『Limiter release, Completion. Sel-Hreats, Maximum Power!』 光の中から姿を見せる一体のドライヴ。それは、飛鳥のセルハーツだった。 否、肩や脚部の形状が違う。クリスタル状の装甲、背中の巨大スラスターが目立ったドライヴ。 『Sel-Hreats, End of reconstruction ... Wake up, Final-Hearts!』 コンピュータの言葉に、飛鳥がゆっくりと深呼吸する。 ファイナルハーツ。Bランクの頃に作った本当のセルハーツ。 これが、自分にとって最後の力。絶対に使いたくなかった力。 静かに集中し、ただ、敵を睨む。 「…………」 『ドライヴに何をしたかは知らんが、ゴッド・ジェネシスに勝てると思うな!』 ゴッド・ジェネシスがレイ・スペル・ノヴァで攻撃する。ファイナルハーツのいる場所が再び爆炎に包まれた。 ファイナル・ロードが笑みを浮かべる。ドライヴの強さを見るまでもなかったと。 そう思った瞬間、レイ・スペル・ノヴァを持つゴッド・ジェネシスの左腕が消滅した。 『な……!?』 ファイナル・ロードが目を見開く。何が起きたか分からずに。 そして、飛鳥のファイナルハーツは、爆炎の中から無傷の状態で姿を見せる。 ゴッド・ジェネシスの左腕が一瞬で破壊された時、それを見ていた郁美は目を見開いた。 優が郁美の様子に気づく。 「どうかした?」 「……バトル・フィールドの風の流れを見ていたんだけど、一瞬の変化があったわ」 「一瞬だけ?」 「ええ……変化があったのは、ゴッド・ジェネシスの左腕が破壊された時の一瞬だけ」 「ちょっと妙ね……調べてみますか」 そう言って、すぐに飛鳥のドライヴを調べる。そして「嘘でしょ」と呟いた。 「機動性、それによる攻撃力増加の数値が計測できてない……!? 何これ、見た事ない……」 「計測不能? レガリアじゃあるまいし、そんな事ないでしょう?」 「これ見たら、そんな事言えなくなるよ。何をどうしたら、こんなドライヴができるのか……」 「これが飛鳥の切り札か」 後ろからの言葉に、二人が振り向く。輝凰が立っていた。 飛鳥のドライヴのデータを見て、バトル・フィールドに目を向ける。 「飛鳥の奴、何かを隠しているのは分かっていたが、なんて奴だ……!」 「それより、あれは違法じゃないの? 途中で交換するなんて」 「違法と言うより、負けね。交換するって事は、一度コネクト・アウトするって事だし」 ドライヴをさらに調べながら、優が説明を始める。 「けど、このドライヴは違う。名称はファイナルハーツになってるけど、ドライヴ自体はセルハーツよ」 「どう言う事だ?」 「登録されてるデータはセルハーツって事。多分だけど、あれはセルハーツの第2形態よ」 ファイナル・ロードは何が起きたか分からないままだった。 いや、分かるのは一つ。飛鳥のドライヴが一瞬のうちに攻撃し、左腕を破壊したと言う事だ。 ゴッドリバイヴで左腕を瞬間再生させつつ、飛鳥を睨む。 無傷の状態で立つファイナルハーツ。飛鳥は深呼吸を繰り返した。 (……まさか、またお前を使うなんて思ってもいなかった……) 初めて作った頃を思い出す。 (ファイナルハーツで戦う以上、俺は絶対に勝たなきゃいけない……!) これで勝てなければ、ドライヴはファイナル・ロードによって全て滅ぶ。 目を閉じて集中する。ファイナルハーツがプラズマセイバーを構える。 ゴッド・ジェネシスがデスブレード・ラグレオスを振り上げた。 『ラグレオス・スラッシャーッ!』 「――――!」 振り下ろされた瞬間、飛鳥の瞳が開き、鋭くなる。ファイナルハーツが一瞬にして消えた。 それを見たファイナル・ロードが目を見開く。その時には、右腕が消滅していた。 『何……!?』 「隙だらけだぜ、ファイナル・ロードッ!」 飛鳥の声が聞こえつつも、ゴッド・ジェネシスが一瞬のうちに切り刻まれていく。 ファイナルハーツが姿を見せた時には、ゴッド・ジェネシスの大半が破壊されていた。 『馬鹿な……一瞬でゴッド・ジェネシスを……!?』 「……はぁ……はぁ……はっ……!」 飛鳥がやや肩で呼吸をする。 「一瞬でゴッド・ジェネシスをあそこまで……」 郁美が驚く。ファイナルハーツの強さは、セルハーツの時と比べて全く違っていた。 同じように見ている明日香も驚く。 「飛鳥君……凄い……」 「武器はファルシオンじゃなくプラズマセイバーか……」 「まぁ、あの機動性のお陰で威力はレガリア以上かも。ほんと、領域違うわ」 「……なるほど、ようやく分かった」 輝凰の言葉に、優が反応する。 「分かったって何が?」 「セルハーツの操縦性だ。飛鳥から聞いていたが、結構シビアなんだろ?」 「うん。接近戦に特化させて、さらに当時のあすあすが作ったものだからね。初心者の失敗作みたいな?」 「失敗作か。本人はそう言って誤魔化していたか」 輝凰がファイナルハーツを見る。そして、話を続けた。 「操縦がシビアなのは、初心者だった飛鳥が作ったからじゃない。失敗したなら作り直せば良いからな。 飛鳥はファイナルハーツを3年前に作っていた。けれど、あの機動性に操縦性が追いつかなかった」 「それって、つまり?」 「ファイナルハーツはセルハーツの第2形態じゃない。セルハーツの原型となったドライヴだ」 それなら納得が行く。飛鳥は3年前にファイナルハーツと言うドライヴを完成させた。 しかし、驚異的な機動性は操作を難しくさせた。そして作り直したのがセルハーツなのだろう。 何をどうすれば、このようなドライヴが作れるのか分からないが、輝凰は飛鳥の才能に恐怖を感じた。 稀代の天才・逢坂優を越える才能。飛鳥は間違いなく、優を超えている。 「3年前……3年前にあすあすはこれを作っていたと……」 優の身体が微妙に震えている。そう思った矢先、明日香へと視線を向けた。 あまりにも突然の事で明日香が驚く。優が近づく。 「明日香ちゃん、実はこのドライヴの事知ってたんじゃない?」 「え、あの……」 「知ってたよねぇ?」 「あ、あの……」 「知ってたよねぇ?」 「え、えーと……」 「知ってたよねぇ?」 「そ、その……」 「知ってたよねぇ?」 「いい加減にしろ」 優にゲンコツする。 「知るわけないだろ。飛鳥の事だから誰にも教えないで隠していたはずだ。そうだろう、明日香ちゃん?」 「だと、思います……」 「……あすあすめ、私に内緒でこんなドライヴを……!」 「明日香ちゃんを問い詰めたと思えば、やっぱり……。いい加減認めなさい。飛鳥があなたより上って」 郁美が呆れる。優が大人気無く首を横に大きく振った。 まるでダダをこねる子供のように。それもかなり年甲斐もなく。 「絶対に認めない! あすあすが私よりも才能があるなんて絶対認めない! あすあすの師匠として!」 「いつお前の弟子になった……」 「3年前から! 私のお陰で、あすあすはドライヴ製作技術を身につけたの!」 「優が作るべきアクティブ・ウェポンの7割を作らせたものね」 郁美の言葉に、優がギクリと目を逸らす。輝凰が呆れた。 「優、お前な……自分の仕事くらい自分でやれよ。よく協会にバレなかったな」 「あすあすってば、作りが良いのよ。『マスター・コネクティブ』にもバレないくらいに」 「つまり、飛鳥は優以上って事ね」 「それはない!」 あくまで認めない優。それを可笑しく苛める郁美。見た事ない光景に明日香は苦笑するしかなかった。 三人を無視して、輝凰がバトルの状況を確認する。 飛鳥のファイナルハーツがゴッド・ジェネシスを圧倒的な強さで押している。 「…………」 瞳を鋭くさせ、『鷹の瞳』で見る――――が、ファイナルハーツの動きを捉えられなかった。 「……俺の『鷹の瞳』……ファイナル・ロードに鍛えられて鋭さを増した資質でも捉えられないか」 輝凰が拳を強く握る。 「今のお前は間違いなく『鷹の瞳』を発動させ続けているはずだ……。飛鳥、資質を失う気か……!?」 ファイナルハーツが姿を消し、その一瞬でゴッド・ジェネシスを切り刻む。 しかし、ゴッド・ジェネシスの装甲に傷は入るが、破壊までは至らなかった。 「くそっ……ゴッドリバイヴの力が……ファイナルハーツに追いついてきている……!」 舌打ちする。ファイナル・ロードが軽く笑った。 『ハハハ……その機動性は確かに驚いたが、やはりゴッド・ジェネシスの前では無意味だったようだな』 「くっ……!」 『今度は私の番だ。キメラ・アマテラス!』 真空の刃が降り注ぐ。飛鳥は奥歯を噛み締めてファイナルハーツを動かした。 姿を消し、やはり一瞬でゴッド・ジェネシスの両腕を破壊する――――が、瞬時に両腕が再生した。 『ティシフォネ・フォール』 今度は巨大な重力弾。ファイナルハーツは三度姿を消し、瞬時にティシフォネ・ザ・ナイトメアを破壊する。 が、やはり今度も再生。これではいたちごっこだと、飛鳥は舌打ちした。 「破壊してもすぐに再生する……! コアを……ゴッドリバイヴのコアごと破壊しないと……――――ぐっ!」 瞳に痛みが走る。ついに『鷹の瞳』を使用した代償が襲ってきた。 (くそっ、限界が……次の一撃で決めないと、ファイナル・ロードを倒せない……!) 残されたチャンスは一回。これで決めなければ、ファイナル・ロードは倒せない。 ゴッドリバイヴのコアの位置さえ分かれば。そう強く思う。 ファイナル・ロードが鋭い瞳で飛鳥を睨む。ゴッド・ジェネシスがデスブレード・ラグレオスを構えた。 『限界のようだな。ゴッド・ジェネシスを相手に良く戦った……すぐに楽にしてやろう』 デスブレード・ラグレオスが漆黒の光を放つ。飛鳥は歯を噛み締めた。 瞬間、ゴッド・ジェネシスを一閃の銃弾が貫く。 『何……?』 「……隙だらけだな……。俺はまだ……倒れていないぞ……!」 ディル・ゼレイク――――勇治の姿があった。 もはや立つ事すら限界に近いはずなのに、サタン・オブ・アブソリュートを構えている。 いや、勇治だけじゃない。ゴウのプラディ・ラ・グーンとマリアのセイレント・クイーンの姿もある。 飛鳥が目を見開く。 「勇治……ゴウさん、マリア……!」 「言いたくないが、もう限界だ……狙いだけは定めてやるから決めろ、飛鳥……!」 「コアの場所は『金剛の瞳』で見える……そこを教える。……飛鳥、お前に全てを託す!」 「飛鳥、倒さないと許さないわよ……? こっちも限界なんだから……」 そう言って、三体のドライヴがレガリアを前に出す。レガリアが光り輝いた。 近くに転がっているファルシオンセイバーも光り輝き、4つの光が一筋の道を飛鳥に作った。 ゴッド・ジェネシスの胸部より下――――腹部の中心より少し上を示す光。 「ここにコアが……? そうか、レガリアも俺に力を……」 ファイナルハーツがコアの位置に狙いを定める。この正確な狙いの定め方は勇治のやり方。 ファイナルハーツのカメラアイを通して見える光の点は、ゴウの力。 そして、マリアは「役に立たないと思うけど」と言いつつも、風の流れを教えてくれた。 「……ありがとう勇治、ゴウさん、マリア……! この一撃で必ず決める!」 ファイナルハーツがプラズマセイバーを構える。飛鳥は瞳に走る痛みを堪えて集中した。 次の一撃で決める。全てのエネルギーをプラズマセイバーに集中させる。 「うぉぉぉおおおおおおっ!」 『その一撃で私を倒そうと思っているのか? そうはさせぬぞ、蓮杖飛鳥よ!』 ファイナル・ロードが先に動いた。ゴッド・ジェネシスがデスブレード・ラグレオスを振り上げる。 漆黒の光を放ち、その光を刀身に変える。それは、漆黒の刀身を持ったバスターファルシオンのよう。 『バスター・デスブレードッ!』 振り下ろされる漆黒の刀身。飛鳥がその刀身を見切り、ファイナルハーツが避けた。 姿を消さず、ゴッド・ジェネシスへと突撃する。 「ジャッジメント……ハァァァトッ!」 プラズマセイバーが振り下ろされる――――が、それだけだった。 無傷と言っても良いゴッド・ジェネシス。ファイナル・ロードが高々と笑う。 『もはや力尽きいたか? 最後の一撃は無駄だったようだな、蓮杖飛鳥よ?』 「……くっ……はぁ……はっ……!」 ファイナルハーツが片膝を大地につく。もはや、立つ力すら残っていない。 その姿に、ファイナル・ロードは勝利を確信した。 脅威と言える機動性は確かに驚いたが、それでもゴッド・ジェネシスは倒せない。 デスブレード・ラグレオスを構える。 『私の勝ちだ、蓮杖飛鳥よ。これで、全てが終わるのだ――――!?』 瞬間、それは起こった。ファイナル・ロードが目を見開いた。 斬撃がゴッド・ジェネシスを襲う。それも一つではなく数えられないほど無数に。 全身を切り刻まれ、崩壊していくゴッド・ジェネシス。 『な……これは……!?』 「……俺の勝ちだ、ファイナル・ロードッ……!」 飛鳥が言い放つ。この時、ようやく理解した。 ファイナルハーツがプラズマセイバーを振り下ろした瞬間に、勝敗は決していた。 崩壊していくゴッド・ジェネシスの中で、ファイナル・ロードが全てを理解する。 『馬鹿な……無限なる斬撃を……!? ゴッド・ジェネシスが倒されるなど……いや、まさか……!?』 ファイナル・ロードが飛鳥を睨む。 『……蓮杖飛鳥……、まさか、そのドライヴは……!?』 「……はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……」 呼吸するだけで精一杯の飛鳥。それを見たファイナル・ロードはふっと笑みを浮かべた。 ファイナルハーツは、ゴッド・ジェネシスを超える『究極のドライヴ』だった。 そして、それを動かしていたのは、自分が知る少女の面影がある少年。 『……私の負けだな、蓮杖春香よ……。お前の息子は……お前同様、素晴らしいコネクターだ……』 爆発せず、塵と化すゴッド・ジェネシス。それは、決着がついた瞬間だった。 バトル・フィールドの外。ファイナル・ロードが倒された瞬間、一斉に歓声が沸き上がった。 ドライヴに着信が入ったのを確認して、優が状況を知る。 「うわ、やってくれる……」 「この歓声の原因は何だ?」 「『マスター・コネクティブ』が、バトルを終始流してたみたい。全国のショップに」 「……良いのか、それは」 「良いんじゃない? 最高責任者がやったんだし」 そう聞いて輝凰が呆れる。そして、「飛鳥、ご愁傷様」と心の中で合掌した。 このバトルで、間違いなく飛鳥の人気は今まで以上に上がるだろう。確実に。 しかし、今はそんな事を考えている場合じゃない。輝凰は真っ先にコクピットランサーへ向かった。 飛鳥が気になる。ファイナル・ロードとのバトルで、間違いなく飛鳥の瞳に何かが起きているはずだ。 急いで向かう輝凰を見ながら、優が近づいてくる人影に言う。 「無事?」 「無事じゃないですよ……セイレント・クイーンなんてボロボロだし……」 「直してあげるわよ。ついでに、ゆうゆうのも」 そう言って、なぜか柱に隠れている勇治に言う。マリアが引っ張ってきた。 「何で隠れてるのよ、勇治?」 「…………」 「どうせ、情けないからでしょ。ま、今回は仕方ないわよ」 勇治の頬を引っ張る。 「オーバー・ドライヴ・システム発動させて、ファイナル・インフェルノ使ったけど大丈夫?」 「……どうにか」 「じゃ、良いじゃない。ちゃんと、最後まで戦ったでしょ?」 コクピットランサーを開く。予想通り、飛鳥は疲れ果てていた。 「大丈夫か、飛鳥?」 「……輝凰……さん……?」 「立てるか?」 「あ……えっと……」 「ほら」 輝凰の肩を借りて、飛鳥がコクピットランサーから出てくる。明日香が駆け寄った。 手には自販機で買ったと思われる紅茶の缶を持っている。 「飛鳥君、大丈夫? 紅茶買ったけど、飲める……?」 「今は無理……ごめん……」 「ううん、気にしないで」 明日香に、飛鳥がもう一度「ごめん」と謝る。 「……すみません、輝凰さん。少し眠ります……もう……限か……」 うな垂れる。輝凰がしっかりと飛鳥を支えた。 静かに寝息を立てる飛鳥。やれやれと輝凰が溜め息をつく。 「とりあえず運ぶか……」 「あ、じゃあ、空いてるベンチ探します」 「いや、運ぶのは病院だ」 「え?」 輝凰の言葉に、明日香がキョトンとする。 「ファイナルハーツなんてドライヴで戦ったんだ。あれで、何も支障がないのは変だからね。 だから、ついでに検査する。容赦なく」 「もう二度とドライヴができないって事はないですよね……?」 「ない。あるとすれば、一つだけだ」 そう言って飛鳥を運んで行く。 こうして、ついに『ダーク・コネクター』との戦いは終わりを迎えた。 次回予告 明日香「こんにちは、明日香です」 飛鳥 「どうも、飛鳥です」 明日香「ようやく、終わったね。『ダーク・コネクター』とのバトル」 飛鳥 「ああ。これで、もう大丈夫だと思うけど」 明日香「そう言えば、ファイナルハーツって、どうやって作ったの?」 飛鳥 「ノーコメント」 明日香「ノーコメントって……」 次回、CONNECT54.『叩きつけられた挑戦』 明日香「次回は新展開!」 飛鳥 「タイトルからして、次は『ソード・マスター』戦かよ……」 明日香「あ、凄いやる気ない?」 飛鳥 「あるわけないだろ……」(←まだ疲れが残ってる人) |
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