バトル終了後、紅葉は落ち込んでいた。 総合Aランクの相手とは言え、最強のチームの一角だった『ランドライザー・コマンド』の敗北。 それは、間違いなく自分の責任だと思っている為。 「紅葉、話がある」 晃鉄が話し掛ける。紅葉は顔を俯いたままだった。 「…………」 「紅葉、今回のバトルで決めた事がある」 「……自分のリーダー解任ですか?」 絶対にそうだと思った。だからこその発言だった。晃鉄が首を横に振る。 「違う。次のバトルで、総合Sランクのチームと話を付けて来た」 「……それが決めた事ですか?」 「そうだ。バトルは二週間後。それまでに、お前にはやるべき事をやってもらう」 晃鉄がドライヴを紅葉に向ける。 「紅葉、お前にはリーダーとして欠けている物がある。だからこそ、特訓を実施する」 「特訓?」 「そうだ。お前には、あの人と特訓してもらう」 「やはり、僕の出番のようだね」 ショップ内の喫茶店。そこで、ゴウは晃鉄と紅葉に呼び出されていた。 ある程度の事情を晃鉄から聞き、納得する。 「やはり、突然だったね。すまないな、紅葉。君の為にもある程度は話しておくべきだった」 「いえ、リーダー、そんな事は……」 「だからこそ、お願いします。ちゃんとした形で『ランドライザー・コマンド』リーダーの座の引き継ぎをしてください」 「うん。分かった」 そう言って、ゴウがメモリースティックを紅葉に渡す。 「これは……?」 「君がAランクになった時の為にと思って作ったアクティブ・ウェポンだよ。渡すのを忘れていた」 「リーダー……」 「紅葉、そのアクティブ・ウェポンを使って特訓しよう。君には、確実にラックアップしてもらう」 ゴウの言葉に、紅葉が首を傾げる。 「ランクアップ、ですか?」 「そうだ。君にはSランクになってもらう。それがリーダーの座を託す条件だ。その為に特訓する。覚悟は良いな?」 ドライヴを構え、ゴウが紅葉に言う。紅葉の瞳が輝き出した。 サブリーダーだった頃の、憧れた人の背中を追い続けてきた瞳。 「……はい! よろしくお願い致します、リーダー!」 「よし。じゃあ、始めようか、特訓を!」 「はい、リーダー!」 そう言って、姿を消す二人。取り残された晃鉄は、心の中でツッコミを入れていた。現在のリーダーは紅葉だ、と。 「これで、紅葉は大丈夫だ。次は、俺の番だな」 そう言って、晃鉄が立ち上がる。 明日香は溜め息をついた。 今日は、久々にチームの特訓も自主練程度で予定も無く、暇だから店の服を見ているだけだった。 「飛鳥君の馬鹿……」 つい、呟いてしまう。こんな時くらい、デートの一つでもしてみたい。それが本音だった。 付き合い始めてから、まともなデートは数える程度しか行っていない。 「こう言うの着ても、飛鳥君何も言わなさそうだし……」 そう言って、服を持って鏡の前に立つ。 「うーん……」 「明日香ちゃんの場合は、大人しめな色よりもっと明るい色の方が良いと思うわよ?」 と、後ろから別の服を明日香の前で合わせる女性。明日香は驚いた。 「い、郁美さん……!」 「こっちの方が、明日香ちゃんにはお似合いね。どう?」 「え? えっと……私、派手な色は苦手で……」 「そこまで派手じゃないと思うけれど? それじゃ、こっちの方が良いかしら?」 そう言って、違う服を取り出して明日香に合わせてみる。 「それで、今日は一人なのかしら? 飛鳥は?」 「は、はい。飛鳥君は多分……」 多分、と言うより間違いなく、ドライヴの事で色々とやっているだろう。 それを聞いた郁美が呆れる。 「全くあの子は……。今度、飛鳥には私から説教しておくわ」 「あははは……」 苦笑しながらも、明日香は思っていた。よろしくお願いします、と。 コネクト協会のとある場所。そこに、ゴウは紅葉を連れて来た。 紅葉が周囲を見渡す。 「……リーダー、ここは?」 「ここは、先代『マグナム・カイザー』の優が使っている開発室だよ」 独特のセンスと天才的な技術で様々なアクティブ・ウェポンを作る優の為に用意された部屋。 その入り口をノックし、入る。 「優、今回は迷惑を掛けるよ」 「本当、迷惑な話よね。今日は久々の休みだから、郁美と服でも買いに行こうと思っていたのに」 そう言って、先代『マグナム・カイザー』である優が愚痴りながらもコンピュータを操作する。 「設定は終わってるから、いつでもコネクトして良いわよ。こっちはこっちで、やる事やるから」 「よろしく頼む。紅葉、始めようか」 「は、はい!」 そう言って、二人がコネクトする。紅葉は内心、大喜びだった。 久しぶりの特訓。彼のお陰で、自分はAランクまで上がり、『ランドライザー・コマンド』のサブリーダーになれた。 だからこそ、期待する。今度はどんな特訓なのか。 「よろしくお願いします、リーダー!」 コネクトしたクリムゾン・ティアーズが構える。刹那、ゴウのプラディ・ラ・グーンは既に動いていた。 接近され、左拳が炸裂する。 「――――!?」 「言ったはずだ、紅葉! お前にはSランクになってもらうと!」 クリムゾン・ティアーズを吹き飛ばしたプラディ・ラ・グーンが、右に装備していた盾を左に装備し直す。 「お前が今から行う特訓はただ一つ! この俺に勝つ事、それだけだ!」 ゴウが鋭く睨みつける。この時、コンピュータを操作しながら、特訓を見ていた優は思っていた。 この特訓は、確かに紅葉にとっては良い経験になる。しかし、ゴウに勝てる訳がない。 「ゴウに勝てたらあすあすと互角にバトルできるわよ、普通に」 どう見ても、その事を忘れているゴウだと思われるが、特に気にしない優だった。 翌日。晃鉄は、自分の後継者である輝を呼び出していた。 「晃鉄さん、今日はどうしたんですか?」 「今度、チーム『カタストロフィ』とバトルする」 「は!?」 輝が驚く。晃鉄が繰り返した。 「チーム『カタストロフィ』とバトルだ。ルールは公式トーナメントと同じ7対7。当然、俺もバトルする」 「いや、バトルの内容とかはともかく! 『カタストロフィ』って!?」 チーム『カタストロフィ』。チーム全員がSランクと言うとんでもないチームだ。 何度もチームバトルを行って、チームとして勝利は上げている。 しかし、それは先代『ディフェンド・キング』の統率力や現在の『ディフェンド・キング』による采配によるものが多い。 今のチームでは、いくら『ディフェンド・キング』の采配があっても勝機は薄いと言っても良いだろう。 「無理ですよ! いくら、晃鉄さんの采配があるとは言え、今のうちのチームじゃ……!」 「普通に『ランドライザー・コマンド』の方が強い。俺、紅葉、輝の一軍3人と二軍4人でバトルを行う」 「って、俺と晃鉄さんと紅葉以外は全員二軍って!?」 輝の中で、敗北のイメージが確定する。晃鉄が話を続けた。 「二軍とは言え、実力はAランク以上が多い。作戦や指示によっては普通に勝てる」 「いやいやいや!?」 「紅葉の方は、あの人に任せているから大丈夫だろう。問題は……」 晃鉄が輝を鋭く睨みつける。 「問題は、俺の後継者として選んだお前だ。前回のバトル、俺の指示があったからとは言え、油断し過ぎだ」 「う……」 「よって、お前にも特訓を課す。この特訓がクリアできなければ、後継者としての関係を断つ」 「…………」 「良いな?」 「……う、うす」 晃鉄の言葉は本気だった。輝は諦めて、覚悟を決めた。 優の予想通り、紅葉はゴウに一撃も与える事は出来なかった。 それもそのはず、先代『ディフェンド・キング』であり、最強のコネクターと言っても良いゴウの方が強過ぎる。 さらには、その強過ぎるゴウが手加減を一切せず、全力で特訓の相手を務めているのも原因だ。 「……本当、ゴウって馬鹿よね、熱血モードの時は」 普段は物静かな感じでいるのに、ドライヴを持つと豹変する。 間違いなく、ゴウはハンドルを持つと性格が変わるタイプだ。 だからこそ、優は思った。絶対にゴウの運転する車には乗らないと。 『どうした、紅葉っ! そんな事で、Sランクになれるとでも思ったか!』 『も、もう一度お願いします、リーダー!』 『その意気だ! もう一度行くぞ!』 「そろそろ終わって欲しいんだけど。やる事やって、暇なんだけどなぁ……」 こんな時、飛鳥か勇治がいると良い。あの二人こそ、暇潰しには丁度良い。 「ん、あすあすと言えば……」 この前――――勇治のバトルの時に、飛鳥が見せたアクティブ・ウェポンを思い出す。 見た目は洗練され、上級の『レア・ウェポン』と言っても良い実体剣。 「心当たりは無いけど、予想としては……」 誰もが手に入れたい『レア・ウェポン』。その可能性がふと脳裏に浮かび上がる。 「もう一度、あすあすに見せてもらうかな」 『フルパワァァァ・ディオォォォスッ……クラッシャァァァァァァーッ!』 と、ゴウが叫ぶ。それを聞いた優は溜め息をついた。 モニター越しに確認する。紅葉のクリムゾン・ティアーズが完全に沈黙していた。 『立て、紅葉! そんな事ではSランクにランクアップなど、到底無理だぞ!』 「いや、だから手加減しなさいって……」 容赦無いゴウの言葉。優にとって、暇な時間はまだ続くのであった。 次回予告 飛鳥 「ほら、やっぱり容赦無かった……」 明日香「ゴウさん、どんな時でも本気なんだね」 ゴウ 「よし、徹夜で特訓だ!」 飛鳥 「まだ熱血モードだし……」 明日奈「それはそうと、飛鳥の出番無かったわね。主人公なのに」 明日香「あ、あははは……」 ※たまには、主人公休みで(殴 次回、CONNECT19.『最強宣言』 紅葉 「私がいる限り、『ランドライザー・コマンド』は負けません!」 明日香「次回は、紅葉さん大活躍!」 飛鳥 「だと良いんだけど……特訓の成果出たのかどうか……」 明日香「あ、飛鳥君、それを言ったら……」 |
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