CONNECT55.『あなたとリーダーは戦わせない!』


 ゴウからバトルを申し込まれて三日。飛鳥はパソコンを前にして、アクティブ・ウェポンを作っていた。
 しかし、集中できない。途中で止めて、溜め息をつく。
「……真の最強の座を賭けて、か……」
 ゴウの言葉を思い出す。そして、ゴウボーグ=レンダリムと言うコネクターの事を考えた。
 七年も『ディフェンド・キング』として君臨し、最強チーム『ランドライザー・コマンド』を作った男。
 偉大とも言える相手とのバトル。飛鳥は受けるかどうか迷っていた。
「勝つとか負けるって問題じゃない……ゴウさんは俺にとって……」
 髪を手でくしゃくしゃに掻き、そのままベッドに仰向けになる。
「……どうすれば良いんだよ……くそっ」



 一方、珍しくも喫茶店ではなく普通のファミリーレストラン。そこでゴウと優は食事を共にしていた。
「はい、預かってた物」
 食事を終えた後で優がゴウの前にSDカードを渡す。それをゴウは受け取った。
 飛鳥にバトルを申し込んで三日。まだ、飛鳥からの返答はない。
「ありがとう、優。これで準備が整ったよ」
「で、何であすあすとバトルなわけ? 後継者とのバトルをしないってどう言う事?」
 突然、「君に預けていた物を返して欲しい」と言われ、優はゴウに質問を続けた。
 そしてゴウは言った。「引退前に飛鳥君とバトルをする」と。
「ゴウ、英雄の如き獅子王に戻るつもり?」
「…………」
 ゴウが黙る。
「私が預かってた……と言うより、私が作ったあれを使うって事は、それを意味するんでしょ?」
「……ああ。僕は、あの頃の僕に戻る。そして、飛鳥君とバトルをするんだ」
「だから、何であすあすなのよ? きーの後継者だけど、あの子は――――」
「僕や優、そして郁美の教えを受けた唯一のコネクターだ。だからこそ、バトルするんだよ」
 SDカードをドライヴに挿入し、プラディ・ラ・グーンに読み込ませる。
 これで準備は完了。あとは、飛鳥からの返事を待つだけ。
 スッと席を立ち上がり、優に向かって言う。
「僕は見極めたいんだ、輝凰を受け継いだ彼を。真の最強の称号を持つ者なのかを」



 翌日。ショップ内のアクティブ・ウェポン売り場。そこで飛鳥は明日香と一緒にいた。
 明日香が色々と見て回りながら言う。
「飛鳥君、これとかシルフィーナディアに良いんじゃないかな?」
「うん……」
「あ、でもこんなアクティブ・ウェポン良いなぁ……」
「うん……」
「こっちもアクティブ・ウェポンも使ってみたいなぁ……ねぇ、飛鳥君はどう思う?」
「うん……」
 うわの空だった。相槌を打つだけで、飛鳥はドライヴを握り締めたまま悩んだ顔をしている。
「……飛鳥君、何かあったの?」
「…………」
「私で良ければ、話を聞く位できるよ……?」
「…………」
「『ソード・マスター』蓮杖飛鳥!」
 突然名前を呼ばれる。ショップ内の目線が一気に飛鳥達の方へと向けられた。
 やや短めのセミロングの黒髪が目立つ少女だ。飛鳥が今一番会いたくない相手。
 ゴウのチーム『ランドライザー・コマンド』のサブリーダー、鳴澤紅葉。
 怒りに満ちた瞳で飛鳥を睨み、そして歩み寄ってくる。
「『ソード・マスター』蓮杖飛鳥! リーダーと戦うと言うのは本当ですね!?」
「…………」
 最初からその話からだった。飛鳥が黙る。
「本当なんですね……」
「……紅葉には関係ないだろ」
「あります。自分は彼……『ディフェンド・キング』ゴウボーグ=レンダリムの左腕、鳴澤紅葉ですから」
 ドライヴを取り出す。
「自分とバトルして頂きます! あなたとリーダーは戦わせない! あなたは自分が倒します!」
 バトルを申し込まれる。溜め息をつきつつも、飛鳥は断った。
「断る。俺はSRのトップとしかバトルはしない。それは、お前だっているだろ」
「そうやって逃げるのですか?」
「何……!?」
 飛鳥が紅葉を睨む。
「『ソード・マスター』が、たかがAランクの相手を前に逃げるのですか?」
「…………」
「あなたではリーダーには勝てません。自分とのバトルに逃げるあなたでは」
「鳴澤さん、それは言い過ぎだよ! 飛鳥君は……」
「良い」
 飛鳥が明日香を止める。そして、ポケットからドライヴを取り出した。
 紅葉の前に出し、「分かった」と返事をした。
「ただし、ハンデなし……正真正銘の真剣勝負だ。俺が負けたら、特例で『ソード・マスター』にさせてやる」
「飛鳥君!?」
「だが、分かってるんだろうな、紅葉。『ソード・マスター』としての俺は、容赦なく強いぞ」
「望むところです。あなたを倒して、リーダーと同じ場所立ちます!」

 ――――それじゃあ、はじめましょうかYeah〜!

 バトル・フィールド中心に穴が開き、そこからなぜかカウボーイのような格好をした女性が姿を見せる
「ただ今より、公式バトルを行いマ〜ス☆ 審判はエミリー☆荻原デース☆」
 新たな審判登場。その姿を見た飛鳥が肩を落とした。
「……何やってんですか、慧美理さん。そんな格好で……」
「ノーノー! エミリーね、エミリー!」
「伸ばしただけじゃん……」
「……飛鳥君、知り合い?」
 わずかだが、嫉妬のオーラを漂わせながら明日香が訊く。
「……勇治のお姉さんだよ。荻原慧美理(おぎはら えみり)さん、まさか審判になってたなんて……」
「……勇治君、お姉さんいたんだ……」
「いたよ。まぁ、俺も何度かしか会った事ないけど……」
 しかし、なぜ審判になっているのか知る前に、エミリー☆荻原がバトルについて説明する。
「バトル内容はシング〜ル♪ 相手を倒すか降参言わせたら勝ちネー! じゃあ、始めまShow☆」
「説明早……久々に思ったけど、良いのか審判団こんなんで……」
 そう言いつつ、コクピットランサーへと移動する。紅葉も同じく移動した。
 セルハーツを取り出し、飛鳥が軽く深呼吸する。
「……そう言えば、バトルは久々なんだよな」
 一週間も目が見えなくなって、色々と苦労した事を思い出す。
「行くぞ、セルハーツ……ドライヴ・コネクト!」



 バトル・フィールドに構築される二体のドライヴ、飛鳥のセルハーツと紅葉のクリムゾン・ティアーズ。
 飛鳥が周辺を見渡し、バトル・フィールドを確認する。
 何もない、ただ床だけが存在するバトル・フィールド。
「これなら、障害物とかないからフェアだな」
 そう言いながら、クリムゾン・ティアーズの方を見る。紅葉はすでに構えていた。
『今度こそ、あなたを倒して見せます。ランドライザー・コマンドがサブリーダー、鳴澤紅葉……参ります』
「手加減はしないぞ、紅葉。『ソード・マスター』としての俺の強さ、思う存分見せてやる」
 飛鳥も構える。エミリー☆荻原が腕を振り上げる。
「早速コネクト・バトル、ファイトYeah〜!」
『先手必勝、全力でいきます!』
 合図と同時に、クリムゾン・ティアーズがランサーを構えて突撃する。
『赤光!』
 繰り出される高速の突き。セルハーツはプラズマセイバーで受け流した。
 距離を取り、ゴッドランチャーを構える。
「くらえ!」
 撃つ。放たれたビームをクリムゾン・ティアーズは避けた。
『ゴッドランチャーは確かに威力が高い武器です。しかし、私には当たりません!』
 シールドをセルハーツへと投げる。
『紅華!』
 左腕からミサイルを一斉に発射し爆発させて、セルハーツの動きを封じる――――事はできなかった。
 爆煙に包まれているのは、ゴッドランチャーのみ。
 紅葉が目を見開く。セルハーツは上空にいた。プラズマセイバーを構えている。
「エアブレード・アトモスフィア!」
 振るう。無数の風の飛礫が上空からクリムゾン・ティアーズへと降り注がれた。
 左腕に戻ったシールドで出来るだけ防御し、直撃を防ぐ。
『直撃は防ぎました。今度は、こちらの番です!』
 ランサーを構え、地上に降りたセルハーツに高速の突きを繰り出す。
 それを飛鳥は見切り、必要最低限の動きで回避した――――が、紅葉の攻撃はそれで終わっていなかった。
『はぁぁぁっ!』
 連続でランサーによる突きを繰り出す。目を見開きつつも、飛鳥がプラズマセイバーで全て受け流す。
 その瞬間、紅葉が笑みを浮かべる。その対応を待っていたかのように。
『あなたの負けです、ソード・マスター! 紅牙っ!』
 連続の突きの中から、一つだけ高速の突きが繰り出された。紅葉の誇る技の連携が生み出す技『紅牙』。
 確実に捉えたと思う紅葉。その時、飛鳥の瞳が変わった。
 鋭くなる瞳が目の前の”世界”を変える。セルハーツが迫る高速の突きを寸前で回避する。
『――――紅牙を避けた!?』
「ミラージュ・ブレイドッ!」
 目を見開く紅葉。その瞬間を飛鳥が捉えた。セルハーツの斬撃がクリムゾン・ティアーズを襲う。
 決着の瞬間。それは、とても呆気なかった。
「ウィナー、蓮杖飛鳥〜! コングラッチュレイション☆」
 最後の最後まで、審判のテンションは高かった。



 バトル終了。コクピットランサーから出た飛鳥は、拳を強く握った。
 紅葉もコクピットランサーから出てくる。そして、飛鳥に言い寄った。
「……今回は自分の負けです。しかし、次こそは勝ちます」
「それは無理だ。お前じゃ、俺には勝てない。ゴウさんから『強き心』を教わった俺にはな」
 その言葉に、紅葉が目を見開く。
「リーダーに……!? 『ソード・マスター』、あなたはリーダーの何なんですか!?」
「一度、『ランドライザー・コマンド』のエースとしてスカウトされたコネクター。
 そして、どんな状況でも崩れない心を教えてもらったコネクターだ」
「チームのエースとして……!? なぜ、断ったんですか!?」
 紅葉の質問に、飛鳥がふっと笑みを浮かべる。
「俺は最強のコネクターを目指していた。だから、チームに入るのを断った」
 ルール上、コンビまたはチームを組むコネクターはシングルのトーナメントに出場できない。
 だから、当時の飛鳥は断った。自分が憧れたコネクターと同じ場所に立つ為にも。
「今は成り行きでチームに入っているけど、いつかはシングルに戻る」
 セルハーツの入ったドライヴを構える。
「俺にとってあの人は……ゴウさんは憧れで、兄のような人だ」
「……では、リーダーとのバトルは……」
「受けるさ。最初から、迷う必要なんてなかったんだ」
 瞳を紅葉からその後ろへと向ける。その先にゴウがいた。
 紅葉が驚く。飛鳥がドライヴをゴウへと向けた。
「ゴウさん……いや、『ディフェンド・キング』ゴウボーグ=レンダリム!
 あなたとのバトル、受けて立ちます。真の最強の座を賭けて、あなたに勝つ!」

 この時、ゴウは笑顔を見せつつも、その瞳は獣の如く鋭きを持っていた。



次回予告

 明日香「こんにちは、明日香です」
 紅葉 「『ランドライザー・コマンド』のサブリーダー、鳴澤紅葉です」
 明日香「飛鳥君、ゴウさんとのバトル受けるみたいだね」
 紅葉 「悔しいですが、そのようですね」
 明日香「やっぱり納得してない?」
 紅葉 「当然です」
 明日香「あ、あはは……」

  次回、CONNECT56.『天性秘めし鷹と英雄の如き獅子王』

 明日香「次回はいよいよ、飛鳥君とゴウさんの超バトル!? 紅葉さんはどっちが勝つと思う?」
 紅葉 「当然、リーダーです!」
 明日香「だ、だよね……」(←流石に「飛鳥が勝つと思う」とは言えなかったヒロイン)



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