星の輝く中に歌われた鎮魂歌

 1章「過去の清算」




 海………。
 ここに二人は住んでいる。
 車を近くの駐車場に止めて、海を海岸の道路から眺めてみた。
 …まだ4月だからか、人はほとんどいない。
 閑散としていて寂しい感じがする。
 夏にはにぎわうこの海の春先ではまだまだ寂しい場所なんだな。



 しかし、その静寂な世界の中にも様々な音色が聞こえる。
 海鳥の鳴き声だったり、波の音だったり……。
 それらの海特有の音色は自然と聞こえてくる。
 プラントで住んでいた俺にとってはその音色は心地よいものでもあった。
 プラントではそういうものはあっても、海のように壮大なものではない。
 物思いに耽るには絶好の場所だなと思う。



 …………『彼』はここで住んで、こうした海で物思いに耽っているんだなと思う。
 いかにも優しい『彼』らしいなと思う。
 いつだって優しくて他人のことを考えていた『彼』。
 恐らく、ここで守れなかった大切な人たちのことを物思いに耽って生きているのだと思う。

 死んだ者の思い出とともに静かに過ごす………。

 他人から見れば惰性というかもしれないが………『彼』はまだ休む時間が必要だと思った。
 まだ、立ち直るには時間が必要だと思った。
 あれだけ、『彼』は先の戦争で戦い抜いたんだ。

 もうしばらく休んでくれ………。



 海の音色はこうして考えている間にも、耳に流れ込んでくる。

 波の音色……。

 海鳥の音色………。

 そして見渡す限りの青い青い世界。

 海の青さ。

 空の青さ。

 そして太陽の光。

 歩くたびにめりこむ砂の感触。



 ………静かで平和な場所だ。
 そして『彼』にとっては安息の場所であるだろう。

 ………さて、二人の家に行くか。

 この海岸を歩いていけば、二人の家はある。



                                               (続く)



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