Drive-Connect! 〜Episode of Arbitrator〜





 俺はメールの相手を確認する。






 その相手の名前は――――






 ――――『真柴寛樹』










  - CONNECT07.『今と過去と親友と』 -







 前略

 久しぶり。元気にしているかな?
 君の事はずっと気掛かりだったけど……僕も思うように時間がとれなくてね……。
 でも、漸くメールをする時間ができる様になったから連絡させて貰ったよ。

 それから、紡から話は聞いてるよ。 君も大事なものを見つけたみたいだね……。
 何か君と僕はまた、差が開いてしまったね。

 もし、君達さえ良ければ、此方にも一度、来てくれないかな。色々と紹介したいしね。
 それから、近いうちに其方に顔を出そうと思ってる。 後、紡にもよろしく。


「寛樹からか……久しぶりだな」
 真柴寛樹(ましば ひろき)……前に引越してしまった俺の親友だ。
 過去に俺と戦った事もあるコネクター。
 俺が公式戦で戦った相手の中でもトップクラスの力を持っていた。
 あの時は俺が寛樹に勝利した。
 けど、あの時を最後に寛樹はドライヴを辞めたと聞いている。
 あまり時間もとれなかったから詳しい話とかは聞いて無いけどな……。
「今、連絡してきたと言う事は……寛樹は時間が空いているって事か」
 俺は少し考える。久しぶりに寛樹と話がしたい。
 そう考えたら勝手に手が動いていた。
 寛樹の番号に電話をかける。
 寛樹は出てくれるのか……?





 ドライヴの着信音が鳴り響く。
 僕は相手を確認する……とは言っても相手は解っている。





 ――――『時雨光哉』





 思った通り光哉からだった。
 光哉の事だから僕の時間が空いていると言う事も気付いていると思った。
 彼は僕の親友。どれだけの時間が経っていても御互いの事は覚えている。
 最近は僕もあまり連絡出来なかったから一度、光哉と話をしたかった。
「もしもし。光哉かい?」
 僕は電話に出る。





 コール音が鳴り響く。
 ほんの何秒かの筈なのにとても長く感じる。
『もしもし。光哉かい?』
 寛樹が電話に出る。
「……寛樹」
『久しぶりだね。光哉』
「……そうだな」
 俺は相槌をうつ。
『君は相変わらずの様だね……』
「寛樹もな。元気そうで安心した」
 寛樹は変わって無いみたいだ。





 私は光哉君に声をかける為に部屋に向かう。
『……安心した。』
 ドアの近くに来た時、光哉君の声が聞こえた。
 光哉君の雰囲気からして……多分、話をしている相手は羽山君とは違う。
 きっと……私の知っている人じゃ無いんだと思う。
 とにかく相手は解らないけど……とても大事な話をしている気がする。
「光哉君……」
 私はそっと光哉君の部屋を後にする。





「最近、寛樹の方はどうしてるんだ?」
 俺は寛樹に尋ねる。
『最近は……取り合えず勉強とか、ドライヴとか……かな?』
 寛樹らしい答えが返ってきた。
「そうか……。ドライヴは続けているんだな」
 俺は寛樹がドライヴを辞めていたと聞いていたから寛樹がまたコネクターとして復帰したと言うのは嬉しい。
『うん。漸くSランクまで戻ってこれたよ。 君の方はどうなんだい?』
 寛樹は苦笑しながら言う。
「俺の方は……色々と楽しくさせて貰ってるよ」
『……紡が言っていた彼女のお陰かい?』
 紡は寛樹にそこまで教えているのか?
 寛樹の反応からして流石に名前までは教えてはいないみたいだな。
「確かに彼女……沙由華のお陰だと思う」
『……そうなんだ。 久しぶりに話して感じたんだけど……光哉は別れた時よりも雰囲気が変わったよ。 ……蓮杖飛鳥さんと出会った時以上にね』
 まぁ、俺には変わったって言う自覚はあまり無いんだけど……少し考えてみれば寛樹の言う通りかもしれない。
 確かに師匠と出会ってから俺は人間的に変われたとは思う。 ……精神的に成長したと言うべきか?
 けど、今をこうしていられるのは沙由華のお陰だと思う。
「沙由華に出会って、そして沙由華と付き合う様になってから……俺は変わったと思う」
 沙由華と言う大切な人に出会ったからこそ今の俺がいる。
『……君はずっと一人だった様な感じだったからね。彼女の様に君の傍にいてくれる人がいるのは良い事だよ』
「……そうだな」
 寛樹は最近は殆ど連絡もしていないのに、紡から聞いた話だけで俺の事も良く解ってくれている。
 俺は本当に良い友人を持ったと思う。





 光哉君の部屋から戻った後、私は夕食の仕上げにはいる。
 でも、光哉君の事ばかり考えてしまう。

 ――――誰と話してるのかな……。

 ふと、こう思ってしまう。
 私は以前の光哉君の事はあまり知らない。
 羽山君からも聞いた事は無いし……。
 光哉君はもう一人、大事な友達がいるって言っていたけど……さっきの電話の相手はその人なのかな?
 後で光哉君に聞いてみようかな?
 光哉君は話してくれるかな……。





『そう言えば話は変わるけど……光哉は前に僕と戦った時、手加減をしていたのかい?』
 寛樹が”あの時”の事を聞いてくる。 この事はあまり話して無かったからな……。
「そうだな……あの時はまだアービトレイターを使いこなせてはいなかったけど……」
 俺は寛樹と戦った時に”手加減”はしていない。
 しかし、アービトレイターを完全に使いこなせる訳でも無かった。
『手加減はしなかった……だよね?』
 寛樹がすぐに俺の核心をついてくる。
「……ああ」
 寛樹が引っ越したのは、俺が紡と戦うはずだった二年前のシングルのトーナメントの後だ。
 あの時の紡とのバトルは、結局は決着をつける事が出来なかった。
 結局は再戦と言う事になったが俺の方が都合が合わずに紡の不戦勝で終わったんだったな……。
 けど、あの時の俺はまだアービトレイターの”本来の力”を使う事はできなかった。だから紡と戦わなくて良かったのかもしれない。
 あれは、『鷹の瞳』を使う必要があり、俺自身もその速度についていける状態でなければならない。
 当然、それだけの速度を維持するにはそれ相応のリスクを要求されるため、師匠にも使わない様に言われていた。
 実際に俺がある程度使える様になってきたのも一年前くらいからだ。
 しかし、”限定的”になら任意で使える様になったと言った感じだ。
 まぁ、結局はアービトレイターの性能を完全に引き出せる訳じゃ無いんだけどな。
 俺はあの時の事を思い出す。





――――二年前





 俺は師匠にアービトレイターを使った戦い方について、アドバイスを貰っていた。
「最近の俺の戦い方について、師匠はどう思うんですか?」
 俺は師匠に尋ねる。
「別に言う事は無いと思うぞ。前とあまり変わっていないだろう。ドライヴが変わっても、戦い方はそんなに変わっていない」
「はい」
「戦い方には問題なんて無い。あえて言うなら、問題はアービトレイターの方だろう」
 師匠がアービトレイターの性能を見る。
「機動性や運動性だけを見ればSRランク級だ。しかし、そんなドライヴを乗りこなすのは不可能と言っても良い」
 師匠は言葉を続ける。
「資質が使えると言っても、それでも少しの時間だけだ。ぶっちゃけ、俺でも無理だな」
「師匠でも、ですか?」
「ああ、俺も自分のドライヴの全てを引き出せているとは思えない」
「そうですか……」
 師匠はセルハーツの性能を引き出していると思っていた。
 しかし、俺よりもずっと優れた力を持つ師匠が、セルハーツの性能を引き出せていないと言っている。
 師匠の言葉を訊いた俺は、改めて蓮杖飛鳥と言う人の凄さを知った。
 師匠は自分に厳しい上に、俺が見ている世界とは別の世界を見ている。

 ――――俺もいつか、師匠の見ている世界が見えるだろうか?

 俺はただ、そう感じるしかなかった。





 師匠にアービトレイターについての考察をしてもらっている時に後ろから声がかかる。
「光哉。飛鳥さんとお話しているところで悪いけど、少し良いかな?」
 寛樹だ。近い内に引越すと言っていたけどその事か?
 いや、寛樹がそんな話をする筈は無い。もっと重要な話だろう。
 師匠もその雰囲気を察してか黙って寛樹を見つめる。
「どうしたんだ?」
「いきなりで悪いんだけど……僕とバトルをしてくれないかな?」 
 寛樹は真剣な表情で言ってくる。
「寛樹?」
 寛樹が俺にバトルを挑んでくるなんて思ってもいなかった。
 それに、俺にバトルを挑んでくるなんて寛樹の真意が今一つ解らない。
 俺からすれば寛樹と戦う必要は無いし。多分、寛樹にだって俺と戦う必要は無い気がする。
 だからこそ、俺は寛樹の言葉が信じられない。
 そんな俺に師匠が俺に言う。
「光哉、受けたらどうだ?」
「師匠!?」
 俺には師匠がそう言うとは信じられなかった。
 師匠は、誰でも構わずにバトルを受けるタイプだとは思っていなかったからだ。
 今回の場合は、俺に対してバトルを受ける事を薦めてくれている訳だが。
 それでも師匠の言葉は意外に感じられた。
 意味を理解しかねている俺に対し、師匠は言葉を続ける。
「こいつの”瞳”は本気だ。それに応えても良いんじゃないか?」
 師匠の言葉を聞いた俺は寛樹をじっと見つめ、搾り出す様に寛樹に問い掛ける。
「……寛樹、本気……なのか……?」 
「うん……。僕も今の君が誰でも構わずにバトルをしたりするコネクターじゃないって事は解ってるんだけどね」
 寛樹の言う通り、今の俺は師匠に会う前の頃とは違い、誰でも構わずにバトルをしたりはしない。
「けど、”今”を逃したら当分その機会も無くなってしまう」
「……そうか」
 俺は少し考える。
 寛樹と戦うと言う事なら俺は”全力”で戦わずをえない。寛樹はそれだけの実力を持っている。
 それだけの強さを持つコネクターが相手となれば間違い無く、唯ではすまされない。
 もし、俺が全力を出せば、寛樹を傷つけてしまう事になるかもしれない。
 それは俺が一番、感覚的に解かっている。
 しかし、俺に親友の頼みを断れるはずも無い。
「解った。寛樹がそう言うなら相手になる」
 暫く考えた末に俺は寛樹とのバトルを了承した。





――――俺と寛樹。





――――この戦いで





――――『アービトレイター』の”力”の片鱗を見せる事になるとは





――――今の俺には知る由も無かった。












次回予告

 こんにちは、沙由華です。 今回はあまり出番がありませんでした……。
 せっかく光哉君と一緒にいるのに……。 光哉君は真剣な話をしているみたいだし……。
 何か私にできる事って無いのかな?
 そして、次回のお話では、アービトレイターのリミッターが明らかに?

 次回、CONNECT08.『蒼き閃衝』

 ドライヴ・コネクト! 蒼って綺麗だよね? う〜ん……意味が違うのかな?



戻る     トップへ





SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送