チーム『レザリオン』のリーダーを襲名して、飛鳥はすぐに紗雪に謝った。 「ごめんなさい。勢いで、それも相応しくない俺がリーダーを襲名して……」 いくら伝説と言われたチームを解散して欲しくないとは言え、あれは勝手過ぎた。 そう思って頭を下げる飛鳥だが、紗雪は首を横に振った。 「気にしなくて良いわよ。それに、飛鳥君は『レザリオン』に相応しいのよ」 「え?」 「黙っていたけれど、春香は初代『レザリオン』のメンバーなのよ」 「母さんが!?」 驚く。紗雪が話を続ける。 「春香は、初代『レザリオン』を築いた人の考えを誰よりも良いと思っていたの」 「初代のリーダー? それって……」 「ええ、あの人の兄。飛鳥君は、三代目になるわね」 「それで、母さんはどうして『レザリオン』に?」 「初代は、『守るべきモノを守る、決して悪を許さないチーム』を目指していた。 それが、春香にとっては素晴らしい考えって思ったのよ。だから、『レザリオン』に加わったの」 紗雪が言うには、初代『レザリオン』のリーダーは正義感溢れる人物だったらしく、 これから起こりうる違法者を倒す為に『レザリオン』を結成した。 「今は、村雲さんが協会を使って、飛鳥君達『フォース・コネクター』に任せているけれど、 当時は『レザリオン』が違法コネクターを裁いていたのよ。自主的に」 「…………」 「『フォース・コネクター』全員がメンバーになったのも、皆が同じ意見だったから。 だから、『レザリオン』は結成されたの」 「違法コネクターを裁く為のチーム……そうだったんだ……」 「そう。今は、普通のチームと同じだけれど」 そして、紗雪が「特例処置」と言って、飛鳥に告げる。 「蓮杖飛鳥、本日を持って、あなたを『レザリオン』の新リーダーとします」 「……!」 「『レザリオン』の証を、あなたに」 ゴールドメッキで施されたメモリースティックを渡される。 「これは?」 「『レザリオン』のリーダーの証、レザリオン・エンブレム」 「レザリオン・エンブレム……」 「特殊な力もない、ただの飾りよ。でも、これがないと、『レザリオン』のリーダーは名乗れないの」 紗雪が「装備しておいて」と飛鳥に言う。飛鳥は頷いた。 ドライヴにメモリースティックを差込み、セルハーツに装備させる。 「チームをどんな風にするかは、飛鳥君に任せるわ」 「良いんですか?」 「ええ。『レザリオン』が再び最強のチームになれるよう、頑張って」 「……はい!」 その日の夜。飛鳥は早速パソコンの前に釘付けとなった。 「チームを結成した今、俺がやるべき事はメンバーと相応の力」 いくつもの画面を出し、全て同時にアクティブ・ウェポンを作る。 こんな時、先代『マグナム・カイザー』によって鍛えられた技術が役立って便利だった。 「問題は歩と瑞樹だな。あの二人を、どう育てていくか……」 明日香に関しては問題なし。残る問題は、新メンバーとなった歩と瑞樹。 特に歩は、予想通りの強さだったら鍛え直す必要がある。 「けど、歩と瑞樹に教えるとなると、隆也君と美雪ちゃんをどうするか……」 流石に4人同時に教える事は難しい。4人が同じ強さならともかく。 「頼んでみるか、一応。メンバーに加わってくれると良いんだけど」 そう言いながらも、次々とアクティブ・ウェポンを開発していく。 それから数日後。ショップで飛鳥は明日香に新型ドライヴのテストをさせていた。 コクピットランサーから降りた明日香が、ふうっと息を吐く。 「凄いね。今までのシルフィーナディアと違って、防御も凄いし、攻撃も上がってるし……」 「新型アクティブ・ウェポンに装備を変えてるし、性能も前より上げているからな」 「名前はシルフィーナディアのままで良いの?」 「うん。正式名称は、シルフィーナディア・バージョンUってなってるけどね」 そう言って、飛鳥が説明する。 「シールドウイングの完成形ウイング・フローラは、明日香に合わせて作ったアクティブ・ウェポンなんだ。 これなら、SRランクの相手でも十分通用できる」 「SRランクにも?」 「ああ。SRランクの奴とのバトルの機会も増えてくるよ」 「そ、そうだよね……」 苦笑する。飛鳥の言葉を聞いて、明日香はプレッシャーを感じていた。 飛鳥のドライヴに着信が入る。 「もしもし? ……シミュレーションルームにいる。待ってるからな」 「誰か呼んだの?」 「チームの新メンバー候補をね。本当はスカウトしないつもりだったけど、色々と考えてさ」 「誰を?」 「私よ」 と、話に割り込んでくる。その人物を見て、明日香は驚いた。 「明日奈!?」 「待たせたわね。それと、ハデスハーツのパワーアップ、ありがとう、飛鳥」 「性能上げただけなんだけどな。新しい『レア・ウェポン』を持ってたのには驚いたけど」 「新しい『レア・ウェポン』?」 「ええ。ちょっとした大会で優勝商品になっていたから」 「優勝したんだ……」 「私なら楽勝よ」 そう自慢する明日奈。飛鳥がメモリースティック渡す。 「明日奈にとっては無駄な武器だけど、装備しておいてくれ。『レザリオン』メンバーの証だから」 「証?」 「ああ。『レザリオン』の中でも優れたコネクターに託す、最強の証」 「そう」 「あ、『アイス・ドール』!?」 突然、大声が響く。明日奈は「あら」と冷静に反応した。 明日奈の姿を見た歩が、驚きの表情で明日奈を指差している。 「な、何で、『アイス・ドール』がここにいるんだよ!?」 「それは私の台詞ね。最弱幹部の『ブラッディ・ファング』と『ゼパール・フラズグズ』が何でいるのかしら?」 「誰が最弱だ!?」 「あら、違うと言えるの?」 「う……」 そう言われて、歩が言葉を詰まらせる。それを見ていた飛鳥は溜め息をついた。 「否定できないのは悲しいぞ、歩」 「う、うるせぇ! こいつは『アイス・ドール』だぞ!?」 「関係ないな。明日奈は俺のはとこで、今のところ『レザリオン』のエースだ」 「何!?」 歩が目を見開く。 「『アイス・ドール』がチームのエースだと!?」 「エースって、飛鳥さんがなるのが普通なんじゃ……?」 歩の隣で、同じように驚いていた瑞樹が訊く。飛鳥は「確かにな」と頷いた。 二人に自分の立場について説明する。 「確かに、チームで一番強いのは俺だ。だから、普通だったら俺がエースになるんだろうな。 けれど、俺はチームのバトルには出ないようにって決めたんだ」 「何で?」 「俺だけで勝負がつくからだ。あくまで俺は、最強候補とのチーム戦にしかバトルには出ない。 だからこそ、エースは別で欲しいんだ。『レザリオン』を支えるエースを」 「それで、『アイス・ドール』を……」 「その呼び方は止めろ。もう、お前らは『ダーク・コネクター』じゃない。良いな、歩、瑞樹? 明日奈も」 「あ、ああ……」 「は、はい」 「ええ」 三人が頷く。明日香だけが、一人置いてけぼりだった。 元『ダーク・コネクター』の、それも幹部だった人間が三人。 ある意味、とんでもないチームだなと、明日香は思う。 飛鳥が話を進める。 「今日は4人でバトルしてくれ。相手チーム呼んでいるから」 「バトル? どこのチームなの?」 「決まってるだろ?」 明日香に対し、飛鳥がニヤリと笑みを浮かべる。 「『ランドライザー・コマンド』の二軍メンバー。二軍でも、Aランク以上だから、手強いよ」 「え、大丈夫なの……?」 「大丈夫だって。明日香と明日奈だけでも勝てるよ」 そう、飛鳥が自信を持って言った。 チーム『ランドライザー・コマンド』。先代『ディフェンド・キング』が築いた最強のチーム。 そのチームの二軍メンバーである彼らは、4人揃って無駄に熱血していた。 「よっしゃ! 今日は新しくなったって言う『レザリオン』とバトルだ!」 「参謀が言うには、蓮杖は出ないらしいから、俺らでも勝てるはず!」 「もう、誰にも桃太郎御一行とは言わせないぞ!」 「二軍メンバー、ファイト! オーッ!」 周囲からすれば大声で迷惑な4人。そして、飛鳥達を発見して声を掛ける。 「バトルしに来たぞ、蓮杖!」 「伝説のチーム『レザリオン』とは言え、手加減しないぞ!」 「二軍でも、俺らはAランク!」 「『ランドライザー・コマンド』が勝つ!」 「大声で迷惑だな、おい。けど、今日は『レザリオン』の勝ちだぜ、桃太郎御一行」 飛鳥の最後の言葉に、4人が肩を落とす。早くも、そう呼ばれた事で。 4人を無視し、飛鳥が歩と瑞樹に言う。 「歩、分かっているな?」 「ああ、『空の瞳』は使わない、あの武器も使わない。だろ?」 「そうだ。そして、瑞樹」 「えっと……私は空中からバトル全体を見ていろ、でしたよね?」 「ああ。気づく事がたくさんあるはずだ」 ――――レディース・エーンド・ジェーントルメェェェェェェンッ! と、突然、バトル・フィールドから、タキシードのおじさんが登場する。いつも以上のテンションで。 「ただ今より! 公式バトルを開始いたします! 伝説のチーム『レザリオン』VS『ランドライザー・コマンド』の二軍! 審判はこの私! 皆様大変お久しぶりです! リュウマチ小暮さんです!」 「テンション高っ……」 「モリ森田やドッグ飯塚より、私が審判らしい事を証明する為です!」 「…………」 飛鳥が肩を落とす。もはや、呆れて何も言えなかった。 隣で明日香が苦笑する。そんな事など気にしないで、リュウマチ小暮が続けた。 「バトル形式はチーム総当たり戦! 先に相手チームを全滅させたチームの勝ちとなります! それでは皆様! コネクトの準備を!」 「……明日香、あとは頼む。俺は別に用事があるから」 「う、うん……」 「それじゃ始めましょうか。ハデスハーツ・バージョンU、セットアップ」 「よし、行くぞ瑞樹! アルトリアス・ツヴァイ、セットアップ!」 「エリアス・ファルケ、セットアップ!」 「ドライヴ・コネクト、シルフィーナディア、セットアップ」 バトル・フィールドは普通の荒野。そこに、4体のドライヴが構築される。 「えっと……ウイング・フローラの調子は大丈夫。ヘリオスライフルとルナブラスターも、問題なし」 「また結構パワーアップしたいみたいね」 「うん。ドライヴ本体はシルフィーナディアだけど、性能とかアクティブ・ウェポンは違うかな。 明日奈のハデスハーツも、見た目は全然変わらないね?」 「ええ。性能は飛鳥のお陰で格段に上がったけれど、それ以外は特に何もしていないわ」 そう、二人で話す。二人のドライヴの性能を見ていた歩が顔を引きつかせる。 「な、なんか凄い性能なんだけど、この二人のドライヴ……」 「蓮杖飛鳥が手掛けたドライヴだからよ。アルトリアスだって、その剣のお陰で攻撃力上がったでしょ?」 瑞樹が歩のドライヴに装備されている実体剣を見て言う。歩は頷いた。 「ああ。この剣、結構凄い」 「でも、気になってたんだけど、どうしてその剣の名前を『ブラッディ・ファング』にしたの? 飛鳥さんは、別で良い名前を考えていたのに」 「忘れない為だ」 「え?」 歩が剣を力強く握る。 「俺が『ダーク・コネクター』だった事を忘れない為に。だから、こいつの名前は『ブラッディ・ファング』だ」 「歩……」 「勝つぜ、瑞樹! アルトリアス・ツヴァイの実力、見せてやる!」 意気込む。相手チームもドライヴの構築が完了したようだ。 桃太郎に猿、キジ、犬の姿をドライヴ。誰がどう見ても、それはやはり桃太郎御一行だった。 明日奈が「やる気があるのかしら……」とぼやく。 「準備はよろしいですね? それでは、コネクト・バトル……ファイトォォォッ!」 ここでリュウマチ小暮による、バトル開始が告げられた。 バトルが始まって、飛鳥はその様子を見ていた。 どうやって見ても桃太郎御一行な二軍メンバーは、半年前に比べて団結力がある気がする。 「歩は苦戦するだろうな……やっぱり、明日香と明日奈だけで戦わないといけないか」 明日香と明日奈の二人はSランク。実力はあるから、負けはしないだろう。 しかし、二人より強いコネクターは大勢いる。 「明日奈と同等かそれ以上のコネクターを探さないと。それと……」 「待たせたな、『ソード・マスター』」 声を掛けられる。飛鳥は「別に」と答えた。 元『ダーク・コネクター』幹部にして、母の事を知る一人・ガルノアだ。 飛鳥が頭を下げる。 「ありがとう、ガルノア。『レザリオン』に入ってくれて」 「気にしなくて良い。しかし、まさか『レザリオン』のリーダーになるとは」 「特例だけどね」 「しかし、私をチームに入れてどうするつもりだ?」 ガルノアが訊いてくる。飛鳥は頷いた。 「ガルノアに、隆也君と美雪ちゃんの事を頼みたいんだ」 「『レザリオン』の正統後継者か」 「ああ。ガルノアなら、初代の『レザリオン』を知っている。俺より、ガルノアの方が二人にとって良いと思う」 「そうか。チームリーダーの命令として、聞き入れよう」 「ありがとう」 「しかし、こうも『ダーク・コネクター』ばかりが揃うとはな」 バトル・フィールドの方を見る。そして、歩を見た。 桃太郎を相手に苦戦している。飛鳥が言う。 「スカウトした奴らが、たまたま元幹部だった。それだけだ」 「チームをどのようにする気だ?」 「最強のチームにする。俺が抜けていても、最強を貫けるチーム」 『ソード・マスター』である自分を戦力に加えなくても、敗北しないチーム。 「その為にはあと二人探さないと。そして、歩と瑞樹を鍛える」 「大丈夫か? 特に『ブラッディ・ファング』は骨が折れるぞ」 ガルノアの言葉に、飛鳥が鼻で笑う。 「大丈夫。あいつは強くなる。いや、なってもらわないと困る」 バトル・フィールド。歩のアルトリアス・ツヴァイが攻撃する。 「カイザーネイル!」 剣を振り下ろす。桃太郎は防御して防いだ。 『おぉ、やっぱ俺の武王強ぇじゃん!』 「くそ、だったら……!」 距離を取り、背中のブースターで加速する。 「ウインガーネイル!」 「そうは問屋が卸さなーい!」 突撃してくるアルトリアスを桃太郎はまたもや受け止める。それは、もはや半年前の桃太郎ではなかった。 歩が歯を噛み締める。そして、背中のランチャーを取り出した。 三段階に折り畳まれたランチャーが組み上がり、アルトリアスの三倍もの長さの砲身となる。 「これでも喰らいやがれ!」 砲身にエネルギーがチャージされる。桃太郎は少しだけ横に回避した。 あれがゴッドランチャー級の武器なら、これで命中はしない。そんな判断だ。 『これで問題なし』 「ブライト・オブ・ボルテッカァァァッ!」 放つ。巨大な波動が桃太郎を呆気なく葬った。 『マジか……こんなに威力あって、巨大な攻撃って……』 爆発。歩が勝利する。 「よし、残りは三体。一気に片付けてやる!」 そう言って瞳を鋭くし、風の流れを読む。次の標的はキジ。 ブースターで加速し、一気に上空まで跳び上がる。 「エクス・ブレイザァァァーッ!」 一刀両断。キジも呆気なく倒された。 『やっぱ俺ら……こんな役目か……』 一方、明日香と明日奈は歩の様子を見て、全く動かなかった。 猿と犬の攻撃は明日香が防いでいる。 「もうそろそろ良いわね。一気に終わらせましょう」 「やっぱり、ワザと動かなかったんだ……」 「明日香もでしょ?」 「私は、飛鳥君にそう言われていたから……」 そう言いながら、二人がついに攻撃を仕掛ける。まずは、明日奈。 ハデスハーツが左腕に装備している小さい盾を取り出す。 「飛鳥が渡してくれたグランドクロスセイバーより、こっちの方が使い慣れているものね」 盾を柄にして、炎と氷の魔剣をそれぞれ合体させる。二つの力を持つ、一本の長剣が完成した。 「魔剣エターナル、散りなさい」 猿を斬る。その速さは、猿では見えなかった。 『早くも俺散ったぁ……がくんっ』 『って、散るの早ぇ!? つーか、残ってるの俺だけじゃん!?』 犬がそう言っている間に、明日香が仕掛ける。 「シルフィー・シルト・リフレクティング」 羽根がビットとして放たれ、犬を取り囲んでバリアを形成する。 動きをバリア内に封じ込められる犬。シルフィーナディアの翼にエネルギーが集中する。 「レイ・スパイラル、エネルギーチャージ……ごめんね、ブラスティング・プラズマ・レイ!」 翼からエネルギーが放出され、犬の上空から雷が降り注ぐ。 『こいつら……強過ぎ……ぐはぁっ』 「バトル終了! 勝者、チーム『レザリオン』!」 チーム『レザリオン』のデビュー戦は、快勝だった。 次回予告 明日香「新たに明日奈とガルノアさんを加えて……全員で8人だね」 明日奈「改めて、これからよろしく」 飛鳥 「けど、戦力的にはまだ不安があるんだよなぁ。明日香と明日奈だけじゃ流石に……」 明日香「飛鳥君は?」 明日奈「自分は戦力に含めないの?」 飛鳥 「当然。俺を戦力にしたら、どんなバトルも勝てるって」 明日香「……最近の飛鳥君って、結構強気だよね」 明日奈「強いのは事実だものね」 次回、CONNECT04.『突然の衝撃』 飛鳥 「そんな……! そんな、まさか……!?」 明日香「次回は、一大事!?」 明日奈「もしかして、破局の危機かしら?」 明日香「え、そんな事ないよ!? た、多分……」 |
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