終章 勝利と敗北


 ヴァトラスとサタンデザイアが《冥帝王》の”翼”に攻撃を仕掛ける。
「朱雀明神剣ッ!」
「ダァァァクインペイラッ!」
 無数の竜巻と、漆黒の獅子の波動が放たれる。
《冥帝王》の”翼”であるオルトムが、神々の魔剣ルシフェルを振るう。
 漆黒の獅子の波動を無力化し、竜巻を掻き消した。
 10枚の悪魔の翼から闇の力が溢れる。
『サタン・オブジェクト』
 10枚の翼から無数の闇の球体が生成される。そして、球体からビームが放たれた。
 ヴァトラスが神の盾アリアスで防ぐ。
「ダァァァクディスグレイザァァァアアアアアアッ!」
 サタンデザイアが闇の波動を放つが、オルトムに呑み込まれる。
『ふふふふふふ……闇の力は通用しない。そして、その対極である光も』
「チッ、この野郎……!」
「やはり、魔剣をどうにかしないと……!」
 闇の力の結晶体である神々の魔剣。やはり、それが一番厄介だった。
 ヴァトラスが少しだけ唸りを上げる。ハヤトも頷いた。
「……ああ。《太陽王》でどうにかするしかない……! いくぞ、ヴァトラス……!」
 ヴァトラスの四枚の機械的な翼が大きく広がる。
「スペリオォォォォォォルッ!」
 三つの神の武器に囲まれ、光に包まれる。そして、その姿が変わった。
 最強の霊戦機ファイナルヴァトラス。ハヤトが黄金の瞳で敵を睨みつける。
《太陽王》の姿を見て、オルトムが可笑しそうに笑う。
『ふふふ……それが、あなたの《太陽王》としての姿ですか……』
「雷魔、俺が魔剣をどうにかする。援護しろ」
「ふざけるな。誰がテメェの指図を受けるか」
 サタンデザイアが無謀にも突撃する。



 ハヤトと雷魔の二人がオルトムと戦っている頃、ロバート達はもう一つの”魔”の反応に気づいた。
「こいつは……!?」
 ロバートが息を呑む。それは、巨大な目玉を胸部に持つ化け物だった。
 ぎょろりと巨大な目玉が霊戦機を睨む。目玉を見たアルスが睨み返す。
「こいつ、気色悪ぃな……!」
「ああ。それに、この感じは……!」
「おうおうおう! こいつの相手は俺がやるぜぇぇぇっ!」
『って、それは待て!』
 二人の声が重なる。しかし、ゼロは無謀にも化け物へと立ち向かって行く。
 化け物が宙を舞い、突撃してきたグレートリクオーをあっさりと避ける。
 瞬間、化け物の巨大な目から波動が放たれ、グレートリクオーが呑み込まれた。
 波動により大地にのめり込まれるグレートリクオー。ヴィクトリアスとギガティリスが咆哮を上げた。
「霊戦機が咆哮を上げた……!?」
「って事は、やっぱこいつは怨霊機とかの類じゃねぇな……!」
 そう、目の前の化け物は間違いなく《冥帝王》の”部位”だ。
 巨大な目玉がギョロリと動き、ギガティリスを見る。
「ふん、次は俺を倒すってか?」
「気をつけた方が良い。いくらゼロとは言え、霊戦機を一撃で……」
「分かってる。同時に行くぞ!」
 ヴィクトリアスとギガティリスが同時に挑む。



《冥帝王》の”翼”ことオルトムに、無謀にもサタンデザイアが突撃した。
 結果は見事、サタンデザイアの敗北。神々の魔剣を取り込んだオルトムの前に闇の王の力は無力だった。
『《邪神王》たる者が、闇は通用しないと言うのに愚かな……』
「ぐっ、テメ……!」
『前の《邪神王》の方が強かったかもしれませんねぇ……あなたは弱過ぎる』
「ふざけるな……! 魔剣さえ取り戻せりゃ、テメェなんざ!」
 サタンデザイアが闇の力を解き放つ。
『闇の力でまだ対抗しますか? 私には闇は通用しないとまだ分かりませんか?』
「チッ……!」
「だったら、魔剣をどうにかするだけだろ」
 サタンデザイアの隣にファイナルヴァトラスが立つ。
「雷魔、魔剣を取り戻したいなら、今は俺の援護をしてくれ」
「ふざけるな、テメェの指図は受けねぇって言ったはずだ!」
「そんな意地を張る場合か! 今のお前は、ただのザコに過ぎないんだよ!」
「んだと、貴様ぁ!」
 雷魔が剣を振るう。ハヤトが呆気なく剣を弾き飛ばした。
 サタンデザイアの喉元に剣を突き立てる。
「今のお前じゃ、俺とは互角に渡り合えない。そして、《冥帝王》にすら勝つ事もできない」
「くっ……!」
「言ったはずだ、今は《太陽王》と《邪神王》が協力するしかないと。それも分からないのか、お前は!」
 睨み付ける。その姿は、まさに《太陽王》だった。
 剣を戻し、ファイナルヴァトラスがオルトムへと目線を向ける。
 そして、翼を大きく広げた。
「魔剣はどうにかしてやる。《冥帝王》なんかに、負けるわけにはいかない!」
 ファイナルヴァトラスが突撃する。オルトムは翼に無数の闇の球体を生成し、ビームを放つ。
「アリアス!」
 左手に神の盾を出して防ぎつつ、神の剣を右手に構える。
 盾で攻撃を防ぎながら突撃するヴァトラス。その強さは《冥帝王》でも傷一つ付けられない。
 ハヤトが敵を睨む。そして、神々の魔剣を持つ腕目掛けて剣を振るった。
『無駄ですよ、《太陽王》』
「そう思うか?」
『――――!?』
 瞬間、神々の魔剣を持つオルトムの腕に七つの切り筋が走る。
 オルトムが目を見開き、神々の魔剣がオルトムから離れた。
 ファイナルヴァトラスが、すかさず神々の魔剣を手にする。その時、ハヤトに激痛が走った。
「ぐっ……ぐぁぁぁああああああっ!?」
 神々の魔剣から発せられる闇の力が、ハヤトの光の力と反して拒否反応を起こす。

 ――――無駄だ。お前如きが我を手にする事などできぬ。

 魔剣が語りかける。

 ――――光の力を持つ者に、闇の力を秘めた我を従わせる事などできぬ。我の力を求めるな。

「……誰が求めるって?」

 ――――何?

「お前は主の持ち物なんだろ? だったら、とっとと本来の場所に戻れ!」
 神々の魔剣を投げる。それをサタンデザイアが手にした。
 サタンデザイアが今までに無い闇の力を解放して行く。

 ――――この闇の力……なるほど、お前が我の主か。

「ようやく戻って来たな、テメェ!」

 ――――ふん、我が主に相応しい闇の力だ。我、この力を主に捧げよう。

「当然だ! 俺にその力をよこせぇぇぇっ!」
 漆黒の闇がサタンデザイアを取り囲む。そして、サタンデザイアがその姿を変えていった。
 悪魔の翼は堕天の如き漆黒の翼に、漆黒の装甲が血のように紅い装甲へと変わる。
 胸の中心には真っ赤に染まる地球のレリーフ。それが、その王の称号。

 邪神王ダークネス・ジハード。闇を統べ、《太陽王》と対を成す王。

『馬鹿な、《邪神王》が目覚めたと……!?』
 オルトムが驚く。溢れる力を前に、雷魔は実感して笑みを浮かべた。
「こいつだ……これが《邪神王》だ……!」
『まさか魔剣を奪われ、《邪神王》まで目覚めてしまうとは……これは予想外でした。
 しかし、私を倒せると思わない方が良いですよ、《太陽王》に《邪神王》……!』
「ふん、テメェなんざに負けると思ってるのか?」
「完全な《冥帝王》ならともかく、”部位”であるお前に、俺は負ける気はない!」
 ファイナルヴァトラスとダークネス・ジハードが剣を構える。
「レジェンド・ヴァァァァァァドッ!」
「ダァァァクディスグレイザァァァアアアアアアッ!」
 放たれる光の波動と闇の波動。オルトムが翼を閉じて防御する。
 しかし、その防御は無様に散り、二つの波動に襲われた。
『ぐぉぉぉぉぉぉっ!?』
「滅べ! メテオ・ジャッジメントォォォッ!」
 ダークネス・ジハードの胸の称号から、深紅の波動が無数に放たれ、オルトムを貫く。
「見せてやる、これが《太陽王》の本当の力だ!」
 ハヤトが光の力を集中する。
「炎、水、風、雷、地、光、闇、無ッ!」
 ファイナルヴァトラスの周囲に八つの異なる色をした光の球体が現れ、それぞれが光を放つ。
 ハヤトが力を込め、八つの球体が周囲を回転する。
「守護を司る八つの力よ、今こそ解き放て!」
 八つの球体がオルトムを囲む。そして光の線をそれぞれ繋いだ。
 オルトムをオブジェのように取り囲んだ八つの球体。
「《太陽王》、究極結界ッ! ヴァァァド・エンド・ファイナァァァァァァルッ!」
 八つの球体から無数の波動がそれぞれオブジェ内に放たれ、オルトムを襲う。
『馬鹿な……この私が……《冥帝王》であるこの私がぁぁぁぁぁぁ……!?』
 オルトムが滅ぶ。そして、八つの球体が消えた。
 敵を八つの球体による結界で囲み、絶対に逃しはしない《太陽王》の究極の結界。
 それを上手く利用し、結界内に閉じ込めた敵を壊滅させる技ヴァード・エンド・ファイナル。
「……まさか、こんな時に光の鳥の記憶が蘇るなんてな」
 そう、この戦いで記憶が浮かび上がった。
《冥帝王》と呼ばれる強大な敵には、光の力だけでは勝つ事は出来ない。
 その為、光の鳥は過去の《邪神王》と協力して、その結界を作った。
(けれど、俺一人だけで力によるヴァード・エンド・ファイナルでもこの威力か……!)
 本来なら、この技は《邪神王》の闇の力がなければ使う事ができない。
 しかし、ハヤトは以前、霊力属性に闇を持っていた。
 その為、その影響でハヤトは少しながら闇の力が使え、ヴァード・エンド・ファイナルが使えたのだ。
(ヴァード・エンド・ファイナル……この技が使えるなら、新たな剣を見出せる……!)
 なぜか、そう確信できる。



 巨大な目玉を持つ化け物相手に、ヴィクトリアスとギガティリスまでもが苦戦させられる。
 霊戦機は化け物からすれば、弱い存在でしかなかった。
 化け物の巨大な目が不気味に光る。
「くっ……トドメを刺す気か……!」
『待ちなよ、目玉』
 瞬間、化け物の目玉の光が消える。そして、一体の機体が姿を見せた。
 大きく広げられた漆黒の翼、深紅の瞳を持つ光の鳥と呼ばれた過去の《太陽王》の姿だった存在。

《冥帝王》の”中枢”によって、魔の力を得て誕生したオルハリゼート。

 霊戦機達を静かに見下しながら、《冥帝王》の”中枢”が目玉に言う。
『”核”はどうしたんだい、目玉? こんな所で遊んでる場合じゃないだろ?』
『――――』
 目玉と呼ばれた化け物が答える。
『こっちの世界にいるだって? じゃあ、何でザコ相手に遊んでるだい?』
『――――』
『ふん、まぁ良いよ。君は早く”核”見つけろ。今度遊んでいたら、本気で許さないからね』
『――――』
 化け物が姿を消す。そして、《冥帝王》の”中枢”が霊戦機達を見下して言う。
『無様だね。所詮は人間なんかの為に神――――《太陽王》が作った人形か』
「……霊戦機は人形じゃない……! 霊戦機には意思がある……俺達と同じ心を、霊戦機は持っている……!」
『心? 人形が心なんて持つわけないだろう? 人形は人形。それだけだよ』
「貴様……ふざけるな!」
 ヴィクトリアスとギガティリスが構える。《冥帝王》の”中枢”は笑みを浮かべた。
 自分達では絶対に勝てないのに、無謀にも戦おうとしている。
「ぐぉぉぉっ! 俺を忘れるなぁぁぁっ!」
 大地にのめり込んで倒れていたグレートリクオーが立ち上がる。
 三体の霊戦機が、操者の霊力によって力を増す。
「光牙・獅王裂鳴斬ッ!」
「水神獣王牙ぁぁぁぁぁぁッ!」
「ド・ラ・イ・バ・ル・グラウンドォォォオオオオオオッ!」
 放たれる三つの力。オルハリゼートが剣を生成する。
『人形如きが、神に勝てると思うな!』
 魔の力がオルハリゼートを包み、《冥帝王》の力を解放する。
『滅べ人形共ッ! スパイラル・ザ・サタンッ!』
 オルハリゼートの深紅の瞳が光り、漆黒の翼から深紅の波動が無数に放たれた。
 攻撃を仕掛ける霊戦機三体を襲う深紅の波動。それぞれの腕、脚を撃ち貫き、霊戦機が悲鳴を上げる。
《冥帝王》の”中枢”の攻撃が終わる頃には、霊戦機はその姿を留めていなかった。
『予想外だったよ。《太陽王》が僕の”翼”を倒し、人形が無様にも僕に挑んで来るなんてね』
 予想では、《冥帝王》の”翼”は自分の力を取り込み、そして霊戦機は《太陽王》と共に滅ぼすはずだった。
『まぁ良い。”核”があれば”翼”なんて必要ないし、人形と遊んでもつまらないからね』
 そう言って姿を消す。

 斬の心を持ち、魔を裁く武神、《斬魔》。

 獣の心を持ち、友を守りし巨神、《獣神》。

 唸り轟く大地を守護する龍、《双龍》。

 七つの希望のうち三つの希望たる霊戦機が、魔によって命を落とした。



宿命の聖戦 〜FOREVER AND EVER DREAM〜 第二部 太陽王の封印 完




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 第七章 闇と魔の翼

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