夜7時前。ようやく、飛鳥は自宅に帰り着いた。 理由は、自分の作るチームに緋月歩、近衛瑞樹以外のコネクターにもチームに誘っていたからだ。 しかし、結果は惨敗。良い返事はない。 「ただいま」 少し疲れた口調で玄関を開けながら言う。すると、リビングからすぐに少女が走り寄ってきた。 「おにーたん!」と飛鳥に抱きつく。 「おかえり!」 「ただいま、美緒。迎えに行けなくてごめんな」 そう言って頭を撫でる。美緒は首を横に大きく振った。 「おねーたんいたから良ーよ」 「そっか。お姉ちゃんと遊んでいたんだ?」 「うん!」 美緒がたくさん話をする。飛鳥は黙って聞いていた。 そして、明日香がリビングから出てきた。 「おかえり、飛鳥君」 「ただいま。悪いな、美緒の迎え頼んで」 「ううん、今日もメンバー集めしてたの?」 「ああ。それ以外もあるけど」 夜10時頃。美緒を寝かしつけてから、飛鳥はセルハーツをパソコンに接続して調整を行う。 「これで、イクサ・グレイルの修理は完了」 「『レア・ウェポン』持ってから、結構修理とかしてるね?」 まだ一緒にいる明日香にそう訊かれる。明日は休みと言う事で、泊まるらしい。 飛鳥が頷く。 「あの技……ライトニング・ストライクはイクサ・グレイルを壊す技だからね」 本来なら専用の矢を作れば良いのだろうが、飛鳥はそれをしなかった。 作れば、セルハーツに装備する必要もあるし、それにより機動性の影響も出てくる。 だからこそ、あえて作らないで、今のままで行こうと決めたのだ。 「でも、お陰で明日香とのコンビで使える攻撃の幅が増えたけどね」 「もう半年経つんだよね、飛鳥君とコンビを組む事になって……」 半年前、成り行きで加入させられていた『チーム・エンジェル』から抜けて、二人はコンビを組んだ。 飛鳥がチームを作るまでの間だけのコンビだが、明日香の実力向上により、良い成績を出している。 「それで、メンバーは集まりそう?」 「正直、難しい。シングルかコンビでやってる奴って、意外と少ない」 「じゃあ、光哉君と紡君、沙由華ちゃんを誘ったらどうかな?」 そう、明日香が言う。飛鳥は首を横に振った。 「光哉達を誘う気はない。確かに、あいつらを加えればチームはできるけど、親しい人間で作りたくない」 確かに、あの三人はチームに誘えば加わるだろう。特に光哉と紡は戦力にもなる。 しかし、親しい人間で作ると強いチームにはならない。そう、飛鳥は思っている。 「あいつらは、あいつらでチームを作ったりした方が良い」 「そっか……」 「一応、目星を付けた奴らはいるけど、微妙なんだよな。俺の事、敵視してるし」 「誰?」 そう訊かれ、すぐに返答する。 「元『ダーク・コネクター』幹部の緋月歩と近衛瑞樹って言う二人」 「『ダーク・コネクター』幹部……!? だ、大丈夫なの……?」 「大丈夫。あの二人は、ちゃんとしたコネクターになってる。だから、誘った」 「でも、その二人が入ったとして、チームとしては大丈夫なの?」 明日香が不安に思う。しかし、飛鳥は頷いた。 「心配ないよ。あの二人なら、立派なメンバーとして迎えられる。まだランクと実力はないけど」 「で、でも……」 「俺が作ろうとしているのは、ただ最強ってわけじゃない。誰か一人でも欠けたらいけない。そんなチームなんだ。 少なくとも俺は、あの二人に期待しているんだ。俺が作るチームに必要なメンバーだと思ってる」 「……そっか。飛鳥君がそう言うなら」 飛鳥は考えてチームを作っている。そう分かった明日香は、もう何も言わないのだった。 翌日。近くのショップで、今では日常と化してしまったメンバー集めを行う。 しかし、成果はない。 「全然集まらないな……どうするかな……」 そう言いながら、ベンチに腰掛けて自販機で買ったコーヒーを一口飲む。 「こうもメンバーが集まらないとなると、残っているのはあいつとかになるな……」 「苦戦しているわね」 後ろから声を掛けられる。飛鳥は後ろを振り返った。 落ち着きのある、美人で大人の女性。飛鳥にとって、自分の母の事を知っている人間の一人。 「……紗雪さん」 「隆也と美雪から聞いていたけれど、大変そうね」 そう、母と親しかった友人・嵩凪紗雪。飛鳥が軽く頭を下げて挨拶する。 「こんにちは。今日は隆也君と美雪ちゃんに教える日じゃ……」 「今日は、飛鳥君に話があって来たのよ」 「話?」 「ええ。隆也と美雪にも関係がある、大切な話」 緋月歩は、心ここにあらず、だった。 喫茶店で注文したアイスコーヒーを一口も飲まないまま、ぼーっとしている。 「歩! 歩ってば!」 彼の幼なじみである近衛瑞樹が、彼の前で手を振る。しかし、反応はない。 溜め息をつきつつ、瑞樹が歩の耳元で何かを言う。 「蓮杖飛鳥が近くにいるけど」 「――――!?」 瞬間、歩が立ち上がる。そして、辺りを見渡した。 しかし、瑞樹が言う蓮杖飛鳥の姿はどこにもない。その様子を見て、瑞樹がさらに溜め息をつく。 「まだ迷ってるの? 蓮杖飛鳥のスカウトを受けるか受けないかで」 「……当たり前だろ!? 蓮杖飛鳥は、敵だったんだぞ!?」 「向こうからしたら、眼中に入ってなかったけどね?」 「う……」 痛い所を突かれる。歩がアイスコーヒーを飲んで訊く。 「瑞樹はどうしようって思ってるんだよ?」 「私は入ろうかなって思ってる」 「え……? ま、マジ!?」 「うん。歩とコンビ組んで実力上げるより、チームに入った方がもっと実力がつくと思うから」 このまま、二人で試行錯誤するより、チームで様々な経験を積んだ方が良い。 そう、瑞樹は思った。自分の為にも、歩の為にも。 「確かに、一時は敵として戦ったけど、今はチームとして一緒に戦って欲しいって言ってくれた。 それって、少しでも私と歩を認めてくれてるからだと思う」 「けど、瑞樹……」 「それに、私には無理だけど、蓮杖飛鳥なら歩をもっと強くしてくれると思うから」 「…………」 歩が黙る。瑞穂の言うとおりだからだ。 確かに、今のままより、自分達より実力のあるコネクターと一緒にバトルした方が良い。 しかし、自分達をチームに誘ってきた相手が相手だ。 「……蓮杖飛鳥のチームに入るなんて、やっぱ……」 「歩……」 「レザリオンを解散する!?」 突然聞こえた声。壁際の方からだ。 同時に振り向き、二人がその姿を確認する。蓮杖飛鳥だった。 歩が目を見開く。 「瑞樹、本当にいたのかよ!?」 「え、あれは嘘のつもりだったんだけど……」 まさか、本人がこんな近くにいるとは思わなかった。それも彼よりも年上と思われる美人と一緒に。 「……誰だよ、あの女の人?」 「知らないわよ。母親……じゃないわよね」 「まさか、○○○○!?」 「んなわけないでしょ。レザリオンがどうとか言っていたけど……」 蓮杖飛鳥が女性と何を話しているのかを話し合う二人。 そんな時、蓮杖飛鳥がドライヴを取り出し、何かを確認して席を立ち、そのままどこかへ走って行った。 その姿を見て、二人も喫茶店を後にする。 時は戻り、飛鳥は紗雪と共に喫茶店へ向かった。 自分の事を周りに知られないようにする為、ワザと壁際の席に座る。 お互いに注文したところで、紗雪が話し始めた。 「話は二つ。まず、雷聖弓だけれど、どう?」 「命中率はともかく、心強い『レア・ウェポン』です。それに、母さんが使ってた物だから、愛着もあります」 そう、飛鳥が手に入れた『レア・ウェポン』雷聖弓は、紗雪から受け取った物だった。 母が紗雪に「秘密兵器」と言って預けていたものらしいが、その意味は分からない。 しかし、母が残していたものだからか、飛鳥にとっては大切で最高の武器でもある。 「何で母さんが秘密兵器って言っていたのかは、まだ良く分かっていませんけど……」 「春香は、そう言った事はあまり話さなかったものね」 「……でも、教えてもらって使ってみたライトニング・ストライクじゃないんですよね?」 雷聖弓が生み出す雷の矢ではなく、実体剣のように精錬された矢で射る技ライトニング・ストライク。 あれのお陰で半端ない強さを誇った強敵を倒したが、それは母の言う秘密兵器ではなかったと言う。 「分かっているのは、雷聖弓だけじゃ成り立たない事。 そして、春香は飛鳥君が使う必要がある時に使う為の力。そう言っていたわ」 「俺が使う必要がある時に……母さんは、どうして俺にそんな……」 「あなたが、春香にとって掛け替えのない息子だから」 掛け替えのない息子。それだけで、母は自分の為に『レア・ウェポン』を残していた。 飛鳥が「母さん」と呟きながら、ドライヴを握り締める。 そんな飛鳥を優しく見守りながら、紗雪が話を続ける。 「そして、ここからが本題。飛鳥君には関係の事だけれど……レザリオンを解散する事にしたわ」 「え……!?」 突然の言葉。飛鳥が目を見開きながらも繰り返す。 「レザリオンを解散する!?」 「ええ。メンバーは隆也と美雪の二人だけだし、まだ二人とも子供だから」 「そんな……だって、レザリオンは……」 「誰もが認めた最強にして、伝説のチーム。でも、今はリーダーも不在でチームとしては存在できないチーム」 紗雪の子であり、レザリオンのリーダーだった人間の子でもある隆也と美雪。 しかし、二人にはまだリーダーとしてレザリオンを継ぐのは早過ぎる。 だからこそ、解散を決めた。そう、紗雪が言う。 「私としては、隆也があなたくらいの年齢にまでなれば、再び結成しても良いと思ってるわ」 「…………」 飛鳥は何も言えなかった。自分がレザリオンのメンバーではないからだ。 それに、同じ考えだった。確かに、まだあの二人の子供にレザリオンは荷が重い。 しかし、解散はしてほしくない。 下唇をキュッと噛み、飛鳥が何かを決意したかのように紗雪の方を見る。 「紗雪さん、俺……――――!」 その時、ドライヴの着信音が鳴った。メールだ。内容を確認する。 「美雪ちゃんから? ……何だって……!?」 席を立つ。そして、紗雪が訊いた。 「二人に何かあったの?」 「分かりません。とりあえず行ってみます。それと……」 「それと?」 「レザリオンは解散しないでください。今は、俺が覚悟を決めますから」 そして、そのまま立ち去る。飛鳥の言葉を聞いた紗雪は可笑しそうに笑みを浮かべた。 同時刻。少年と少女はショップ内で奇妙な連中に絡まれていた。 否、奇妙と言うよりは、この辺では色んな意味で有名なチームの黒服達。 「良いじゃないか、ただバトルするだけなんだからよ?」 「で、でも……」 「お、お母さんが良いって言わないと……」 「良いじゃん、良いじゃん。お母さんには内緒でね?」 断ってもしつこく言ってくる黒服連中。少年と少女――――隆也と美雪の二人は今にも泣きそうだった。 いや、すでに美雪は目に涙を浮かべている。ドライヴを強く握って、どうにか耐えながら。 黒服連中は退こうとしない。 「ほらほら、とっととバトルしないと、お兄さん達も怒っちゃうよ?」 「……子供相手に馬鹿な事やってんじゃねぇよ、おい」 その時、駆けつけた飛鳥が呆れながら言う。隆也と美雪がすぐに飛鳥の元へ走った。 飛鳥の脚にしっかり抱きつく二人。そんな二人の頭を飛鳥は撫でる。 「怖かったろ、二人とも。でも、もう大丈夫だからね」 「そ、『ソード・マスター』!? 何でこんなところに!?」 「落ち着け! 俺らはまだ違法なんてやってねぇ!」 「そうそう、俺達はバトルしようとしただけなんだからよ!」 飛鳥の姿を見て、途端に動揺する黒服連中。飛鳥の鋭い瞳が彼らを睨む。 「小さい子相手にバトル申し込むなんて、とことん弱くなったな、骸骨騎士団も」 「違う! 俺達は柏木影二様が結成したチーム、『スカルナイツ』だ!」 「そんなのはどっちでも良い。この子達とバトルは絶対にさせない」 「ふざけんな! 天下の『ソード・マスター』様には関係ねぇだろ!」 「関係ある。俺は、この子達の……チーム『レザリオン』のリーダー、蓮杖飛鳥だ!」 飛鳥の突然の発言。それを聞いた隆也と美雪がキョトンとした顔で飛鳥を見る。 「飛鳥にーちゃん……?」 「驚かせてごめんね。今日から、二人のチームリーダーになる事にしたんだよ」 そう言って、飛鳥がドライヴを取り出し、『スカルナイツ』の黒服メンバーに突き向ける。 「バトルなら俺が受けてやる。俺一人でも、十分だからな」 「何だと!?」 「俺らを馬鹿にしてるのか、おい! 俺らはこれでも、Aランクだぞ!」 「Aランクか……俺からすれば雑魚同然だな」 明らかな挑発だった。しかし、飛鳥は本気だった。 そんな飛鳥の前に、二人――――緋月歩と近衛瑞樹が立って、同じようにドライヴを構える。 「ちょっと待て! バトルするなら俺達もだ!」 「もちろん! 私達もチームのメンバーなんだから!」 「緋月に近衛……。って、お前ら喫茶店にいた時から後をつけていただろ」 飛鳥の鋭い言葉に、二人がビクッと反応する。最初から気づかれていたらしい。 「でも、チームに入る事を決めてくれた事には感謝する。まずは、こいつらを片付けるぞ、歩、瑞樹!」 「おう!」 「はい! って、名前……?」 「チームだからな」 そう言って、『スカルナイツ』の黒服達にバトルを申し込む――――と思ったら、そこには誰もいなかった。 流石、逃げ足だけは天下一品を誇るチームである。 バトルができなくて、歩が舌打ちする。 「チッ、チームのデビュー戦だってのに……」 「いや、デビュー戦はまだ先の話だ。メンバーを揃える必要があるからな」 チーム『レザリオン』、チームリーダー・蓮杖飛鳥。 メンバー・緋月歩、近衛瑞樹、嵩凪隆也、嵩凪美雪。 これで、とりあえず飛鳥のチームが結成した。 次回予告 明日香「飛鳥君が結成したチーム名は『レザリオン』! ……あれ、これって結成なの?」 飛鳥 「結成と言うよりは襲名。だから、サブタイトルもそうなってるだろ?」 明日香「あ、言われてみたら……」 飛鳥 「ともかく、これでチームも出来た。あとは、実力を持ったコネクターをスカウトだな」 明日香「それより、勝手にリーダー名乗って大丈夫なの?」 飛鳥 「……大丈夫……だと思う」(←流石に今回は自信がない) 次回、CONNECT03.『レザリオンのメンバー』 飛鳥 「『レザリオン』は今年、どのチームにも負けない最強のチームになる。俺と皆の力で」 明日香「次回はメンバー集め! ……まだやるの?」 飛鳥 「……流石にこの面子じゃ厳しいだろ」 |
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