星の輝く中に歌われた鎮魂歌

 1章「過去の清算」




 ……………夢を見た。

 それは過去の夢。

 子どもの頃の夢。

 自分が真実を知ったときの夢………。





 そこにはパトリック・ザラ………父さんがいた。

 そこにはレノア・ザラ………母さんもいた。

 父さんと母さんは部屋で二人っきりで話しをしていた。
 父さんと母さんが一緒にいるのは久しぶりだ。
 父さんと母さんだけで話したいこともあるかもしれないけど、自分もお話しをしたかった。

 父さんと母さんとの会話に自分も入りたかった。
 そうすることで本当の家族らしいことが出来るんだと思ったから。
 ………だから、自分は二人のいる部屋に行こうと思った。



 部屋のドアが開いていた。

 そこから声が聞こえた。

 …………父さんと母さんが話しをしているんだろうと思った。



 自分はそこから聞いてはいけないものを聞いてしまったんだ……………。





『仕事や立場が忙しいのは分かります。どんな女を囲っていようが私は知りません。
 ですが、あの子を悲しませるようなことはしないでください』
『俺に敬語を使って話をするのは止めろ!!!』
『しかし………!』
『しかしじゃない!!』
『…………………!!』
『…………………!!』
『あなたという人は………』
『……全く……なんだってこんなことになるんだ………!』
『あなたは私が愛したあなたではないんです………!』
『他の男と寝ている人間に言えたセリフか?』
『………………やめましょう。』
『そうだな………。もうどうにもならないことだ。』
『行きましょう。今日は外食ですよ』
『分かっている。』
『分かっていると思いますが、あの子の前では良き夫婦を演じてください』
『分かっていると言っているだろうが!!』



「聞いてはいけないこと」なんだと子ども心に分かった。
 あの二人がどういう会話をしているのかもなんとなく分かった。
 二人は言葉で表すと………仮面夫婦……というのが正しいのだろう。
 自分のために仲のいい振りをしていたんだと……あの時知った。

 知りたくなかった。

 こんなこと知りたくなかった。

 知らなければいつもどおりいられたのに…………。



 父さんや母さんのようになりたいと純真無垢に生きていられたのに…………!!





 …………………………………………。





 ……………………。





 …………。





「…………………!!」
 目が覚めた。
「……………やな夢だ………。」
 悪態をつきながら、俺はベットから出た。
 俺は髪を掻き揚げながら、鏡の方に向かった。
 ………鏡を見る。
「……疲れた顔をしている…………。」
 思わず声を出して感想を述べる。
 起きたばかりで髪が乱れているのは仕方ないのかもしれないが、表情が疲れているように思えた。
 朝起きたばかりだと言うのに、疲れた表情をしているというのもな…………。



 ………疲れた理由はいろいろあるのかもしれない。
 最近、世界の情勢が緊迫しているというのもあった。

 プラントが新たなるモビルスーツプランを発表した。オーブはそれに呼応して軍縮を呼びかけている。
 当然のことながら、オーブの首長であるカガリはターゲットになる可能性出てくる。
 そのため俺の仕事……ボディガードの仕事は緊迫したものとなり、働く時間も増える。

 あまりに過酷な仕事だと思う。
 それに加えて、見たくもない両親の喧嘩をしていた夢。
 精神的にも身体的にも疲れてしまう。
「………………ふう…………。」
 コズミック・イラ72年、4月。
 プラントと地球連合軍の人類が滅びるのではないかという戦争から1年と半年。

 世界情勢はとても緊迫したものとなっていた。



                                               (続く)



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