CONNECT07.『大ピンチ』


「ちょっとちょっとちょぉぉぉーーーっとぉっ! どうなってるのよ、これ!?」
 と、大声で教室に入って来る『チーム・アレス』のリーダー・大滝美里。
 そんな彼女が、メンバーである天鷹姫里、千里の二人の前に新聞を置いた。
「『ソード・マスター戦 蓮杖飛鳥VS小野寺慶彦』って、何なのよ!?」
「って、言われてもね……。私達が知ったのも今朝だし」
「美里ちゃん、同じ新聞なんですね〜」
「いや、それ今言うとこじゃないから、千里」
 姫里が溜め息をつく。美里が周りを見渡し、飛鳥の姿を確認しようとする。
「蓮杖君は!?」
「休み。マスコミとかファン対策なんじゃない?」
「曜ちゃんもまだお休みですぅ……」
 二人の言葉に、美里は新聞を丸めながら、さらにボルテージを上げる。
 が、タイミング良く始業チャイムが鳴り、彼女の暴走は教師によって止められたのは余談である。



 自宅。飛鳥はパソコンで母のドライヴのデータを見ていた。
「……凄い。本当に、これが初期の頃のドライヴ……?」
 残されている戦闘データ。母のドライヴの動きは、圧倒的だった。
 様々なドライヴを相手に、優れた技で倒していく。それは、自分とは似ても似つかない。
「母さんのドライヴ……セルハーツとは比べ物にならないくらい、性能は低いはずなのに……」
 強い。もし、母とバトルできるなら、間違いなく自分は負ける。
 これが、初代『ソード・マスター』である母なのかと思うと、飛鳥は愕然とするしかなかった。
 父から教われと言われたが、戦闘データだけで教わるなど、甘い考えでしかない。
「……母さんが生きていたら……」
 そう、思ってしまう。母が生きていたら、自分のスランプもすぐに解決してしまうのではないか。
 そして、自分は今以上に強くなれるのではないか。
「母さん……俺はどうすれば……」
 どうすれば強くなれる。そう思いながら、さらに母のドライヴのデータを調べていく。
 すると、一つのメッセージが画面に表示された。

『This sword, To my important son ・・・.』

「これは……? 何で英語なんだよ……訳すると、えっと……」
 インターネットで翻訳サイトに行き、表示されたメッセージを入力する。
「……『この剣は、私の大切な息子へ』……。剣……?」
 データを調べる。そして、一つのデータが自動で接続していたセルハーツのドライヴに移動した。
 それを確認した飛鳥が、慌ててセルハーツのドライヴを確認する。
 ドライヴには、何の変化もない。が、一つだけ違う物が存在していた。
「……これって、アクティブ・ウェポン……実体剣だ」
 セルハーツに新しく装備された実体剣。それも、見た事もない剣だった。
 少なくとも、自分が知るアクティブ・ウェポンではない。
「この剣……優さんに訊いてみるか……」
 パソコンからドライヴを外す。その時、家のインターホンが鳴った。
 またファンかマスコミだろうと判断し、肩を落とす。
「とりあえず誰か確認して、居留守使うか」
 そう言いながら、玄関の方を窺う。そこには、マスコミやファンではなく、同じクラスの黒石曜がいた。



 同時刻。明日香達、チーム『レザリオン』のメンバーはショップにいた。
 目的はトレーニング。そして、飛鳥の事である。
「明日奈、飛鳥君の事だけど……」
「分かっているわよ。あんな物が堂々と飾ってあるものね」
 二人が見ているのは、飛鳥と小野寺のバトルの宣伝ポスターだ。
「最近様子がおかしかったのは、これがあるからかな?」
「さあ。でも、飛鳥がチームの事も明日香に任せてるって事は、相手の強さは相当なのでしょうね」
 でなければ、飛鳥が自分の事に没頭するはずもない。そう、明日奈は思った。
 本当にそうなのか、と明日香は思う。
 その時、メンバーの一人である歩がトレーニングを終えて、愚痴る。
「ったく、リーダーなんだから、トレーニングのコツとか教えてくれれば良いのに……!」
「あら、他人にコツとか訊かないとトレーニングできないのかしら、歩?」
 と、明日奈がすぐに返す。歩は言葉を詰まらせた。
「それは……」
「でも、歩の資質の事もあるし、最近の飛鳥さんは少し変な気が……」
「だ、大丈夫だよ。今、飛鳥君は何か考えがあるからだと思うし……」
 明日香が不安そうな顔をする瑞樹に言う。その時、「悪い」と誰かが謝った。
 その人物を見て、明日香が驚く。
「まさか、飛鳥がヤバイ状況になってるなんてな……すまん、俺のせいかもしれねぇ。つか、俺のせいだ」
「蓮君!? どうして、ここに? と言うより、いつから?」
「今さっきだな。そしたら、お前らが飛鳥の事で話してるからよ……」
「あら、何か関係しているわけ、ザコのあなたが?」
 明日奈の言葉に蓮が反論する。
「誰がザコだ、誰が! これでも、俺は最強のコネクターだぞ!」
「最強? 私に負けるコネクターが最強なのかしら?」
「テメ……あの時は油断したんだって言っただろ!?」
「あら、まだ言い訳するのね」
「うぅっ……」
 二人の会話に、明日香が苦笑しつつも蓮に訊く。
「そ、それより、どうして蓮君が謝るの?」
「ん? ああ……実はな……」
 蓮が話す。飛鳥に誘われ、蓮が『レザリオン』に加わった事を。
 そして、小野寺と飛鳥とのバトルを賭けて自分が戦い、負けた事を。
 それを聞いた明日奈が呆れた。
「情けないわね。最強のコネクターが、SRになったばかりの相手に負けたの?」
「それを言われるとなぁ……」
「そんな事で、『レザリオン』のメンバーとして大丈夫なのかしら?」
「……反論できねぇのが凄ぇ悔しい……!」
「勝手に話進んでるけど、あんた誰?」
 ようやく、話についていけなかった歩が訊く。瑞樹も隣で頷いた。
 明日香が紹介する。
「蓮君。飛鳥君とは中学時代の友達……だったよね?」
「おう。新垣蓮だ。これからよろしくな」
「新垣蓮って、去年の最強のコネクター!?」
「マジかよ……そんな奴がチームに……」
「大丈夫よ。巷では最強らしいけど、ザコだから」
 と、明日奈が返す。反論できない蓮は、拳を堪えるだけだった。



 自宅に訪れた黒石曜を、マスコミ達に気づかれないよう家の中へ入れ、飛鳥は紅茶を淹れた。
 リビングのソファの隣で真面目に正座をする曜に、紅茶を差し出す。
「あ、別にそんな……」
「遠慮しないで良いよ。せっかく来てくれたんだし」
「じ、じゃあ……い、頂きます……」
 そう言って、曜が紅茶を一口飲む。「……美味しい」と少しだけ笑った。
 彼女の笑顔を見た飛鳥はドキッとする。が、脳裏に明日香が浮かび、首を横に振って、その感情を殺した
 曜の向かい側に座り、話を切り出す。
「それで、どうしたの? と言うか、学校は?」
「……休みました。この事が気になって……」
 と、持っていた新聞を飛鳥に見せる。
「小野寺君とバトルするんですよね……?」
「……うん。成り行き上ね」
「ごめんなさい」
 謝る。いきなりの事で、飛鳥は内心驚いた。曜が話を続ける。
「私のせい、ですよね……。小野寺君に負けなかったら……」
「……黒石さんのせいじゃないよ。天鷹……えっと、姫里の方から話は聞いて、いつかはバトルすると思ってたし」
「けれど、蓮杖君が小野寺君とバトルなんて……」
「俺が負けるって思ってる?」
 そう言うと、曜が「そんな事ありません!」と声を上げた。
「蓮杖君が負けるだなんて思ってません! 小野寺君の強さは、バトルして分かってますけど……でも!」
 曜の言葉に、飛鳥は「大丈夫」と言って、ドライヴを取り出した。
 そして、曜に言った。
「俺は負けない。強いかもしれないんだろうけど、俺は絶対に負けない」
「蓮杖君……」
「心配させてごめんね。でも、俺は負けない。俺の親友を馬鹿にした奴には、絶対に負けない」



 バトル当日。やはり、会場は人だかりで一杯だった。
 余裕で一番良い場所を確保しているのは、先代『マグナム・カイザー』の優だった。
「ここなら、あすあすのスランプ状態も確認できるわね」
「飛鳥が負けると思っているの、優?」
 と、隣の席に座っている郁美が訊く。優は首を傾げた。
「どうだろうねぇ……。『鷹の瞳』が使えないとは言え、あすあすはゴウをも倒した最強だし」
「そうね」
「それに、飛鳥君は輝凰さんの後継者ですから、必ず勝ちますよ」
「そうそう。って、こよちゃん来たの?」
「当然です。今日のバトルはテレビでも話題になるくらいでしたから」
 そう言いながら、こよみが座る。
「それにしても、珍しいですね。飛鳥君が特設ステージでバトルするなんて」
「まーね。きーは?」
「仕事が休めないらしくて」
「医者は大変ね。そう言えば、ゴウはまだ来ないのかしら?」
「流石に難しいでしょ。ゴウはゴウで、忙しい身なんだから」
 それに、このバトルは見たくないだろう。下手をすれば、飛鳥が負けるかもしれないバトルなら。
 今の飛鳥がどんな状態に陥っているかは分からない。
 しかし、バトルの相手である小野寺慶彦の噂は、協会関係者である優でさえも興味を持ったほどだ。
「小野寺慶彦ってのがどれほど強いのか。結構興味深いのよねぇ〜」

 ハーイ! バトル始めるネー!?


 と、会場が突然暗くなり、バトル・フィールドの中心にスポットライトが当てられる。
 中心から現れるのは、カウボーイのような格好をした女性。
「皆ー! 今日は観に来てくれてサンキュ〜☆
 審判はミー! エミリー☆荻原デース♪」
 彼女の姿と笑顔に、男性の観客が「オオーッ!」と騒ぐ。
「ノリが良いわ、やっぱ」と優が笑う。
「あれがゆうゆうのお姉さんっと」
「勇治と違って、自由な人ね」
「初めて見ましたけど、楽しそうな人ですね」
「それでーは、入場デース! 赤コーナー、小野寺慶彦〜☆」
 会場の右側から、小野寺慶彦が姿を見せる。ちなみに、赤コーナーと呼ばれる物は存在しない
「そして、青コーナー♪ 蓮杖あす〜か〜☆」
 続いて、左側から飛鳥が姿を見せる。飛鳥自身も嫌がる正装で。
 飛鳥の姿を見た小野寺が笑う。
「何だよ、それ? そんな格好で俺と戦うのかよ?」
「……決まりだからな」
 本当に嫌そうに答える飛鳥。そんな彼の写真は、後の週刊誌全てでトップを飾る事となるのは余談
 エミリー☆荻原が説明する。
「バトルはシングール! 先に相手をノックダウンした方の勝ちネー!
 早速始めまShow☆ コネクトお願いネー!」
「進行早いな、相変わらず……」
「あ☆ あす〜か〜は、レガリア返還よろしくネー!」
「……慧美理さん、絶対忘れてたでしょ、それ」
「ノーノー! 忘れてナーイ、忘れてナーイ♪ それにエミリーね、エミリー☆」
「…………」
 どうでも良いか、と飛鳥は頭を切り替える。そして、バトル・フィールドの中心にドライヴを向けた。
 ドライヴから審判の元へ、ファルシオンセイバーが転送される。
 返還完了。コクピットランサーに乗り込み、ドライヴをセットする。
「……ドライヴ・コネクト! セルハーツ、セットアップッ!」



 バトル・フィールドは月面をイメージされた大地。空には地球が見える。
 しかし、あくまでイメージだ。重力などはいつもと変わらない。
「……セルハーツ、頑張ろうな」
 飛鳥の言葉に、セルハーツは一瞬だけカメラアイを輝かせる。
 目の前には、真紅のマントに気高き王を思わせる姿をした小野寺のドライヴ――――剣帝の姿。
『見せてやるぜ、蓮杖飛鳥。俺の天才としての実力を』
「…………」
「それじゃあ、用意は良いネー!?」
 審判が右手を上げる。飛鳥が集中する。
「コネクト・バトル、ファイトYeah〜!」
 バトル開始――――と共に動いたのはセルハーツだった。
 プラズマセイバーを手に、剣帝へと急接近する。
「ミラージュ・ブレイドッ!」
 初手から誇るミラージュ・ブレイドを繰り出す。小野寺は避けれなかった。
 斬撃を受け、一瞬で吹き飛ばされる。それは、誰もが見ても早い決着だと思われた。
 が、それは違った。剣帝が立ち上がる。まるで、何かにぶつかった程度の状態で。
『動きは早ぇな……あの最強とか言ってた奴より全然上か』
「ミラージュ・ブレイドで、ほとんどダメージがない……!?」
 驚く。ミラージュ・ブレイドを受けて倒れなかったドライヴは、確かに存在する。
 しかし、無傷に近い状態で倒れなかった事はない。小野寺が鼻で笑う。
『剣帝を甘く見るなよ。言っただろ、俺は天才だって』
 剣帝が剣を構える。
『疾』
 風の刃を放つ。飛鳥は即座に回避した。
 プラズマセイバーを構え直し、距離を取る。
「エアブレード・ストームッ!」
 振るう。竜巻が放たれた――――が、剣帝には通用しなかった。
 左腕の盾で防御し、「甘い」と小野寺が笑う。
『お前じゃ俺には勝てないんだよ、『ソード・マスター』。俺の方が天才で強いんだからな』
 セルハーツの攻撃を防いだ剣帝のマントの下から、複数の物体が放たれる。
 見せ付けるかのように銃口を前に供えている小型の戦闘機。その数は10体程度。
 セルハーツを取り囲み、ゆっくりと周囲を回転する。
『やれ、サンダー・ビット』
 セルハーツの周囲を回転する戦闘機の銃口から、一斉にビームが放たれる。飛鳥は舌打ちした。
 ゴッドランチャーを取り出し、撃つ。その反動を利用して、後退。
 が、放たれたビームがセルハーツの右肩を撃ち抜いた。
「ぐあっ!?」
 バランスを崩す。サンダー・ビットと呼ばれる戦闘機の銃口が、容赦なくセルハーツを狙う。
「くそっ……!」
 放たれるビームを素早く回避。そして、反撃。
「エアブレード! ゴッドランチャーッ!」
 風の刃を放ち、その次の瞬間にゴッドランチャーを撃つ――――ものの、剣帝には届かなかった。
 サンダー・ビット10機が剣帝の前でバリアを展開している。
「バリア……!?」
『良いだろ、この武器? サンダー・ビットは、攻撃と防御の両方で使えるんだよ』
 そう言いながら、剣を取り出す。
『そして、この神魔による技は、お前でも避けれねぇ』
「…………」
『飛燕・獣』
 剣帝が剣を振るい、風の刃を放つ。飛鳥もエアブレードを放った。
 激突する二つの刃。しかし、次の瞬間、飛鳥の目が見開かされた。
 剣帝の放った風の刃がエアブレードを破り、セルハーツに襲い掛かる。
「エアブレードを……くっ!」
 向かって来る風の刃を回避する――――瞬間、サンダー・ビットがセルハーツを囲んだ。
「――――!」
『終わりだな、蓮杖飛鳥』
「――――やるしかない……!」
 プラズマセイバーを戻し、イクサ・グレイルを取り出す。
「輝凰……斬・王・陣ッ!」
 剣を大地に突き刺し、セルハーツの周囲からエネルギー波を放つ。風の刃とサンダー・ビットの攻撃を防いだ。
 そして、素早く空中へと跳躍し、左腕の雷聖弓を展開させる。
「イクサ・グレイル、エネルギーリロード・フルッ!」
 イクサ・グレイルの柄が回転し、6発の薬莢が排出される。
「ライトニング……ストラァァァイクッ!」
 雷聖弓で射る。雷を纏ったイクサ・グレイルが、物凄い速さで放たれた。
 サンダー・ビットの展開するバリアを貫き、剣帝に直撃する。
 と、誰もがそう思ったに違いない。が、それはなかった。
 サンダー・ビットの展開するバリアは貫かれず、イクサ・グレイルを完璧に防いでいる。
 飛鳥が驚く。
「防いだ……!? 全弾リロードのライトニング・ストライクを……」
『これがお前の最強の技かよ? ふん、弱過ぎるな』
 余裕の笑みを見せる小野寺。流石の飛鳥も、こればかりは動揺を隠せなかった。



次回予告

 明日香「う、嘘だよね!? 飛鳥君が全然歯が立たないなんて……」
 明日奈「強いわね、あのドライヴ……」
 明日香「これじゃ、本当に飛鳥君負けるんじゃ……!?」
 明日奈「初めての敗北ね……」
 歩  「ま、まだ、そう決まったわけじゃねぇだろ!? 蓮杖が負けるなんて!」
 瑞樹 「そ、そうですよ! 飛鳥さんなら、きっと勝ってくれるはず……!」
 明日奈「それを願うしかないわね」
 明日香「明日奈、冷静過ぎっ!」

  次回、CONNECT08.『今の自分がやるべき事』

 飛鳥 「……俺が今やるべき事は、悩む事じゃない……今やるべき事は、このバトルに勝つ事だ!」

 明日香「飛鳥君、勝つよね!? 負けないよね!?」
 明日奈「飛鳥なら勝てる。私はそう信じているわ」
 明日香「私だって信じてるよ! 頑張って、飛鳥君!」
 歩  「負けんじゃねぇぞ、蓮杖! あんたが負けるのは絶対に見たくねぇからな!」
 瑞樹 「私も応援してます! え、えっと……じ、次回もドライヴ・コネクト!」






























 瑞樹 「……これで良いんですか、蓮さん?」
 蓮  「おう。これで、次回予告はバッチリだ!」
 瑞樹 「本当かな……?」
 飛鳥 「……つか、主役の俺が最近、次回予告してないのって、どーよ?」
  ※問題無し(殴



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