CONNECT16.『本気半分、面白さ半分』


 バトル・フィールドに、マリアとセリウスのドライヴが構築される。
 マリアがセリウスのドライヴを見て訊く。
「それ、自分で作ったの?」
『……父さんが作ってくれた』
「良い父親ね。それじゃ、始めますか」
 マリアのセイレント・クイーンが動き出す。セリウスも同時に動いた。
 ドライヴの背中から幾つもの飛行体が射出され、セイレント・クイーンを取り囲む。
 そして、セリウスのドライヴがビームを撃つ。自ら射出した飛行体に向けて。
「何となく予想してるけど……」
 マリアの予想は当たっていた。取り囲む飛行体に当たったビームが反射して、セイレント・クイーンに襲い掛かる。
 予想できていた為に、普通に操作して回避する。マリアは様子を見ていた。
 9歳でSRランクと言う少年の実力を。
「命中率は良い方かな」



 二人のバトルを見ている飛鳥は、セリウスのドライヴのデータを見ていた。
 驚くくらい、性能は良い。そして、注目すべきなのは武装だ。
「機体名はアクアレイスン。『レア・ウェポン』を持っているのか……しかも、空とは合いそうにないような物を」
「飛鳥君は、どっちが勝つって思ってるの?」
 明日香が訊く。飛鳥はすぐに答えた。
「マリアが勝つ。確かに実力は凄いかもしれない。けれど、セリウスって子はまだ未熟だ」
 SRランクと言う実力は認める。しかし、それだけで『フォース・コネクター』には勝てない。
 それに、マリアは遊んでいる。本気を出していない。
「本気を出すか分からないけど、マリアなら勝つよ。勝ってくれないと困るって言うのもあるけれど」
「困る……?」
「勝ってくれないと、チームのトーナメント戦でマリアとバトルできなくなるだろ。体裁的に」
「あ、なるほど……」
 妙に納得できる明日香だった。



 セリウスの攻撃を回避しながら、マリアは考えていた。
「攻撃方法は申し分ないし、結構命中率良いのよね……回避も大変だし」
 なんとなくだが、彼は素質を持っている。勇治と同じ『狙撃の瞳』を。
 だからこそ、命中率は良い。しかし、それが活かされていないのも事実。
 その辺は9歳の少年か、と思う。
「ちゃんと教えたら、結構良い感じになるかも……」
『アクアドラゴン』
 セリウスのドライヴ――――アクアレイスンが剣から発生した水を纏い、龍の姿となって突撃してくる。
 マリアは風の流れを読んだ。ワルキューレ・エイルをバイク型から竜型へと変形させて回避する。
 そして、セリウスの持つ剣を見て、へぇ、と言葉を漏らした。
「もしかしてと思ったけど、やっぱり『レア・ウェポン』のアクアカインみたいね」
『…………』
「意外と面白いわね、君。ちょっと気に入ったかも♪」
 そう言って、セイレント・クイーンを大地に降ろす。セリウスは首を傾げた。
 マリアがセリウスに狙いを定める。
「見せてあげる。これでも、射撃は得意ってところを☆」
 ミサイルを放つ。セリウスはドライヴを動かし、回避に徹した。
 しかし、放たれたミサイルがそれを読んでいたかのように飛んでくる。
「残念。ちゃんと動きは読んでるのよ」
 ミサイルがアクアレイスンを襲う。セリウスは舌打ちした。
『……っ!』
「さあ、どうする?」
『…………』
 追い詰められるセリウス。その時、彼は意を決した。
 剣を構え、エネルギーを集中して大地へと振り下ろす。
『ノア・ザ・アーク……!』
 大量の水が発生し、大津波が起きる。
 ひゅー、とマリアが感嘆しながら、セイレント・クイーンを空中へと逃がす。
「驚いた。そんな事が出来るのね」



 セリウスが技を放った後の状態を見て、飛鳥は驚いた。
 バトル・フィールドが水に覆われ、大地と言う大地が消えている。
「『レア・ウェポン』でバトル・フィールドを強制的に水に……!」
 確かに、そう言った力も秘めている可能性があるのが『レア・ウェポン』だが、本当にできるとは思わなかった。
「けど、このバトル中は二度と使えないはず」
 いくら、『レア・ウェポン』と呼ばれる武器でも、限界と言うものがある。
 バトル・フィールドを水へと変えたと言う事は、その武器の全エネルギーを使ったはずだ。
「ああ言う使い方を知っているなんてな」
「マリアさん、本当に勝てるの?」
「勝てるよ。確かに、セリウスの実力は大したものだ。弱点があるのも分かった」
「弱点?」
「俺が見た限りじゃ、セリウスは『狙撃の瞳』を持っている。多分、マリアも気づいている」
 ミラービットと言う反射を利用した攻撃での命中率の高さ。ただ反射させているだけでは、そう簡単にはいかない。
「けど、資質の使い方は歩同様、全然分かっていない。歩よりは上手いけど」
 その言葉に、遠くで聞いていた歩が落ち込んだのは言うまでもない。



 バトル・フィールドが水一面に変貌しても、マリアはマリアだった。
 セリウスが攻撃する。しかし、マリアには当たらなかった。
「決着つけますか。そろそろ、資質も限界でしょうし。たこ焼き食べたくなってきたし
 セイレント・クイーンが、その機動性を増す。セリウスは目を見開いた。
 今までとは全く違う速さ。これが、『ストーム・クラウン』の実力。
「実力はあるけど、そこまでね。もう、必殺技もないんでしょ?」
『……!』
「ま、その辺はまだこれからの頑張り次第ね。と言う事で、私の勝ち♪」
 機動性を増し、空高く舞い上がったセイレント・クイーンが光を纏い、竜へと化す。
「レディエンス・ドラグーン」
 光の竜が、セリウスのアクアレイスンを呑み込んだ。



 バトルが終了した直後、マリアは早速セリウスを捕まえた。
「一つ聞いても良い?」
「……何?」
「何で『ストーム・クラウン』になりたいわけ? 今の子達って『ソード・マスター』とか『マグナム・カイザー』でしょ?」
「…………」
 確かに、マリアの言うとおりだ。今、誰もがなりたいと思うのは、『ソード・マスター』か『マグナム・カイザー』が多い。
 特に『ソード・マスター』に至っては、飛鳥のバトルを観てと言うのが起因となっている。
 マリアの問いに、セリウスが答える。
「……良かったから」
「良かった?」
「前に見た『ストーム・クラウン』戦……5歳の時くらいに見たのが、格好良かったから」
「と言う事は、お姉さまの時か。ごめんね、当人とバトルしたかったでしょ?」
「別に……今の『ストーム・クラウン』も格好良いから……」
 意外と素直だった。マリアの目が光って見えた。
「じゃあ、チームに来る? 実力も申し分ないし、歓迎するわよ」
 その言葉に、『レディエンス・ビューティーズ』の浅倉美代子が反応する。
「ま、マリア様、本気ですか!?」
「もちろん。今日のバトルでEランクに落ちたけど、実力的には申し分ないし」
「確かにそうですけど、男の子をチームにって……」
「別に良いじゃない。私の作ったチームだし」
「ですけど……」
「マリア様が決めた事ですから、反対しても無駄ですよ」
「そうですけど……」
「戦力としては十分だし、諦めたら?」
 と、セリホと里香の二人に言われる。美代子は溜め息をついて、諦めた。
 セリウスが首を横に振ろうとするが、それをマリアが止める。
「断らないの。私が決めたんだから。君を後継者にするって
「…………」
「私が『ストーム・クラウン』にしてあげる。ちゃんと教えてあげるから、チームに入りなさい」
「…………」
 セリウスが頷く。マリアにとって、予想外だが嬉しい展開となった。



 マリア達のやり取りを見ていた飛鳥は、やれやれと言った感じだった。
 暇だったから買っていた紅茶を飲みながら、「帰るか」と言い出す。
「多分、あのまま流れ的にたこ焼きだろうし、マリアの場合」
「そうだね……でも、バトルしなくて良かった気もするかな」
 なにせ、今回の予定していたバトルでは、マリアが相手だったからだ。
「当面は、いつも通りで良いか。どうせ、メンバー集めもしないといけないし」
「メンバー集めって……まだやるの?」
「もちろん。今のままじゃ、トーナメントで優勝なんてできない。不安要素もまだあるしな」
 そう言って、歩を見る。気づいた歩が反発した。
「何で俺だよ!?」
「お前以外に不安要素がいると思うか? まだ、俺や明日奈、蓮とまともに連携できていないだろ」
「それは……」
「瑞樹との連携だけじゃダメなんだ。最低限、蓮との連携ができないと困る」
 チームとしてバトルする為にも、最低限の事はできるようにする。それが、飛鳥の言葉だった。
 歩が落ち込む。そんな歩に明日香が声を掛けた。
「だ、大丈夫だよ。またトレーニングすれば良いんだから」
「なかなか成果が出ないけれどね」
「あ、明日奈!」
「……本当、何で俺スカウトされたんだろ……」
 どんな時でも精神的ダメージを受ける歩だった。



 一方、『レディエンス・ビューティーズ』は、マリア宅で地獄が始まっていた
「今回はたこ焼きスペシャル〜♪」
「スペシャルって……何ですか、このカラフルなたこ焼き……」
 出されたたこ焼きに青ざめる浅倉美代子。隣に座る天野里香も同じだった。
 赤、青、緑、黄、紫、黒。六つの色に染まったたこ焼き。
 赤色のたこ焼きを食べたセリホが感想を言う。
「これは唐辛子と紅ショウガですね? 流石はマリア様、良い出来です」
「でしょ?」
「……いつも思うけど、何であの人は平気なわけ?」
「私が知るわけないでしょ……」
 二人は思う。なぜ、彼女は食べても平気なのか。
 マリアが二人に近づく。そして、その手にはたこ焼きがあった。
「ほら、二人も食べないとね♪」
「いや、私、ダイエット中なので……」
「じ、実は私も……」
「大丈夫大丈夫。ダイエットにも効果はあるはずだから☆」
「何を根拠に……って、ちょっと待って……――――!?」
 美代子の口に運ばれた緑色のたこ焼き。それを食べさせられた瞬間、彼女は白目で気絶した
「うん、気絶するほどの美味しさと。流石は私ってところかな♪」
「いや、この反応は違うと思う……」
「ほら、次は里香」
「ち、ちょっ!?」
 今度は、紫色のたこ焼きが里香の口に運ばれる。そして、同じように気絶した
 その一部始終を見ていたセリウスは恐怖に震えていた。
 マリアがセリウスの隣に座り、捕まえる。そして、今度は青色のたこ焼きを持っていた。
「セリウスは水系の武器持っていたから、それに青で行こうか?」
 その言葉に、高速で首を横に振るセリウス。しかし、マリアは容赦なかった。

 この日、マリアの後継者は、一生消える事の無いトラウマを背負った。



次回予告

 明日香「……えっと、最後のって……」
 飛鳥 「久々の”あれ”だな……」
 マリア「うーん……やっぱり勇治も呼ばないといけないわね」
 勇治 「断る」
  ※流石に末恐ろしいマリアの”あれ”でした(汗

  次回、CONNECT17.『最強チームの危機』

 ゴウ 「さて、どうしたものか……」

 明日香「次回の主役はゴウさん!」
 飛鳥 「って、ちょっと待て! ゴウさんが主役!?」
 マリア「引退したのに何やってんだか……」
 飛鳥 「と言うか、タイトルからして主役は紅葉とか晃鉄さんなんじゃ……」
  ※まぁ、それは次回のお楽しみって事で。

 飛鳥 「おいこら、逃げるな作者」
 明日香「最近の次回予告が酷くなってる気がする……」
  ※目指せ、次回予告が面白い作品!(待



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