「師匠!」 俺に呼ばれて振り向くのは一人の先輩。 - CONNECT02 『その名は蓮杖飛鳥!』 - 「すいません…師匠。待たせてしまいましたか?」 俺は真っ先に師匠に謝る。 「いや…俺も今、来たところだから気にするな。ところで…」 「はい…?」 俺は疑問を浮かべるが…師匠が言いたい事は大体、分かるかも知れない。 「光哉は、沙由華ちゃんと知り合いだったのか?」 「あ…はい…えっと…」 沙由華は少し照れながら俯く。 「沙由華は俺の彼女なんです」 俺は念のため師匠に説明する。 「……成る程、付き合ってる訳だ。けど、春に会った時は違ったよな?」 師匠の言いたい事は御もっとも。ある意味、自分でもツッコミしたい。 「えっと…今年の入学式の日に光哉君に始めて出会って…。二、三週間前後で……光哉君の彼女になったので…大体、三ヶ月前です…」 沙由華はしどろもどろに質問に答える。…やっぱり沙由華は可愛い。 「出会って二、三週間で付き合いだしたのか……早いな、お前達」 それを聞いた師匠は、何か少しだけ虚しそうに見えた気がする…何故だろう? 気を取り直して師匠が俺に声をかける。 「それで、何度も言ってるんだが……」 「はい…?」 このやり取りは何時もの事だから…師匠が言いたい事は大体、分かる。 すいません、師匠。本当は分かっています。……師匠が弟子を取る様な人では無いことは。 だけど…あえて俺はその事は言わない。…師匠も俺の事は分かってると思うし。 「……俺は、お前の師匠じゃない」 やはり、師匠の返答は予想通りだ。俺はきっぱりと言い放つ。 「何言ってるんですか。師匠は師匠です。俺は本当に『二年前の事』で師匠に感謝しているんですから…」 『二年前の事』それは…光哉が、まだ、SRランクに上がったばかりの頃だった。 昔の光哉は…ただ、闇雲に『力』を求めていた。 『オーバー・ドライヴ・システム』の搭載、オリジナルウェポンの制作など、ひたすらに『力』を求めた。 当然、この頃の光哉にはその行為が身を滅ぼす事にも成りかねないと言う事に気付いている筈も無かった…。 その時に話を聞いたのが『蓮杖飛鳥』の事である。 ドライヴを始めて僅か、数ヶ月でSRランクにまで力をつけた『天才』コネクター。 そして、『ファルシオンセイバー』に選ばれた『ソード・マスター』。 この頃の、光哉は彼と戦う事しか考えていなかった。 そして、ある日…遂にその時は来た。 俺はショップの中で、テレビ等で見覚えのある人に声をかける。 「貴方は、もしかして……蓮杖飛鳥さん?」 彼は一瞬、躊躇ったがすぐさま応える。 「……そうだけど、君は?」 疑問を持つのは当然だ。俺は彼に直接会った事は無い。 「あ……すいません…。俺は……時雨光哉と言います」 「時雨…? ……最近SRに上がった時雨光哉か?」 彼も俺の名前くらいは聞いた事があったようだ。 彼が俺の名前を聞いた事がある。これはある意味、俺にとっては好都合だった。 いきなりだが、俺は本題を伝える。遠慮が無い事を承知の上で。 「貴方の事はよく聞いています。俺と同じ『ソード』クラスのSRランク・コネクターにしてフォース・コネクターの一人」 俺は言葉を続ける。 「…もし、よろしければ俺と練習試合をして貰えませんか?」 あえて、俺は『練習試合』を彼に申し込む。 「…練習試合?」 彼も俺が『公式』のバトルとして申し込まないのに疑問を持ったようだ。 俺は『ソード・マスター』の称号などは別に興味は無い。だからこそ、『練習試合』を申し込んだ。 「はい…これはあくまで、俺の『個人的理由』ですから…」 「…成る程」 彼は俺の『瞳』をじっと見つめる。 この時、俺は気が気では無かった。 彼の瞳は揺ぎ無く、『強い意志』が感じられた。 それに比べて俺は…『力』の事以外の『意志』は何も無かった気がする。 「だが、練習試合でも、SRに『敗北』は許されない。その覚悟はあるのか」 「はい……!」 そう言う事は既に覚悟の上だ。そうで無ければ俺は彼にバトルを挑んだりはしない。 「……分かった。君とのバトル、受けさせて貰う」 暫く、考えた後に彼は俺とのバトルを了承した。 普段ならここで… ――――そのバトル、両者の合意と確認しましたっ! …の声と共に 突然、バトル・フィールドから声が聞こえ、中心に穴が開いて、そこからタキシードを纏ったおじさんが出てくる。 「ただ今より、このバトルは公式バトルと認められました。審判は私、リュウマチ小暮さんがやりますっ!」 見たいな感じになる筈なのだが…今回は『公式』のバトルとは『違う』のでそんな事は無い。 正直、あり難かった。ややこしい事にしたくは無いからな…。 俺はコクピットランサーへと『ドライヴ』を接続し、対戦形式を選択する。 元々から、機械操作は慣れていたからな楽なものだ。 機体操作、アクティブウェポン、振動機能、音声通信、BGM等、対戦と言っても選べる項目は多い。 予めドライヴに設定を記憶しておく事も出来るが、俺は遊び心を忘れない為にも気分で設定を変えている。 設定を全て終え、確認して準備は終了。 画面に『DriveSetup AllCompletion!』の文字が浮かぶ。 飛鳥の準備完了のランプは既に点等していた。 画面の表示がセットアップ画面からバトル画面へ移り、『ConnectButtle - Ready……』の文字の後ろで数字がカウンドダウンを開始。 5、4、3,2,1…… 『Fight!!』 遂に、お互いに『天才』コネクターと言われている、『蓮杖飛鳥』と『時雨光哉』のバトルが開幕した。 バトル・フィールドは障害物の無い草原をイメージした場所。 まず、飛鳥の『セルハーツ』が構築され、続けて光哉の『シュナイダー』が構築される。 戦闘準備は整った。 俺はまず、彼を試すためにも、シュナイダーの装備をレーザーブレードにして、攻撃をかける。 「バーストアクセル…!」 瞬時にシュナイダーを加速させ、セルハーツに斬り込む。 しかし、彼は感覚を研ぎ澄まし、攻撃を知覚。そのまま切り払う。 彼は、いとも簡単に凌いだ。 「流石…」 俺は呟く。正直に言って彼は俺の予想通りの強さを持っているようだ。 「速いな…」 今の彼の攻撃は恐らく俺を試すために放った技の筈だ。いきなり、仕掛けてきたのがそれを示している。 大抵のコネクターなら今の一撃は凌げないだろう。俺はそう感じた。 俺は集中力を高める。『場合』によっては『鷹の瞳(ファルコン・アイ)』を使わなければ、そう簡単には勝たせてくれないだろう。 『エアブレードッ!』 セルハーツが剣を振るい、風の刃を放つ。しかし、シュナイダーはいとも簡単に避ける。 「……!」 俺は頭の中で瞬時に『エアブレード』を『Reproduction』する。しかし…。 「流石に出来ないか……!」 『Reproduction』は何でも出来る訳ではない。単純な構造の技やその基本形しか戦闘中に『Reproduction』は出来ない。 シュナイダーがライフルを撃ち返す。セルハーツはその軌道を読み、避ける。 セルハーツはシュナイダーと剣を打ち合い、隙を窺う。 セルハーツは間合いを取り、再び技を放つ。 『ミラージュ・ブレイド!』 セルハーツがシュナイダーに対しミラージュ・ブレイドを放つ。しかし、シュナイダーはそれすらも凌ぐ。 この距離でミラージュ・ブレイドを避けるのは難しい筈だった。 『ミラージュ・ブレイドを避けた……? いや、『鷹の瞳』を持っているのか…?』 彼は俺に一つの疑問を尋ねる。 「御名答です」 俺は不敵に言い放つ。 「次は俺から行かせてもらいます!」 シュナイダーが切り込んでいく。 セルハーツとシュナイダーが切り結ぶ。 ドライヴ同士の高機動・格闘戦が繰り広げられていく。 その光景は『剣の舞』をするように華麗で、激しかった。 そして、どれくらい切り結んだか…徐々にセルハーツがシュナイダーを押し始めた。 セルハーツはシュナイダーの攻撃を受け流し、的確に斬撃を入れていく。 「くっ…!」 俺は徐々に彼のペースに巻き込まれていた。 『鷹の瞳』を使っても彼の攻撃が見切れなくなりつつある。 このまま戦えば確実に俺は負ける。 例え、相手が『ソード・マスター』だとしても俺は負ける気は毛頭無い。 俺は少し、考えた末に…遂に決断した。『切り札』を使う事を。 俺は一つのボタンを押した。 画面に『SYSTEM OVER-DRIVE OK?』と表示され、ボタンをさらに押す。 コンピュータが『SYSTEM OVER-DRIVE START!』を表示した。 シュナイダーのカメラアイが開き、色が緑色から赤色に変わり、全体がオーラを纏ったかのようになる。 俺は『オーバー・ドライヴ・システム』を起動した。 そのまま、シュナイダーの武装リミッターを解除。 「アクセルブレイカー!」 シュナイダーが爆発的な加速力で斬り込み、セルハーツを捉え、ダメージを与える。 装甲を剥がし、ドライヴの内部にもある程度の影響は与えられた筈だが、このまま彼が終わるとは思えない。 俺は『未完成』の技を出すことに決めた。 「くっ……!」 一瞬でセルハーツの装甲を持っていかれた。更に、追撃もあった性か内部にも結構なダメージを受けてしまった。 だが、幸い戦闘にはある程度の影響だけで済みそうだ。 「ダメージを受けた……いや、この急激な戦闘力上昇は……!?」 俺は、相手の様子が変わった事を察する。 間違い無く、『オーバー・ドライヴ・システム』を使っている。 あのシステムに普通に『適応』している事を考えると正直、『彼』の『反応速度』は『尋常』では無い。 「ちっ、ふざけた事を……!」 バトルの経過を確認する。もう10分近くバトルを続けている。 互いに体力も落ちている。そんな状態で使えば、体への負担は半端では無い。 相手は普通に適応していたが、おそらく、自分がやっている事がどれほど危険なのか分かっていない。 俺は全ての武装を展開、使用可能な状態に待機させる。 そのままセルハーツに斬り込む。 「HEAVENS・GATE(ヘヴンズ・ゲート)!!!」 『HEAVENS・GATE』は全ての必殺技を複合し、相手に攻撃をかける。まだ未完成だが、現段階でシュナイダーが使える最強の技だ。 だが、オーバー・ドライヴ・システムを起動している時しか使えず、更に俺自身もどうなるかは分からなかった。 俺はそれすらも覚悟して、セルハーツに対しこの技を発動させた。 負けたくは無かった。俺の全てを彼にぶつけたかった。 そのつもりで彼に最後の攻撃を仕掛けようとする。…限界が近いのも承知の上で。 相手のドライヴが攻撃を仕掛けてくる。おそらく、決着をつけるつもりだろう。 「それを使って俺を倒せると思うな!」 最早、オーバー・ドライヴ・システムを使った相手に手加減など必要無い。 容赦ない攻撃で倒さなければ、このバトルは終わらない。 「輝凰! 斬・王・陣ッ!」 俺は『先代』ソード・マスターから教わった最強の技を放った。 強大なエネルギーのぶつかり合いの後に、飛鳥の声がフィールドに響いた時…シュナイダーが機能を停止した。 そして、コンピュータが『DRIVE COOL-DOWN』を表示していた。 バトルは終わった。飛鳥の勝利で…。 「ん…?」 俺は暫くしてから目を覚ました。 最後に強大なエネルギーがぶつかり合ったと思ったが…その後の事は何も覚えていない。 「…起きたのか?」 彼が声をかけて来る。 「あ…はい」 俺は控えめに返事をする。ただ、俺に分かっている事は蓮杖飛鳥に『負けた』事だけだった。 「お前は、自分が何をやったのかを分かっているのか!」 怒りの篭った声と共に、彼がいきなり俺の胸倉を掴んでくる。 「…はい……」 俺は何とか答える。彼は取り合えず俺から腕を離す。 「何故…あんな無茶をしたんだ?」 今度は問い質すように聞いてきた。 俺は少し黙ってから答える。 「力が……力が欲しかった……弱さを否定したかった…。そして…貴方にも負けたくなかった…!」 俺は搾り出すように自分の事を彼に話す。 「………」 彼は暫く考えて…。全てでは無いと思うが……過去にあった自分の出来事とオーバー・ドライヴ・システムの事を語ってくれた。 話が終わった後、最後に彼は俺にこう行った。 「力を追い求めるのは良い。それは個人の自由だ。だが、『力』と言うものを間違えるな」 「………」 その言葉は、俺にとっては納得できる『答え』であり、彼の話を聞いて漸く見つけられた気がした。 そして、彼は言葉を続ける。 「自分への危険を無視してまで使う力は『強さ』なんかじゃない、それは『弱さ』だ。 下手をすれば、資質を失ったり、コネクターを引退する事になるかもしれないんだ」 「はい…!」 俺は彼の瞳から目をそらさずに答えた。そんな俺に、彼が笑顔で言う。 「ソードクラスのトップになれ。その時、またバトルしてやるよ」 俺は嬉しかった。 彼にとって俺はとても許せない行為をしたと言うのに。彼は俺とまた戦うと言ってくれた。 「はい……! その時は…よろしくお願いします……『師匠』!」 俺は彼の事を『師匠』と呼んだ。これは『冗談』では無く『本心』からだ。 当然だが、彼は驚き……そして、肩を落とした。 「師匠って……俺は師匠になる気は全く無いんだけどな……」 これが光哉と飛鳥が出会った『二年前の事』である。 あれから、光哉と飛鳥は師弟(?)の様な関係を続けている。 時間がある時は光哉のバトルを観戦して貰ったり、技のヒントを教えて貰ったり、アクティブ・ウェポンの制作を手伝って貰ったりもした。 飛鳥は相変わらず『師匠』と呼ばれる事を『否定』しているが…。 そして、時間は現代に戻る。 「……ま、それは置いといて」 師匠は肩を落として、諦めたような感じで呟いた。 少し考えて、師匠は意識を切り替えたようだ。 「それで、俺に何の用だ?」 師匠が俺に御もっともな質問をしてくる。 「実は…これを見て欲しいんです」 俺は師匠に『ライトブリンガー』のデータを渡す。 『ライトブリンガー』と『レガリア』の決定的な違い、師匠なら分かるかも知れない。 次回予告 こんにちは、沙由華です。明日香先輩には会えませんでした…。 因みに、次回は光哉君の『ライトブリンガー』についてのお話です。 ……光哉君は分からないと言ったけれど…レガリアの事にも関係してるのかな…? 次回、CONNECT03.『ライトブリンガーの片鱗』 ドライヴ・コネクト! 遂に、レガリアと光哉君のデータの違いが明らかに……ならないかも…? |
SEO | [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送 | ||