ネオリーム
第2章 旅立ち





  第2話 力

「みん…!!」
『ダメです!今ここで姿を現したら3人を助けられなくなります。』
 ウンディーネの声がゼルの心の中に響いてきた。なぜこんな始まり方なのかと言うと…



 あのあと洞窟から戻ってきたゼル。
 しかしそこで見たものは包囲されたディル達の姿だった。そして包囲しているのはあの店の主人だ。
 なにやら新しい手下を連れてきたみたいだ。往生際が悪いよ…とゼルはため息を付いた。
「さっき尻尾巻いて逃げて行ったのに…ウンディーネ、どうしよう。」


 一方、ゼルが見ているとも知らずに…というかそれどころじゃないディル達はというと…
「くそっ、どうしたら…ゼルも戻ってこねえし。俺達もあまり動けるほど体力残ってねえ…。」
「ほんとよ。こんな絶体絶命…のピンチだっていうのに。」
 全く何やってんだ、とディルの目は言っている。しかし余裕はない!
「ははは…どうした?さっきの技は使わないのか?」
「お前みたいな奴に何回も使うほどお人好しじゃないんでね。(使えればとっくに使ってるっつーの!)」


 そしてゼルは…
「あ〜こういう風にじっとしてるのイライラする〜。」
 イライラしていた。やはり子供か…もう少し我慢できないのか?
『ゼル、落ち着いて下さい。今出て行ったらあなたも捕まってしまいます…ゼル!!』
 とうとうゼルは飛び出してしまった。ウンディーネも呆れて頭をガクッと落とした。


 いち早く気付いたのはハルだった。
 にしてもタイミングが悪い…。「場を読めないの?もう少し考えて行動して!!」と言わんばかりにハルの目が訴えている。
「ゼル!!」
「「!!」」
「みんな!待ってて、今助けるから!」
「助ける?この囲まれた状態でか?」
 主人がそう言うと、岩陰や木陰から男達が現れてきた。それもかなりの数。
 今の状況は…ディル達3人を10人くらいの人数が取り囲んでいる。
 そしてさらにその輪の外にいるゼルを取り囲むように20人以上…しかしゼルは楽しんでいるように笑っていた。その目は挑発している。
 この状況で挑発なんかすんじゃねえ、とディルの目は怒っていたが、ゼルは見ぬふりをして、 「囲まれた状態?オイラはわざと出てきたんだよ?敵の真ん中に来るために。」
 ゼルはダメだなァ…とさらに挑発した。それを見て主人はプッツン…きたのか、ゼルに向かって腕を振り下ろし叫んだ。
「そのガキを殺せ!ズタズタにしてしまえぇぇ!!」
 主人の叫び声とともに男達はゼル目掛けて襲ってきた。あ〜あ、とディル達は揃ってため息をついた。
 しかしゼルは余裕の笑みを浮かべ片手を挙げ魔方陣を描く。そして何か呪紋を唱え始めた。
 ゼルに青いマナが収束する…
「やっぱりおじちゃんも単純だね♪まぁオイラには勝てないけどね〜。でもこれがオイラとの違いだよ!これがオイラの新しい力の1つ…『静かなる水よ小さき渦となれ』【水陣】!!」
 するとゼルに迫ってきた男達数人の足元を水の渦が捕らえた。
「「!?」」
「あれれ?全員は無理だったァ?…まぁいいや、他のはやっつけちゃおっと!」
 ゼルは失敗失敗、と笑い槍を構えると、男達の攻撃をすばやい身のこなしで避け、いとも簡単に男達を倒してしまった。
 この身体能力もウンディーネが与えたモノの1つなのか…?
「オイラだっていつまでも助けてもらうわけにはいかないからねー。」
「く…何ボケっとしている、さっさとその3人を殺してしまえ!!」


 ギーン!!剣の鈍い音がいくつも鳴り響いた。辺りには砂煙が上がった…はたして3人は?


「チョッと遅かったかなァ…ねえ、ディル。」
「そうだな。俺達を倒したかったならもっと早くやっとくんだったな。」
 砂煙が風に流され姿が現れたのはゼル達だった。ゼルとディルはくるりと向き直り武器をおさめながら言った。そして後ろにはレイラとハルが立っていた。
「ひ、ひぃぃーー!!ば、ば、化け物―!!!」
 店の主人は先にも負けずのスピードで逃げて行った。ゼルはベー、と舌を出した。


「化け物とは失礼な。そうだゼル、あの渦はまだ大丈夫なのか?」
 ディルは渦に捕らわれている男達を指して言った。男達も店の主人と同じく恐怖を感じているのか顔は引きつっていた。
 ゼルはその顔を見て変な顔、と笑い、
「あ〜いいんじゃん。あのままで。どうせいつか消えてなくなるし。」
 しかしなんて魔力だ。この数分間…動いていたのにも関わらず未だに渦が発生したままなんてことがありえるのか?普通ならありえるはずがない。ウンディーネは一体どれ程の力を与えたんだ…やはりレイラには気付いていたようだ、魔術師としてこの異様な魔力に…
「ゼル…あんた体は大丈夫なの?それにこれはどういうことなの?」
 ゼルはうーん、と考え込んだあと、きっぱり一言。
「ウンディーネと契約した。」
「「!!」」
「まさか本当にあのウンディーネか?8幻獣の…。」
 ディルは恐る恐る聞いた。それもそうだろう、まだ子供のゼルに契約が出来たこと自体おかしいことなのだ。普通は大人でも与えられた魔力で精神をやられてしまうケースが多い…しかしゼルはケロッと、
「そうだよ、信じてないの〜?じゃあ呼んであげるよ。ちょっと待ってね。多分、もうあれ消えると思うし。」
 水の渦を指して言うと本当に水の渦は消えてなくなった。やっと開放された男達は無我夢中で逃げ帰って行った。さてと、とゼルは精神を集中した。先程とは違い今度はゼルの足元に巨大な魔方陣が現れた。そしてまた青いマナが勢いよく収束し渦を巻き始めた。しかし使用されている魔力の桁が違う。
「『我が名はゼル・ターレスク‐契約を継承するもの‐我に成してこの時この場に立ち戻れ』召喚、《ウンディーネ》!」


 そこに現れたのは間違いなくウンディーネ。しかしディル達はその威圧感に今にも押し潰されそうだった。見た目は女の人だがその体から発せられた威圧感は長年の貫禄が感じられる。ディルは額を流れる汗を感じながらなんとか口を開くことが出来た。
「あ、あんたがウンディーネ…だよな?」
 これがやっとのことで口から出た言葉…。ウンディーネは頷くと静かに話し始めた。ようやくここで押し潰れそうな威圧感から開放された。ディル達はゆっくり大きく呼吸をした。
『だいぶ疲れているようですね。疲れを癒してさしあげましょう。』
 すると4人を包むように水のカーテンが引かれた。そして4人の傷、体力が回復した。おお〜、とディルは自分の傷口を見て言った。


「あんたすごいな、これも8幻獣の力か…。でもなんか…怖えな。」
 ディルは自分の手を握って言った。そうね、と頷いてからレイラが口を開いた。
「聞いていいかしら?あなたは今まで何をしていたの?封印されていたわけではないみたいだけど…。あとゼルに与えた力についてだけど。」
 ゼルは首をかしげなぜ自分のことが言われているのか分からないみたいだ。やはり子供の頭か…。
『今は全てを説明することはできません。レイラの言う通り…私は静かに時を過ごしていました。しかしそれも長く続きはしませんでした…。なぜなら悪魔…魔族達が復活してしまったからです。』
「な!?」


 ディルの動きが固まった。
「ディル?どうしたの?大丈夫?顔色悪いよ…。」
 ハルは恐る恐るディルの顔を覗き込むように聞いた。ディルの体は震えていた。ディルはゴク、とのどを鳴らして言った。
「魔族は…魔族は俺の家族を、殺したんだ。」


「殺したんだ。」


 この言葉が、この静寂の時を切り裂いた。
「殺したって…そんなこと私に話してくれなかったじゃない!なんで今まで話して「「言えなかったんだよ。思い出したくなかったんだ。あんなこと…。」」



 ――――ディル<過去>

 それはレイラに会う数年前、まだディルが幼い頃のこと…。
 いつも通りに親に稽古を付けてもらっていたディル。しかしその日のディルは落ち着かない様子だった。
 そう、その日はディルが10歳になる日…この世界では成人の日として一人前の大人として認められる日だった。だがその成人の儀式は決して行われることはなかった。

その日の夜…


「ギシャアアー!!」
「ギシュウー、ウアアアア!!」
 下級魔族の悪魔達だった。しかし普段とは違った。
「くっ、こいつ等…理性がぶっ飛んでやがる。誰かに操られているのか…?」
「お父さん!!」
 ディルは竹刀を手に走ってきた。しかし体は震えている。父親・ルシファーはそれを見て微笑むと、
「ディル、今日は祝ってやれなくてすまなかったな…。しかしお前はもう立派な大人だ。これからはお前がお母さんを守っていくんだぞ!!」
 そう言うとルシファーは腰の剣を抜き、悪魔達に突っ込んで行った。
「うおおおおー!!これが我が剣術、エミディオン流…秘奥義【旋竜紅牙塵】!!」

 ズドーン!!

 付近一帯の悪魔達は消し吹っ飛んだ。しかし…

 ヒュンっ!―――ズド!!

「お父さん!」
 遅かった…ディルはその場に膝を付いた。
「う…そでしょ…?お父…さん?」
 ルシファーは飛んできた無数の刃に体を撃ち抜かれ、その場に倒れた。
 ディルはすぐに立ち上がり、ルシファーのそばに駆け寄った。ルシファーは痛みを堪えディルの頭を撫で、
「ディル…どうだ?凄いだろう…これが我が家に伝わる剣術だ。ディル…お前は…。」

 ドサ…

 ディルの頭を撫でていた手が地面へと落ちた…。するとルシファーの体が光を放ち始め…

 バシューン!

 ルシファーの体は天へと消えて行った。英雄の1人、『神速の剣士』がこの世を去った。
「う…うわああああああ―――――!!」



 ………。

 ……。

 …。

 どれ位の時間が経っただろうか…ディルが目を覚ましたところは見たことのない白い天井。
「やっと目を覚ましたか…。ここは俺の知り合いの家だ。」
 ディルはふと聞き憶えのある声だと感じた。しかし聞こえる声が少し残念だった。
「起き上がれるか?お前が気を失ってから1週間過ぎているぞ。よく寝てたもんだ…よっぽど嫌な思いをしたんだな…。」
 その聞き憶えのある声の持ち主はルシファーの道場で一緒に学んでいたクラウスだった。クラウスはディルより4つ上で、よくディルの兄貴分な存在だった。そしてディルの憧れの1人でもあった。
「クラウス…。俺、どうしてここに…?」
 それからクラウスはあの時のことをちゃんと話してくれた。ルシファーのこと、他の家族のこと…町の人のこと…。生き残ったのはディルとクラウス、たった2人だった、と…。



 ――――

「それからしばらくしてクラウスが死んだ。悪魔にやられたと…。その時俺は誓った。エミディオン流剣術を全てマスターし、魔族を滅ぼすと。それが唯一の償いになるだろうと…。」
 その場にいたゼルにハル、そしてレイラは口を挟めなかった。いや、口を開けることさえできなかった。と言い換えるべきか…
『やはり…あなたがあの神速の剣士の息子でしたか。そして魔族に襲われ生き残ったたった1人の…。』
 ウンディーネはそこで口を閉ざしてしまった。しかしディル本人には分かったようだ。
「あのさ、その『しんそくの剣士』ってなに?」
 ゼルはウンディーネとディルを見て、さらに
「ディルのお父さんなんでしょ?どんな人だったの?」  と…。ゼルの言い方と不思議そうな顔を見るとディルはプッと噴き出した。
「な、なに?オイラなんか変なこと言った?」
「いや、そんなんじゃねえ。ただお前の顔が変だっただけだ。」
「な!!変な顔なのはディルの方でしょ!バカぁ!」
 顔を赤くしたゼル、そして腹を抱えて笑うディル達…。ウンディーネはふふ、と笑った。そして
『他の話は次の機会にでもしましょう。いつまでも仲間を信じ続けてください。それでは…いつでも必要なときに呼んで下さいね。』
 ウンディーネは青いキラキラした光を残して消えて行った。


「?…そんじゃあ、もどっか!」
「そうね、さっさと帰りましょう。こんなとこ、もう用はないんだし。」
「じゃ、帰ろー♪」
 4人はなんだかいつもと違いいい気分だった。お互いをまた少し知ることができたいい機会でもあった。


 第2話 終




 第1回 ☆雑談会☆ (ゼル、ディル、レイラ、ハル)

ゼル「みんなァ、今回から、オイラ達登場人物による雑談会を始めま〜す♪」
ディル「なに!?そんなこと一言も聞いてないぞ!」
ゼル「いいのいいの。オイラが勝手に始めたの(笑)」
レイラ「全く…こんなことのためにスペースを使わないで欲しいわね。」
ゼル「いいじゃん別に!やりたいからやるの!文句言うならこっから出てって。」
レイラ「分かったわよ、出て行くわよ!じゃあね。」
ハル「ちょっと、待った待った!レイラちょっと待ってって…。ゼルもそんなこと言わないの!
   もう、最近はゼルとレイラばっかりだねケンカしてるの……ハァ↓↓」
ディル「そうだな。ゼルはもとから子供だけど、レイラも子供だったりしてなww」
ゼル、レイラ「なに!!」

ボーン!!

ハル「ああーディル!!なにしてんの2人とも!ディルが…(泣)」
ゼル「知らない。子ども扱いするのがいけないんだよ!」
レイラ「ほんとよ、全く。これに懲りたらもう二度とこんなことは言わないことね。」
ディル「あい…わかり、ました…(バタ)」
ハル「うわー。」
レイラ「で、この雑談会ではなにをやるのかしら?」
ゼル「えっと…今回の話のこととか、次回予告とかww」
レイラ「そう、分かったわ。じゃあ次からちゃんと始めましょ。」
ゼル「うん、そうしよー♪」
ハル「ちょっと、ディルが大変よ!頭から血がピューピュー出てて、訳のわかんない言葉話してるよ!!(泣)」
ディル「☆♪○□△…×△○…♪□□☆」
ゼル「あらら…変になっちったww」
レイラ「ほんとね、どうしたのかしら。」
ハル「あんた達だよー!!」
ゼル「では今回はこのへんで♪次回の予告…次回第3話ではオイラ、ゼルに秘められた(?)真実が語られるよ。
   ってオイラなの!?なに?オイラの真実って…まあそんなとこで(笑)じゃあまた今度ね〜」
全員「バイバーイ!」
ディル「☆○△☆…」



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