CONNECT18.『真なる継承を』


 バトル終了後、紅葉は落ち込んでいた。
 総合Aランクの相手とは言え、最強のチームの一角だった『ランドライザー・コマンド』の敗北。
 それは、間違いなく自分の責任だと思っている為。
「紅葉、話がある」
 晃鉄が話し掛ける。紅葉は顔を俯いたままだった。
「…………」
「紅葉、今回のバトルで決めた事がある」
「……自分のリーダー解任ですか?」
 絶対にそうだと思った。だからこその発言だった。晃鉄が首を横に振る。
「違う。次のバトルで、総合Sランクのチームと話を付けて来た」
「……それが決めた事ですか?」
「そうだ。バトルは二週間後。それまでに、お前にはやるべき事をやってもらう」
 晃鉄がドライヴを紅葉に向ける。
「紅葉、お前にはリーダーとして欠けている物がある。だからこそ、特訓を実施する」
「特訓?」
「そうだ。お前には、あの人と特訓してもらう」



「やはり、僕の出番のようだね」
 ショップ内の喫茶店。そこで、ゴウは晃鉄と紅葉に呼び出されていた。
 ある程度の事情を晃鉄から聞き、納得する。
「やはり、突然だったね。すまないな、紅葉。君の為にもある程度は話しておくべきだった」
「いえ、リーダー、そんな事は……」
「だからこそ、お願いします。ちゃんとした形で『ランドライザー・コマンド』リーダーの座の引き継ぎをしてください」
「うん。分かった」
 そう言って、ゴウがメモリースティックを紅葉に渡す。
「これは……?」
「君がAランクになった時の為にと思って作ったアクティブ・ウェポンだよ。渡すのを忘れていた」
「リーダー……」
「紅葉、そのアクティブ・ウェポンを使って特訓しよう。君には、確実にラックアップしてもらう」
 ゴウの言葉に、紅葉が首を傾げる。
「ランクアップ、ですか?」
「そうだ。君にはSランクになってもらう。それがリーダーの座を託す条件だ。その為に特訓する。覚悟は良いな?」
 ドライヴを構え、ゴウが紅葉に言う。紅葉の瞳が輝き出した。
 サブリーダーだった頃の、憧れた人の背中を追い続けてきた瞳。
「……はい! よろしくお願い致します、リーダー!」
「よし。じゃあ、始めようか、特訓を!」
「はい、リーダー!」
 そう言って、姿を消す二人。取り残された晃鉄は、心の中でツッコミを入れていた。現在のリーダーは紅葉だ、と
「これで、紅葉は大丈夫だ。次は、俺の番だな」
 そう言って、晃鉄が立ち上がる。



 明日香は溜め息をついた。
 今日は、久々にチームの特訓も自主練程度で予定も無く、暇だから店の服を見ているだけだった。
「飛鳥君の馬鹿……」
 つい、呟いてしまう。こんな時くらい、デートの一つでもしてみたい。それが本音だった。
 付き合い始めてから、まともなデートは数える程度しか行っていない。
「こう言うの着ても、飛鳥君何も言わなさそうだし……」
 そう言って、服を持って鏡の前に立つ。
「うーん……」
「明日香ちゃんの場合は、大人しめな色よりもっと明るい色の方が良いと思うわよ?」
 と、後ろから別の服を明日香の前で合わせる女性。明日香は驚いた。
「い、郁美さん……!」
「こっちの方が、明日香ちゃんにはお似合いね。どう?」
「え? えっと……私、派手な色は苦手で……」
「そこまで派手じゃないと思うけれど? それじゃ、こっちの方が良いかしら?」
 そう言って、違う服を取り出して明日香に合わせてみる。
「それで、今日は一人なのかしら? 飛鳥は?」
「は、はい。飛鳥君は多分……」
 多分、と言うより間違いなく、ドライヴの事で色々とやっているだろう。
 それを聞いた郁美が呆れる。
「全くあの子は……。今度、飛鳥には私から説教しておくわ」
「あははは……」
 苦笑しながらも、明日香は思っていた。よろしくお願いします、と



 コネクト協会のとある場所。そこに、ゴウは紅葉を連れて来た。
 紅葉が周囲を見渡す。
「……リーダー、ここは?」
「ここは、先代『マグナム・カイザー』の優が使っている開発室だよ」
 独特のセンスと天才的な技術で様々なアクティブ・ウェポンを作る優の為に用意された部屋。
 その入り口をノックし、入る。
「優、今回は迷惑を掛けるよ」
「本当、迷惑な話よね。今日は久々の休みだから、郁美と服でも買いに行こうと思っていたのに」
 そう言って、先代『マグナム・カイザー』である優が愚痴りながらもコンピュータを操作する。
「設定は終わってるから、いつでもコネクトして良いわよ。こっちはこっちで、やる事やるから」
「よろしく頼む。紅葉、始めようか」
「は、はい!」
 そう言って、二人がコネクトする。紅葉は内心、大喜びだった。
 久しぶりの特訓。彼のお陰で、自分はAランクまで上がり、『ランドライザー・コマンド』のサブリーダーになれた。
 だからこそ、期待する。今度はどんな特訓なのか。
「よろしくお願いします、リーダー!」
 コネクトしたクリムゾン・ティアーズが構える。刹那、ゴウのプラディ・ラ・グーンは既に動いていた。
 接近され、左拳が炸裂する。
「――――!?」
「言ったはずだ、紅葉! お前にはSランクになってもらうと!」
 クリムゾン・ティアーズを吹き飛ばしたプラディ・ラ・グーンが、右に装備していた盾を左に装備し直す。
「お前が今から行う特訓はただ一つ! この俺に勝つ事、それだけだ!」
 ゴウが鋭く睨みつける。この時、コンピュータを操作しながら、特訓を見ていた優は思っていた。
 この特訓は、確かに紅葉にとっては良い経験になる。しかし、ゴウに勝てる訳がない
「ゴウに勝てたらあすあすと互角にバトルできるわよ、普通に」
 どう見ても、その事を忘れているゴウだと思われるが、特に気にしない優だった。



 翌日。晃鉄は、自分の後継者である輝を呼び出していた。
「晃鉄さん、今日はどうしたんですか?」
「今度、チーム『カタストロフィ』とバトルする」
「は!?」
 輝が驚く。晃鉄が繰り返した。
「チーム『カタストロフィ』とバトルだ。ルールは公式トーナメントと同じ7対7。当然、俺もバトルする」
「いや、バトルの内容とかはともかく! 『カタストロフィ』って!?」
 チーム『カタストロフィ』。チーム全員がSランクと言うとんでもないチームだ。
 何度もチームバトルを行って、チームとして勝利は上げている。
 しかし、それは先代『ディフェンド・キング』の統率力や現在の『ディフェンド・キング』による采配によるものが多い。
 今のチームでは、いくら『ディフェンド・キング』の采配があっても勝機は薄いと言っても良いだろう。
「無理ですよ! いくら、晃鉄さんの采配があるとは言え、今のうちのチームじゃ……!」
「普通に『ランドライザー・コマンド』の方が強い。俺、紅葉、輝の一軍3人と二軍4人でバトルを行う」
「って、俺と晃鉄さんと紅葉以外は全員二軍って!?」
 輝の中で、敗北のイメージが確定する。晃鉄が話を続けた。
「二軍とは言え、実力はAランク以上が多い。作戦や指示によっては普通に勝てる」
「いやいやいや!?」
「紅葉の方は、あの人に任せているから大丈夫だろう。問題は……」
 晃鉄が輝を鋭く睨みつける。
「問題は、俺の後継者として選んだお前だ。前回のバトル、俺の指示があったからとは言え、油断し過ぎだ」
「う……」
「よって、お前にも特訓を課す。この特訓がクリアできなければ、後継者としての関係を断つ
「…………」
「良いな?」
「……う、うす」
 晃鉄の言葉は本気だった。輝は諦めて、覚悟を決めた。



 優の予想通り、紅葉はゴウに一撃も与える事は出来なかった。
 それもそのはず、先代『ディフェンド・キング』であり、最強のコネクターと言っても良いゴウの方が強過ぎる。
 さらには、その強過ぎるゴウが手加減を一切せず、全力で特訓の相手を務めているのも原因だ。
「……本当、ゴウって馬鹿よね、熱血モードの時は」
 普段は物静かな感じでいるのに、ドライヴを持つと豹変する。
 間違いなく、ゴウはハンドルを持つと性格が変わるタイプだ。
 だからこそ、優は思った。絶対にゴウの運転する車には乗らないと
『どうした、紅葉っ! そんな事で、Sランクになれるとでも思ったか!』
『も、もう一度お願いします、リーダー!』
『その意気だ! もう一度行くぞ!』
「そろそろ終わって欲しいんだけど。やる事やって、暇なんだけどなぁ……」
 こんな時、飛鳥か勇治がいると良い。あの二人こそ、暇潰しには丁度良い。
「ん、あすあすと言えば……」
 この前――――勇治のバトルの時に、飛鳥が見せたアクティブ・ウェポンを思い出す。
 見た目は洗練され、上級の『レア・ウェポン』と言っても良い実体剣。
「心当たりは無いけど、予想としては……」
 誰もが手に入れたい『レア・ウェポン』。その可能性がふと脳裏に浮かび上がる。
「もう一度、あすあすに見せてもらうかな」
『フルパワァァァ・ディオォォォスッ……クラッシャァァァァァァーッ!』
 と、ゴウが叫ぶ。それを聞いた優は溜め息をついた。
 モニター越しに確認する。紅葉のクリムゾン・ティアーズが完全に沈黙していた。
『立て、紅葉! そんな事ではSランクにランクアップなど、到底無理だぞ!』
「いや、だから手加減しなさいって……」
 容赦無いゴウの言葉。優にとって、暇な時間はまだ続くのであった。



次回予告

 飛鳥 「ほら、やっぱり容赦無かった……」
 明日香「ゴウさん、どんな時でも本気なんだね」
 ゴウ 「よし、徹夜で特訓だ!」
 飛鳥 「まだ熱血モードだし……」
 明日奈「それはそうと、飛鳥の出番無かったわね。主人公なのに」
 明日香「あ、あははは……」
  ※たまには、主人公休みで(殴

  次回、CONNECT19.『最強宣言』

 紅葉 「私がいる限り、『ランドライザー・コマンド』は負けません!」

 明日香「次回は、紅葉さん大活躍!」
 飛鳥 「だと良いんだけど……特訓の成果出たのかどうか……」
 明日香「あ、飛鳥君、それを言ったら……」



<< CONNECT17.     CONNECT19. >>     戻る     トップへ





SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送