光哉君は私が渡したスポーツドリンクを飲み終えてから、飛鳥さんと話を始める。 「今日のバトルはどうでしたか? 師匠から見た俺の戦い方について意見を訊きたいのですが……」 「まぁまぁって感じだな。俺のアドバイスを踏まえてバトルはできているが、それだけだ」 紅茶を飲み終わった飛鳥さんは光哉君に指摘を続ける。 「確かに、前と比べてマシにはなっている。しかし、俺のアドバイス通りにしかバトルできていない」 飛鳥さんは私が気付かないような違いも分かるみたい。……本当に凄いと思う。 でも、私には光哉君がアドバイス通りに戦っているだけなんて信じられない。 「……そうですか」 光哉君は少し落ち込む。 「一つ訊くけど、やっぱり制御は難しいのか?」 「そう……ですね。少しくらいは扱える様になりましたけど……まだ」 光哉君と飛鳥さんは私や明日香先輩には分からない話をしている。 「けど、シングルのトーナメントの決勝で使った時よりはマシになったんだろ?」 「はい。一応は……。……俺の実力が上がれば、まだ引き出せると思うんですが」 私は、光哉君が『シングル』のトーナメントに出ていた頃は、まだ知り合いじゃ無かったから、あの頃はまだ気にもしていなかったと思う。 実際に光哉君が『バトルトーナメント・シングル』の優勝経験があるコネクターだと聞いた時は凄く驚いた。 「とりあえず、あれはあまり使わない方が良いな。ドライヴだけじゃなく、お前にも負担が掛かる」 「自分で言うのも、どうかとは思いますが……俺もそう思います」 飛鳥さんと光哉君の会話を聞いてアービトレイターはそれだけ扱いの難しいドライヴなの? ……と私は考えてしまう。 けれど、光哉君と飛鳥さんがそう言っているのだから……多分そうなのかなって思う。 「飛鳥君。私はあまりバトルは見た事ないけど、光哉君は優秀なのかな?」 光哉君と飛鳥さんの話が終わった後、明日香先輩が飛鳥さんに質問する。 「優秀と言えば優秀かな。俺より若い歳でSRになってるし」 飛鳥さんが考えながら言う。 「凄いんだね。光哉君は」 「……そうでも無いと思います。……師匠には全く及びませんし、紡に勝てるかも分かりませんから」 「光哉君……」 私は光哉君が目を伏せたのに気付く。 「……俺はそんなに凄くは無いよ」 光哉君は私に苦笑いをしながら答える。 ……時々、光哉君は私の知らない顔をする。何でも話して欲しいのと思うのは私の欲張りなのかな? 暫くして光哉君のドライヴから着信音が鳴り響く。 「はい。もしもし?」 『俺だ。今、大丈夫か?』 「大丈夫だけど。……何かあったのか?」 光哉君の反応を見ると電話は羽山君からみたい。 『ああ。……勇治さんがマリアさんから逃亡中だ』 「いや……いきなり言われても、俺には解らないんだけど……一体、どう言う事なんだ?」 『実は勇治さんがマリアさんとの約束を放置してたみたいでな。それで、マリアさんがちょっとな……』 「……それを俺に言うなよ」 光哉君は呆れているみたい。 ……羽山君は何をしているのかな? 『悪い。お前くらいしか連絡する相手を思い付かなかった』 「まぁ……良いけどな。それで、何で俺に連絡しようと思ったんだ?」 『分からない』 「お前な……もっと考えて行動してくれ」 光哉君が肩を落とす。 『まぁ……気にすんなって。俺は取り合えず勇治さん達を追いかけてみる。それじゃあ……切るぞ』 「……分かった」 光哉君が電話を切る。 「はぁ……」 光哉君がため息をつく。 私は光哉君にそっと声を掛ける。 「光哉君。羽山君からだったの?」 「……ああ。紡は一体、何が言いたかったんだ……」 光哉君はいまいち元気が無い。 こう言う時の光哉君を励ますのは”私の仕事”だと思う。 でも……こう言う時は何をすれば良いのかな? 私は、いつも光哉君に助けて貰ってばかり。 私にできる事は何があるのかな? 少し、考えて……私は光哉君に抱きつく。 「さ、沙由華っ///」 光哉君が頬を真っ赤に染める。 私は気にせずに光哉君にそっと寄り添う。 光哉君に元気を分けてあげる様に。 「光哉君。……元気出た?」 「え……?」 光哉君は何の事か分かっていないみたい。 「えっと……私の元気を分けてあげようと思ったの」 私は光哉君に笑顔で言葉を続ける。 でも、本当は不安。光哉君に元気を分けてあげられているかなんて。 「え……あ、ああ/// 何か……元気が出た気がする。……ありがとう沙由華」 光哉君は私に微笑みかける。 「良かった……」 気を使ってくれてる訳じゃなくて、本心からの笑顔だったと思ったから……私はホッとする。 周りを見ると、何時の間にか色んな人達から注目の的になっていた。 明日香先輩は、私達を見守っていて、飛鳥さんは何故か他人のフリをしている。 私は、頬を真っ赤に染めて俯くしか無かった。 そんな私に光哉君がそっと声をかける。 「……沙由華」 「光哉君?」 私は光哉君の方に振り向く。 「……俺は嬉しかったから」 ちょっとした光哉君の一言。 それだけで私の気分も晴々した様な気がする。 好きな人の言葉って凄いと思う。 それだけで嬉しくなってしまうから。 「光哉。さっきの電話は誰からだったんだ?」 暫くして、他人のフリをやめた飛鳥さんが光哉君に声をかける。 「……紡からです。因みに、勇治さんはマリアさんから逃亡中……だそうです」 「……成る程、アレか」 「アレ……?」 アレって何の事かな? 光哉君も知らないみたいだけど……? 「気にするな。しかし、何が言いたかったんだ、紡の奴は?」 「……俺にも分かりませんよ。とりあえずは追いかけてみると言っていましたが……」 「……追いかけても無駄なんだがな。勇治は、あれで意外と逃げ足が速いからな」 飛鳥さんが勇治さんの意外な事実(?)を言う。 「……確かに、紡は追いつけないでしょうけど。諦めは悪いですからね」 光哉君はそう言うけど……。 私は、羽山君とは知り合ってからそんなに経って無いし……。 う〜ん……私には、よく分からないかな……? 羽山君は、独り言(?)とか多い人だと言う事しか分からないし……。 光哉君の凄いところはよく観てるから分かるんだけど……。 次回予告 沙由華です。ちょっと……大胆なことしちゃったかな……。 羽山君は一体……勇治さんと何をしているのかな? それに、飛鳥さんの言うアレって何なのかな? 次回、CONNECT06.『一日の終わり』 ドライヴ・コネクト! 実は、私の仕事は次回が本番……? |
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