CONNECT04.『突然の衝撃』


 チームとしてのデビュー戦から数日。この日、歩は特訓させられていた
「よし、終わりだ!」
 終了と同時にコクピットランサーを出る。直後に飛鳥の拳が頭に下った
 飛鳥が深い溜め息をつく。歩が反論した。
「何で殴るんだよ!?」
「あのな……この特訓の意味、分かってないだろ?」
「分かってる! 資質の限界を知る為だろ、何度使えるかの!」
 そう言った直後、再び拳が頭に下る。
「違う! 資質をどれだけ維持できるかを知る為だって、言っただろ……」
「どれだけって……俺の場合、せいぜい一度に3、4秒程度だし」
 それを聞いて、飛鳥が溜め息をつく。
「……もう一度説明するぞ。資質は、俺が知る限り最低20秒は維持できる」
「な、20秒!?」
「だが、お前の場合3、4秒しか維持できない。何でだか分かるか?」
「俺が天才じゃないから?」
 歩の返答に、もはや呆れる。飛鳥は三度溜め息をついた。
 資質については、『ダーク・コネクター』だった時に把握できていると思えば、全くだ。
 飛鳥が説明する。
「資質が3、4秒しか維持できないのは、お前が無意識に『空の瞳』を開いたり閉じたりするからだ」
「無意識に?」
「そうだ。無意識に資質を使う回数が増えて、その負担が蓄積される。
 だから、3、4秒でその負担が来るんだ」
「…………」
「意識的に資質を使えるようになれ。そして、自分の資質がどれだけ維持できるかを知るんだ」
「何でそんなの知る必要あるんだよ?」
 歩が訊く。飛鳥は頷いた。
「強くなる為だ。お前には期待しているんだよ、俺は」
「な……本当か!?」
「ああ。だから、俺の期待を裏切るなよ」
 そう言いながらドライヴで時間を確認する。ちょうど良い時間だった。
 歩に指示を出す。
「このまま特訓を続けて、資質の限界が来たら帰れ」
「限界が来たらって……15時ぐらいで帰れって事かよ!?」
「とりあえず言っておくぞ? お前、チームのデビュー戦で俺の言いつけ破ったんだからな?」
「う……」
 資質は使わない、飛鳥が渡していた武器も使わない。
 その言いつけを呆気なく破った歩は、しばらく飛鳥に絶対服従だった。
「俺はバトルがあるから、そっちに行く。くれぐれも、俺に黙ってバトルなんかするなよ?」
「わ、分かった……」



 今日は飛鳥にとって、久々の『ソード・マスター』戦だった。
 半年前に『ディフェンド・キング』だったゴウとのバトルで勝利してから、バトルの話はなかった。
 ほとんどのコネクターは、飛鳥の強さを恐れ、逃げているからだ。
「バトルの相手は確か、織野明良(おりの あきら)……だったよな」
 織野明良。SRランクのソード・クラスでトップに立った実力者。
 その強さはプロでも通用すると言われ、『業火を司る者』の異名を持つ。
「……そう言えば、プロのスカウトの返事してなかったっけ……」
 思い出す。まだ、何も考えていなかった。
 今は、とにかく最強の称号全てを手に入れる。それだけだ。
「待たせたな、蓮杖飛鳥。バトルを受けてくれて、感謝している」
 と、そこに織野明良が来た。
「俺がどこまで通用するか確かめると同時に、お前を倒す」
「悪いな、俺は負けるわけにはいかないんだ。最強を貫く為にも」

 ――――それでは、参りましょう!


 突然、バトル・フィールド中心に穴が開き、そこからタキシードを纏った眼帯のおじさんが出てくる。
 そして集まってくる野次馬。大事にしたくなかった飛鳥は溜め息をついた。
「さて皆さん! いよいよコネクト・バトルの時間がやって参りました!
 審判はこの私ドッグ飯塚が務めさせて頂きます! ご無沙汰しています!」
「『ソード・マスター』戦とは言え、あまり大事にしたくなかったのに……」
 さらに、特設ステージを使わないで終わらせたかったのに。
 そんな飛鳥を無視して、ドッグ飯塚が説明する。
「今回のバトルは、ななな何と! 『ソード・マスター』戦!
 バトルするのは当然、『ソード・マスター』蓮杖飛鳥! そして、SRトップの織野明良です!
 ルールは簡単! 通常シングル、相手を倒すか降参させれば勝利となります!
 それでは、準備を!」
「……はぁ……セルハーツ、セットアップ」
 肩を落としながら、ドライヴをセットする。



 バトル・フィールドは通常の草原。そこにセルハーツが構築される。
 そして、右腕が左腕に比べてやや大きく、そして作りが違うドライヴが正面に構築された。
「武器は?」
『ある。しかし、剣は使わない。接近戦型でもな』
「なるほど。桐生みたいなタイプってわけか……」
 これは意外と手強い相手になりそうだ。強さは、『ゾディアック』の桐生と同等なのだろう。
 だが、負けるわけにはいかない。
 ドッグ飯塚が飛鳥を指差す。
「『ソード・マスター』蓮杖飛鳥! レガリアの返還を!」
『フォース・コネクター』戦では、『フォース・コネクター』は『ドライヴ=レガリア』を使用できない。
 その為、バトル前に返還を行う必要がある。
 セルハーツを操作し、ファルシオンセイバーをドッグ飯塚の方へと向ける。
「レガリア、返還!」
 飛鳥の言葉と共に、ファルシオンセイバーがドッグ飯塚の元へと飛んで行く。
 ドッグ飯塚の前に透明なガラス球のようなものが出現し、その中に収納された。
「返還完了! それでは、コネクト・バトル……レディィィッ、ゴォォォッ!」
 バトル開始。それと同時に、二体のドライヴが動いた。
 まずは、織野明良が仕掛ける。
『ブレイズ・チェーン!』
 左腕から炎を纏った鎖が飛び出し、セルハーツを襲う。飛鳥はイクサ・グレイルで受け止めた。
 鎖が絡まる。が、それは想定の範囲内。
 空いている方の手でプラズマセイバーを構え、振るう。
「エアブレード・ストーム!」
 放たれる竜巻。織野は舌打ちしながら、ブレイズ・チェーンを左腕に戻して回避する。
『くっ……素早いカウンターだな。だが、俺とデストラクトならば!』
 そう言って、織野のドライヴ――――デストラクトが背中からゴッドランチャーを取り出す。
 それを見た飛鳥もまた、ゴッドランチャーを構え――――はしなかった。
『ゴッドランチャー!』
「輝凰! 斬・王・陣ッ!」
 放たれたビームを前に、剣を突き刺す。剣に込められていたエネルギーが大地から放出された。
 ビームを防ぎ、左腕の内側に装備している雷聖弓を展開させる。
「雷聖弓、シュート!」
 素早く射る。放たれた雷の矢が、デストラクトの左肩を撃ち抜き、その装甲を砕いた。



 同時刻。明日香と明日奈は、ようやく目当てのショップに到着した。
 飛鳥が『ソード・マスター』戦を行っているショップ。
 バトル・フィールドの周辺には、かなりの人間で混雑している。
「遅かったみたい……人がたくさんだよ」
「飛鳥の人気は絶大だものね。それも、『ソード・マスター』戦になれば当然よ」

「キャー! 『ソード・マスター』、素敵ー!」
「あんな奴、敵じゃないですよ!」
「頑張れー、蓮杖飛鳥ー!」
「絶対に勝ってー! 私の王子様ーーーっ!」

 女性ファンの熱烈な応援。それが耳に入った明日香から、邪悪なオーラが溢れ出していた
 近くのモニターを探して、明日奈がバトルを確認する。
「相手は相当の実力者ね。飛鳥が有利だけど、ほとんど互角と言っても良いかしら……」
「飛鳥君は私の……飛鳥君は私の……!」
「ファン相手にヤキモチなんて妬かないの。彼女でしょ、明日香は」
「そ、そうだけど……」
 明日奈が明日香にデコピンする。
「私が知る限り、飛鳥は一途よ。明日香は、飛鳥に愛されてるわ。自信を持ちなさい」
「うー……」
 そんなやり取りをしている間に、歓声が沸き上がる。二人はバトルを見た。
 飛鳥のセルハーツが左腕を破壊される。何が起きたか分からなかった。
「セルハーツの左腕が……!?」
「飛鳥が攻撃を受けた……? カウンターが速かったのかしら……」



 飛鳥に全ての攻撃を防がれ、織野は歯を噛み締めた。
 強い。流石は、常戦無敗を誇る『ソード・マスター』だ。
『だが、必ず隙はできるはずだ……狙うはカウンター! ワン!』
 織野の言葉と同時に、右腕から見えるシリンダーが一度だけ前後に動く。
『ブレイズ・チェーン! ツー!』
 左腕から鎖を出して攻撃しながら、もう一度シリンダーを前後に動かす。
『スリー!』
 再び動く。その様子を見ながら、飛鳥は一度後退した。
 セルハーツが剣を構え、一気に加速して突撃する。
『フォー!』
「何を仕掛けようとしているのかはともかく、これで決める! ミラージュ・ブレイドッ!」
 急加速からのミラージュ・ブレイド。それを織野は待っていた。
 左腕で接近してきたセルハーツの剣を抑え、右腕を構える。
 それを見た飛鳥は、ついに『鷹の瞳』を発動させた。
『イフリート・ブラスト!』
「――――!?」
 が、デストラクトの右腕はセルハーツの左腕に命中した。
 炎が噴出し、左腕を破壊する。回避が遅かった。
「くっ……!?」
 左腕を破壊され、バランスを崩すセルハーツ。飛鳥は瞬時にイクサ・グレイルをデストラクトに向けて投げた。
 剣がデストラクトの左腕を捉え、その一瞬にセルハーツのゴッドランチャーが密着する。
「零……距離ッ!」
 放つ。その一瞬にして繰り出された攻撃に、織野は全く反応できなかった。
 零距離から放たれたゴッドランチャーを受け、破壊されるデストラクト。
 飛鳥の勝利。歓声が湧き上がる。
「バトル終了ッ! 勝者、蓮杖飛鳥!」
 こうして、飛鳥は『ソード・マスター』の座を守り抜いた。



 バトル終了直後。レガリアをドライヴに入れた飛鳥は、コクピットランサーからすぐに出て逃げた
 ファンに囲まれないよう、上手くショップの外まで逃げ切る。
「ドッグ飯塚が出て来なければ、こんな事しなくて良かったのに……」
 これだから、人気になるのは嫌だった。マスコミやファンが集まってくるから。
「まさか、左腕を破壊されるなんて……修理しないと」



 一瞬のうちに逃げた飛鳥に追いつけなかった明日香と明日奈は、お互いの顔を見て苦笑していた。
「飛鳥君、逃げるの早かったね……」
「ファンに囲まれたら、動けなくなるものね」
「応援に来たけど、会えなかったね……もう帰ったと思うし」
「じゃあ、今から飛鳥の家に行きましょうか。お祝いして上げましょう」
「うん」
 そう言って、ショップを後にする二人。



 すぐに自宅に戻った飛鳥は、自室でセルハーツの修理を行った。
 そして考えていた。なぜ、破壊されたのかを。
「『鷹の瞳』よりも直感で先に回避したけど間に合わなかった……そうなのか?」
 いや、違う。あの時、『鷹の瞳』を発動させる方が早かった。
 しかし、直感で回避した。その結果が、左腕の破損だ。
 何か不思議だと感じる。そして、修理完了を確認すると、すぐにパソコンを操作した。
「簡易シミュレーション起動……相手は、洸月輝凰。アーク・ウィザリオ!」
 パソコンの画面が切り替わる。セルハーツを接続し、シミュレーションを開始する。
 繰り出されるセルハーツとアーク・ウィザリオのバトル。が、そのバトルは飛鳥の敗北だった。
 目を見開き、手で右目を覆う。
「そんな……! そんな、まさか……!?」
 頬を冷たい汗が流れる。飛鳥は、自分に起きた”それ”を信じたくなかった。
 シミュレーションとは言え、アーク・ウィザリオの攻撃を前に、瞳を鋭くしても何も変わらない”世界”。
 それは、飛鳥にとっての異常事態を知らせる。

























「……『鷹の瞳』が……消えた……」

























次回予告

 明日香「あ、明日奈、あ、あ、飛鳥君の『鷹の瞳』が……」
 明日奈「資質って、失ったりするのかしら?」
 優  「するのよね、これが。現に、ゆうゆうがなりかけたし」
 亜美 「あの時のお兄ちゃん、自暴自棄になったよね……」
 勇治 「…………」
 明日香「え、えっと……どうして亜美ちゃん達がいるの?」
 優  「それは簡単。最近、出番がほとんどないから
 明日奈「作者のせいね」
  ※うぐ!?

  次回、CONNECT05.『最強を名乗る者』

 ???「蓮杖飛鳥……俺は奴に勝つ自身がある。俺の方が、奴より強い」

 明日香「次回は、とんでもない人が出現!?」
 明日奈「それって誰?」
 明日香「さ、さあ……?」



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