CONNECT03.『レザリオンのメンバー』


 チーム『レザリオン』のリーダーを襲名して、飛鳥はすぐに紗雪に謝った。
「ごめんなさい。勢いで、それも相応しくない俺がリーダーを襲名して……」
 いくら伝説と言われたチームを解散して欲しくないとは言え、あれは勝手過ぎた。
 そう思って頭を下げる飛鳥だが、紗雪は首を横に振った。
「気にしなくて良いわよ。それに、飛鳥君は『レザリオン』に相応しいのよ」
「え?」
「黙っていたけれど、春香は初代『レザリオン』のメンバーなのよ」
「母さんが!?」
 驚く。紗雪が話を続ける。
「春香は、初代『レザリオン』を築いた人の考えを誰よりも良いと思っていたの」
「初代のリーダー? それって……」
「ええ、あの人の兄。飛鳥君は、三代目になるわね」
「それで、母さんはどうして『レザリオン』に?」
「初代は、『守るべきモノを守る、決して悪を許さないチーム』を目指していた。
 それが、春香にとっては素晴らしい考えって思ったのよ。だから、『レザリオン』に加わったの」
 紗雪が言うには、初代『レザリオン』のリーダーは正義感溢れる人物だったらしく、
 これから起こりうる違法者を倒す為に『レザリオン』を結成した。
「今は、村雲さんが協会を使って、飛鳥君達『フォース・コネクター』に任せているけれど、
 当時は『レザリオン』が違法コネクターを裁いていたのよ。自主的に」
「…………」
「『フォース・コネクター』全員がメンバーになったのも、皆が同じ意見だったから。
 だから、『レザリオン』は結成されたの」
「違法コネクターを裁く為のチーム……そうだったんだ……」
「そう。今は、普通のチームと同じだけれど」
 そして、紗雪が「特例処置」と言って、飛鳥に告げる。
「蓮杖飛鳥、本日を持って、あなたを『レザリオン』の新リーダーとします」
「……!」
「『レザリオン』の証を、あなたに」
 ゴールドメッキで施されたメモリースティックを渡される。
「これは?」
「『レザリオン』のリーダーの証、レザリオン・エンブレム
「レザリオン・エンブレム……」
「特殊な力もない、ただの飾りよ。でも、これがないと、『レザリオン』のリーダーは名乗れないの」
 紗雪が「装備しておいて」と飛鳥に言う。飛鳥は頷いた。
 ドライヴにメモリースティックを差込み、セルハーツに装備させる。
「チームをどんな風にするかは、飛鳥君に任せるわ」
「良いんですか?」
「ええ。『レザリオン』が再び最強のチームになれるよう、頑張って」
「……はい!」



 その日の夜。飛鳥は早速パソコンの前に釘付けとなった。
「チームを結成した今、俺がやるべき事はメンバーと相応の力」
 いくつもの画面を出し、全て同時にアクティブ・ウェポンを作る
 こんな時、先代『マグナム・カイザー』によって鍛えられた技術が役立って便利だった。
「問題は歩と瑞樹だな。あの二人を、どう育てていくか……」
 明日香に関しては問題なし。残る問題は、新メンバーとなった歩と瑞樹。
 特に歩は、予想通りの強さだったら鍛え直す必要がある。
「けど、歩と瑞樹に教えるとなると、隆也君と美雪ちゃんをどうするか……」
 流石に4人同時に教える事は難しい。4人が同じ強さならともかく。
「頼んでみるか、一応。メンバーに加わってくれると良いんだけど」
 そう言いながらも、次々とアクティブ・ウェポンを開発していく。



 それから数日後。ショップで飛鳥は明日香に新型ドライヴのテストをさせていた。
 コクピットランサーから降りた明日香が、ふうっと息を吐く。
「凄いね。今までのシルフィーナディアと違って、防御も凄いし、攻撃も上がってるし……」
「新型アクティブ・ウェポンに装備を変えてるし、性能も前より上げているからな」
「名前はシルフィーナディアのままで良いの?」
「うん。正式名称は、シルフィーナディア・バージョンUってなってるけどね」
 そう言って、飛鳥が説明する。
「シールドウイングの完成形ウイング・フローラは、明日香に合わせて作ったアクティブ・ウェポンなんだ。
 これなら、SRランクの相手でも十分通用できる」
「SRランクにも?」
「ああ。SRランクの奴とのバトルの機会も増えてくるよ」
「そ、そうだよね……」
 苦笑する。飛鳥の言葉を聞いて、明日香はプレッシャーを感じていた。
 飛鳥のドライヴに着信が入る。
「もしもし? ……シミュレーションルームにいる。待ってるからな」
「誰か呼んだの?」
「チームの新メンバー候補をね。本当はスカウトしないつもりだったけど、色々と考えてさ」
「誰を?」
「私よ」
 と、話に割り込んでくる。その人物を見て、明日香は驚いた。
「明日奈!?」
「待たせたわね。それと、ハデスハーツのパワーアップ、ありがとう、飛鳥」
「性能上げただけなんだけどな。新しい『レア・ウェポン』を持ってたのには驚いたけど」
「新しい『レア・ウェポン』?」
「ええ。ちょっとした大会で優勝商品になっていたから」
「優勝したんだ……」
「私なら楽勝よ」
 そう自慢する明日奈。飛鳥がメモリースティック渡す。
「明日奈にとっては無駄な武器だけど、装備しておいてくれ。『レザリオン』メンバーの証だから」
「証?」
「ああ。『レザリオン』の中でも優れたコネクターに託す、最強の証」
「そう」

「あ、『アイス・ドール』!?」

 突然、大声が響く。明日奈は「あら」と冷静に反応した。
 明日奈の姿を見た歩が、驚きの表情で明日奈を指差している。
「な、何で、『アイス・ドール』がここにいるんだよ!?」
「それは私の台詞ね。最弱幹部の『ブラッディ・ファング』と『ゼパール・フラズグズ』が何でいるのかしら?」
「誰が最弱だ!?」
「あら、違うと言えるの?」
「う……」
 そう言われて、歩が言葉を詰まらせる。それを見ていた飛鳥は溜め息をついた。
「否定できないのは悲しいぞ、歩」
「う、うるせぇ! こいつは『アイス・ドール』だぞ!?」
「関係ないな。明日奈は俺のはとこで、今のところ『レザリオン』のエースだ」
「何!?」
 歩が目を見開く。
「『アイス・ドール』がチームのエースだと!?」
「エースって、飛鳥さんがなるのが普通なんじゃ……?」
 歩の隣で、同じように驚いていた瑞樹が訊く。飛鳥は「確かにな」と頷いた。
 二人に自分の立場について説明する。
「確かに、チームで一番強いのは俺だ。だから、普通だったら俺がエースになるんだろうな。
 けれど、俺はチームのバトルには出ないようにって決めたんだ」
「何で?」
「俺だけで勝負がつくからだ。あくまで俺は、最強候補とのチーム戦にしかバトルには出ない。
 だからこそ、エースは別で欲しいんだ。『レザリオン』を支えるエースを」
「それで、『アイス・ドール』を……」
「その呼び方は止めろ。もう、お前らは『ダーク・コネクター』じゃない。良いな、歩、瑞樹? 明日奈も」
「あ、ああ……」
「は、はい」
「ええ」
 三人が頷く。明日香だけが、一人置いてけぼりだった。
 元『ダーク・コネクター』の、それも幹部だった人間が三人。
 ある意味、とんでもないチームだなと、明日香は思う。
 飛鳥が話を進める。
「今日は4人でバトルしてくれ。相手チーム呼んでいるから」
「バトル? どこのチームなの?」
「決まってるだろ?」
 明日香に対し、飛鳥がニヤリと笑みを浮かべる。
「『ランドライザー・コマンド』の二軍メンバー。二軍でも、Aランク以上だから、手強いよ」
「え、大丈夫なの……?」
「大丈夫だって。明日香と明日奈だけでも勝てるよ」
 そう、飛鳥が自信を持って言った。



 チーム『ランドライザー・コマンド』。先代『ディフェンド・キング』が築いた最強のチーム。
 そのチームの二軍メンバーである彼らは、4人揃って無駄に熱血していた
「よっしゃ! 今日は新しくなったって言う『レザリオン』とバトルだ!」
「参謀が言うには、蓮杖は出ないらしいから、俺らでも勝てるはず!」
「もう、誰にも桃太郎御一行とは言わせないぞ!」
「二軍メンバー、ファイト! オーッ!」
 周囲からすれば大声で迷惑な4人。そして、飛鳥達を発見して声を掛ける。
「バトルしに来たぞ、蓮杖!」
「伝説のチーム『レザリオン』とは言え、手加減しないぞ!」
「二軍でも、俺らはAランク!」
「『ランドライザー・コマンド』が勝つ!」
「大声で迷惑だな、おい。けど、今日は『レザリオン』の勝ちだぜ、桃太郎御一行
 飛鳥の最後の言葉に、4人が肩を落とす。早くも、そう呼ばれた事で。
 4人を無視し、飛鳥が歩と瑞樹に言う。
「歩、分かっているな?」
「ああ、『空の瞳』は使わない、あの武器も使わない。だろ?」
「そうだ。そして、瑞樹」
「えっと……私は空中からバトル全体を見ていろ、でしたよね?」
「ああ。気づく事がたくさんあるはずだ」

 ――――レディース・エーンド・ジェーントルメェェェェェェンッ!


 と、突然、バトル・フィールドから、タキシードのおじさんが登場する。いつも以上のテンションで
「ただ今より! 公式バトルを開始いたします!
 伝説のチーム『レザリオン』VS『ランドライザー・コマンド』の二軍!
 審判はこの私! 皆様大変お久しぶりです! リュウマチ小暮さんです!」
「テンション高っ……」
「モリ森田やドッグ飯塚より、私が審判らしい事を証明する為です!」
「…………」
 飛鳥が肩を落とす。もはや、呆れて何も言えなかった。
 隣で明日香が苦笑する。そんな事など気にしないで、リュウマチ小暮が続けた。
「バトル形式はチーム総当たり戦! 先に相手チームを全滅させたチームの勝ちとなります!
 それでは皆様! コネクトの準備を!」
「……明日香、あとは頼む。俺は別に用事があるから」
「う、うん……」
「それじゃ始めましょうか。ハデスハーツ・バージョンU、セットアップ」
「よし、行くぞ瑞樹! アルトリアス・ツヴァイ、セットアップ!」
「エリアス・ファルケ、セットアップ!」
「ドライヴ・コネクト、シルフィーナディア、セットアップ」



 バトル・フィールドは普通の荒野。そこに、4体のドライヴが構築される。
「えっと……ウイング・フローラの調子は大丈夫。ヘリオスライフルとルナブラスターも、問題なし」
「また結構パワーアップしたいみたいね」
「うん。ドライヴ本体はシルフィーナディアだけど、性能とかアクティブ・ウェポンは違うかな。
 明日奈のハデスハーツも、見た目は全然変わらないね?」
「ええ。性能は飛鳥のお陰で格段に上がったけれど、それ以外は特に何もしていないわ」
 そう、二人で話す。二人のドライヴの性能を見ていた歩が顔を引きつかせる。
「な、なんか凄い性能なんだけど、この二人のドライヴ……」
「蓮杖飛鳥が手掛けたドライヴだからよ。アルトリアスだって、その剣のお陰で攻撃力上がったでしょ?」
 瑞樹が歩のドライヴに装備されている実体剣を見て言う。歩は頷いた。
「ああ。この剣、結構凄い」
「でも、気になってたんだけど、どうしてその剣の名前を『ブラッディ・ファング』にしたの?
 飛鳥さんは、別で良い名前を考えていたのに」
「忘れない為だ」
「え?」
 歩が剣を力強く握る。
「俺が『ダーク・コネクター』だった事を忘れない為に。だから、こいつの名前は『ブラッディ・ファング』だ」
「歩……」
「勝つぜ、瑞樹! アルトリアス・ツヴァイの実力、見せてやる!」
 意気込む。相手チームもドライヴの構築が完了したようだ。
 桃太郎に猿、キジ、犬の姿をドライヴ。誰がどう見ても、それはやはり桃太郎御一行だった。
 明日奈が「やる気があるのかしら……」とぼやく。
「準備はよろしいですね? それでは、コネクト・バトル……ファイトォォォッ!」
 ここでリュウマチ小暮による、バトル開始が告げられた。



 バトルが始まって、飛鳥はその様子を見ていた。
 どうやって見ても桃太郎御一行な二軍メンバーは、半年前に比べて団結力がある気がする。
「歩は苦戦するだろうな……やっぱり、明日香と明日奈だけで戦わないといけないか」
 明日香と明日奈の二人はSランク。実力はあるから、負けはしないだろう。
 しかし、二人より強いコネクターは大勢いる。
「明日奈と同等かそれ以上のコネクターを探さないと。それと……」
「待たせたな、『ソード・マスター』」
 声を掛けられる。飛鳥は「別に」と答えた。
 元『ダーク・コネクター』幹部にして、母の事を知る一人・ガルノアだ。
 飛鳥が頭を下げる。
「ありがとう、ガルノア。『レザリオン』に入ってくれて」
「気にしなくて良い。しかし、まさか『レザリオン』のリーダーになるとは」
「特例だけどね」
「しかし、私をチームに入れてどうするつもりだ?」
 ガルノアが訊いてくる。飛鳥は頷いた。
「ガルノアに、隆也君と美雪ちゃんの事を頼みたいんだ」
「『レザリオン』の正統後継者か」
「ああ。ガルノアなら、初代の『レザリオン』を知っている。俺より、ガルノアの方が二人にとって良いと思う」
「そうか。チームリーダーの命令として、聞き入れよう」
「ありがとう」
「しかし、こうも『ダーク・コネクター』ばかりが揃うとはな」
 バトル・フィールドの方を見る。そして、歩を見た。
 桃太郎を相手に苦戦している。飛鳥が言う。
「スカウトした奴らが、たまたま元幹部だった。それだけだ」
「チームをどのようにする気だ?」
最強のチームにする。俺が抜けていても、最強を貫けるチーム」
『ソード・マスター』である自分を戦力に加えなくても、敗北しないチーム。
「その為にはあと二人探さないと。そして、歩と瑞樹を鍛える」
「大丈夫か? 特に『ブラッディ・ファング』は骨が折れるぞ」
 ガルノアの言葉に、飛鳥が鼻で笑う。
「大丈夫。あいつは強くなる。いや、なってもらわないと困る」



 バトル・フィールド。歩のアルトリアス・ツヴァイが攻撃する。
「カイザーネイル!」
 剣を振り下ろす。桃太郎は防御して防いだ。
『おぉ、やっぱ俺の武王強ぇじゃん!』
「くそ、だったら……!」
 距離を取り、背中のブースターで加速する。
「ウインガーネイル!」
「そうは問屋が卸さなーい!」
 突撃してくるアルトリアスを桃太郎はまたもや受け止める。それは、もはや半年前の桃太郎ではなかった。
 歩が歯を噛み締める。そして、背中のランチャーを取り出した。
 三段階に折り畳まれたランチャーが組み上がり、アルトリアスの三倍もの長さの砲身となる。
「これでも喰らいやがれ!」
 砲身にエネルギーがチャージされる。桃太郎は少しだけ横に回避した。
 あれがゴッドランチャー級の武器なら、これで命中はしない。そんな判断だ。
『これで問題なし』
「ブライト・オブ・ボルテッカァァァッ!」
 放つ。巨大な波動が桃太郎を呆気なく葬った
『マジか……こんなに威力あって、巨大な攻撃って……』
 爆発。歩が勝利する。
「よし、残りは三体。一気に片付けてやる!」
 そう言って瞳を鋭くし、風の流れを読む。次の標的はキジ。
 ブースターで加速し、一気に上空まで跳び上がる。
「エクス・ブレイザァァァーッ!」
 一刀両断。キジも呆気なく倒された。
『やっぱ俺ら……こんな役目か……』



 一方、明日香と明日奈は歩の様子を見て、全く動かなかった
 猿と犬の攻撃は明日香が防いでいる。
「もうそろそろ良いわね。一気に終わらせましょう」
「やっぱり、ワザと動かなかったんだ……」
「明日香もでしょ?」
「私は、飛鳥君にそう言われていたから……」
 そう言いながら、二人がついに攻撃を仕掛ける。まずは、明日奈。
 ハデスハーツが左腕に装備している小さい盾を取り出す。
「飛鳥が渡してくれたグランドクロスセイバーより、こっちの方が使い慣れているものね」
 盾を柄にして、炎と氷の魔剣をそれぞれ合体させる。二つの力を持つ、一本の長剣が完成した。
「魔剣エターナル、散りなさい」
 猿を斬る。その速さは、猿では見えなかった。
『早くも俺散ったぁ……がくんっ』
『って、散るの早ぇ!? つーか、残ってるの俺だけじゃん!?』
 犬がそう言っている間に、明日香が仕掛ける。
「シルフィー・シルト・リフレクティング」
 羽根がビットとして放たれ、犬を取り囲んでバリアを形成する。
 動きをバリア内に封じ込められる犬。シルフィーナディアの翼にエネルギーが集中する。
「レイ・スパイラル、エネルギーチャージ……ごめんね、ブラスティング・プラズマ・レイ!」
 翼からエネルギーが放出され、犬の上空から雷が降り注ぐ。
『こいつら……強過ぎ……ぐはぁっ』

「バトル終了! 勝者、チーム『レザリオン』!」

 チーム『レザリオン』のデビュー戦は、快勝だった。



次回予告

 明日香「新たに明日奈とガルノアさんを加えて……全員で8人だね」
 明日奈「改めて、これからよろしく」
 飛鳥 「けど、戦力的にはまだ不安があるんだよなぁ。明日香と明日奈だけじゃ流石に……」
 明日香「飛鳥君は?」
 明日奈「自分は戦力に含めないの?」
 飛鳥 「当然。俺を戦力にしたら、どんなバトルも勝てるって」
 明日香「……最近の飛鳥君って、結構強気だよね」
 明日奈「強いのは事実だものね」

  次回、CONNECT04.『突然の衝撃』

 飛鳥 「そんな……! そんな、まさか……!?」

 明日香「次回は、一大事!?」
 明日奈「もしかして、破局の危機かしら?」
 明日香「え、そんな事ないよ!? た、多分……」



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