星の輝く中に歌われた鎮魂歌 2章「人が望んだもの」 「しかし、地球とプラントがそんなに変わらないのだったら、どうして戦争なんて起こったのだろうな…?」 俺はそれとなく今まで思っていた疑問を投げかけてみた。 ……どうして戦争なんて起こってしまったのか。 そんな子どものような質問を投げかけてみた。 ……自分でもなんでそんなことを聞くようになったのかは分からなかった。 「…………………。」 シホはふっと俺を暫く見た。 どういう意図で俺を見たのか……あまり表情の読めない顔だった。 能面とは言わないが、あまり感情の起伏を顔でださない人間だな…と思った。 ディアッカの方を見ると彼は静かにうどんをすすっていた。 ディアッカは会話に入りずらそうというか……あまりそういう会話はしたくないと思っているのかもしれない。 戦争というものは自分から直面して考えようとしないし、なかったことにしたいという感情があるのかもしれない。 特に戦争を直に体験した人間にとっては。 ……シホは暫く俺を見たと思ったら、うどんをすすり……そして真剣な面持ちで語り始めた。 「……それは戦争をしなければならない政治的状況だったからよ。」 「戦争しなければいけない……?」 「そう。………CE69 当時の最高評議会議長シーゲル・クラインはプラント内での食料生産を開始し、ユニウス市の7〜10区が穀物生産プラントに改装したわね。 プラントの食料生産開始に伴い、連合理事国側は実力を行使してもこれを排除すると勧告したわ。 プラントを独立させたくないから。連合はプラントに対し威嚇行動に出た。 結果は………ザフト自慢のモビルスーツで排除したけどね……。 その後、クライン議長は完全自治権の獲得及び対等貿易を理事国側に要求。 してプラント理事会において交渉が何度か行われたけど………平行線。関係は悪化。 ………時はCE70 ブルーコスモスがプラントの議員を暗殺。………そして、2月14日 『血のバレンタイン』 が起こる。」 シホは淡々と……自慢することなく……プラントの政治的歴史を語り始めた。 それは断片的なものではなく、流れに沿って話しをしていた。 俺はそれを静かに聴いていた。 「プラントは独立のため……そして連合のテロ行為から国民を守るために……戦争を起こしたのよ……。 二度と『血のバレンタイン』のようなことをしてほしくなかったらね。」 ………血のバレンタインか。 俺の母親もそれに巻き込まれた。 多くの人間があれによって死んでいった。 そのときの国民の怒りといったら、表現しようもないものであるほど凄まじいものだったであろう。その中の一人に俺もいたのだから。 そして、多くの国民はあの事件によって軍人になった。 「しまいにはプラント本体まで壊されたっていうのに……戦争しないって……言えると思う?」 「それは無理……だ。」 多分俺が政治家であっても、そのようなことは無理だろう。 再三、議会は慎重に連合と交渉してきた。 にも関わらず、連合は独立を許さずあまつにさえ「血のバレンタイン」を起こした。 プラントを……そしてそこに住む人間を守るためには戦争をするという判断は決して間違っていない。 例え、誰が政治家であってもそうすると判断するはずだ。 このまま行けば第二の「血のバレンタイン」も起こる可能性もあったのだから。 「だから……戦争を起こした。政治的な問題でね………」 「だからといっっても……戦争は多くの人が死に……そして憎しみを生む。」 「それは『戦場』という場所で生きた人間が言うセリフよ。」 「…………『戦場』…………」 「そう。『戦争』を起こしたくないのだったら……そういう『戦争』を起こさないような政治的状況にするしかないわ。」 「戦争」というのは極めて政治的な判断によって行われる戦いだ。 さっきのプラント歴史的経過を見ても……国民を代表する議会としては連合と戦争しなければならない。 国民を守るために。 しかし、俺は「戦場」しか知らないのかもしれない。 親友同士が戦わないといけない苦しみ…。 仲間が死んでいくことによる憎しみ… 限りなく生を大事にしてはぐくまれる愛……… 生きて帰ってこれたという喜び……… そういった人の感情が入り乱れているものが「戦場」。 そういった「戦場」を知っていても……政治的な判断で行われる「戦争」を防ぐことはできない。 恐らく、シホそういうことを言いたいのだろう。 ………「戦争」と「戦場」か………。 (続く) |
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