星の輝く中に歌われた鎮魂歌

 1章「過去の清算」




 …朝起きて、身支度をする。
 顔を洗っても、歯磨きをしてもあまり爽快という気分にならない。
 気分はあまりよくならない……というか最悪といった方がいいのかもしれない。
 父と母の喧嘩する夢を見たんだから、それもそうかと思う。

 ……………親か。  俺にとってはあまり良い響きのある言葉でもなければ、温かみのある言葉ではない。

 むしろ………聞きたくない言葉だ。





 俺の父親はパトリック・ザラ。

 ザフトの最高意思決定機関である評議会のメンバーで、最高評議会議長だった。
 地球軍との徹底抗戦を推し進めるタカ派として政治権力を高めていったのだが、
 第2次ヤキン・ドゥーエ攻防戦で戦死した。

 現在においては、元最高評議会議長ということになる。
 元々、ナチュラル……遺伝子操作されていない人間に対して見下した考えを持っていた人だったような気がする……。
 地球軍もといナチュラル全てを滅ぼそうと考えていた………。
 そうした過激な考えが仇になって、父は殺されてしまった。

 そんな過激な考えになったのは、俺の母親……妻のレノアが地球軍に殺されたから……と言われているが俺はそうは思えなかった。
 父さんはイザークの母親のエザリア・ジュールという愛人がいたし……もともとの母さんとの関係自体がそんなに良かったようには思えない。

 だから、元々父さんはナチュラルに対して偏見を持っていたんだと思う。
 じゃないと、ナチュラル全て滅ぼすことを考えないと思う。

 俺はナチュラル全てを滅ぼそうなんてつもりで軍人になったわけではなかった……………。
 単に母さんのように戦争で死んでもらいたくなかったから戦争をしていたんだ。

 結局、俺は父のそんな考えについていけなくて、分かり合うことができなかった…………。

 そして、ザフトから脱走した。

 父と決別した行為自体は後悔していないが………もっと分かり合おうできたんじゃないかと思うな。

 ………いまさらだな。



 ……余談だが、イザークが俺に何かと突っかかってきたのは親の愛人関係が理由だったらしい。
 俺の父さんとイザークの母親がね…………。

 ……なんかそういうドロドロした関係にはなりたくない………。
 人間自体不潔に思えてくる。
 そう思うと、イザークが何かとつっかかってきたのも理解は出来たし、今では親友とも言える関係だ。
 ある意味、イザークとは似たもの同士なのかもしれない。





 母親の方は農業研究者だったらしい。
 あまりよく仕事の内容はしらないが………。
 母は地球軍の攻撃による「血のバレンタイン」によって死んでいった。

 ………………この事件が俺を軍人にさせた。
 俺は母さんに対して何もしなかったし、何もできなかった………。

 そんな後悔のような感情が母が死んだときにあった………。
 だから、世界を平和にすることが母さんに対して唯一できることなんだと思って軍人になったんだ。

 そのことが正しかったのか……それとも間違っていたのか………。

 ……いや、少なくなくともあの時は正しいと思ったから軍隊に入ったんだ。

 だから、軍人という道を選んだ俺の選択は間違っていないと思いたい。





 ……………考えていても仕方ないな。
 仕事に向かおう。



                                               (続く)



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