CONNECT54.『叩きつけられた挑戦』


 ファイナル・ロード――――『ダーク・コネクター』との最終決戦から、早くも一週間が過ぎた。
 自宅のインターホンが鳴る。それに反応した飛鳥だったが、応答に出たのは明日香だった。
「はい。……あ、今ドア開けるね」
 そう言って、玄関の方へ向かって行く。飛鳥は誰が来たのか予想した。
 あれから一週間。来るのは取材が4割、協会関係者、ファンが共に3割と言う過酷な状態だった。
 しかし、取材やファンには昔から雇っている家政婦や星川家――――明日香の家族が追い払ってくれていたが。
 明日香が訪問者を連れてリビングに入ってくる。
「飛鳥君、勇治君と亜美ちゃん、マリアさんが来たよ」
「やっほー♪ 大変だったらしいけど、無事?」
「まさか学校をサボるとはな。余計馬鹿になるぞ、飛鳥」
「お兄ちゃん、飛鳥さんはサボってたんじゃなくて、学校に行けなかったの!
 久々に聞く声。飛鳥が笑う。
「もう大丈夫だ。まぁ、まさか一週間も目が見えなくなるとは思ってなかったけど」
 そう、飛鳥は一週間も目が見えない状態だった。
 原因は一つ。ファイナルハーツと言うドライヴを操縦時、常時『鷹の瞳』を発動させていた事だけ。
 資質による代償は一気に現れ、視覚神経が重度の麻痺状態になったのだ。
「けど、視力は落ちてないから安心したよ。メガネとかコンタクトはしたくなかったからさ」
「そんな話はいい。率直に聞く、あのドライヴはいつ作った?」
 勇治が鋭い目で訊く。亜美が「お、お兄ちゃん」となだめていた。
 飛鳥が軽い溜め息をつき、話し始める。
「3年前だ。ファイナルハーツは、3年前の勇治とのバトルが終わって、1週間くらい経ってから作ったんだ」
「3年前? 飛鳥って、その頃初心者に近かったような……」
「初心者だ。3週間くらいでBランクだったけどな」
「いや、それ初心者って言わない気がする」
 そう言われて苦笑しつつも、話を続ける。
「それで、初めて自分だけでドライヴを作って、それを申請した時だったな……いきなり停電した
「停電だと?」
「確か、その日近くで事故が遭って、電線が切れたんだよ。それで停電になったはずだ。
 で、当然申請中にパソコンの電源も切れたわけで、その時のバグだろうな」
「……それが、ファイナルハーツって言うドライヴが完成した経緯?」
「ああ」
 頷く。マリアは蓮杖飛鳥と言う人間の恐ろしさを知った。
 当時、初心者だった飛鳥は、偶然とは言えファイナルハーツと言うドライヴを完成させた。
 いつもと変わらない表情の勇治だが、マリアと同じ事を思っているだろう。
 飛鳥が話を続ける。
「最初は驚いた。バグとは言え、未知数の機動性を持ったドライヴが完成していたんだからな。
 しかし、それはすぐに恐怖に変わった」
「恐怖?」
 明日香が首を傾げる。
「ああ。ほんの少し……グリップを本当に少しだけ動かしただけで、バトル・フィールドの端へ瞬時に移動。
 当然、そのまま壁に衝突した。その時、俺には分かった。このドライヴは危険過ぎると」
 バトル・フィールドの端から端へと一瞬で移動できる機動性。飛鳥は恐怖を持った。
 次の動作に移動する事など不可能。このドライヴの性能は、どんなに優れても扱えるわけがない。
「当時、『鷹の瞳』の自覚がなかったとは言え、このドライヴは絶対に操縦できないって俺は確信した」
「そう思ったなら、何で消さなかったの?」
 マリアが訊く。
「消して、もう一度作り直せば良かったじゃない」
「俺もそう思った。初期化して、もう一度最初から作ろうと思った。けれど、それはできなくなった」
「何でだ?」
「『ダーク・コネクター』の存在を知ったからだ」
 たった3ヶ月でSRランクになった飛鳥。その才能を『ダーク・コネクター』が見逃すはずが無かった。
「当時、俺はイブリスから直接スカウトされた。もちろん断ったけどな」
「じゃあ、もしOKしてたら敵になってたって事?」
「多分な。……話を戻すが、『ダーク・コネクター』の存在を知った俺は、初期化を止めた。
 いつかファイナルハーツを使う時が来るかもしれない。そう思ったからな。
 しかし、奴らがこのドライヴの存在を知ったらどうなるか分からない。
 だからこそ、セルハーツと言うドライヴにする事で隠した。明日香を巻き込む事になったけど」
「え、私?」
 明日香が首を傾げる。飛鳥が明日香の手元に置いてあったシルフィーナディアを手に取った。
「実は、明日香のドライヴにファイナルハーツを発動させる為の鍵を隠していたんだ」
「え!?」
 ファイナルハーツの存在を隠す為に、飛鳥は一つの細工を施した。
 ファイナルハーツ本体をセルハーツに作り直し、発動に必要な鍵を作った。
 そして、誰にも気づかれないようにその鍵を明日香のドライヴに隠す。
 それを聞いた明日香が驚く。
「もしかして、あの時変だったのって……!?」
「俺も良く分からないけど、多分シルフィーナディアが俺に伝えようとしていたんだと思う」
「つくづく、飛鳥が凄いと思うわ、私は。ほんと、何者?」
 マリアの言葉に、飛鳥が笑う。
「蓮杖飛鳥だ。ただ、偶然にもバグによって究極のドライヴを手にしてしまった、ただそれだけ」
究極のドライヴか。なぜ今まで使わなかった? あれを使えば楽勝だろう」」
 勇治が言う。
「使わないなら俺によこせ」
「誰がやるか、誰が。大体、『鷹の瞳』を持つ俺でこうなったんだ。お前じゃ絶対に無理だよ」
「チッ」
「舌打ちするな! それにファイナルハーツは接近戦に特化するからお前には向かないだろ!」
 そう言うと勇治が黙る。その一部始終を見ている亜美はただ苦笑するしかなかった。
 飛鳥がマリアに話を振る。
「それで、協会は何て?」
「そうそう、今日はその件で来たんだっけ」
「おい……」
「協会からは、特に何も言う事なしだって。でも、『マスター・コネクティブ』が一度来て欲しいとか」
「そうか。まぁ、色々と関係があるからな、今回は」
 少し背伸びをする。
「それじゃ、早いうちに行っておくか。俺も聞きたい事はあったからな」
「行って来い。俺はゲームで遊びながら待っててやる
「帰れよ! つか、人ん家のゲームで勝手に遊ぶな!」
 巧みにコントローラで操作する勇治にツッコミを入れる。
「お兄ちゃん、それは流石に厚かましいんじゃ……」
「気にするな。亜美、あれを見ろ」
 そう言って、テレビの上の棚を指差す。
「あれって、今人気のW○○!? 飛鳥さん持ってるんですか!?」
「それだけじゃないわね……P○3にXb○○360まであるし」
「飛鳥君、意外とゲーム好きだから……」
「W○○良いなぁ……スマッ○○ブ○○○ズXもあって……」
 羨ましそうな亜美。そんな彼女の姿を見た飛鳥が溜め息をついた。
「……遊んでみる?」
「良いんですか!? ありがとうございます、飛鳥さん!」
「スマ○ラか……ちゃんとス○○クは使えるんだろうな?」
「使えるよ……隠しキャラ含めて全部のキャラ使える」
「そうか。じゃあ早く行って来い」
「……ったく、1時間だけだからな」
 結局、最後に勝つのは勇治だった。



 1時間後。飛鳥はコネクト協会にいた。
「なるほど、バグによって完成したドライヴか……」
「はい。以上が、ファイナルハーツについて全てです」
「ありがとう。そして、『ダーク・コネクター』の件については、良くやってくれた」
「いえ、俺にも関係があった事ですから。それで、『マスター・コネクティブ』……」
 飛鳥が訊く。
「昔、どうして究極のドライヴなんてものを……?」
「簡単だ。『ドライヴ=レガリア』が何らかの方法で悪用された時の最終手段。その為に作られたのだ」
 ドライヴと言う携帯ツールが開発され、『ドライヴ=レガリア』が誕生した時、協会の人間は一つ恐れた。
 それが、『ドライヴ=レガリア』の悪用であり、『ドライヴ・マスター』の破壊も含まれていた。
 そこで開発されていたのが究極のドライヴと言われようとしていたドライヴだった。
「しかし、当時の開発者では未熟だったのか、試作段階で投入した結果、暴走する事になった」
「どうして試作段階で投入なんか……」
「実戦の数値を取りたいと言ってな。だが、あの時反対しておけば良かったのだ。
 そうすれば、君の母である蓮杖春香も死なずに済み、羽柴が復讐など考えずに済んだ……」
「…………」
「すまない。あの事件が起きなければ、君は母親を失う事もなかった……」
「謝らないでください。母さんは、ドライヴを守りたくて戦ったんですから」
 飛鳥がセルハーツを握り締める。
「それに昔の事を言っても、母さんが生き返るわけでもありませんから」
「『ソード・マスター』……いや、飛鳥君……」
「見ててください、『マスター・コネクティブ』。俺はいつか母さんと同じ場所に立ちます」
 決意の瞳。それは、間違いなく母・蓮杖春香と同じだと『マスター・コネクティブ』は思うのだった。



 一方、飛鳥宅。
「よし、また私の勝ち」
「マリアさん強いですね……あそこまでク○○を使いこなすなんて……」
「本当です。今度はピ○○ュウじゃなくてプ○○で行こうかな……」
「見た目でキャラ選んじゃダメよ。こう言うのは、攻撃力高いのでいかないと♪」
「…………」
 最下位の成績に納得が行かない勇治が黙る。そして文句を言い出した。
「ス○○クは使えん……」
「いや、それは勇治が下手だからでしょ」
「違う。飛鳥が全部悪い。あいつがス○○クを強くしていないからだ」
「あのね……確かに、飛鳥のキャラの使い方は凄いけど」
 マリアがキャラ別の成績表を見る。
「ア○クの使用率高過ぎ……ゲームでも接近戦主体よね、飛鳥って。と言うより、極めてない?」
「飛鳥君が言うには、ア○クで全部クリアできるって……」
「それは飛鳥だけでしょうね」



 飛鳥は協会を後にして、近くのショップに来ていた。
 それもサングラスとニットキャップで存在を隠して。新作のアクティブ・ウェポンを見る。
「どれも微妙だな……最近は射撃形が人気あるし、やっぱり自分で作った方が早いな……」
「相変わらずチェックしているようだね、飛鳥君?」
「やっておかないと落ち着かない性格ですから……って、顔隠してるのにバレてるのかよ……」
 肩を落とす。その姿を見た彼は軽く笑った。
「君の性格は分かっているからね。それに、レガリアの反応がすれば、すぐに気づくよ」
「レガリアの反応……だったら、まだ一般の人達にはバレてないみたいですね」
「そのようだね。少し話がしたいんだけど、良いかな?」
「構いませんよ。じゃあ、場所を変えますか、ゴウさん」
 飛鳥の言葉に彼――――『ディフェンド・キング』のゴウは頷いた。



 そして再び飛鳥宅。
「ほい、これで100連勝♪」
「マリアさんのク○○強過ぎな気が……」
「うぅ……落としたのお兄ちゃんのフ○○コだけなんて……」
「また俺が最下位……」
 勇治、現在100連敗。もちろん、全て最下位
「今度はウ○フで行くか……」
「こだわるわね、そっち方面……まぁ、私はク○○で頑張るけど♪」
「マリアさんもク○○にこだわってるような……じゃあ、私はピ○○姫で」
「お兄ちゃんがウ○フでマリアさんはク○○、明日香さんはピ○○姫……うーん、誰使おうかなぁ……」
 そう言いつつも、ピ○○ュウとプ○○を行き来している亜美だが
 やや悩みつつも、決断する。
「今度はポケ○○ト○○ナーで! ゼニガメで頑張ります!」
「じゃあ、あと10戦くらいやりますか♪」



 人目につかない、バトル・フィールドのバトルが見れる場所。そこで飛鳥とゴウは一つのバトルを見ていた。
 子供同士によるバトル。ゴウが穏やかな目で見ながら言う。
「もう目の方は大丈夫なのかい?」
「はい。もう普通に見えますし、バトルもできます」
「そうか。それは良かった……」
 ゴウが天井を見る。
「『ダーク・コネクター』が動き出して7年……ようやく、決着がつけた」
「そうですね。結構、長かったですね」
「ああ。本心は僕が『ファイナル・ロード』を倒したかったけど、これで心残りはなくなったよ」
「心残り?」
 ゴウを見る。すると、ゴウは躊躇いもなくあっさりと言った。
「コネクターを引退する」
「引退!? 引退って……どうしてですか!?」
 飛鳥が訊く。ゴウがゆっくりと頷いて答えた。
「前々から考えていたんだ。そろそろ、潮時だろうとね」
「潮時……何を言ってるんですか!? まだゴウさんは……」
「十分潮時だよ。コネクターになって10年も経つからね。本当ならとっくの昔に引退してもおかしくない。
 ただ偶然とは言え、僕が『ディフェンド・キング』になった時から『ダーク・コネクター』が動き出した。
 彼らとの決着をつけるまでは引退しないと決めていたけど、もうそれも終わったからね」
「そんな……」
 ゴウの引退。それは、あまりにも意外だった。
 確かにゴウは、7年間も『ディフェンド・キング』として、誰よりも長くいた人だ。
 けれど、飛鳥はまだ引退して欲しくないと思った。
 そんな飛鳥に対し、ゴウが話を続ける。
「もう前から後継者はいたからね、晃鉄と言う頼もしい後継者が。安心して王の座を託す事だってできる」
「…………」
「しかし、晃鉄とのバトルを最後に引退する気はない。晃鉄には、SRと言う強豪達と戦ってもらう」
「……それって、バトルしないで引退するって事ですか……?」
「いや、それは違うよ」
 ゴウが飛鳥の瞳を見る。強い意志に溢れた、澄み切った瞳。
 輝凰が後継者として選んだ理由が分かる、とても良い瞳。
「僕は……『ディフェンド・キング』として、君とバトルがしたい」
「え……!?」
 飛鳥が目を見開く。
「君が『ソード・マスター』になった時から、僕は君と全力のバトルをしたいと思っていた。
 だからこそ、最後のバトルは君と迎えたい。本当の最強の座を賭けたバトルをね」
「…………」
 ゴウがドライヴを構え、表情が変わる。
「飛鳥君……いや、『ソード・マスター』蓮杖飛鳥。真の最強の座を賭けて、俺とバトルしろ」
「ゴウさん……」
 この時、飛鳥は動揺を全く隠せなかった。



 一方、またしても飛鳥宅。
「これで150連勝♪ やっぱりク○○最高だわ〜♪」(←色んな意味でク○○を極めた空の女王)
「飛鳥君が強くしたア○クで勝てないなんて……やっぱり私がダメかな……」(←ゲームは苦手なヒロイン)
「うぅ〜……またお兄ちゃんしか落とせなかったです……」(←兄よりゲームは上手な妹)
「連続最下位……この俺が……」(←流石にショックな馬鹿)
 まだ懲りずにゲームをしていた。



次回予告

 明日香「こんにちは、明日香です」
 優  「やっほ〜、先代『マグナム・カイザー』の優です」
 郁美 「同じく、先代『ストーム・クラウン』の郁美です」
 輝凰 「さらに、先代『ソード・マスター』の輝凰です」
 明日香「え、あの……」
 優  「それにしても、ゴウが引退ってどう言う事?」
 輝凰 「俺に訊くな。訊くならゴウの奴に訊け」
 郁美 「飛鳥とバトルなんて、何を考えているのかしら?」
 明日香「あの……」

  次回、CONNECT55.『あなたとリーダーは戦わせない!』

 輝凰 「次回は、やっぱり彼女が絡んでくると」
 郁美 「彼女、ゴウの事になると熱くなるものね」
 優  「それにしても、次回予告するのって、やっぱり楽しいね〜」
 郁美 「そうね。普段の出番が少なくても登場できるものね」
 輝凰 「最後に決めるか。次回もドライヴ・コネクト! 飛鳥、お前はどうする気だ?」
 明日香「あの……私の担当……」(←出番持っていかれました)



<< CONNECT53.     CONNECT55. >>     戻る     トップへ





SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送