CONNECT05.『最強を名乗る者』


「『鷹の瞳』が消えた、か……」
 翌日。飛鳥は真っ先に先代『ソード・マスター』の輝凰を訪ねた。
 そして、自分に起きた異変について話し、相談に乗る。
「突然なんです……最近はあまり使ってないですけど、でも……」
「突然はありえない。そう言いたいんだろう?」
「はい……」
 すると、輝凰が腕を組んで考える。
「俺が知る限りだと、そう言う経験がある資質保有者はいないな」
「…………」
「とりあえず様子を見る事だな。悩んでも、解決はしないだろう」
「はい……」



 さらに翌日。放課後の教室で、飛鳥はセルハーツのドライヴを手に考えていた。
 突然の資質の消失。今まで持っていた力を失った今、セルハーツで戦うのは辛いかもしれない。
「……けど、作り直すのもな……」
 セルハーツは、『究極のドライヴ』の力を持っている。これを失うわけにはいかない。
 万が一の時、『究極のドライヴ』の力は必要となる。だからこそ、作り直せないのだ。
「悩んでも仕方ないのは分かるけど……」
 輝凰に言われた事を思い出しながら、呟く。その時、一人の女子生徒が話し掛けてきた。
 黒髪のポニーテールが似合う、いつも竹刀袋を持った『チーム・アレス』のエース。
 3年になって一緒のクラスになった黒石曜だ。
「れ、蓮杖君……今日これから予定とかあります、か……?」
 彼女の言葉に対し、飛鳥が首を横に振る。すると、彼女は目を輝かせた。
「そ、それじゃあ、一緒にショップでも……」
「……ごめん。今はそんな気分じゃないんだ」
「そ、そうなんですか……」
「ごめん。また明日」
 そう言って立ち上がり、教室を出て行く。曜は溜め息をついた。
 そんな彼女の様子をこっそりと見ていた、チームのリーダー・大滝美里が姿を現す。
「頑張って誘ったけど失敗か。まぁ、元気出しなって、曜!」
「美里さん、いつの間に……」
「教卓の方からこっそり見てたわよ、美里。今日は仕方ないわよ、蓮杖君、朝から元気なかったし」
「そうですねぇ〜。朝からしょんぼりさんでした〜」
 と、メンバーの天鷹姫里、千里の二人も加わる。チーム全員が揃った。
 曜が「だから……」と口を開く。
「だから、ショップに誘ってみたんですけど……」
「で、不発と。何かあったわけ?」
「別に。突然よね、千里?」
「はい。急にしょんぼりさんです」
「これはフラグ成立の為のイベントってわけね……なるほど」
「何よ、フラグって? また馬鹿な事考えてるでしょ、美里」
 と、姫里が言う。美里は「失礼な!」と否定した。
「私は、曜が蓮杖君を好きだから、それをどうにかしたいなと……!」
「それは余計なお世話よ。曜が自分でどうにかしないといけないんだから」
「え、そ、そうなんですか……?」
「当たり前でしょ。蓮杖君が好きなら、ちゃんと気持ち伝えないと」
「そ、そうですよね……」
 ちなみに、彼女達はまだ、飛鳥が明日香と付き合っている事を知らない



 その日の夜。輝凰は先代『フォース・コネクター』を集めた。
 自宅のリビングに揃う優、郁美、ゴウ。輝凰が話を切り出す。
「飛鳥について、メールで伝えたとおりだ」
「それで、先代招集ってわけ。しかし、まさか資質消失なんてね」
 そう、優が言う。郁美が難しい顔をする。
「突然ね。何か前兆とかはなかったのでしょう?」
「ああ。昨日、本人から相談を受けたけどな」
「資質は取り戻せる方法はあるのか、輝凰?」
 ゴウが訊く。難しい顔をした輝凰が渋々と答えた。
「……あるにはある」
「あるんじゃない。どんな方法?」
「負ける事だ」
 輝凰の言葉に、ゴウ、優、郁美の三人が目を見開く。
 飛鳥にその座を渡した輝凰から、その言葉を聞くとは思っていなかった。
「今の飛鳥は、どちらかと言うとスランプだ。消失と言うより、な」
「それと、負ける事がどう関係する?」
「飛鳥は、他のコネクターにはあるものがない」
「他のコネクターにはあるもの? 何、それ?」
「だから、負けたと言う経験だ」
 輝凰が話を進める。
「飛鳥は、今まで負けた事がない。どんなに強い相手でも、その持ち前のバトルセンスで勝っていた。
 その為に、飛鳥は他のコネクターに”負ける”と言う事を知らないんだ」
「それがスランプに繋がったって事?」
 優の言葉に、輝凰は頷く。
「負けた事がないから、そこから強くなる事を知らない。それが、飛鳥だ。
 そのせいで、無意識のうちに資質を使わなくても戦う方法を手に入れ、そして無意識に資質を封印した」
「無意識の封印……だから、スランプなのね」
「そうだ。このスランプは治すのに時間が掛かるだろうな」
 なにせ、無意識のうちに自分で資質を封印しているのだから。
 だからこそ、負けて無意識に資質の封印を自分で解くしかない。
 それが、輝凰の出した結論だった。
「あいつはこれ以上強くならない。飛鳥は、近いうちに必ず負ける。俺は、そう思う」
「それを先代であるきーが言う? きーの後継者よ、あすあすは?」
「分かっている。俺だって、負けて欲しいとは思いたくない。
 だが、今の飛鳥が強くなるには、負ける事以外にない。そう、俺は思うから言うんだ」



 ショップ内の喫茶店。そこで、『チーム・アレス』は仲良く会話していた。
 美里が注文していたパフェを食べながら、その味を堪能する。
「やっぱり、ここの喫茶店のパフェは美味しいよねぇ!」
「そう言いながら、もう2杯目でしょ、それ……本気で太ると思うけど?
「う……」
 姫里の言葉に、手を止める。そんな美里に、千里が言った。
「大丈夫。美里ちゃんは太っても可愛いよ〜
「それフォローにも何にもなってない! ……ダイエットするかな」
「無理なダイエットは止めた方が良いと思いますよ」
 と、曜が言う。その時、声が聞こえた。隣の席に座っている客の声。

「お前、やっぱ凄ぇよ! 登録して、一発目からSRランクになるなんてよ!」
「あれって凄く難しいだろ!? なにせ、あの『フォース・コネクター』でも厳しいって言うぜ!」
「ふん、俺は天才だぜ? あんなの楽勝に決まってるだろ」

 その会話に、『チーム・アレス』の彼女達が反応する。
 コネクター登録直後で、一気にSRランクにまでランクアップが可能とされるトーナメントをクリア。
 それは誰もやった事がない、まさに前代未聞とも言える偉業だ。
「あのトーナメントをデビュー直後でクリア!? ありえないでしょ!?」
「普通に考えればね。初期型のドライヴだったら、まず不可能だし」
「…………」
 曜が黙ったまま、会話を聞く為に集中する。

「この調子なら、『ソード・マスター』になるのも近いな、おい!」
「そうだな! 『ソード・マスター』になったら、祝いも兼ねて合コン決定だな、合コン!」
「そう言えば、強いのか? その、『ソード・マスター』ってのは?」

 と、SRランクだと思われる男が仲間に訊く。仲間はすぐに答えた。

「強いってレベルじぇねぇって! テレビとかでも散々取り上げられてるぜ!?」
「そうそう、蓮杖飛鳥は強ぇ! 一度も負けた事がないらしいからな!」
「一度も負けた事がない、か……。だったら、俺が初めて黒星を付けられるって事か」

 そう、男が言う。そして、さらに続けた。

「強いって言う奴ほど、本当は弱い。お前らが言う『ソード・マスター』は、俺からすればザコだ。
 蓮杖飛鳥……俺は奴に勝つ自身がある。俺の方が、奴より強い」

 その言葉を聞いた途端、曜が立ち上がる。そして、彼らの会話に割り込んだ。
 止めに入ろうとした美里と姫里だったが、遅かった。曜が言う。
「蓮杖君はあなたに負けません! 蓮杖君が、あなたなんかに負けるはずがありません!」
「何だ、いきなり? この俺に文句を言うなんてな……」
 そう言いながら男が立ち上がり、曜を見る。そして、少しだけ目を見開いた。
「誰かと思えば曜ちゃんじゃねぇか」
「……?」
「忘れたか? 一昨年まで、一緒に修行した仲なのによ?」
「……小野寺君?」
「小野寺? って、小野寺慶彦(おのでら よしひこ)!? あの金持ち坊ちゃんで凄いムカツク小野寺!?」
 曜と、再び止めに入ろうとした美里が驚く。
 小野寺慶彦。とある会社の御曹司であり、かつては曜と共に同じ剣術を学んだ男。
 自分が金持ちと言う自覚が強く、美里曰く「ムカツクお坊ちゃん」である。
 そんな小野寺を前に、曜が言う。
「さっき言った事、取り消してください。蓮杖君は、小野寺君には絶対に負けません!」
「負けない? 負けるに決まってるだろ。なにせ、俺は百年に一度の天才だ。天才がザコに負けるわけないだろ」
「うわ、自分で百年に一度の天才とか言う? 普通?」
「良く知らないけど、蓮杖君も天才の分類に入るよね。デビュー当時から負けた事ないんだし」
 姫里が言う。小野寺が鼻で笑った。
「んなわけねぇだろ。天才って言うのは、俺の事を言うんだからな」
「だからって、蓮杖君が負けるとは思いません! あなたくらい、私が……!」
「勝つって言いたいのか?」
 そして、小野寺はドライヴを取り出し、曜に突きつける。
「だったら、バトルしてみるか? 曜ちゃんが俺に勝てるとは思えないがな」
「望むところです!」
「ちょっと、曜!?」
「挑発に乗り過ぎだって、曜。相手はSRランクなんだし」
「ですけど、このまま引き下がるわけにはいきません! そのバトル、挑ませていただきます!」
「面白い。格の違いを思う存分見せてやるよ」

 飛鳥より強いと言い切る小野寺。

 この時、黒石曜は彼の強さを知る。敗北によって――――



次回予告

 明日香「黒石さんが負けちゃった……のかな?」
 明日奈「負けたのでしょうね。相手が、どれほどの強さか知らないけど」
 美里 「蓮杖君の為とは言え、まさか曜があそこまで怒るなんてなぁ……」
 明日香「それはそうと、大滝さん?」
 美里 「何?」
 明日香「飛鳥君は誰にも渡さないからね?(←ヤキモチモード全開)
 美里 「こ、怖っ!?」
 明日奈「はぁ……先が思いやられるわ」

  次回、CONNECT06.『最強と天才』

 ???「そこまで言うなら、俺が相手だ。最強のコネクターの実力、見せてやるぜ!」

 明日香「次回は、最強のコネクターが登場!」
 明日奈「最強? 最強は飛鳥しかいないわよ」
 明日香「それを私に言われても……」



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