CONNECT19.『最強宣言』


 チーム『ランドライザー・コマンド』の敗北から二週間。
 飛鳥はチーム『レザリオン』の特訓を明日奈に任せていた。
「動きが遅いわね。また、あなたの負けよ」
 ハデスハーツの斬撃が、アルトリアス・ツヴァイを捉えて撃破する。
 歩、またしても敗北。それを見ていた蓮、瑞樹が溜め息をつく。
「歩、進歩無さ過ぎ……」
「お前、頭悪いだろ……」
「うぅ……」
 流石に何も言えない歩。明日奈が小銭を歩に渡す。
「罰ゲームね。私はオレンジジュースで良いわ。果汁100%の物をお願い」
「って、バシリかよ!?」
「当然でしょう? それとも、もう一度バトルして勝てるのかしら? 次負けたら、全員に奢りよ?
「う……」
「ま、諦めろ。俺アクエリな」
「あんたまで……」
「じゃあ、私はお茶で。あ、自販機で売ってるのなら何でもいいから」
「って、瑞樹もかよ!?」



 バトル当日。待ち合わせしているショップのバトル・フィールド内に『ランドライザー・コマンド』は集まった。
 晃鉄の後継者であり、サブリーダーである輝がメンバーを見て肩を落とす。
「……まさか、お前ら4人なのかよ……」
「まさかとは何だ、まさかとは!」
「こう見えても、俺らはAランク!」
「そして、お前と同い年!」
「二軍だからって馬鹿にするな!」
 二軍――――それも、桃太郎御一行だった。輝が溜め息をつく。
「よりにもよって……大体、お前らAランクのくせに実力無さ過ぎなんだよ。ドライヴも弱いし」
「ちょ、おまっ……!」
「喧嘩売ってんのか、この野郎!」
「そうか、売ってんなら買ってやる! いくらだ!?」
「金払うんかい!」
「…………」
 ギロリ。紅葉の鋭い瞳が、輝を含めた桃太郎御一行を睨みつける。5人は黙った。
 その様子を見て、今度は晃鉄が溜め息をつく。これで大丈夫なのかと。
「今日のバトルの作戦を伝える。紅葉、輝は好きなように戦え。二軍のお前達は、俺の指示に従え」
「うっす」
『サー! イエッサー!』
「分かりました。リーダーとの特訓の成果、見せてあげます」
 紅葉の気合は十分だ。どんな特訓をしたのかは分からないが、先代が引退する前の頃に戻っている。
 これなら、任せても良いだろう。
「見せてもらうぞ、紅葉。リーダーとしてのお前を」
「はい。『ランドライザー・コマンド』リーダー、鳴澤紅葉。新型、クリムゾン・アストライアと共に参ります!」



 同時刻。飛鳥は明日香と一緒に様々なバトルを見ていた。
 飛鳥の言う、メンバー集め。その為に、様々なコネクターのバトルを見る。それが飛鳥のやり方だった。
「やっぱりいないな……あと一人なんだけどな……」
「あと一人って……結構集まったと思うよ?」
「いや、今のままじゃダメなんだ。あと一人……どうしても必要なメンバーがまだ揃ってない」
「必要なメンバー?」
「ああ。リーダー、サブリーダー以外にチームを統率できるコネクター。それが欠けているんだ」
 チームバトルでは、リーダーとサブリーダーがバトル出来ない状況もある。
 その時、いくら個々が強くても負けるチームはある。それをどうにかするメンバーが必要になる。
 リーダーの代理として、チームを統率できるコネクター。飛鳥が今欲しいメンバーだ。
「ガルノアは、あくまで指南役としてだし。明日奈は冷静過ぎるし、蓮は考え無さ過ぎる。歩と瑞樹は経験的に無理。
 それを考えたら、必要なんだよ。俺と明日香以外で、チームをまとめられる奴を」
「そうなると……」
 明日香がうーんと頭を捻る。自分の知る人間の中で、飛鳥の言う条件を満たしている人物。
「……この前バトルした、織野君? とか?」(第4話参照)
「却下。確かに、織野は統率力あるけど、あいつはプロに行く為にチーム入らないから」
 呆気なく却下された。



 チーム『カトストロフィ』とのバトルが始まった。
 敵の一機が輝のゼオ・エクシードに迫る。
『くらえ!』
 放たれるミサイル。ゼオ・エクシードが右腕をミサイルに向け、攻撃を受け止める。
 そして、左に持つ盾を逆に構える。砲身が現れ、エネルギーが充填された。
「まずはビーム!」
 ビームを放つ。敵が回避する。それと同時に、今度は構えを元に戻し、複数もの砲身を出現させる。
「続いてガトリング!」
 実弾を無数に撃つ。またも敵は回避するが、それを読んでいた輝は、盾を構えて突撃した。
「超振動ナックル!」
 右腕に超振動を発生させつつ殴る。相手は盾で受け止めた。
『甘い!』
「そっちも!」
 カウンターを仕掛けてくる敵に対し、盾から刀身を出現させ、それで受け止める。
 そして距離を取り、ゼオ・エクシードが盾を前突き出して分離させた。
 超振動を発生させる右腕に、分離した盾が円を描くように集まり、そのまま高速回転を生み出す。
「これでフィニッシュだ!」
 殴る。攻撃を読んでいた敵は盾で防御したが、呆気なく貫通され、そのまま撃破された。
 輝がガッツポーズを取る。
「よし……まずは一勝!」



 一方、二軍メンバー4人に指示を出しつつ、晃鉄は紅葉の戦いを見ていた。
 深紅だった全体が、燃え盛る炎のようなカラーリングに変わった新型ドライヴは、かなりの高性能だ。
 間違いなく、先代が天才に頼んだものだろう。
「流石は、先代『マグナム・カイザー』だ。これなら、どうにか勝てるだろう」
 正直、晃鉄にとっては半分賭けだった。
 自分の後継者である輝はともかく、紅葉の実力はまだ低い。未だにAランクと言うのが現状だ。
 だからこそ、先代『ディフェンド・キング』のゴウに任せた。
「見せてみろ、紅葉。リーダーとして、先代との特訓で強くなったお前の実力を」
 そして戦況を見る。輝が一体撃破したのを確認し、首を傾げる。
 敵は残り6体。しかし、1体だけどこにも見当たらない
「何か企んでいるのは間違いないだろうが……一体どこにいる?」
『お前の後ろだ!』
 晃鉄のヴィオ・ガ・ルーンの後方の地面から敵ドライヴが出現する。「なるほど」と、晃鉄は頷いた。
「奇襲としては良い考えだ。地中に潜って後方を取ったのは褒めてやる。しかし……」
 左拳にエネルギーを集中させる。
「俺には通用しない!」
 振り向くと同時にラ・グーン・クラッシャーを放つ。



 紅葉の新型ドライヴ、クリムゾン・アストライアがチーム『カタストロフィ』のリーダー機に挑む。
「赤光!」
 繰り出される一閃。敵は剣で軌道を逸らした。
『遅い。はぁっ!』
 剣を大地に叩きつけ、その衝撃波でクリムゾン・アストライアを吹き飛ばす。紅葉はすぐに後ろへ回避した。
 シールドを投げ、内部に搭載しているミサイルを雨のように降らす。
「紅華!」
『無駄だ』
 敵が降り注がれるミサイルを後ろへと移動して回避する。紅葉はそれを読んでいた。
 武器を構え、クリムゾン・アストライアが突撃する。
「赤雨! 紅牙ッ!」
 無数の突きを繰り出し、敵を攻撃する。敵は全て剣で受け止めた。
 強い。そう、紅葉は感じた。自分の技が通用しない。
 敵が剣を再び大地に叩きつけ、衝撃波を放つ。そして、紅葉に言い放つ。
『その程度か? 所詮はAランクか?』
「……まだです。私は、絶対に負ける訳にはいかない!」
 ゴウの特訓、ゴウが天才である先代『マグナム・カイザー』に頼んでパワーアップしたドライヴを無駄にしない為にも。
 槍を構え直し、集中する。
「自分は『ランドライザー・コマンド』がリーダー、鳴澤紅葉! 全力を尽くしてでも勝つ!」
 クリムゾン・アストライアのカメラアイが強い輝きを放つ。全身から炎が上がった。
 敵を目を見開いて驚く。今まで戦ってきた相手の中で、見た事が無い事が起きている為に。
 後ろへと下がって、様子を窺おうとする。が、それは出来なかった。
 クリムゾン・アストライアの全身から発せられる炎が、気づけば、敵ドライヴを取り囲んでいる。
『これは……!?』
「はぁぁぁぁぁぁっ!」
 敵を見据えた紅葉が、クリムゾン・アストライアが突撃する。
「神槍……劫火ッ!」
 炎がクリムゾン・アストライアの槍を包み、刀身と化して敵ドライヴを一気に貫く。
 敵は防御したが、それを呆気なく破られた。
『何……!?』
 爆発。それと同時に、クリムゾン・アストライアがその場に崩れる。
 全身の炎が消え、水蒸気が吹き出る。目の前に表示される情報を見た紅葉が、その目を見開いた。
「クールダウンに200秒……!? それに、武装が全て……」
 使用不可。初めて見た状態だった。
 編み出した新技の神槍『劫火』。特訓では、こんな事は一度も無かった。
 それなのに、今はこうして動く事も出来ない。
「どうして……!?」
「どうやら、その技は使い勝手が難しいようだな」
 敵を全滅させた晃鉄が近づく。
「良くやった。それでこそ、チームのリーダーだ」
「……はい。もう大丈夫です、これでチームは負けません。『ランドライザー・コマンド』は最強です」
 そう言って、紅葉は微笑むのだった。



次回予告

 明日香「『ランドライザー・コマンド』、完全復活だね!」
 飛鳥 「ああ。紅葉も強くなったみたいだし、トーナメント戦が楽しみだね」
 明日香「私としては、戦いたくないんだけど……強いから……」

  次回、CONNECT20.『最後の一人』

 飛鳥 「見せてやるよ、俺のチーム『レザリオン』を」

 明日香「次回は久々の私達! そして、チーム戦!?」
 飛鳥 「早くメンバー揃えて、最強チームにしないとな」
 明日香「そう言えば、歩君の特訓、大丈夫かな……?」



 歩  「また俺の負け……」
 蓮  「次はコーラな」
 明日奈「私は紅茶で良いわ。喫茶店で販売している方でお願い」
 瑞樹 「じゃあ、私はポカリで……歩、早くね?」
  ※まだ続けてました、罰ゲーム(笑



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