小野寺慶彦とのバトルから数日。飛鳥は、自宅のパソコンと常に睨み合っていた。 「やはり、こいつを完成させるには、ファイナルハーツのデータをどうにかしないと……」 万が一の切り札である、セルハーツの本来の状態ファイナルハーツ。 今作っている物を完成させるには、そのファイナルハーツのデータをどうにか使える物にする必要がある。 「……それにしても」 ふと、思い出す。小野寺慶彦とのバトルが終わった後の輝凰との会話を。 「飛鳥、それは『鷹の瞳』じゃない」 「え……!?」 輝凰の元へ訪れ、全ての経緯を話した直後、飛鳥はそう言われた。輝凰が話を続ける。 「『鷹の瞳』の特徴を答えてみろ」 「……動体視力を高める事で、動きを読んで見切る事です」 「そうだ。それが、俺や一部のコネクターが持つ『鷹の瞳』だ」 「…………」 「お前のは、次元が違う。お前は、見える物全ての情報を把握して、見切っている。 それは、『鷹の瞳』じゃない。お前の資質は、全く別の代物だ」 目に見える全ての物。距離、時間、動きの全ての情報を完全に把握できる力。 それは、『鷹の瞳』とは全く異なる力だ。 「敢えて言うならば、空間把握能力。それが、お前の本来の資質だ」 「空間把握能力……」 「そうだな……視界に入る空間全ての情報から見切りを引き出せるから、『鷹の閃眼』ってところか」 「『鷹の閃眼』、か……」 あまり分からないが、輝凰が言うには、それが今回のスランプの原因らしい。 元々、自分には空間認識能力が優れているらしく、その能力と『鷹の瞳』が合わさろうとして、 一時的に『鷹の瞳』が使えなくなったと言う。 「そう言えば、昔、優さんにも同じ事を言われたような気がする」 が、思い出せない。いや、思い出したくもない。あの人との思い出は、いつも悲惨だった気がする。 とりあえず、今はこれをどうにかしなければと、パソコンに集中する。 「…………」 集中し、ただ黙々とキーボードを叩く。 この日、明日香はサブリーダーとして、『レザリオン』の事をガルノアと相談していた。 ショップ内の喫茶店で、二人で紅茶を注文して話をしている。 「あ、あの……隆也君と美雪ちゃんは……?」 「今日は母親と出掛けている。それで、私に話とは?」 「はい……その、『レザリオン』の事で……」 ガルノアが出された紅茶を一口飲みながら、話を聞く。明日香は続けた。 「飛鳥君、最近は自分の事で色々と大変だから、サブリーダーになってる私がしっかりしないとって……。 でも、私にはどうすれば良いのか、全然分からなくて……」 「あまり気にする事ではない」 ガルノアの言葉に、明日香が目を丸くする。 「え……?」 「彼が何を考えているのか、私には分かっている。『レザリオン』の事は気にする事はない」 「でも……」 「心配しなくて良い。蓮杖春香の息子は、自分の『レザリオン』をちゃんと考えている」 「自分の『レザリオン』……?」 「そうだ。まだ、『レザリオン』としては足りない物があるが、彼は少しずつ良きチームへとしている」 ガルノアが話を続ける。なんでも、『レザリオン』には最強だった秘訣があるらしい。 そして、飛鳥もそれを知っており、それは現『レザリオン』メンバーも関係するとか。 「『レザリオン』の事は、蓮杖春香の息子に任せておけば良い。それ以外の事をサポートするのがサブリーダーだ」 「は、はい。あの……」 明日香が訊く。 「……どうして、飛鳥君の事をいつも『蓮杖春香の息子』って言うんですか?」 いつも疑問に思っていた事だった。少し間を置いて、ガルノアが答える。 「……癖になっている。それだけだ」 同時刻。明日奈、蓮、歩、瑞樹の四人はバトル・フィールドでトレーニングをしていた。 バトル形式のトレーニング。明日奈と蓮が容赦なく歩と瑞樹を攻撃する。 「少しは手加減しろよ!? あんたらSランクだろ!」 「あら、Sランクだからって手加減していたら、強くなれないでしょ?」 「それは分かるけど、何で蓮杖じゃないんだよ!」 「仕方ねぇだろ、飛鳥は今大変なんだよ」 歩の反論を呆気なく返す。後方で援護している瑞樹は溜め息をついた。 「歩、文句ばかり言わないで、攻撃した方が良いと思う」 「んな事言っても、この二人の強さがどんなか瑞樹も分かるだろ!?」 「分かってるけど、これもトレーニングなんだから」 「トレーニングって、俺はもう何日もバトルしてないんだぜ!?」 そう、歩はここ数日間、バトルをさせてもらえていなかった。 飛鳥曰く、「まともな実力になるまではバトル禁止」とか。 しかし、反発せず、素直に言う事を聞いている歩は色んな意味で馬鹿な気がするが。 そう思いながら、明日奈が溜め息をつく。 「飛鳥が言う事も正しいわね。自分に託された武器がどんなものか分かっていないでしょ、あなた?」 「託された武器って……ブラッディ・ファングの事かよ?」 「違うわ。ブライト・オブ・ボルテッカの方よ」 エネルギーの充填時間が掛かるものの、威力の優れたブライト・オブ・ボルテッカ。 明日奈は、その武器を飛鳥から託された意味を問うが、歩には答えられなかった。 「……どう言う事だよ?」 「メモリースティックの状態で渡された物が、どんな意味で託されたか理解できてる?」 「……そう言うあんたはどうなんだよ!?」 「私には分かっているわ。私が、なぜグランドクロスセイバーを託されたのか、その意味くらい」 そう言いながら、蓮の方を見る。そして、またも溜め息をついた。 「最強のコネクターも理解できていないでしょうけど」 「俺に振るのか、いきなり!?」 「当然よ。あなたも、飛鳥がスカウトしたんだから」 飛鳥には、何か考えがあって、このメンバーをスカウトしている。 それは、『レザリオン』と言うチームが最強になる為なのだろうと明日奈は思っていた。 しかし、それを理解できている人間は少ないようだ。 「飛鳥がどう言う理由でスカウトしているのか分かってないなんて、ザコにもほどがあるわね」 「うるせぇ! ザコとかいちいち言うんじゃねぇよ!」 「そうだ! 俺だって、最近は『空の瞳』を意識して使えるようになってきてるんだ!」 反論する蓮と歩。その様子を見ていた瑞樹は、ただ苦笑するしかなかった。 「蓮さんと歩って、なんだか似て――――明日奈さん、蓮さん、私達とは別のドライヴ反応!」 「何!?」 「後ろね」 そう言って、明日奈のハデスハーツが後ろへ振り向き、氷の刃を複数放つ。いくつもの爆発が起きた。 爆煙がしばらく続き、消える。そこには、何十体ものドライヴが存在していた。 歩が目を見開く。 「な……こいつら!?」 「勝手にコネクトするなんて、違法コネクターね」 「つーか、あいつらって……」 蓮が違法コネクター達のドライヴを見る。どのドライヴも、どこかにチーム名と髑髏のマークを刻んでいる。 「……『スカルナイツ』じゃねぇか」 「スカルナイツって、飛鳥が何度も制裁している例のチームでしょう?」 「ああ。結構しつけぇらしいぜ」 『聞け、平民ども!』 一体、金色の装甲に包まれたドライヴが先頭に立つ。 『これより、お前達が持つ武器は全て! この僕、柏木影二が所有する!』 「……何言ってんだ、お前? 何様のつもりだよ?」 『柏木影二様だ! お前達、あいつらの武器を全て奪え!』 柏木影二の一声に、『スカルナイツ』のドライヴが一斉に襲い掛かる。 パソコンと睨み合っていた飛鳥は、空腹を感じて台所へ向かった。 「気づけば徹夜してるな、俺……思いっきり腹減った……」 とりあえず、何か食べよう。そう思って台所へ着くと、何かを見つけた。 オニギリだ。オニギリが二つ、皿の上に載ってラップされている。 「……明日香か?」 そして、皿の下に敷かれていた紙に気づき、取る。手紙だった。
「明日奈が来てたんだ……今思えば、美緒もいないし……」 今日は保育園のない日だ。どこに行ったか探そうと思ったら、ドライヴにメールの着信が入っていた。 「……月子さんからメール着てるし」 月子は、飛鳥の叔母だ。どうやら、美緒は叔母である月子の所にいるらしい。 流石に反省する。自分の事で集中し過ぎたと。 「もう少しで終わるし、『レザリオン』の様子だけ見て、今日は美緒と遊んでやらないとな……」 そう言いながら、オニギリを一口食べる。 突如乱入してきた『スカルナイツ』。明日奈と蓮が素早く動いた。 「フレイムヴァイパー!」 「アース・リヴァイアーッ!」 次々と敵ドライヴを倒す。その強さを見て、歩は驚くだけだった。 トレーニングの時と違い、二人の強さは比べ物にはならない。 自分を相手にしていた時の状態は、あれでも手加減だったのだ。そう思うと呆然としてしまう。 「あの二人……無茶苦茶強ぇ……」 あれが、Sランク――――それもかなりの実力を持った優秀なSランクコネクターなのだろうか。 「あんだけ強い二人って事は、蓮杖の奴はどんだけ強いんだよ……」 全く予想できない。この間の『ソード・マスター』戦の時は、苦戦していたのに。 けれど、相手は違法していたと聞く。 「……くそっ、俺だって!」 歩のアルトリアス・ツヴァイが剣を構える。 「あの金色のドライヴを倒せば、こいつらは撤退でも何でもするはずだ!」 明日奈と蓮がザコを倒し、その隙を見つけて突撃する。そして、柏木影二のドライヴに攻撃を仕掛けた。 が、銀色のドライヴに攻撃を阻まれる。 「こいつ……!?」 『…………』 銀色のドライヴが瞬時に殴る。アルトリアス・ツヴァイが大地に倒れた。 『影二様のゴールドマスターに手を出そうとするとは、愚かな奴だ』 「くそっ……こいつ……!」 『平民が僕に近づくな! ラルク!』 『はい』 影二の手下の一人、ラルクのドライヴが攻撃する。アルトリアス・ツヴァイは吹き飛ばされた。 『ザコは大人しくしていろ』 「あ……う……」 「歩!」 瑞樹が近寄る。が、それをラルクは見逃さなかった。 銀色のドライヴが両腕の爪で瑞樹のドライヴ――――エリアル・ファルケに襲い掛かる。 「――――!」 『終わりだ』 振り下ろされる爪。瑞樹が思わず目を閉じる。しかし、何も起こらなかった。 エリアル・ファルケの周囲に、いくつかの羽根が存在し、バリアを覆っている。 そして、ラルクのドライヴに一体のドライヴが攻撃した。 「……明日香さん、ガルノア……さん……」 「大丈夫、瑞樹ちゃん!?」 「無事か?」 明日香とガルノアだった。二人は、この状況を知って、すぐに駆けつけたのだ。 そんな二人に、『スカルナイツ』のドライヴ達を退けながら、明日奈と蓮が駆け寄る。 「助かったわ、明日香」 「これで、飛鳥以外が揃ったわけだ。……しっかし、んだよ、この数……!」 「違法による大群と言う事か」 そう言いながら、ガルノアが柏木影二を睨みつける。柏木影二は怯んだ。 『な、何だ、お前!?』 「なぜ、このような事をしている?」 『決まってるだろ? レア・ウェポンを手に入れる為だ!』 「『レア・ウェポン』を?」 『そうだ! 幻のレア・ウェポンを手に入れて、僕が最強になる! この僕、柏木影二が!』 「そうか……」 ガルノアが剣を構える。そして、次の言葉を放った。 「知りつつも法を破るか。ならば、『全てを悟りし者』である私自らが裁きを下そう」 次回予告 明日香「スカルナイツが狙ってるのは、『レア・ウェポン』みたい……」 明日奈「そのようね。それにしても、何度反則行為をすれば気が済むのかしら?」 明日香「飛鳥君が何回も制裁してるって言ってたけど、懲りないのかな?」 明日奈「懲りないんでしょうね」 次回、CONNECT10.『新たなるセルハーツ』 飛鳥 「試すにはちょうど良い。パワーアップしたセルハーツの力、見せてやるぜ!」 明日香「次回は、ついに登場! 新しいセルハーツ!」 明日奈「そう言えば、飛鳥は大丈夫かしら? オニギリの塩と砂糖を間違えたの、あとで気づいたけれど」 明日香「え、嘘……?」 飛鳥 「……お、オニギリって、こんなに甘かったっけ……? ぐはぁっ……」(←死す) |
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