その名もSYSTEM-ZERO。ダーク=レガリアは五つ作られていたのだ』
「まさか、輝凰さんが勝てかなったのは……!」
『SYSTEM-ZEROの力。しかし、それだけではない……見せてやろう、これが私の真の力だ』
 エヴィル・アスラフィルの周囲の風の流れが変わる。エヴィル・アスラフィルが紫のオーラを放った。
 背中から現れる七色の翼。飛鳥が目を見開く。
「その翼は、この間の……!」
セルファレアムレインボー。これが、私の本来の力であり、最強の技』
 氷の剣をセルハーツへと向ける。
『真の力を引き出したのだ。覚悟は良いな、ソード・マスター!』
「……覚悟も何も、俺はお前には負けない! 輝凰さんの後継者として……『ソード・マスター』として!」
 セルハーツが構える。そして、瞬時に駆け出した。



次回予告

 明日香「は、始まっちゃったよ、『ダーク・コネクター』との最終決戦!」
 飛鳥 「ああ。けど、俺は負けない。『ソード・マスター』として、俺も全力を出すだけだよ」
 明日香「だ、大丈夫なの!? イブリスも凄い技出したけど……」
 飛鳥 「大丈夫。俺は絶対に負けないから」
 明日香「……最近の飛鳥君、やっぱりキャラ違う」
 飛鳥 「……え?」

  次回、CONNECT51.『それは鷹、獅子、龍の如く』

 明日香「次回は、今度こそ飛鳥君が本領発揮!?」
 飛鳥 「いや、今度こそって……何で疑問系なんだよ……」
 明日香「だって、前に本領発揮って言ったのに、全然しなかったから……」
 飛鳥 「……なるほど」(←否定できないらしい)



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